【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

35 / 113
伝説の再来?

短期間の間に語り尽くせない事態が生じたエゥーゴだが、単騎精鋭であるアーガマ隊の活躍によってティターンズの新型機ガンダムMK-Ⅱを奪取することに成功した。また、少年で素人の割に天性の才能を発揮するパイロットを一時的に仲間に加えており、激しい戦闘の末に戦力向上とティターンズにダメージを与えることを果たしている。

 

奪取したガンダムMK-Ⅱは詳細な分析を試みており、基本設計から全てを調べているが予想より性能は芳しくなかった。全体的に堅実であることは新しさに欠け、新型機としては平凡で突き抜けた所は見られない。総合性能は主力機リックディアスと団栗の背比べであり、リックディアスの数を揃えた方が良いとまで言われてしまった。これは開発開始時期が数年前でベースが旧式機ジム・クゥエルであり、且つ装甲材もチタン合金セラミック複合材とされたことが原因である。

 

ガンダムMK-Ⅱは良く言って手堅く、悪く言って面白みに欠ける古い機体だった。

 

しかし、内部構造のムーバブルフレームは優れものだった。実際に分析を行ったメカニック達はリックディアスの「ブロックビルドアップ構造」の技術を転用することによって大幅に改善することが可能であると述べる。反対にリックディアスもムーバブルフレームを取り入れ改良でき、お互いに技術を融通し合えば素晴らしい機体が生まれるとも断じた。改善には時間を要するため今すぐ直せるところは直し、本格的な工事を要する部分は可能になるまで保留となった。

 

さて、ティターンズを退けたアーガマは追撃から逃れるべくサイド1を目指している。サイド1は協力関係にあるジオン残党軍の宇宙要塞ソロモンから近く、ティターンズでさえ安易に侵入できない宙域だったからだ。今回は事前に話を通していなかったためソロモンには寄らず、サイド1宙域でアーガマは姿を消してから改めて月を目指す。

 

そんな逃避行のアーガマは新しく仲間を迎え入れたが、僅かな間に立て続けに両親を失ってしまい、若さゆえの反骨精神が強くて周囲の大人たちは苦慮した。自分たちのせいで彼は巻き込まれ両親を失った以上は安易に抑え込むわけにもいかなかった。

 

そこで大人達は特に温厚で礼儀正しく、直接的に関与せず例の彼から敵意を向けられない唯一のパイロットに頼んだ。

 

~アーガマ艦内~

 

「どうかな。少しはアーガマに慣れてくれたか?」

 

「…」

 

「そうか。あ、失礼したね。私はサカイ少尉という。あのゲルググに乗っていたパイロット。無理に話そうとしなくていいさ」

 

ガンダムMK-Ⅱが置かれた内部デッキにて少年は黄昏ていた。彼は奪ったガンダムが今現在の居場所であり、周りの大人たちと馴染み切れていない。未だに大人達への不信感や怒りから上手く行かなかった。自分の未熟や勝手、甘さを厳しく詰められて、長く叱責されることが多くあり受容できなかった。

 

「カミーユ・ビダン君だね。ガンダムMK-Ⅱの奪取は君が働いてくれなければ不可能だった。改めて感謝するよ」

 

返答をしなくても畳み掛ける男にカミーユ少年はたじろいだ。途中参加で自分を救ってくれたパイロットのため、エゥーゴの大人達と一括りに出来ずに中途半端な位置に置いている。また、正直言って失礼で身勝手な自分を煙たからず叱りもしなかった。反骨したくても相手が乗らなければ出せないのである。

 

「別に私たちを信頼しなくても全く構わない。なにせ急すぎるから反骨して当然だ。私も昔はどうにもできない状況に押し込まれ悶々としたことがある。慕っていた友を救うことが出来ず置いて行き、私は一人見捨てて逃げる事しかできなかった。それは友が自ら進んで私を生かすことを選択したからやむを得ないと言えばやむを得ないだろう」

 

カミーユは特異な感性からこのサカイと言うパイロットが常人ではないことを察する。記憶の端に残っている救出時の怪物じみた機動は焼き付いていた。

 

「君と私の境遇は違うには違う。だが、少なくともクワトロ大尉やエマ中尉と比べれば幾らか優しいはずだから相談があれば頼って欲しい。まぁ、私が言うことではないがエゥーゴもティターンズも関係なく、大人たちはなぁなぁで生きている。せめて私はカミーユ君と一緒に戦いたいから、これからよろしく頼むよ」

 

サカイ少尉は敢えて言うだけ言って待たなかった。ここはカミーユ君の複雑な心情を汲み取って自分の時間を与える方が良いだろう。大人の介入は最小限に抑えておくべきでそそくさと退散していった。終始黙り込んでいたカミーユは意外と穏やかな大人と会えてまともに話せそうな人を見つける。また、ジュニアモビルスーツの経験がある彼には筋金入りと思われた彼の戦闘を見て憧れに近い想いもあり、完全に信頼していないが軽く付き合えそうだった。

 

対して、不十分でもカミーユ君と会えたサカイ少尉は待ち伏せていたクワトロ大尉と合流した。

 

「どうだった?やはり難しいか?」

 

「あぁ、彼は中々に難しいと思った。若いからと断じれるだろうが私はそこまで厳しくできない。それに操縦技術や激情が生む力は想像以上だと。勝手な見立てだが彼はかのアムロ・レイ、伝説の再来たる存在かもしれないぞ」

 

「白狼でもそう思うなら正しいはずだ。それより、我々は彼を軍人に叩き上げるために厳しく接するだろう。周囲に厳しい大人は必要なことだが、逆に話せる大人がいなければ辛くなる。すまないが…」

 

「赤い彗星から全面的な信頼を受けるとは恐縮する。彼のケアについてはサカイに一任されたい」

 

どうやらこのクワトロ大尉とサカイ少尉はお互いに秘密があって知っているようだった。赤いパイロットスーツと白いパイロットスーツは紅白を意味して縁起が良さそうである。2人は先の戦闘の振り返りを軽く行ってからこれからの予定を詰めることにした。

 

「アーガマはサイド1を経由してから月の出資者たちと落ち合うが…」

 

「誰にでもわかる明確な戦果を求めて無理難題を押し付けるはず。世間に対するエゥーゴとティターンズの戦いを見せるためには従うしかないと」

 

「その通りだ。あまり乗りたくないのだがやむを得ないだろう。しかも、狙う先はジャブローだと思われる」

 

反抗組織エゥーゴは資金面で苦しみ、月の商人たちから出資してもらった。出資してもらう代わりに満足できる戦果を提供する必要があった。同時にこの戦いを世間にアピールすることも考えると大規模な拠点を攻撃することが一番である。敵は地球連邦のため攻める先は必然的に地球上に絞られ、更に大規模な拠点でふるいにかけるとジャブローが示された。言わずもがな、地球連邦軍の本拠地だった。エゥーゴはただでさえ心許ない戦力で本拠地を攻めることを断りたい。しかし、戦う資金を得るためには黙って首を縦に振るしかできなかった。

 

「それは参ったな…私のゲルググは大気圏突入に耐えられるか分からない。今更ネモやリックディアスに乗り換えるわけにもいかない。わかった、私は月に降りたらグラナダに向かうことにする。グラナダでアーガマ用のHLV(コムサイⅢ)を受領してから別働隊としてジャブローに赴く」

 

「面倒をかけてしまうが頼む」

 

「いや、クワトロ大尉の謝ることではない。これは機種転換が出来なかった古兵の私が悪いんだ。笑ってくれ」

 

サカイ少尉の機体は旧態依然としたゲルググだった。一年戦争末期の機体であるが既に数年が経って主力機は第二世代に変わっている。一応は延命措置のオーバーホールが施されたが古さは否めず、規格の問題で大気圏突入用のバリュートを使用できなかった。したがって、彼は別働隊になり味方と分かれて大気圏突入から降下攻撃を行うことになる。

 

早くから新型機に乗り換えておけばいいと思われるが、エゥーゴ自体が寄せ集めの軍隊であり機体の統一は遅延している。金の盾の支援を受けリックディアスとネモの配備を進めたが、全ての兵士に生き渡って習熟を完了するまでには至らなかった。サカイ少尉が最たる例であり、旧ジオン系反連邦組織出身の彼は「真新しい機体に対応できなかった」と言った。

 

異なる機体を複数運用することは面倒を生むが、幸いにもゲルググはアナログなため整備自体は容易である。メカニックも旧ジオンが一定数おりジオン系には慣れていた。アーガマにおけるリックディアスとゲルググの併用は面倒は面倒でも無理にはならない。

 

「まぁ、今は追撃から逃れることが第一なんだがな」

 

続く

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。