【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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アンケートの更新をすっかり忘れていました。


2つの陰謀

アポロ作戦とほぼ同時期

 

地球連邦議会は歴史に残る法案を可決しようとしていた。もはや自浄作用に期待できない議会に蔓延る腐敗は止まることを知らない。当初の目的である「ジオン残党軍の掃討」は早々に消え、アースノイド至上主義思想に基づいた「スペースノイド弾圧」を訴えて武力行使を厭わないティターンズは議会の全面的な支援を受けることが決まった。地球連邦議会は連邦軍の権力を精鋭部隊と言う一組織に過ぎないティターンズへ集中させ、その予算もティターンズへ優先的に回すことを定めた法案を可決する。

 

本来議会は多種多様な意見が飛び交うものだが、生憎地球連邦議会は悪い方向へ一致団結していた。ティターンズ関連法案は悉く全会一致で可決されていき、全法案が即日成立すると出席者達から拍手が沸き起こり喝采が叫ばれる。その光景を名ばかりのゲスト、単なる置物として見ていた者は苦渋を滲ませた。

 

(やはり無駄足だったか…)

 

予想していたが失意を抱かざるを得なかった。これ以上の長居は無用として退室を始める。連邦議会は実質的に敵地ど真ん中のため素早く逃げたかった。流石に置物のゲストを襲う真似はしないと信じたいが残虐非道を愛する者達には一切期待できない。ひっそりとそそくさと撤退を進めるが正面に複数の警備員がとうせんぼしてきた。

 

(しまった…罠だ!)

 

元軍人のためこの状況を理解するが、有効な打開策を思いつかなかった。議会は言論の場であるため武器の携行は一切認められていない。こちらは徒手空拳であり武道を心得ていても勝ち目は無かった。相手は警備員に扮して飛び道具を持っていること間違いないのである。

 

覚悟を決めた瞬間に予想だにしていない声掛けがあった。

 

「エゥーゴ代表、ブレックス・フォーラ准将とお見受けします。後で非礼をお詫びいたしますので、一先ず我々に従ってください」

 

「なに?」

 

問答無用の制裁は与えられない。それどころか、とても親切で丁寧な対応が行われた。何ら意味が分からなかったが敵意は感じられなかったため、ええいままよと乗っかることを選んだ。警備員らしき者達にブロックされながら議会を歩き無事に脱出に成功すると用意されていた車に乗り込んだ。道中では複数人のティターンズ関係者とニアミスしたが、朱に交われば赤くなってやり過ごしている。

 

議会から暫くは車内で小さく屈み視線を避けた。窓は特殊加工されており外からの視認性を著しく悪化させているが念の為である。一般道路から高速道路にシフトすると合流地点から乗用車がピッタリくっ付いた。

 

「ご心配には及びません。あれは全て我々の仲間であり、准将の護衛を務めます」

 

「君たちは何者だ」

 

やっと正体を暴く機会が訪れた。ティターンズを含めた地球連邦軍関係者とは思えないが消去法でエゥーゴの同志にもならない。敵意がない安心要素があっても素性を知れないと怖さが残った。

 

「今までの非礼を心からお詫び申し上げます。そして、お初にお目にかかります。ブレックス・フォーラ准将殿。私達はアクシズ自由ジオン軍に所属する特殊部隊です」

 

「ジオンだと?何のつもりで私を」

 

「ブレックス准将には生きて貰わなければなりません。准将がいなくなってはスペースノイドに歪みが生まれます。エゥーゴ、ひいては全スペースノイドを牽引すべき方が貴方様なのです」

 

ブレックスの議会脱出を手助けしたのはアクシズ自由ジオン軍の特殊部隊だった。アクシズ自由ジオン自体は金の盾を通じてその存在はきちんと認識しており、共通の敵を持つ都合で相互協力を確認している。しかし、まさか地球上に正規ジオン軍がいるとは驚愕だった。そして、彼らはブレックス・フォーラを擁立することを宣言する。親スペースノイドの筆頭である准将が宇宙情勢において極めて重要な立ち位置にあることは至極当然だ。エゥーゴ創設者である人物が早々と退場されては堪らない。

 

ジオンにとってもブレックス・フォーラ准将は素晴らしき御仁なのである。

 

「クワトロ大尉が…シャア・アズナブルが手を引いているのか」

 

「はい。かの赤い彗星シャアが仕組まれたことです。ただし、これは全てスペースノイドの自立及び繁栄を目的とすることに変わりありません。決して邪な思想によるものではないことにご理解いただきたく」

 

「なるほど。いや、それでいいだろう。将来的にエゥーゴはクワトロ大尉が承継すべきだった。それが早く到来しただけのことであるよ」

 

ブレックス准将はとても温和な人物だった。仮にでも副官である者がジオン兵であり第三勢力の介入を招いたとしても負の感情を全く見せない。それどころか納得して受け入れた。彼の人格者たる所以が垣間見える。地球連邦の軍人は彼を見倣うべきだと声を大にして言いたくなる。短時間だが准将と接したジオン兵も感服を余儀なくされた。

 

「もう間もなく…小惑星アクシズは地球圏に突入するでしょう。そして、ジオンは再び復権を果たします。もちろん、エゥーゴに悪いことは行いませんのでご安心ください」

 

「そうか…全てはジオンの掌の上。そうだな、その方が良いかもしれないな」

 

ブレックスは情勢を見極める。

 

~アクシズ~

 

地球圏突入を間近に控えたアクシズはハマーン・カーンの下で最後の作業に入る。アクシズが単に地球圏に入ってはつまらないため、地球連邦の譲歩を引き出すことを狙って軍事作戦を発動させてあった。各地から掻き集めた兵隊はアクシズ自由ジオン軍に成り、疎開してきた研究者・技術者たちが懸命に新型機開発を進める。幸いなことに工作員を経由してアナハイム社と裏取引を通じ最新技術を手に入れており、エゥーゴ=ティターンズ紛争(ジオン視点)に続々と投入された兵器に引けを取らない独自製品を投じた。

 

そんな大戦力を引っ提げるアクシズだが、もう一方のジオンと連携を図る。

 

「ソロモンのラコックは動き始めたか?」

 

「ソロモン駐留の前衛艦隊は移動を開始しておりますが、探知を免れるために大きく迂回してサイド3を目指しています。対して、鹵獲品で構成された偽装艦隊は一直線にサイド3へ向かいました。偽装艦隊はハンニバル級空母とサラミス級軽巡で構成され、モビルスーツ隊は非合法的にコピーした連邦軍機が占めています。戦力としては二線級ですが、偽装を主とし後続の前衛艦隊の突破を助けます」

 

「よろしい。万事予定通りに進んでいるな」

 

「銀作戦の遂行はアクシズ突入と同時に行われ、ラコック少将はサイド3のムンゾにてジオン復古を宣言する手筈です。しかし、アクシズは突入位置の都合で地球を挟んだ上での反対方向に入ります」

 

ハマーンは何食わぬ顔で返した。彼女はまだ20代にも至っていないが手段を選ばない冷酷さは群を抜いている。勝利のためには正攻法を喜んで捨て去る覚悟は立派かもしれないが限度が存在するはずだった。

 

「ティターンズの根城であるグリプス2は金作戦で破壊し、奪われたア・バオア・クーを奪還するためにはアクシズが必要だ。アクシズをゼダンの門にぶつけ突破口を開け白兵戦を行わせる。奪還した後にはアクシズに接続したままサイド3まで運搬する予定である」

 

「アクシズが機関車でア・バオア・クーは貨車という…と」

 

「無論、ゼダンの門が潔く降伏すれば予定は変わる。とにかく、奪われた物は是が非でも取り返すだけだ。残りのサイド3、ア・バオア・クーを今度の戦いで得て、その後は月を一気に引き入れるだろう。直近の報告ではグラナダとフォン・ブラウン市を特戦隊が制圧したらしい」

 

月の大戦闘についてはアクシズも把握している。間近に迫れば情報も早く簡単に手に入りやすかった。ティターンズもエゥーゴも丁度良く疲労し始めたため絶好の付け入り時である。宇宙の情勢はアクシズが握っていると言って差し支えない。

 

「そして、私は憧れを果たす」

 

続く

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