【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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※アンケートは2022/10/24に締切&更新予定


戦場の変わり時

エゥーゴは定めた大気圏突入ポイントに戦力を集結させ地球連邦軍本拠地ジャブローに対する降下作戦を開始している。集まった戦力はアーガマに限らず鹵獲したサラミス改級やハンニバル級空母もおり大戦力だった。ジオン残党の協力により一定数確保した主力機のリックディアス及びネモがバリュートを装備して続々と降下していく。

 

「諸君らの検討を祈る。宇宙は任せてもらいたい」

 

「頼むぞブライト」

 

アーガマからはカミーユとエマ中尉のガンダムMK-Ⅱ、クワトロ大尉の百式、アポリーやロベルトらのリックディアスが出撃した。MK-Ⅱは月にてアナハイム社から改良が施されて操縦性が改善された。そして、クワトロ大尉は同時に機種転換を行い見慣れも聞き慣れもしない百式を得ている。百式はクワトロ大尉専用に支給された高機動試験機だった。高度なムーバブルフレームを持ち、姿勢制御バーニア及びフレキシブルバインダーはトコトン機動性に特化させる。しかし、あまりにも尖ったためクワトロ大尉のような経験と技術を兼ねたエース級パイロットでなければ満足に動かせない難しい機体になってしまった。

 

見送るアーガマは降下作戦直前に新しい仲間を加えていた。先の戦闘で伝説的な戦果を残したブライト・ノアである。閑職に追いやられた彼はアーガマに助けられると人材難のエゥーゴの意向に従って戦列に加わっていた。現在はアーガマの艦長に就任して指揮を執っている。地上戦には参加しないためMS隊が留守の間の艦を守り切る覚悟を有した。恩を仇で返すわけにはいかない。

 

ブライト以外にもカミーユの幼馴染が保護されている。しかし、幼馴染は憔悴し切っていた。そんな姿を見た彼は今回のジャブロー降下に際して誰よりも闘志を燃やす。ティターンズの魔の手を断ち切るため本拠地を叩きに叩くつもりだ。やる気に満ちた彼らはバリュートで続々と大気圏突入を開始する。機体の運用の都合で最後になったベテランは唯一の仰々しさを見せつけた。ハンニバル級空母から降下する周囲のエゥーゴ降下隊が三度見しかける程に。

 

「モビルダイバーシステム、『サザンカ』投下用意」

 

「サザンカ出ます!」

 

アーガマの側面ハッチから簡易的なレールでモビルダイバーシステム『サザンカ』が出された。大気圏突入コンテナと3基の使い捨てロケットからなる大気圏強襲システムの試験的な投入が行われる。文字に起こすと如何にも巨大そうであるが、コンテナ内には1機しか入らないことから気にならない範囲に収まった。

 

放り出されたサザンカのコンテナ内のリコリスに乗り込むサカイ少尉は進路を大気圏突入に変更した。

 

「サザンカ発進!」

 

コンピュータが器用に姿勢制御を行いサザンカは重力に従った大気圏突入を開始する。バリュートに囲まれて突入するサザンカは異様であることこの上なかった。アーガマに残留するクルーと艦長ブライトは敬礼して異様な景色を真面目に見つめ、戦果より無事の生還を祈って見送るしか出来ない。

 

~サザンカ~

 

「コンテナ外部温度は…十分に耐えられる温度か。外の光景が碌に見られないのは怖いものだ」

 

恐ろしい大気圏突入を図る以上は味方と通信したくても出来るわけがない。また、専用コンテナは窓を持たないこともあり搭乗者は寂しさを感じた。しかし、万が一の事故に備える必要があり寂しさを押し殺す。基本はバリュート同様の自由落下で味方機と差は生じておらず、この調子で進めば強襲は成功するだろうと思われた。

 

しかし、そうは問屋が卸さないとティターンズが迎撃する。

 

「ぬぅ…同じ装備で追従するつもりか。やむを得ない、サザンカは強行突破する」

 

大気圏突入の装備はエゥーゴが独占していない。ティターンズも運用しておりハイザックとマラサイに装備させ、一緒に降下して迎撃するという無茶苦茶な手を使ってきた。同じ装備のため差は生まれにくくパイロットの技量が試される。装甲なんて存在しない装備を破壊されたらジ・エンド。

 

とは言え、サザンカはモビルダイバーシステムである。唯一の例外が好転してくれ、迎撃を無視して急降下すると誰も追いつけなかった。ティターンズ迎撃隊はサザンカを攻撃したくても自由落下をフル活用した引き離しについて行けず、無理をすればバランスを崩して燃え尽きる恐れがある。したがって、あれは見逃さざるを得なかった。どうせ武装コンテナか何かで大した脅威でもなかろうとも思って。

 

それが致命傷になることを知らずにである。

 

(ロケット噴射による減速カウントダウン開始)

 

サザンカは搭乗者の負担軽減のため操作はコンピュータが担ってくれる。姿勢制御まで全部がオートだとむしろ面白みに欠けた。なんてことを思う暇も無く減速に備えて空挺降下の準備を進める。もちろん、今から外に出ては機体がバラバラになるだけ。

 

機械音声のカウントダウンが0になるとロケット噴射が行われる。グッと体が締め付けられる感覚を覚えた。ただし、あくまでも減速用の使い捨てロケットのため持続時間は短い。短くても十分に速度を相殺してくれたのはロケットが高度に関わらず最大出力を発揮する強み故だろう。

 

(ロケット噴射終了。切り離します)

 

空になったロケットは切り離して投下した。贅沢そうに聞こえても、逐一回収して整備するなどで面倒な再利用方式よりも使い捨ての方が安上がりになる。とても組織のお財布に優しかった。

 

少し間を空けてから降下のためハッチを開ける。切り離し直後に出ると衝突するかもしれないためだ。速度は少し回復してしまうがサイサリスを基にしたリコリスならば全く問題ない。元が至近距離で核の衝撃と熱に耐える設計のため余裕のよっちゃんだった。

 

「人の夢だった自由に空を飛ぶこと。まさかMSで果たすとはな」

 

古来から人は鳥を見ては大空を自由に飛ぶことを願った。地上の遥か高空をMSで飛ぶことで叶えることになるとは思わなかっただろう。コンテナのハッチからフレキシブル・スラスター・バインダーと呼ばれる大きな翼を広げたリコリスは飛び立つ。MSが高空から空挺降下することは一年戦争時にジムナイトシーカーで実用化済みであり、技術革新が進んだリコリスはお手の物とされた。大きな両翼にシールドブースターの組み合わせが単純な降下ではなく、航空機の着陸のような緩やかな降下を可能とする。緩やかな降下に伴い自由に機動できるため自機の位置を確認しながら予定落下ポイントを目指した。

 

「少尉!無事ですか!」

 

「カミーユ君か。私は無事だが何機かやられたようだな」

 

バリュートを装備したカミーユのMK-Ⅱから通信が入った。お互いに無事を確認し安堵するが広く見ると味方はすり減っている。特異な状況での戦闘は慣れないため損害は必至だった。ひとまずアーガマ隊が無事ならば戦いようはある。

 

「クワトロ大尉、エマ中尉とは合流出来ていません」

 

「戦場では想定外がつきものだ。着地したら私とカミーユ君でジャブロー守備隊を撃破する」

 

「はい」

 

空中での融通が利くリコリスを綺麗に操りカミーユ機と合流した。邪魔にならないよう一定の距離を保ち降下を続ける。眼下にはジャブローの密林が広がっており、変わらない豊かな自然が残っていたかに思われた。表面は豊かでも地下には大帝国が築かれ且つ先の戦争で燃え盛り破壊された。そして、今から更に破壊されることは人間の愚かさを覚える。

 

「やけに守りが薄いな…」

 

「奇襲が成功した?」

 

「いや、迎撃が来た以上は絶対にあり得ない。もしかしたら、罠かもしれないな」

 

守りが薄すぎるジャブローに悪い予感が浮かび上がった。

 

続く

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