【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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アクシズの招き

アーガマはサイド2の毒ガス攻撃を阻止して月面防衛に戻ろうとした際に全宇宙放送でサイド3ムンゾがアクシズ自由ジオン軍に占領されたことを知る。更に加えてアクシズは既に地球圏突入を控えており、ティターンズを許さず殲滅することを約束した。小惑星アクシズ本体は現在突入を待機し丁度良い時を窺ったが、傍観者を貫くような真似はせずに一定数の兵力を投入している。既に一旦と接触したエゥーゴはアクシズの兵力は馬鹿に出来ないと認識した。艦艇自体は前と変わっていないように見えたが、戦場の主役MSはどれもこれも未確認機ばかりである。想像以上の援軍に驚きを隠せない者が大半だった。

 

さて、月で補給を受け防衛に就くアーガマはアクシズからご指名を賜る。

 

「アクシズ艦隊がアーガマの数名を丁寧に指名したと、よりにもよってだが」

 

「私とカミーユ君か。随分と熱狂的なファンがいたようだね」

 

アクシズは連絡のため多方面に艦隊を派遣したが、総旗艦が率いる最上級の艦隊から招待状が送付された。招待状にはアーガマ隊のエースパイロットと称したサカイ少尉とカミーユ大尉を指定してある。アーガマの艦長ブライトやMS隊の隊長クワトロ大尉など呼ぶべき人は数多もいた。しかし、相手は2名に限って招致しているとは何事か。直々の招待は無碍に断るわけにもいかず、応じるしか選択肢は用意されなかった。

 

「念の為の護衛と言い張り、一人に対し一人護衛を付けてはどうだろうか。カミーユ君にはファ君を、少尉にはフォウ君を付ければいい。アーガマに残る者は我々だから奇襲に対応できる」

 

「よし、それで行こう」

 

護衛をカップルにすることは決して邪な思いがあったわけではない。ファ・ユイリィ軍曹はパイロットとしての経験が浅く、フォウ・ムラサメ少尉は腕が良くても機体が無かった。したがって、サカイとカミーユの護衛に回しても問題ない。アーガマにはクワトロ大尉以下のベテラン兵を残した方が最悪の奇襲に対応できると思われた。至極当然の配置で異論は出ない。

 

アクシズ艦隊に送る者が決まったアーガマは一路合流ポイントに向かった。

 

~合流ポイント~

 

アーガマは予想外の大戦力に迎えられたが予定通り連絡船を発した。彼らを守るためと建前を置いて周囲一帯にはアクシズ製MSが大量に浮いている。もちろん、敵機は無く歓迎のため一部は腕を上げて応えた。

 

「すごい数だ…」

 

「アクシズが開発して主力機を務めるガザDだよ。流行を取り入れた可変機でもある」

 

赤と緑を組み合わせた塗装の機体はアクシズ自由ジオン軍主力機『ガザD』だった。本機はブロック構造を用いて高い生産性・量産性を誇る。また、ブロック構造は機体の改修を容易にする利点を活かし、各所を換装することで大きな発展性を確保した。そして、現在の流行である可変機構を取り入れたことにより高い機動性を発揮する。辺境の小惑星と甘く見られた割には一線級のMSを取り揃えた。

 

「そして、あれが総旗艦グワダン。懐かしいな」

 

「少尉、向こうではシン・マツナガ少佐と呼んでよろしいでしょうか?」

 

「構わないよ。君達に虚偽は見せられん」

 

サカイが真の正体を明かしたのはカミーユだけではなかった。彼に最も近しいファとフォウにも丁寧に伝えている。2人とは付き合いが浅く薄かったことやカミーユ君がフォローしてくれたことが功を奏し、意外と何も言われずあっさり受け入れられた。アーガマの大人たちは複雑な過去があって難しいが、若い子供たちは未来を見る志向が強くある。したがって、シンはカミーユ、フォウ、ファと3名から純粋に慕われていた。

 

連絡船からグワダンに降りるなり、彼らには誘導が付けられ一方通行で謁見の間に通された。暫く待たされるのかと思いきや誘導役曰く逆に待たれているらしい。自分達の到着を待っていただけるとは至極恐縮である。それだけ特別なのかもしれないが少年少女3人は警戒心を抱かざるを得なかった。扉を係の兵がゆっくりと開ける。グワダン級はれっきとした軍艦であるが主に皇族が乗るため謁見室は重厚な扉で仕切られた。

 

4人が通された謁見室の奥側には一際目立つ大きな椅子があり、且つ幼そうな子供が座った。その椅子の隣では子供ではないが若いも常人は気圧されてしまう凄まじいオーラを発する女性が立つ。カミーユは特異なNT能力から彼女が自身と同じ人間だと察した。しかし、全く意に介さないシン・マツナガが声を張り上げて宣言したため直ちに意識を戻した。

 

「シン・マツナガ。召喚に応じ、ただいま参りました」

 

「よく帰って来てくださいました。叔父様」

 

(叔父様…?)

 

「見事に特命を遂行したこと流石の一言に尽きる。そして、ようこそ我らが城へおいでくださった。カミーユ大尉、ファ軍曹、フォウ少尉のことをアクシズ自由ジオンは心から歓迎しよう。せっかく来ていただいたのだから、ゆっくりと休んで欲しいと言いたいところだが…」

 

どうも罠を仕掛けた様な口ぶりだった。

 

次の言葉まで一拍置かれて放たれる。

 

「我らの同志となってもらいたい。自由ジオン軍に加わって全スペースノイドのため戦って欲しい。無論だが真っ当な階位を授け生活を保障した。仮にこの戦いがエゥーゴの勝利で終わった場合、恐らく地球連邦軍として挿げ替えるだけだろうが結局のところ地球連邦軍に入ることになる。であれば、自由ジオンに鞍替えした方がより良い人生を送れるはずだ」

 

「いk…」

 

「具体的には?」

 

急過ぎるスカウトを受け取ったカミーユは即答仕掛けたがファが遮った。彼は既にシンからの誘いに乗っていたが具体性に欠けており、抜け目ないファが具体的な内容を問うのだがアクシズを治める女傑に問いただすのは恐ろしい。問われた方の女傑も勇気を褒めるような仕草をしてから答えた。

 

「軍内の階位を改めて付与することは言うまでも無く、ジオン臣民として全員に高貴な爵位を授ける準備がある。階位に相応となる毎月固定の恩給を支給し少なくとも普通に生活するには困らない。更に聞いたところ、君たちはハイスクールで学んでいたらしいな。ハイスクールの卒業資格と推薦を合わせて授けた上でジオン軍幹部養成大学校に進める」

 

「まぁ、学の機会は一切奪わないということだ」

 

忘れられているがカミーユとファはハイスクールに通っているはずであり、フォウも本来は通っていてもおかしくなかった。彼らは一様に学を奪われている。ならば、大人たちが若人の未来の糧となる学びを絶えず供給しなければならなかった。しかしながら、単に大学に進ませては割に合わず、軍学校で最上級の幹部養成大学校へ進むことが提される。幹部養成大学校は極めて高度な教育を受けられ、特別な学生として厚遇が約束された。卒業後は軍に入ることになるが士官の中でも通常を飛び越えた高位に組み入れられる。

 

「本当ですね?」

 

「このアクシズ摂政ハマーン・カーンの名において約束する。不安ならば直筆のサインを入れた覚書を用意する」

 

「だって、カミーユ」

 

覚書を用意するとまで言われては信じるしかなかった。これ以上の追及は「絶対に信じない」と大変な失礼を生むため慎む。ちなみだがファはカミーユと違い、自分達の平穏な生活を奪った地球連邦を心の奥底で憎んだ。それではエゥーゴは良く思っているかと聞かれても残念ながら答えは否である。エゥーゴは広義の地球連邦のため、戦後に自分達を守ってくれるか信じ切れなかった。信じる以前に未知数なジオンであるが、未知数だから期待値は上限を知らないのである。また、負うべき背中を持った大人が導いてくれるため皮肉なことにジオンが最善となっていた。

 

「私はカミーユと一緒に居られたら、それでいいよ」

 

(敢えて何も言うまい)

 

さて、改めて決断を迫られたカミーユ・ビダン大尉は変わることのない意思を真っ直ぐな眼差しで体現した。

 

「ジオンに行かせてください」

 

続く

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