【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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グラナダの怒り

8月中旬

 

月はティターンズ艦隊によって包囲された。実力行使に打って出たティターンズは一挙に制圧することを狙っており、第一都市フォンブラウン市を陥落させて自治政府を掌握するつもりである。しかし、戦力は第二都市グラナダにも比較的少量だが集結した。これはフォンブラウン救援のために出てくるだろうグラナダ守備隊を押さえつける目的によるが、あわよくば守備隊を壊滅させて第二都市も落とそうと二兎を追っている。古人は『二兎を追う者は一兎をも得ず』と各言を残していてティターンズは愚を犯したかに思われたが、予想された抵抗は全く見られず不気味な程に静かだった。

 

予め出撃していたハイザック及びマラサイのMS隊は慎重に降下する。艦砲射撃で脅す手もあるが周囲の工場を破壊することは避けたかった。占領時にそっくりそのまま自軍の兵器を生産させるためだが、強硬策を排除したことは裏目となってしまった。

 

「なんだ?赤いハイザック?」

 

「潜入していた友軍でしょうか。もしかしたら交渉を行ってきたのかもしれません」

 

「なるほどな。手際が良いじゃないか」

 

月面からは多数の赤いハイザックが出迎えて来た。事前に知らされなかったが自分達と同じ機体であり、とても緩やかに接近するため味方だと信じるしかない。手を振るジェスチャーをしたため武器を下ろした。

 

しかし。

 

「なんてこったい。あいつらホイホイ信じやがった。行くぞ野郎ども!シーマ様にグラナダ基地のプレゼントだ!」

 

「おう!」(皆で仲良く)

 

突如として赤いハイザック隊は攻撃してきた。祝砲の割には派手な実弾である。まさか攻撃してくるとは予想だにしていないティターンズは続々と被弾し爆散する。直撃するビームは全て高威力で重装甲なハイザックを易々と破壊した。友軍機から攻撃を受け忽ち大混乱に陥り、組織的な抵抗は崩壊し始めるが個々で自衛を試みる。絶え間なく流れるビームを回避しながら赤いハイザックを観察するが、誰もが驚くべき事実にたどり着いた。

 

「ジ、ジオンの亡霊かっ!?」

 

「気づくのが遅かったようだな。悪いが俺らの機体は最高級ブランドだ!」

 

「馬鹿なっ!?ビームサーベルまでっ!」

 

ティターンズが驚くのも仕方ない。自軍の機体はビーム併用が不可能であるにもかかわらず、敵軍はジオン軍で更に併用を可能にしているとは予想外が積み重なった。そして、赤いハイザックが持つ盾にはれっきとしたジオン軍の紋章が刻まれている。エゥーゴが鹵獲したならともかくとして、事実上消滅したジオン軍が有するとはあり得なかった。驚く暇が与えられただけ彼らはマシである。なぜなら、抵抗する間もなく自軍は撃墜されていくのだから。

 

「温室育ちの精鋭さんには対応できないだろうなぁ!」

 

「ジオンの亡霊どもめ…」

 

精鋭ぞろいなだけはあって素早く各機は自衛に移るが敵機は恐ろしく強かった。パイロット適性が高く激しい訓練に耐え抜いた自負は何にもならない。それもそのはず、相手は前の戦争から碌に補給を得られない過酷を極めた戦場を駆けた海賊だった。ビームライフルもビームサーベルも使えなかった時を戦い抜いた真なる精鋭に勝てる道は存在しないのである。

 

投入したMS隊がジオンの亡霊が仕掛けた伏兵に大苦戦していることを察した艦隊は前進して敵地を焼き払おうとする。新造艦はフォンブラウン市方面に回されたため、こちらは旧来のサラミス改級が大半を占めるが十分に戦える戦力だ。グラナダは工業都市の面が強い都合で要塞兵器は無く、艦砲射撃には余裕があるはずだがそうは問屋が卸さない。

 

「おいおい…そいつはいただけねぇなぁ。せっかくソロモンから出張して来たから精々1隻は食わせてくれや。全機突撃だ!」

 

サラミス改級で構成された本隊に小型MAが降り注いだ。ある程度接近すると機体に設けられた対艦大型ミサイルを発射する。正面のグラナダに意識を奪われていた艦隊は側面から撃ち込まれる対艦ミサイルに対応できず外縁部の護衛艦が爆発した。

 

「モビルアーマーは終わってねぇんだぁ!ザクレロのメガ粒子砲をたらふく食べなぁ!」

 

圧倒的な速度で迫る小型MAは機体前部のメガ粒子砲を発射し、内側のサラミス改級巡洋艦を焼いた。ジオンが連邦軍艦隊に恐怖を植え付けた高速機動兵器MAが復建したようである。一撃を与えた敵機は追撃を行わず一目散に離脱していった。あまりにも高速なため対空砲は射程圏内から外れて主砲は照準が間に合わない。艦隊襲撃を図った敵MA隊は悪夢そのものだった。

 

「シーマ艦隊には美味い物を持っていかれるか。俺たちにも噛ませろってんだ」

 

「隊長!敵機が!」

 

「ちい!勘が良い直掩機がいるってか。適当に振り払って敵艦隊は一旦だけ友軍艦隊に預ける」

 

「はい!」

 

反復攻撃を許さないとして直掩機が阻んできた。流石に小回りが利かないMAでMSの相手は辛いため、ここは持ち前の速度性能を活かした一撃離脱戦法で引っぺがすことにする。自由度の面でMSに劣ることは否定のしようが無かったが、敵艦隊は友軍艦隊に任せればよく分業を敷いた。言ってはいけないかもしれないが、艦隊には艦隊をぶつけることが最も効率的かもしれない。ティターンズ艦隊を襲ったザクレロ隊はやむなく敵MS戦に移るがやけに嬉しそうだった。今まで出番が無かったMAに晴れの舞台が用意されている。これ以上のアピールの場はない以上は戦果を残して欠陥機の汚名をすすぐしかなかった。

 

「舐めるなぁ!」

 

~ジオン艦隊~

 

「砲撃開始!シーマ様のお手を煩わせてはならん!」

 

ティターンズ艦隊の後方にジオンの小艦隊が出現した。グラナダを包囲しようとしたティターンズが逆にジオン軍に包囲される格好となる。ミノフスキー環境下で索敵が難しくなっているとはいえ、あまりにも綺麗な逆包囲戦術は理由が存在していると見た。

 

「地の利はこちらにあり入念な偵察が勝利をもたらす。俺達は海賊だが基本には忠実なんでね」

 

ジオン艦隊は予めグラナダ郊外部に潜伏し待ち伏せを行ったが、敵艦隊への砲撃開始は気持ちを抑えて機会を待った。ティターンズ艦隊が襲来したことはデブリに潜伏する偵察機が看破しており、逐一情報を提供して本隊は最高の位置を算出した。地の利を活かし且つ入念な偵察が勝利を導くことは基本中の基本である。しかし、攻めた側は傲りや高望みが仇となって少し甘く見積もっていたらしく対応しきれない。

 

サラミス改級巡洋艦は直ちに対応しようと試みるが周囲には敵MA小隊が飛ぶため意識を分散させられた。ジオン艦隊は僅か3隻であるが奇襲攻撃が成功したことに持ち前の火力が加わって威力を発揮する。陣容はザンジバルⅡ級リリーマルレーンを旗艦として後続に後期型ムサイ改2隻が並んだ。

 

(お前達無理すんじゃないよ!あたしの獲物がなくなるだろうが)

 

「いえ、まだまだこれからです。月はシーマ様のものであることを思い知らせますので、どうぞ存分に暴れ回っていただければ」

 

(まったく、次のフォンブラウン制圧のために程よく弾は残しておけ)

 

「はっ!」

 

敵艦隊に襲い掛かる演者はこれだけに限られなかった。単騎で接近を図るMSがいるが肉眼で追い付けない圧倒的な機動を誇る。懸命の対空砲火が撃ち込まれるも全て敢無く回避されてしまい対空砲火を為していなかった。近距離まで近づかれた一隻のサラミス改はビームの掃射を受け爆沈する。

 

見事なまでのジオン軍による逆包囲殲滅戦だった。

 

続く

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