【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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本話が本日投稿する予定だったものです。


ジャブロー降下前に

~月・グラナダ~

 

アーガマは少し迂回することで連邦軍及びティターンズから逃れ月のアンマン市に到着した。アンマン市で艦は一先ずの補給と修理を受け、上層部は出資者達と会談を開くことにしている。一応は主要メンバーだが機体を揃える都合でサカイ少尉は別れると単身でグラナダに向かった。

 

グラナダは月の第二都市であり連邦軍の基地が置かれている。しかし、元がジオンの占領地のためスペースノイド派閥が強く存在し、都市を支配するアナハイム社がティターンズと仲違いしたことより居心地が悪かった。したがって、連邦軍は新設された基地へ統合することが囁かれている。事実として基地の規模は縮小が始まり、ルナツーやグリプス2などのティターンズ宇宙拠点へ戦力が流れていた。グラナダはアナハイム社製品を送るための配送センターと化すのであろう。

 

「ゲルググは空挺降下に耐えられない以前に地上戦は不可能か」

 

「はい。少佐の機体は宇宙での戦闘に特化したゲルググJが素体なので重力下では苦しむこと間違いありません。戦えないことはありませんが環境に適合しないためハイザックやアッシマーに劣ると思われます」

 

「これは参ったな。あいにくリックディアスは性に合わない。簡単なネモなら動かせるが」

 

「そこです。アナハイム社は秘密協定を基にして少佐へリコリスを譲渡できます」

 

「リコリス?」

 

グラナダにある喫茶店でサカイはアナハイム社の人間と対面した。流石にエゥーゴの制服では目立ちすぎるため、所謂ビジカジの服装に変えてある。相手はアナハイム社の人間としているが実際は金の盾の工作員だった。彼はグラナダ工場とソロモンの仲介を務めて各種調整を担う。

 

2人が会った訳はジャブロー降下に際するシンの機体転換をすり合わせることだ。宇宙で使い続けるゲルググJは徹底的に宇宙戦を想定した機体のために重力下の環境とかみ合わなかった。決して運用は不可能ではないものの最新機と張り合うには無茶がある。一年戦争末期の機体を8年近く使い続けていることが奇跡に等しいだろう。したがって、アナハイム社から新型機か既存機の提供を受ける必要が生じてしまい、こうして喫茶店で打ち合わせを行うに至った。

 

「結論から申し上げるとガンダム試作機2号機サイサリスαを新造した改修機です。グラナダ工場がジオン傘下に入っていることはご存知だと思います。グラナダ工場はサイサリスを改めて建造し、表向きはデータ取りと称して様々な改修を加えて温めていた機体を譲渡します」

 

「例の核兵器は付随しているのか?」

 

「いえ、あれだけの惨劇を生んだためオミットされました。核使用が封印されたことを受け白兵戦能力を磨いています」

 

グラナダ工場から彼に提供されるのはリコリスと呼ばれるMSらしい。リコリスは学名で一般的には彼岸花と呼ばれる。花が冠された機体となれば必然的にガンダム計画の産物であろうに。ガンダム計画は凍結どころか記録から抹消されているため、新造されるわけが無いと思われるが現実として作られた。しかも、最も忌むべきガンダム試作2号機サイサリスとは何故なのか理解に苦しむ。

 

サイサリスは早々にデラーズ・フリートに奪取されてしまい、実践的な試験を受けられず開発元にデータが入らなかった。せっかく作ったのに貴重なデータが入らなければ後に繋げられない。よって、新しく作り直して安全な所で各種試験を行うことになった。計画が抹消されても地下では活発に試験が行われる。そして、作られた数機の内の1機をグラナダ工場がコネで受け取った末にジオン向けに大改修を加えたのがリコリスだった。

 

「正統派を辿ったサイサリスか。それを私に提供してくれることは嬉しいんだが何が狙いだ」

 

「ジオンとの関係を深めたい。今のティターンズを見れば連邦と付き合う義理なんてありません。皮肉なことに穏健的でスペースノイドを擁するジオンと付き合った方が利益も出ます。ただ、明らかに敵対しては潰される危険性があるため、適度にハイザックやマラサイなどの機体を納入して急速な関係悪化は避けている状況です」

 

「なるほど、意外とアナハイム社は物分かりが良いようだ」

 

「いえ、ティターンズが常軌を逸しているだけかと」

 

「それは違いない」

 

アナハイム社はエゥーゴにもティターンズにもMSを卸しているため、商売人として立ち回っているように見えてしまうが正しくは違う。スペースノイドに属するエゥーゴへはスポンサーとなって提供し、ティターンズへは武力行使を回避するべくご機嫌取りで納めていた。なお、グラナダ工場については当初からジオン傘下のためご機嫌取りは最小限に抑え、工場の生産ラインの大半はジオン向けに回して新型機開発もジオンの要望だけを受け付けている。本来の連邦軍向けは真反対のフォンブラウン工場が担った。

 

「話を戻しましょう。ジャブローへの降下と聞いておりますがコムサイⅢでよろしいでしょうか?」

 

「私としてはHLVが好ましい。しかし、その言い方だと売り込みたいんだな?」

 

「はい。こちらを見ていただきたく」

 

百聞は一見に如かずと古人は残しており、担当者は実物でなくても商品概要を提示した。それはHLVよりもコンパクトだった。

 

「これは?」

 

「一年戦争時に投入されたモビルダイバーシステムを敵地強襲仕様に手直しした物です。ゼーゴックは急造品であり完成度が今一つでしたが思想自体は面白かったため、モビルダイバーシステムを洗いざらい直して完成させました。MS1機が入る大気圏突入コンテナを主として自由落下し、一定の高度で3基の使い捨てロケットを噴射して減速します。噴射完了後にロケットを切り離してハッチからリコリスを発進させます。リコリスはフレシキブルスラスターにより円滑な空挺降下が可能です」

 

「無防備なバリュートと違って速度そのままに突っ込むから迎撃を受け辛く、迅速な空挺降下から強襲が可能な装備か」

 

「ただ、バリュートを使えればバリュートに越したことはないです」

 

MSが大気圏突入に突入するためにはコムサイ等の輸送機を用いる必要があったが、技術の進化によってバリュートが実用化されてハードルが下がった。しかし、使用可能な機体は新鋭機に限られており、降下時は無防備に等しいことが弱点である。機体の実用時期に左右されず強行突破が可能な装備としてモビルダイバーシステムが改良されて使われた。もろ見えだった初期と違って改良型は機体はコンテナに格納されるため事故の心配は無く、バリュートと違って生存性は気休め程度に高いことが強みである。しかし、仰々しい装備のためコスパが悪かった。

 

「まぁ、試験的に使って欲しいのだろう。ありがたく頂戴する」

 

「ありがとうございます。ただ、宇宙への帰りは…」

 

「暫くは地上に滞在すると思うから気にしないでほしい」

 

「承知しました」

 

さて、シンは地上で戦える高機動機リコリスを受領してジャブロー降下のため大気圏突入モビルダイバーシステムを得た。周りは新型機でバリュートを装備して降下する中で少し古い戦略MSが旧時代の降下システムを用いる様子は見られないだろう。

 

「あ、そう言えばいい忘れるところでした」

 

「なんだ?」

 

「ティターンズの大型艦がアーガマを撃破するため待ち伏せを仕掛けています。おそらく降下前に襲い掛かる手筈なので迂回することをお勧めします」

 

「わかった。上に言っておく。忠告に感謝する」

 

ジャブロー降下の準備を進めるアーガマはティターンズの待ち伏せを掻い潜りジャブローを目指した。彼らは南米で何を見るのだろうか。

 

続く




○リコリス
ガンダム試作2号機サイサリスαを作り直して改修した。各運用をオミットして白兵戦能力を高めてある。なお、基本的には素と変わらないがフレキシブルスラスターに加えてシールドブースターにより圧倒的な機動力を誇った。

武装
・頭部60mmバルカン×2
・ビームバズーカ
・大出力ビームサーベル×2
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