【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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既に頂戴していたお声を受け、予定を変更して投稿しています。

~お知らせとお願い~
活動報告にもありますが、皆様の質問には返していきたいと思っています。しかし、ネタバレになる(追々触れていく予定である)内容については回答を差し控えさせていただきます。他の読者の方々に対するネタバレを回避するためですので、ご理解とご協力をお願いいたします。



家族

サイド1宙域でティターンズ(厳密には連邦軍)の追撃を受けたがアーガマはこれを退けた。それから月のアンマン市へと舵を切っている。アンマン市にて出資者たちと落ち合う予定とされた。そんなアーガマは先のサラミス改級との戦闘で無傷とはいかず少なからず損傷しており、且つMS隊も消耗したため降り立つ地で補給と修理を行う予定である。油断を消し去る警戒態勢で月へひた走るアーガマ艦内の休憩所ではホットなコーヒーを啜る男性と話しかける少年があった。

 

「さっきはありがとうございました」

 

「感謝するのは私もだよ。君がいなければ満足にガルバルディ隊を退けられなかった。いいセンスを持っているよ、カミーユ君は」

 

カミーユは助けてもらったことに素直に感謝した。どれだけ大人が信頼できなくても、窮地を助けてもらったことは人として感謝しなければならない。また、その人はアーガマメンバーの中でも特に優しく自分に寄り添ってくれた。両親を目の前で失い高校生活を奪われたのに甘さを捨てて戦えと厳しく接する大人が殆どの中で気持ちを察してくれる人は貴重である。確かに戦争の最中でアーガマは事実上の軍隊のため、一員となった以上は軍人として厳しい規律で生きることが求められた。一概に大人たちを責められない。

 

「少尉の機体はジオンの…」

 

「そうだよ。あれはゲルググ・イエーガーと言う前の戦争末期に作られた汎用機でね。それを継ぎ接ぎで改修して使った」

 

ホットコーヒーを追加するサカイ少尉の背中へ向けて至極当然な疑問を投げかける。

 

「少尉、昔はジオンのパイロットだったんですか?」

 

「う~ん…答えが難しいなぁ。範囲を広くすると私はジオンのパイロットで正しいが、狭くすると私は反地球連邦ゲリラ組織の出身で半分不正解になる。とりあえず、ジオンの人間だと思ってくれて構わない」

 

(エゥーゴの人間は混合なんだな)

 

カミーユはサカイ少尉がゲルググを操っていることからジオンの人間だと予測して聞いた。本人曰く広義は元ジオン兵だが狭義は反連邦ゲリラ兵らしい。どちらにせよ地球連邦の所属ではなかったため、アーガマは出自が混ぜ込みご飯だと理解する。カミーユと交流があるサカイ少尉とクワトロ大尉、エマ中尉の3名はそれぞれが別々だった。クワトロ大尉は元地球連邦軍のパイロットであり、ティターンズのやり方に反感を覚えてエウーゴを立ち上げた初期メンバーだと知る。エマ中尉は当初はティターンズの精鋭部隊出身だったが、30バンチ事件に代表される数々の弾圧を目の当たりにして耐えきれなくなり、情報をリークする土産を提げてエゥーゴに亡命した。そしてサカイ少尉は反地球連邦ゲリラ組織からジオン軍を経てエゥーゴ参加している。

 

見事なまでにバラバラだった。

 

「それより、そろそろ慣れてくれたかな」

 

「まだ馴染み切れては」

 

「何も気に病むんじゃない。急に戦争にほっぽり出されて戦えなんて馬鹿げた話である。私は正規軍じゃない民間人が戦わされることが嫌いだ。今回は偶発的で君が復讐に燃えているから幾らか軽減されてもエゥーゴの剛腕は好まん」

 

結局のところ、エゥーゴは寄せ集めの軍隊のため民間人でも戦えるなら遠慮なく使役する。カミーユは戦いを通じて少しずつ成長しているが、まだ若い故にモラトリアムを周囲から咎められ矯正されることが多かった。所属するのが軍隊であるため仕方なく思われるが、彼に反発されて馴染めないと言われても、それこそ仕方ないのではないだろうか。元がゲリラだったため正規軍よりも遥かに厳しい環境に置かれていたサカイはカミーユに同情し寄り添う。

 

「家族は」

 

「いる。いるにはいるんだが、遠く離れた地に避難させたよ。いわば疎開かな」

 

何かを思い出したかのように聞いた。

 

少し難しい表情を浮かべて語りだす。

 

「私は妻と娘がいる。私がエゥーゴに参加する前から離れている。戦争末期にジオン軍の人材難を受けてゲリラから引っこ抜かれることが決まり、私は家族を当時居住していた拠点から遥か遠く離れた小惑星アクシズに避難させたんだ。今はアクシズで私を忘れて娘と暮らしているはずだよ。安全な所で生きているなら、それでいい」

 

「そんな…」

 

やけに生々しい話を聞いてカミーユは苦虫を噛み潰したようだった。自分は両親を眼前で失った経験が直近にあり、彼は失いこそしなかったが家族と離れ離れになっている。もちろん、比べることなんてしなかったが似た者同士だと認識した。

 

それでは、彼の家族はどう過ごしているのだろうか。

 

~アクシズ(移動中)~

 

「アイナ様、アクシズは3か月後には地球圏に突入します」

 

「ようやくですね。ジオンが帰還する時が来ましたが彼は元気にしているのでしょうか」

 

「シン少佐はエゥーゴに潜入して暗躍しておられます。ジオンは内戦の利益だけを掬いとるため、ティターンズが倒れる必要があります。エゥーゴでティターンズを叩けるだけ叩き、介入が開始されてからは密者に変わりジオンによるエゥーゴ吸収を推し進める。機会があれば再会することは可能です」

 

アクシズは遠回りして諸々を回収してから地球圏を狙った。諸々とは各地に散らばったジオン残党軍やゲリラ組織である。特に茨の園ではデラーズ・フリートの残りが路頭に迷っており、アクシズは反逆徒として粛清されるか懺悔してミネバ様に忠誠を誓うかを問いただした。指導者を失って命からがら逃げた者達は懺悔する選択肢しか残されておらず、アクシズは少量でも戦力を増やすことに成功している。

 

「少佐はミネバ様の勅命と銘打ったハマーン・カーンに命じられてアクシズを離れざるを得ませんでした。それは一定の理解を」

 

「当たり前です。私とて同じ軍人ですから、最もやむを得ないと思っています。文句を言えるような立場ではないですし」

 

勅命からは逃れられず、国家元首からの強すぎる信任も考えものである。アクシズが地球圏に突入する前に工作員が各地に送られた。アクシズのジオンのためであれば喜んで引き受けて最後まで全うするだろう。しかし、残された家族は寂しい思いを抱かざるを得なかった。特に子供がいると尚更であろうに。当然文句が沸き上がってもおかしくなかったが当事者は受け入れた。文句を言っても事情は変わることはあり得ない。文句を垂れ流して己は何もしない愚者になるつもりは毛頭なかった。

 

「今はただ帰還を待つだけですよ。必ずシンは帰ってきますから。もし彼が戦うのであれば私も共に赴きます。あなたはユイをお願いしますね」

 

「はっ!」

 

家族の帰りを待つ妻と娘は。

 

続く

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