【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
UC0087の8月に入るとティターンズ=エゥーゴ戦争は激しさを増した。戦場は宇宙であることに変わりないが、両陣営ともに続々と新鋭機や新型艦を投入する等して国同士の戦争かと思われてしまう。
そんな中で父と仲良し兄妹の3人家族が何故かアナハイム社グラナダ工場にあった。
「Z計画がもう完了しているとは思わなかった。流石はアナハイム社なだけはある」
「我が社の技術力は宇宙一でしょう。ガンダムMK-Ⅱのムーバブルフレームとブロックビルドアップ構造、γ合金を組み合わせることでフラグシップ機のZガンダムが開発されました。Zはカミーユ氏の専用機となるでしょうが、少佐にも新型機を用意しておりますのでご心配なく」
グラナダは当初からエゥーゴ支援を行ってくれた協力者である。その筆頭たるアナハイム社は新型機開発を担った。彼らは(別勢力との密約に則り)エゥーゴ主力機のリックディアス及びネモを開発して経験を積み、鹵獲したMK-Ⅱのムーバブルフレームを加えた新型機開発計画の『Zプロジェクト』を進めている。困難な開発計画だったがMK-Ⅱの吸収やカミーユの発想のエッセンスが加えられ急速に発展し、アナハイム社は(別勢力と共同して)時代を変える新型機を続々と完成させていった。
一部は既にエゥーゴへ納入されたが専用機はパイロットの到着を待たされる。そして、地上から帰還した精鋭へ無事渡されることになった。実際には地球から脱したコムサイⅢをアナハイム社の貨物船がしれっと回収し、社内間連絡の建前でグラナダ工場まで送り届ける。そして、現地に到着したパイロットが1名増えていることは触れずにおき社員は新型機の説明に入った。
「これがZガンダムですか」
「そう、カミーユ氏の素晴らしい助言のおかげで開発がとんとん拍子で進んだ。どうも技術者は困難に当たると硬直しがちであるから大いに助かった。さて、Zガンダムは我が工場が持つ技術の粋を集めた機体で性能は全てのモビルスーツを圧倒する。試作と言うか理解しづらい特殊装備を加えた本機は極めて繊細な操縦が求められテストパイロットは皆全滅したよ」
ニタニタ笑うメカニックから若干の狂気が垣間見えるが気にしないでおこう。彼らは開発にあたって技術的な困難に衝突した。困り果てた技術者に対してカミーユは独自のアイディアを送って解決に導く。つまり、彼がいなければこのZガンダムは生まれていなかった。そうと来ればZガンダムのパイロットは自動的にカミーユ君に定められる。ただ、本音は多くのテストパイロットが操ることが出来なかったため、ニュータイプとして覚醒した彼しかいなかったから。
「ようやくエゥーゴも可変機を使えるようになったことは喜ぶべきだな。連邦軍の可変機は脅威でしかない」
「そうそう、Zガンダムは可変のWR形態時にはSFSとして行動が可能であり、更に大気圏突入もバリュート無しに可能なので真の万能機ですよ」
「なんと、それは驚いた」
Zガンダムはエゥーゴがやっと入手した可変機である。既に連邦軍はアッシマーと呼ばれる可変MAを投入して自由自在な空中機動戦に度肝を抜かれた。ティターンズも自前で可変機を開発して試作機を投入している。エゥーゴは対抗するためいち早く作成しなければならなかった。アナハイム社は非合法的な手段を厭わず、徹底的に技術を掻き集め自慢の可変機を生み出す。
言わずもがなZガンダムである。
本機は可変するとSFSとして他のMSと協同戦闘及び大気圏突入装備になれた。聞く限りではふんだんに性能が盛られた超高性能機としか思われない。しかし、その代償として可変機構は恐ろしく複雑でコストから整備性まで全体的に劣悪を極めた。アナハイム社のようなマンモス企業を以てしても「極めて苦しんだ」と言わしめた程である。それだけ複雑だからこそ可能とする高い汎用性は多種多様な兵装を使用でき超高性能な万能機になった。
なお、特筆すべきことに開発陣でさえよくわかっていない特殊装備がある。この特殊装備は『バイオセンサー』と呼ばれ、パイロットに感応して機体を最適化し性能を限界突破させるらしい。分からない以上は試験を碌に行えなかったため、文面の説明でしか知れなかった。
長きに渡るメカニックの説明は眠くなりそうだが2人は真剣に聞いていた。残り1人は少年に引っ付いて過ごす。Zガンダムは今までのMSの歴史を大きく変える傑作機だと信じて疑わなかった。もちろん、話がこれで終わるわけがない。サカイの機体もアナハイム社が用意したが、どうしてか「少尉」を飛び越えた「少佐」で呼ばれていた。メカニックが軍に疎くて呼び間違っているのかもしれないか、将又はもう隠す必要性が無くなったのかもしれないか。
「少佐には隣のガンダムをご用意しました。ガンダムMK-Ⅲと我々は呼称しています」
「ガンダムMK-Ⅲか、有り難く受領させていただく」
Zの横には白く塗装されたガンダムが鎮座した。その名はガンダムMK-Ⅲである。名前からしてMK-Ⅱの後継機かと誤認しかけるが厳密には違った。確かにMK-Ⅱのムーバブルフレームを承継して完成度を高めている点では後継機と言える。しかし、もはや人体構造と言って差し支えないフレームを基本として、バックパックはリックディアスと百式系統を踏襲した。上手く両系統を組み合わせたハイブリットと考えるべきだろう。
「可変機ではありませんのでZガンダム程の汎用性はありませんが、通常型モビルスーツとしては十分なレベルに纏まりました。少佐が操ることを受けて我々は徹底的に機動性を磨き上げて近接戦闘に特化させています。元よりMK-Ⅲは機動性に優れた機体なのでカスタムは最小限ではありますが…」
「構わない。下手に武装やオプションを貼り付けるよりかは良いだろう」
「武装が少なそうに…」
カミーユが丁度いいポイントを突いた。Zガンダムは固定武装を頭部バルカン、ビームサーベル、グレネード・ランチャーを持つ。携行兵装はビームライフル&ビームサーベル、ハイパー・メガ・ランチャーを使えた。一機だけでこれだけの武装を使えることは明確な強みである。対して、ガンダムMK-Ⅲは見た目だけでは少なそうに思われてしまった。
「えぇ、Zに比べ武装は遥かに少ないです。携行か固定かを問わず挙げても3種ですから」
「それぐらいが丁度良いさ。近接戦しか出来ない私には最適だよ」
ガンダムMK-Ⅲの武装は専用ビームライフル、専用ビームサーベル、バックパック部ビームキャノン(2門)である。僅か3種しかないことは現代において貧弱と判断されかねなかった。時代は着実に高火力化へ進んでいる。しかし、シンプルはMK-Ⅲの特性を最も発揮するためだ。本機はとにかく機動性を重視したコンセプトのため、武装が多すぎると機体の運動について行けず飾りと化す。つまり、驚異的な運動性に追従できる武装を抽出した結果がシンプル構成だったわけだ。
この後もMK-Ⅲの詳細な説明を受ける。カミーユは自分の機体ではないがWR形態時にSFSとして協同戦闘を行うことが考えられたため真剣だった。一通りの説明が終わると社員は受領手続きを進めるために何処かへ走る。
3人だけになった絶好のタイミングを逃さないとカミーユはずっと温めていた禁断の質問をぶつけた。
「サカイさんは誰なんですか?」
一息吐かれ逆質問が行われる。
「君はソロモンの白狼と言うパイロットを知っているか?」
続く