【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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銀作戦発動

UC0087・10月初頭

 

宇宙の戦いは激しいままであるが情勢を一変しかねない出来事が起ころうとした。数少なく戦火から免れたサイド3ムンゾに突如として連邦軍艦隊が現れる。名ばかりの独立を謳い事実上連邦の傀儡と化したジオン共和国はコロニーで最も工業力があり、戦後のコロニー復興計画に担ぎ出された関係でティターンズの標的から外されていた。ジオンを破壊すると後始末が面倒この上ないためである。したがって、サイド3は傍観者として戦いを見ているだけと言えた。

 

しかし、ティターンズが許しても本当のジオンが見逃すわけがない。

 

「全軍へ通達。目標は首都1バンチとコア3だ。現地の工作員が活動を開始したが万が一失敗した際に備えて軍事施設を制圧する。それでは、降下始め」

 

サイド3には地球連邦軍サラミス級巡洋艦とコロンブス級補給艦と見られる艦隊が迫った。現地政府は連邦軍から事前に連絡を送られていなかったが、前振り無しの急な訪問は最近になって急増していることであり特に気に留めない。遠方で激しい戦闘が行われ消耗し、サイド3の戦力を引き抜こうとしていると思われた。実際に数度かティターンズが協力を強要して引き抜きを図ったことがある。嫌々ながらも出迎えるため誘導を送った。

 

しかし、首都ズムシティを波乱が襲う。

 

旧公国時代から引き継がれて使用される大宮殿で共和国を統治する首相ダルシア・バハロは衝撃的な報告を受け取った。

 

「なに!?連邦軍が攻撃を開始しただと!」

 

「はい。誘導に従い内部に入った連邦軍は続々とモビルスーツ隊を放出し、主に軍事施設に対して攻撃を加えています。彼らは自分達を自由ジオンの先遣隊と名乗り降伏勧告を行い…」

 

「冗談じゃない!ザビ家の独裁を復活させてはならない!直ちに軍に対して迎撃を指示しろ」

 

ティターンズが引き抜こうとする程度にサイド3ジオン共和国軍は整備されてあった。工業力は維持されていたため、連邦軍が定めた制限の下でザクⅡ後期型を始めとするMSやムサイ級など旧型艦を守備兵力として使う。ティターンズはもちろん、地球連邦軍にも通じない戦力でも自衛は必須だった。

 

「そ、それが一部の隊は自由ジオンに降伏するとそのまま敵軍に加わりました。我らに反旗を翻し始めたようです。既に発電所の4割がクーデター軍によって占拠されました」

 

「な…そんなことが」

 

あまりにも早すぎる侵略は外からだけでなく内側からも行われた。外から迫る連邦軍の皮を纏ったザビ派は誘導に従って内部に侵入する。そして、誘導から外れて軍事施設に降下した直後に降伏勧告を仕掛けた。ジム・カスタムとジム・キャノンⅡで構成された少数の軍だが、現地兵力の殆どは降伏勧告を受け入れて武装を解除している。また、一部は共和派を快く思わなかった反動でザビ派に同調してクーデター軍と化した。クーデター軍はコロニーの弱点を熟知しているため電気等の重要インフラ施設を占拠し政府を締め上げる。

 

「れ、連邦軍の救援は」

 

「要請することは可能ですが到着は数日を見込みます。それ以前に我々は王手を打たれている状況です」

 

「万事休すでもないか…」

 

ダルシア・バハロは終戦協定を締結してジオン共和国を復活させた張本人である。本国に被害を出さず戦争を終わらせた点は評価されるが長期にわたる統治は次第に不満を生んでしまった。特にスペースノイドを弾圧し虐殺も厭わないティターンズの暴虐非道を傍観し、時には協力してしまう弱腰の姿勢は大きな反発を呼び寄せる。彼にとってはジオンを守るための手段だが、元来連邦を敵視するスペースノイド独立派などの勢力は政府を突っつく。

 

そして、本日爆発した。

 

凶報は止まることを知らない。

 

「報告!コア3が完全に占領されました」

 

「更に報告が。今度は金の盾を名乗るジオン艦隊が出現し、ムンゾは包囲される格好になりました。このままでは亡命もままなりません。完全に王手を打たれており、今からの打開策は思いつきません」

 

バハロは終戦協定を結ぶだけの度量を持つ人物だった。しかし、続々と寄せられた報告に硬直を余儀なくされる。ズムシティにはクーデター軍が迫り、逃げようにも外はジオン残党軍に固められた。コロニー内の戦闘は相互に気遣うため細々とした地上戦のみだが、クーデター軍が混じった敵軍の勢いが勝りじわじわと追い詰められている。発電所など重要なインフラ施設も占拠が続き、既に7割が掌握されてしまった。

 

バハロを含めた全員が窮鼠猫を噛むような大逆転の策略を思いつかない。政治家として優秀かもしれないが、この事態は想定しておらずまさに寝首を掻かれた。重い腰を上げてジオン共和国が終わったことを自ら宣言する。

 

「無条件降伏を申し入れる。異論はないな」

 

ジオン共和国を代表しダルシア・バハロの名で無条件降伏が申し入れられた。僅かでも防衛戦を展開した部隊は武装を解除して敵軍に下る。電撃的な侵略を成功させた軍は手荒い真似は慎み大人しく本隊の到着を待った。

 

そして、アクシズ自由ジオン軍は帰国凱旋を果たす。

 

市民に力を見せつけるため自由ジオン軍は敢えて堂々と行進した。流石にMSを歩かせる余裕はなかったが武装兵士が隊列を組み行進するだけで外面は整えられる。コロニー内を行軍するのだが、雰囲気は先と打って変わった大歓迎ムードだった。市民は戦闘に巻き込まれたにも関わらず、皆が大きくを手を振って心から歓迎の意を表明していることに驚きを隠せない。強硬手段に怒って市民が妨害してくるかと思われたが、これには兵士の表情に笑みが零れた。

 

行軍が終わると嘗ての大宮殿はザビ派の物となり、全宇宙に向けて緊急会見が開催されることになった。報道の透明性を確保するため国営から民営など問わずにオールフリーとする。そして、会見の場に現れたのはジオン残党軍『金の盾』総司令官ラコック少将だった。

 

彼はまず報道陣に謝辞を述べてから説明に入る。抜粋すると今回の電撃的なサイド3占領はミネバ・ラオ・ザビを首領とした自由ジオンの建国の土台作りであり、全てはスペースノイドの生命の自治を守るためであると正当性を主張した。その材料としてティターンズによる毒ガス使用が暴露され、今まで強権で誤魔化していた民間人虐殺は明るみになる。当然ながら、衝撃が瞬く間に広がって燃えていた反ティターンズの火は拡大した。

 

「本作戦は偽りのジオンを終わらせ、真なるジオンを復古させるためだった。しかし、我ら自由ジオンはミネバ様の下で全スペースノイドの生命・財産を守り抜く。宇宙の人民はジオンに集うがいい。ミネバ様と共に横暴なティターンズを打倒しようではないか」

 

ほぼ茶番に等しい会見は無事に終わった。特に目ぼしいアクシデントもない。全宇宙放送で自由ジオンが正義であってティターンズが悪と断定することに成功した。会見の場を後にしたラコック少将は留守にしているソロモンや地球圏突入待機中のアクシズと同時連絡を図り、ジオン復古大戦略が第三段階に進むことを確認し合う。あくまでもサイド3電撃占領銀作戦は前段階に過ぎなかった。

 

さて、本会見はオールフリーのため遠方に位置したアーガマでも閲覧することが可能だった。手が空いている者はジッと集中してテレビに食い付いている。その中に混じったサカイ少尉は何故か眉をひそめており、様々な憶測が飛び交わせるクルーと真反対にいかにも感慨深そうだった。

 

「もう間もなくだな。始めよう…ジオン王政復古の大号令を」

 

続く

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