【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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【前回の捕捉】
エゥーゴが早くよりリックディアスとネモを運用している節がありますが、これは金の盾の支援の一環として委託生産を大規模に行っており、エゥーゴはソロモンから調達しているため早期から使える状況です。


グリプス戦役
ガンダムは強奪され白いゲルググが舞う


~グリーンノア1~

 

サイド7のグリーンノアがある宙域は偶発的な出来事から生まれた火花が大爆発へ至ってしまった。

 

「クワトロ大尉!形勢は不利です!」

 

「まだだ、まだ耐え続ける!ティターンズの非道を許すわけにはいかん!」

 

グリーンノア1は一般的な居住用コロニーだったが、実は内部でティターンズが新型機を開発していた。その情報をリークされたエゥーゴが将来的な奪取を狙い、事前の偵察活動のため潜入したが運悪く暴露されてしまう。下手に戦えば一般市民も巻き添えとなって悲劇が繰り返されることを恐れたエゥーゴは退避を図った。それと時を同じくして世の中に対して悶々としていた少年が一念発起し、緊急時の混乱に乗じてティターンズ施設に侵入する。そして、彼はエゥーゴに協力する旨を伝えて新型機2機を見事に奪い去った。

 

急ぎグリーンノア1から逃亡したかったが、ティターンズは怒り心頭で猛烈な追撃を行い戦闘は続く。市民が多く住むコロニーから離れていれば被害は及ばないだろう。内部の戦闘も細心の注意を払ったため、しわ寄せが寄せられていないと信じたかった。ただし、エゥーゴの偵察隊は数で勝るティターンズ追撃隊から逃れることに必死であり、信じる余裕はゼロである。一旦挟まれた交渉が決裂済みのため尚更だった。

 

「協力者の彼は己の機体を捨ててでも守り通す。彼は目の前でティターンズに家族を殺害されている。身柄を渡せば彼も悲劇の一部になってしまうぞ。これ以上のティターンズの暴挙は」

 

「そうは言っても、奴らの数が多すぎます」

 

協力者の少年を守るため3機のリックディアスは動いた。この直前に行われた交渉はとても話し合いとは言えない醜悪さを見せる。ティターンズ側は新型機ガンダムMK-Ⅱの返還を迫ったが、エゥーゴの利となる事は一切提示しなかった。更には協力者である少年の母親を人質に取ると言う脅迫をしている。エゥーゴは激怒して相手にもせず、少年の恩に報いるため救出作戦を行ったがティターンズは全く躊躇わず彼の母親を殺害した。まだ若い少年は目の前で母親を焼かれて感情が爆発しており、ティターンズは好機と見て盛大に攻め立てる。絶対に許してはならない暴挙だが元より不利だったためすり潰されてもおかしくなかった。

 

「まずい!ガンダムに敵機が!」

 

「しまった!再び誤るとは…」

 

落ち着くことを忘れた少年が操るガンダムMK-Ⅱにハイザックが迫った。ハイザック程度はリックディアスの敵ではないはずだが如何せん数が問題である。古来から数に勝る戦闘は存在しなかった。奴らは少年ごとガンダムを奪還するつもりである。

 

その時だった。

 

「やれやれ、私は子守を専業としていないんだが」

 

「間に合ったか。まったく、遅いではないか」

 

「可能な限り偵察隊の邪魔にならないよう配慮したと思ってほしい。さて、このガンダムは一先ずアーガマに連れていくよ。迫る連邦軍も私なら阻むことが出来る。流石に殲滅は不可能だが、逃げる時間稼ぎは任せてもらいたい」

 

「恩に着る」

 

念のためでハイザック3機がかりで奪取を図るも高速で接近したMSによって忽ち撃破された。1分も経たずして3機が撃墜されてティターンズも攻めを緩めざるを得ない。単なる一般機が相手であれば運が悪かったと切り替えるが、各機のメインカメラを通じてモニターに映るMSはやけに目立った。

 

それは白いゲルググである。

 

「大尉…」

 

「燃料と弾が持つ限りアーガマを守る。奴らも少尉と真っ正面からぶつかりたくはないからどこかで退くはずだろう」

 

~白いゲルググ~

 

「悲しみを背負って人間は強くなる生き物だ。今日の悲しみは明日の糧になる」

 

偵察隊を発したエゥーゴの母艦アーガマへ白いゲルググはガンダムを牽引して向かった。これは伝説の艦であるホワイトベースを参考にして建造した強襲巡洋艦だが、基本的に単騎の戦闘力は低いことからMSに依存している。今回は戦闘の前面に出ず搭載したMS隊に任せた。そして、紆余曲折の末に帰って来たガンダムを受け取る。

 

「ガンダムの彼を責めないでやってくれ。少年にこの戦いは惨すぎる上に目の前で母親を失ったと聞いている。大人がやるべきことは戦い以外にもあるんだ」

 

「あ、あいつらをっ!」

 

「気持ちは分かる。だが、今の君には無理だ」

 

優しくゆっくりとデッキに戻してあげたガンダムから悲しみと怒りが混じった声が聞こえる。しかし、白いゲルググはモノアイを合わせて変わらず優しく諭した。他者から見て彼がまとも戦えるはずがなく、どんなに良いセンスがあっても感情が揺れ動いていては無茶である。

 

「だからって!」

 

「ならば見ているがいい。私の戦いをな」

 

カタパルトを使わず静かに戦闘に戻り行く白いゲルググを見上げて少年は決意した。あのゲルググの背中を追いかけてやると。そして、必ずやティターンズに復讐を果たさんと。反対に背中を良い方へ言い繕うと熱心に見つめられる白いゲルググは戦闘に入る前にリックディアス隊と合流した。

 

「弾薬に不安があるため少し後退する。少尉頼むぞ」

 

「問題ない」

 

アーガマの防空に戻るリックディアス隊と代わってゲルググが立ち塞がった。いや、正しくは浮き塞がったかもしれない。それはそれとして、あれだけ激しい追撃はいつの間にか大人しくなったのは興味深かった。まるでゲルググを恐れるようにしてである。旧式化を通り過ぎたゲルググが最新鋭のハイザックに勝てる光景は見えていなかったが、どうしてかティターンズは足踏みを強いられた。

 

「息巻いた割には賢明なことだ。あいにく、今日は機体の調子が最高なんでね」

 

睨み合いを続ける気は毛頭なかった。凄まじい瞬発力で動き出したゲルググは数で対応するハイザック隊を最初から圧倒した。短銃身で全体的にコンパクトなビームマシンガンの連射によって堅牢なザクモドキは蜂の巣にされる。決して撃たれ弱い機体ではないが進化が止まらないビーム兵器の前には単なるデブリだった。ビームライフルに比べ一発当たりの威力は数段下げられた代わりに高い連射が特徴的でばら撒きで敵を包み込む。もちろん、射程距離は短くなるため中距離戦闘には適さず、持ち前の連射速度を活かした近距離戦闘が望ましかった。

 

「偽物のザクは偽物にしか収まらん」

 

取り回しの良い短銃身ビームライフルでも近すぎては使いづらい。相当の熟練兵でなければ持て余した。なお、ティターンズは精鋭を集めたエース級の集まりであるが、嘗てから泥臭く宇宙で戦ってきた者には及ばない。その戦いぶりは圧巻に尽きアーガマから観戦していたクルーや護衛機は拍手したくなった。とは言え、多勢に無勢と言える状況のためジリジリ下がり最終的にはアーガマへ戻る。幸いにもティターンズも激しい戦闘で消耗しており、人質作戦が失敗したことからガンダムMK-Ⅱ奪還は困難と判断して撤退した。

 

今度こそ正当に帰投した白いゲルググは歓声に迎えられた。せっかく奪ったガンダムを魔の手から守り切り、リックディアスとは真反対に古い機体でティターンズ追撃部隊を撃退せしめる。古き良きコックピットから降り立ったパイロットは笑った。

 

「格闘戦の腕前は流石だとしか言いようがない」

 

「褒めすぎでしょう。クワトロ大尉」

 

先に帰投してリックディアスを預けていたクワトロ大尉と呼ばれた男は至極真面目に褒める。ただ、褒められた方は誇らずだった。彼はアーガマのMS隊パイロットの中でも特に格闘戦に優れる。このパイロットには誰も及ばないとして、相対的に射撃戦を得意としたクワトロ大尉が断言する腕前の持ち主である。

 

「さて、どうにか耐えたが問題はこれからだ。すまないが色々と頼むよ…サカイ少尉」

 

続く

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