【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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敵地強襲用大型機動兵器ヴァルハラ

「こちらヴァルハラ、これよりフォン・ブラウン市を制圧したティターンズの殲滅戦を開始する」

 

(了解。艦隊及びMS隊は厳重に注意し降下しろ)

 

ティターンズが決行した月面制圧アポロ作戦は半分成功し半部失敗した。第一目標であるフォン・ブラウン市制圧は新鋭シロッコ大尉のドゴス・ギアが半ば強引に街を人質に取ったことで果たされる。しかし、第二目標グラナダの抑え込み及びあわよくばの制圧は失敗した。単に失敗したどころか取り返しのつかない大失敗である。突如として出現したジオン残党軍(ティターンズ視点では残党軍)に逆包囲され殲滅された。辛うじて生き残った戦力は口をそろえて「ジオンの亡霊」と叫んだが、れっきとしたジオン軍のため認識せざるを得ない。

 

驚愕の報を受けた上層だがフォン・ブラウン市の制圧に成功したため、とりあえず作戦成功と判断して維持に努めた。グラナダについては後日大規模な報復攻撃を行えばいいだけである。しかし、彼らの見立ては悉く甘かったのは言うまでもなかった。ジオン軍がグラナダを防衛しただけで満足するような生易しい勢力だろうか。いいや、断じて否である。

 

「こうも無警戒とは奴らもアマチュアだな」

 

超高速の低空飛行で大型機動兵器ことモビルアーマーが迫った。フォン・ブラウン市はティターンズの占領下にあるが、現地に潜り込ませた工作員の報告より大型戦艦が離脱して守備は薄いことを見抜いていた。現地にはMS隊が主とした守備隊が組まれているが艦艇は補給艦がいる程度である。正直を言えばモビルアーマーを投入するまでも無いが政治的なパフォーマンスのため、過剰とも表現できる戦力を投入していた。

 

「ドローン出撃。そして、ハイパー・メガ・カノン発射用意」

 

速度を落としドローンを発進させた。ドローンは航続距離が短いものの極めて小回りが利き、尚且つ隠密性も高くて偵察任務に適している。仮に撃破されても無人のため痛くなかった。小型で索敵範囲が限られる弱点は数の投入で補っている。射出したドローンから得られる情報から最適な砲撃を導きながら主兵装のハイパー・メガ・カノンのチャージを開始した。

 

目標は駐留するMS隊であるが、なるべく街に被害が出ないよう配慮してある。あくまでもハイパー・メガ・カノンは脅しの手段として用意されており、ティターンズに対し「撤退しなければ消し炭になること」を示す手段だった。

 

「機体固定異常無し。照準ブレ無し」

 

砲撃時には機体を固定するため大型クローを地面に突き刺した。この大型クローは格闘用ではなく、機体固定や障害物除去の工作の面が強い。大型なだけはあり本体をガッチリ固定したため、ハイパー・メガ・カノンの照準はスムーズに行われた。図体に似合う圧倒的な破壊力を実現するためチャージは長い。一通りの準備が完了すると即座に降下を慎重に進める友軍に対して警報を発した。もちろん、狙いは外していて友軍は退避しているが念の為である。

 

「発射カウントダウン。5…4…3…2…1」

 

文字通り鎮座する大型モビルアーマーの砲門が輝きを増した。今から怒りの鉄槌が下されようとしている。まさにジオンの誇りや怒り等々を纏めた輝きだったが、それはスペースノイド弾圧を徹底したティターンズへの裁きだった。一頻り集まった光は「0」になった直後に光線として驀進する。

 

発射されたハイパー・メガ・カノンの一撃は昔から存在する岩山を直撃した。ここは高度的な有利を有し、高台からフォンブラウン市を見渡すことの出来る一種の監視が可能である。そのためエウーゴのゲリラの警戒のため一定数のMS隊が置かれていた。哀れな者達は焼き払われる運命を辿る。

 

「艦隊を消滅させる一撃だが岩山まで吹き飛ばしてしまうとはな。まさにヴァルハラだ」

 

今更になるが大型機動兵器の名は『ヴァルハラ』である。これは嘗て月で放棄されたモビルアーマー『ヴァル・ヴァロ』を回収してソロモンで天才技師による設計のし直しを受け生まれ変わった。中途半端な装備は全て廃止して敵地を強襲する高速機になるが、モビルアーマーとして火力も求められる。主兵装のハイパー・メガ・カノン以外にも対空用の拡散型メガ粒子砲や90mmバルカン砲、多連装ミサイルを備えて重火力を体現した。なお、今回は岩山ごとティターンズ守備隊を焼いたため対空砲火は必要ない。

 

「シーマ様、後はお任せします。こちらからは支援砲撃を」

 

(あいよ、任せな)

 

~ガーベラ・テトラ改~

 

味方モビルアーマーの一撃で岩山が溶解して監視所丸ごと破壊したが、都市に座するティターンズ機は焼けていない。無差別攻撃は常軌を逸しているため細かく動けるMS隊が襲撃する手筈だった。

 

「いいねぇ…宇宙を害する連中があっという間に消えたよ。でも、まだまだいるだろう?」

 

グラナダ防衛戦闘で巡洋艦2隻を撃沈したシーマは改造が加えられたガーベラ・テトラで突貫を図る。元々が高機動を追い求めたため改造で凄まじい加速力を見せた。慌てて出てきたマラサイだが追加ブースターを得たガーベラ・テトラ改に追いつけず、接近されてはビームマシンガンの掃射で撃破される。運が悪いとビームサーベルで両断されて脱出の余裕すらもらえなかった。

 

「月暮らしをするためにお前達は邪魔なんだよ。素直に逃げればいいのに坊やは意地だねぇ」

 

(化け物めぇ)

 

「あらあら…負け惜しみは聞きたくないよ」

 

優れた総合性能を誇ったマラサイだが熟練されたシーマには敵わない。あくまでもハイザックの後継のためワンオフの機体には通じなかったが、それでも意地を見せるため格闘戦を挑んだ。その勇気は認めようが温室育ちの精鋭さんは海賊に及ばない。忽ちビームマシンガンに絡め取られた。ガーベラ・テトラ改のビームマシンガンは小型Eパックの容量増加とエネルギー強化が施されており、並みの巡洋艦でも致命傷を被る威力を有する。重装甲でもたかがMS程度が阻めるわけがなかった。

 

「おうおう団体さんかい。ただ、戦艦がいなけりゃ雑兵にしか思えないさ」

 

シーマ独立艦隊にとって単なるMS隊は敵ではなく、仮に戦艦や巡洋艦がいても造作もないと思われる。おそろくジオン軍の中で最も強力な戦力に数えられた。フォンブラウン市に駐留する敵機は笑える程に消滅していく。隙を見て活路を見出そうとした機体も迫るミサイルにより爆破された。敵MS隊掃討にはヴァルハラも加担してドローンを経由した誘導を以てしてミサイルを発射する。ミサイルは近年のMSの重装甲化に振りだが数を稼げる強みから捨てられなかった。撃破には至らなくても全身を叩き駆動系などを壊す効果が見込める。結局は数がモノを言った。

 

「舐めるんじゃないよ。少なくとも、こちとら場数は踏んでいるのさ」

 

シーマ機に襲い掛かったマラサイはビームサーベルで一刀両断された。別に下手くそではないが経験の差が違い過ぎる。エースと言って差し支えない彼女の機動戦に対応出来たら懸賞金が支払われてもおかしくなかった。ただ、懸賞金なんて与えられるわけがないのである。

 

「もう一射頼めるかい?思ったより奴らは諦めない」

 

(承知いたしました。直ちに警告射撃を行います)

 

思ったよりティターンズが粘るためヴァルハラのハイパー・メガ・カノンを求めた。脅しは幾度となく繰り返して連中に退避を促したいのである。どんな戦場でも最小限の被害で勝利を掴むのが好ましかった。したがって、無理やりにでも撤退を促すべくして再度ヴァルハラの砲撃を要請する。

 

「これが戦争なんだよ」

 

フォン・ブラウン市の戦闘は終わらない。

 

続く

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