【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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本作が兵器的に本格始動します。


敵の敵は味方

発射された宇宙輸送シャトルを地上から眺める者が数名いた。

 

「本当に私と共にカラバに残っていいのか?これから続くのは泥臭いゲリラ戦ばかりだろう。宇宙で戦っている方が遥かに充実する」

 

「ずっと宇宙にいるのは疲れた…から」

 

「そうか。なら、地球を満喫するがいい」

 

エゥーゴはジャブロー降下作戦から続いた地球上の行動を切り上げて宇宙に移動した。地上目標を変えて作戦を続けることが考えられたが、想像以上に宇宙の弾圧が強まったことを知る。確かにティターンズは各コロニーに対する弾圧を強めた。再びの毒ガス攻撃を画策したり、不穏分子のグラナダへの直接攻撃を計画したりと活発化する。したがって、いち早くエゥーゴ地上戦力を回収する必要が生じ、目の前でクワトロ大尉が率いる残存兵力が宇宙に戻った。

 

地球にはエゥーゴとカラバの連絡を担うサカイ少尉が残ったが、驚くべきことにカミーユも残ることを選択する。表向きは覚醒を始めた彼に貴重な経験を積ませるためだが、実際は宇宙に良い思い出が無いどころかトラウマが散りばめられたため帰れなかった。戦争よりは遥かに良い高校生活を奪われるだけに終わらず、関係が悪かったとは言え血のつながった両親を眼前で失う。彼の心にぽっかりと大きく空いた穴を埋められる思い出が存在するだろうか。いいや、存在しないであろう。

 

「さて、長居はティターンズを引き寄せる。いい加減にしてほしいが聞くわけもない。逃げるぞ」

 

「はい」

 

見送りは程々にして居残りを加えたカラバは直ちに離陸準備を進める。ヒッコリーの空港で多少の補給を受け次の攻撃作戦を計画した。ただし、ジャブロー攻撃から守備的な戦闘が続いてアウドムラは満身創痍である。したがって、支援を取りつけた中立宣言都市ホンコンを経由する予定が組まれた。

 

しかし、ヒッコリーからホンコンまでは太平洋を横断することになる。太平洋には連邦軍艦隊が常駐しており、浮かぶ島には小規模でも基地があった。いつでも波状攻撃を受ける恐れがあるのは言うまでもない。どれだけ巨大で頑丈なガルダ級超大型輸送機と言えども途切れない連続攻撃は止め切れなかった。つまり、誰かに守ってもらわなければならないことを意味する。重々理解しているカラバは反地球連邦ネットワークの伝手を通じて、旧来から残る『敵の敵は味方』理論を振りかざした。

 

「でも、ジオンと一緒に行動するなんて」

 

「仕方のない話だ。使える手は全部使わねば勝てん。それにエゥーゴは私のような旧ジオン系の兵士が多いから別段騒ぎ立てることじゃない」

 

「言われてみれば確かにそうだった」

 

滑走路ではアウドムラとは別の大型機が離陸を待ち、超大型輸送機ガルダ級には及ばないが十分に巨人機と言える。紫を基調に塗装された大型機は『ガウ』と呼ばれたが、こう聞いて思い当たる航空機は唯一だろう。

 

そう、ジオン軍が使用した大気圏内用大型輸送機兼爆撃機ガウである。熱核反応炉を搭載して長大な航続距離を誇り、ガルダ級には及ばずながら圧倒的な積載量による兵器運用能力から「攻撃空母」と呼ばれることもあり得た。しかし、巨大ゆえに機動性は劣悪を極めて戦闘機の餌食になり易く、MS運用時は低速飛行しなければならない点が足を引っ張り続ける。特に第一次ジャブロー降下時は対空砲火の格好の的と化して大損害を被った事実が存在した。

 

辛うじて生き残ったガウ型は現地ジオン残党軍の手によって魔改造される。長い期間をかけて行われた作業は成功し、名をガウⅡと改めて本機は生まれ変わった。懐かしき巨人機は細々とジオン残党軍同士の輸送任務で活躍している。一種のゲリラであるジオン残党軍が使うため、決してド派手に使用することは無かったのが悔しい限りだった。

 

しかし、ついにガウⅡにも戦いの時が訪れた。

 

~ガウⅡ~

 

力強く離陸するアウドムラはガウⅡから見ても圧巻に尽きる。後に続くはずのジオン残党軍は見惚れてしまうがリーダー格の兵士が引き締めた。

 

「見惚れる暇はない。俺達はジオンのためカラバと手を組んだ。遅れて破綻してはならない」

 

発破を受けて自分達も離陸準備を進める。北米に潜伏していた彼らはやっと外に出る機会を得たため、これを逃すわけにはいかないと気合を入れて作業にあたった。なんせ反地球連邦組織で志を同じくするカラバの相互支援秘密協定に基づく行動である。どれほど複雑な情勢でも破綻させては自分の首を絞めることになった。

 

「カークス大尉、発進準備完了しました!」

 

「ガウⅡ発進!」

 

ガウⅡは3機で構成され護衛対象のアウドムラを囲んで守った。ガウⅡは極限までMS運用能力が高められている。機体内部には5機までMSを積載できるが、ド・ダイ改(SFS)の運用は不可能だった。それでも改修は大成功したことを断言しよう。まず、全身に設けられた多目的ハッチが空挺降下の円滑化を果たし、且つ機上から友軍支援も行えるようになった。そして、特筆すべきは胴体上部MSマウント及び胴体下部MSゴンドラだろう。この2つの装置はMSを固定して対空戦闘を担わせられる。彼らが運用する特殊作戦機の特性と噛み合い、ガウⅡはゲテモノと言わせない威力を誇った。

 

そんなガウⅡ3機を率いるはヨンム・カークス大尉である。彼は30歳少々と若輩だが北米ジオン残党軍一派の指揮官を務めた。前の戦争で激烈な北米戦線を旧型機ザクⅠで戦い抜いた生え抜きのため、ティターンズのような付け焼刃とは比べ物にならない。長らく過酷な北米で潜伏しゲリラ戦を繰り広げた彼はティターンズでさえも歯が立たなかった。卓抜された指揮統制力に限らず、義に厚い性格から寄せ集め残党兵を瞬く間にまとめ上げ、下手な軍隊よりも遥かに士気が高く雑草魂を体現する。

 

しかし、人間は優れても機体が置いて行かれては差を埋められなくなった。アクシズ及び金の盾ら新勢力から援助を受け、使い古したザクⅠに最新技術を導入する思い切った改造で専用機を作り上げる。

 

「敵機の姿は見られず。だが、警戒を怠るな」

 

カークスが乗るザクⅠは噂の上部MSマウントに座し両手で長大な武器を構えた。その武器はキャノン砲を凌駕する長さのビームスナイパーライフルである。遠距離から照射式ビームを放ち友軍機を支援する武装は相応のエネルギーを要したため、機体本体のジェネレーターを大幅に強化するだけに留まらず、背部バックパックをゲルググキャノンの改良版に換装してあった。これはバックパック自体に小型ジェネレーターを搭載し、機体本体と併用することでビームスナイパーライフルの贅沢な使用を可能にする。

 

(こちらグフ・フライアー。レーダーに反応なし)

 

「引き続き哨戒に励め」

 

(了解)

 

嘗てのガウ型はドップ戦闘機を翼に提げて護衛機としたが、ガウⅡでは戦闘機を運用する能力が省かれた。戦闘機を使わずとも運用するMSで十分に間に合ったからである。ガウⅡの外縁をMS隊が飛行していることが証拠になる。今の流行たる可変機ではなかった。古き良き通常の機体なのは驚愕の事実であり、且つジオンの底力の証でもある。

 

「グフ・フライアーか。未だにジオンの機体は負けていない」

 

SFSも可変も無しに飛行する機体はグフ・フライアーと呼ばれた。前の戦争においてグフカスタムをベースに飛行MSの研究を進めたジオンは諦めを知らない。幸運にもデータから機体まで全てが無傷だったため細々と隠れて研究開発を続け、数年がかりで飛行MSの集大成たるグフ・フライアーを完成させた。既存機が基で連邦軍ですら苦しむ飛行技術のため、機体出力をつぎ込んでビーム兵装は使えず専ら実弾兵装を用いる。その代わり、飛行性能と機動性は飛躍的に向上し(又は改善され)、高空から急降下して奇襲を仕掛けては急上昇で一気に離脱するトリッキーな戦法を確立した。その機体特性はガウⅡからの降下を迅速にし、母機が撃墜されても飛行で脱出できる強みを生んだ。

 

「道中は俺たちに任せてもらおう」

 

複雑な情勢を嫌程示すアウドムラとガウⅡの編隊は次の戦場に向かった。

 

続く




〇ザクⅠ・スナイパータイプ(ヨンム・カークス専用機)
ザクⅠを長距離狙撃仕様にした機体を指揮官用にチューンしたカークス機である。背部バックパックの補助ジェネレーターのおかげでビームスナイパーライフルを贅沢に使い長距離支援を行えた。万が一の近接戦に備えて頭部バルカン砲やシュツルムファウストを備える。

武装
・ビームスナイパーライフル
・頭部バルカン砲×2
・シュツルムファウスト複数個

〇グフ・フライアー
グフ飛行試験型やグフ・フライトタイプを経て完成された飛行MSである。素体はグフカスタムで変わりないが飛行性能と機動性が大幅に向上し、ドロップタンクを増設することで航続距離の延長が可能とされた。ビーム兵器は使えないため実弾兵装を基本とする。

武装
・90mmガトリングガン
・腰部部ビッグガン×2
・シュツルムファウスト複数個
・ヒート剣
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