【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
クワトロ大尉やカラバ兵を宇宙に上げるため、鹵獲したガルダ級超大型輸送機(通称空中戦艦ガルダ級)アウドムラはヒッコリーを目指した。現在は北アメリカ大陸のサンフランシスコ近郊を飛行しており、まさしく地球連邦のど真ん中を通過する。敵地の上は居心地が悪いため地上の協力を得て偽装コードや欺瞞情報を流してもらい監視の目から逃れた。情報戦術についてはカラバのベルトーチカ・イルマ女史がエゥーゴに合流してくれて両者間の連携を密にしている。
しかし、徹底された索敵及び迎撃の網を掻い潜ることは至難だった。
迎撃機が多数確認された。
「ティターンズも諦めが悪いようだ。アムロ」
「分かっている。ド・ダイ改の用意を」
直ちに迎え撃つため搭載する残存アーガマ隊及びアムロが出撃の用意を進める。現在のアウドムラも戦力はアーガマ隊の百式、ガンダムMK-Ⅱ、リコリス(SFS使用不可)だった。それにアムロの百式改を加えた4機だが実際はリコリスの都合で3機だけになってしまう。他のエゥーゴ隊は先の地球脱出作戦で殆どを宇宙に上げてしまい残っていなかった。
迫る迎撃機は未確認が1機とアッシマー1機、マラサイ多数である。未確認は一旦保留としておき、アッシマーは直近で刃を交えた明確な脅威だ。大気圏内の可変機として完成された機体は常識を覆す戦闘でクワトロとカミーユを翻弄したが二度目は無く、更に弱点を一瞬で見抜いたアムロがいるため形勢は有利になりにくい。したがって、数的有利を生む部下を多数引き連れ、更には北米の秘密基地で開発されテスト中の試験機の援軍を要請しておいた。短期間で新型機を投入するティターンズの猛追撃は感嘆に値する。しかし、我々はエースで固めた少数精鋭なのである。簡単に負けるわけがなかった
「今回は最初から参加させてもらう。リコリスが空を飛べないからは言い訳にもならない」
「少尉!」
SFSを使えないリコリスのパイロットであるサカイは出撃の見合わせを蹴った。機内で観戦することは己が許さず、乗り換えてでも仲間たちと一緒に戦う気持ちが強い。百式コンビとMK-Ⅱがドダイ・改に乗る横で1機のネモが携行兵装のクレイバズーカを確かめていた。何の変哲もない通常のネモだが聞こえてくる声は聞き慣れて安心する。
「リックディアスは性に合わないがネモなら動かせる。格闘戦が難しいのは如何ともしがたいけどな」
「少尉がいるだけで全く違いますよ」
サカイは一時的にネモに乗り換えてカミーユと共に出撃するようだった。機体サイズが大きすぎて超重量級のリコリスがSFSを使用不可なことに甘える真似はしない。多少は性能が下がっても確実に戦えるMSで出て味方を守り切った。そのためアウドムラの中に予備機として残されたネモを借りる。ネモはエゥーゴ主力量産機でリックディアスに比べ操縦性の扱いやすさで勝り、旧連邦兵か旧ジオン兵かを問わず誰でも簡単に動かせた。よって、ゲリラ出身のサカイでもすぐに慣れてくれ、自慢の力量を発揮出来る。汎用性の高さから様々な兵装を利用でき、今回はクレイバズーカを選択した。他にビームライフルやマシンガンも使えるがジムⅡ等の旧式機から流用した物であり、ビームライフルは出力が弱く射程距離と威力で不安がありマシンガンは言わずもがなだった。ただ、マシンガンは取り回しが良くて小さい点を活かしてSFSに積んでいる。クレイバズーカは弾を対空散弾に変えれば十分に空中戦も可能だった。散弾が効かない相手にはビームサーベルを使えばよろしい。
出撃する4機は2機1組で分かれた。アムロ・クワトロとカミーユ・サカイの組み合わせは鉄板とされる。前者は奇しくも旧知のコンビとされ、後者は新と古が融合された。
「私とアムロで例の可変機を抑える。カミーユ達は未確認機を頼む」
「了解」
「先に量産機を落とし邪魔を省くが厳しかったら呼んでくれ」
厄介なアッシマーに対して特効を有するアムロが向かいクワトロが量産機を阻んだ。未確認機はカミーユが抑えてサカイが量産機を落とす。早速カミーユはSFSを器用に操って可変機と相まみえたが、その特殊な機体とアッシマー以上の高速性に驚かされた。
「速い!」
「ティターンズの前に散れ!」
相手は可変機らしいが流線型を意識したアッシマーと真反対の無骨な形状に見える。どうも大気圏内での運用に向いていないように思われたが、予想を破壊する圧倒的な最高速は圧巻だ。アッシマーを上回る速力にド・ダイ改は追いつけない。ビームライフルも照準が追いつかず、やむなく自力の手動照準で合わせようとする程なのは悍ましい。
「何とか持ち堪えてくれよ。マラサイは行かせん」
正体不明の可変機に遊ばれるカミーユを確認して救援に入りたかった。しかし、多数のマラサイを相手して暇がないのである。ネモは対空散弾で機体ではなくSFS本体を穴だらけにする工夫で着実に脱落させた。近接信管が作動し敵機の至近距離で炸裂するため、回避不可能な散弾が自身の周囲一帯にばら撒かれて包まれる。マラサイの装甲ならば十分に耐えられてもSFSは例外だろう。
幸いなことにマラサイ隊はエースの前には意味を為さない数だった。マラサイは果敢にも通過する際にビームライフルの直撃を狙う。残念ながら、ネモを守る盾の前には通用しなかった。ネモ専用の盾は硬いのはもちろんのこと強化された対ビーム塗料が施されて防御力は見た目の割に高い。そして、離脱する際に90mmサブマシンガンの掃射を受け墜落する。ドダイ・改本体に90mmサブマシンガンを備えていたことが功を奏した。
おや、苦戦する一組に対して向こうは決着がついたようである。
「このアッシマーが!二度目はないぞ!」
「片方はやった。後はあの機体だけだ」
マラサイ隊が壊滅すると同時にアッシマーが撃墜された。アッシマーは得意とする空中機動戦を仕掛けたが、変形に要する0.5秒をアムロの百式改に突かれてしまう。装甲が薄い胸部をビームライフルに貫徹されアッシマーは撃墜された。ただし、コックピットが頭部にあったことがパイロットの脱出の猶予を確保してくれ、爆発の直前に緊急脱出に成功している。
ひとまずアッシマーを退けたアムロ&クワトロはカミーユの支援に入ろうとする。ただ、アッシマーは2組を可能な限り引き離すよう戦ったため到着は待たされた。不本意な可変機セットを組まされた未確認機は勝負を見定め、最高速に物言わせた一撃離脱の一撃必殺で仕留める。飛行形態時は正面に全火力を集中させられ、2丁のビームライフル・バインダーより残エネルギーを撃ち尽くす大火力で放たれよう。
「しくじったか!カミーユ君、回避だ!」
「この程度ぉ!」
どう考えても敵機の火力が圧倒的であるがカミーユは受けて立った。回避して流すことが最善手ではないと言いたげである。突っ込む敵機はエネルギー残量全てを出し切る大出力でビームを発射し見事にMK-Ⅱを焼くかと思われた。しかし、ここは覚醒を始めているカミーユの技術が勝った。着弾の直前に盾を外し投げて攻撃を無効化すると素早く射線をずらし、近距離でカウンター射撃を見舞ってやった。短時間の戦闘で彼は敵機が直線に滅法強い代わりに空中の格闘戦を苦手とすることを看破した。少しでもラインをずらしてしまえば碌に戦えないことを見抜く。
撃ち砕かれた敵機は例に漏れずパイロットは脱出した。真下でパラシュート降下している。いくら何でも脱出した敵兵を撃つような非道は侵さなかった。我々はティターンズとは違う清廉潔白なエゥーゴである。
カミーユの成長を間近で見ていた大人は少年の覚醒に驚きながら、地球連邦が続々と送り込む可変機の脅威に危惧を抱いた。エゥーゴとしてではなく、本当の姿としてだった。
「アッシマーに続いてギャプランまでもか。アクシズのバウが待たれるな…」
続く