【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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追記
グリプス2の位置について説明が欠けていたので次話できちんと書きます。ご迷惑をおかけし申し訳ありません。


殺伐とした観光

~サイド2・モルガルテン~

 

サイド2はティターンズの本拠地グリプスが座す地である。まさに敵地だがコロニーは多数置かれており、尚且つ昨今の残虐非道を受けて距離を置く者が続出した。危機感を覚えたのか抑え付けるため監視を強化して対応しているため。偵察は容易ではないように思われた。しかし、案外穴は開いているもので灯台下暗しを教えたい。

 

さて、アクシズから送られた偵察部隊は仮装巡洋艦シャ・ルルド・ゴールと機動巡洋艦ケルゲレンから成る。後者は純粋なジオン軍の艦艇のため大人しく遠方に待機して偵察自体には参加しなかった。偵察では隠密が命のため仕方ない。対して、前者は元が民間貨物船のため見た目だけでは軍艦と分からず、ダミーの船舶登録を行っているため識別を受けても見逃された。無論だが一直線にグリプス2に向かう真似はせずに近場のコロニーに寄り動く予定である。

 

観光コロニーのモルガルテンに降り立った偵察隊の面々は周囲の状況を探った。

 

「民間人が多い観光コロニーではティターンズも手を出せないようだ。隠れ蓑にするには丁度いいが、やけに雰囲気が殺伐としていることは否定できなかった」

 

「仕方ありませんよ。奴らの目と鼻の先なんですから」

 

「普段ならもっと人が多くいるはずなのに…確かに変だ」

 

「もしかしたら、それこそ奴らの待ち伏せがいるかもしれん。グリプス2の戦略兵器改造は大規模だから簡単に察知できることを逆手に取り獲物を誘き寄せた」

 

シャ・ルルド・ゴールが補給の名目で停泊する観光コロニー・モルガルテンは観光の文字通りである。内部は地球に似た環境が構築され、戦いがなければ多くの市民で賑わった。仮に人工でも静かな湖畔は静養地として好まれ別荘を置く者もいたが、現在は戦争の真っ最中であるため人は少ない。いる人も軍の関係者が大半を占めてしまい観光コロニーの体を成さなかった。ただし、良好な環境であることは確固たる事実のため、戦争の中ではエウーゴとティターンズの交渉の場として選定される等で重宝されている。

 

民間船の入港はすんなりと行われ、その後に受けたチェックも甘々だった。もちろん、油断は禁物と言える。入り口は広くしておいて獲物が入った瞬間から徐々に狭め、最終的には閉じ込める食虫植物の罠が敷かれている可能性があった。

 

「コロニー内部では戦闘が難しい。ただでさえ離反が相次いでいるのに火に油を注ぐ真似はしないと思う。私は現地に潜む仲間と落ち合うが君たちは自由行動で構わない。民間人を装って適度に情報を集めてほしい」

 

「はい。少佐もお気を付けて」

 

ここでシンはカミーユ達と離れた。民間海運会社の制服を着込んだ大人と私服姿の子供達が一緒にいると怪しまれる。家族と誤魔化せばいいかもしれないが通用しなかった。よって、ここは一旦分かれて独自の情報収集に努めるべきだろう。シンはサイド2に潜伏する友と落ち合い、カミーユ達は静養を掲げた子供達を演じ探った。

 

帽子を深く被り顔を見られない工夫をしつつ待ち合わせ場所に急いだ。

 

なお、相変わらず潜伏のため髭は剃っている。

 

~カフェ~

 

様々な施設が並ぶ中でカフェを選んだ。カフェは余程でなければ長時間の使用が普通であり比較的に隠れられる。コーヒーとナポリタンをセットにして食べていればまずバレなかった。

 

「ジンネマン船長、やはりグリプス2は」

 

「あぁ、コロニーレーザーで間違いない。本来は不要である核パルスエンジンを増設して自走化の改造が見られた。資材も絶え間なく運び込まれている。おそらく、一時的では無く可能な限り長期に継続して使う目論見だろう」

 

「むぅ…関連法案を盾にして大量に持ち込んだか」

 

サイド2に潜り込んだのはスベロア・ジンネマンが率いる隊だった。同じ仮装巡洋艦(民間船)を用いた先遣としてサイド2一帯の偵察を行う。彼は長年のゲリラ生活で培った連邦軍を欺く技術に長けていた。付け焼き刃に過ぎない精鋭部隊は泥臭いゲリラ戦に翻弄され捕捉できない。情報戦を長く扱ってきたこともあり、ダミーに惑わされずにグリプス2の詳細を調べ上げた。

 

グリプス2がコロニーレーザーに改造されていることは既に判明していたが、もしかしたらの可能性があるため確認を怠らない。ジンネマン船長が間近で確認して詳細を纏めた写真付きレポートを隅から隅まで見るが疑いようが無いコロニーレーザーだった。居住用として使うには不要過ぎる危険物が大量に且つ絶え間なく運び込まれ、核パルスエンジンが増設されてある程度自走可能にすることは兵器転用の証拠にしかならない。これだけの物資を集中させられるのは制定されたティターンズ関連法案のおかげだ。地球連邦議会のお墨付きを得たため存分に資材を不相応に入手することが可能である。

 

「守りは硬いと」

 

「従来のハイザックに代わる新型量産機を確認した。本拠地では研究が盛んに行われ新兵器が続々と出て来てもおかしくない」

 

「新型量産機とは厄介な。やっと可変を持った新型機を配備したというのに…」

 

「それだけで収まらない。例の木星星団の戦力が丸ごとティターンズに加わって各地で暴れ回った。私にはよくわからんが、人一倍に野心を持ち自分の目的のためならば人を犠牲にすることを厭わない冷酷さが見える。それでいて自らを囲わせるため忠実な者を引き抜こうとする気持ちは年のせいかいけ好かん」

 

「木星船団め…中立を捨てたか」

 

吐き捨てるように言い放つだけ面倒である。

 

その前に敵は本拠点の守りを固めるためエゥーゴを上回る新型量産機を投入した。まだ少数しかいないが既存のハイザックを上回る機体らしく、その名は『バーザム』と呼ばれるらしい。まだ分析途中であるが見た目からしてガンダムMK-Ⅱを簡易化した。また、地上の諜報員から小出しに提供された情報でもMK-Ⅱの量産化と照合が行われる。ティターンズのアナハイム社排除方針に伴い新型機開発は地上で行われたことが幸いした。ただ、バーザムはハイザックと同じ汎用機で自由度が高く十分に脅威となり得る。

 

そして、案の定と言うべきなことに木星星団が立ち塞がった。昔から木星星団の者は秘めた才能を覚醒させる傾向があり、今回は覚醒どころではなく尋常を超えた勢いのオーラを発する男が出現する。名はパプテマス・シロッコだ。彼とニアミスしたジンネマン船長でさえ気圧される。しかし、流石は歴戦のベテランは優れた観察眼と情報収集を組み合わせた結果をジオンにとってトップクラスの危険人物と断じた。

 

忘れないで欲しいが木星星団は宇宙全体にとって極めて重大なため、どのようなことが起ころうと原則的に中立が要求された組織である。

 

(パプテマス・シロッコめ…やはり来たか。地球の浄化は頷けるがやり方が気に食わない)

 

「それと、偵察は軽くに抑えたほうがいい。ハイザック隊が各地に散りばめられた」

 

「承知した。全面戦闘は避けることにしよう」

 

この後もジンネマン船長から貴重な情報がもたらされる。後日の偵察作戦もより良くする変更が加えられた。継続して任務に励んでくれるようお願いしてシンはカフェを後にしカミーユ達と合流しようと試みる。傍受されても構わない使い捨ての民生品の携帯で合流を呼びかけ、指定した大きな湖が特徴の公園に向かった。

 

お互いの位置からカミーユ達の方が早く到着し待たせてしまったらしい。これは申し訳なかったと謝ろうとしたが驚くべきことが眼前に広がった。いかにもバツの悪そうなカミーユと分かり易く警戒するフォウとファが立つ。

 

「お兄ちゃん、あの人は?」

 

「えっと…僕の叔父さんだよ」

 

(まさかな…)

 

とりあえず軽く頷いて理解を示した。

 

続く

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