【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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アンケートですが本日(投稿日)19時には締め切りたいです。

※2022年12月14日タイトル変更


エンケラドゥス作戦

サイド2に集結したティターンズのコロニーレーザー防衛艦隊と月面制圧艦隊の二個艦隊を殲滅し、月の攻撃を不可逆的に阻止するべくエゥーゴ及びジオンの合同艦隊が出撃した。本作戦は二段階で構成される。第一段階はコロニーレーザーの照射阻止であり、第二段階は敵軍の本拠地サイド7のゼダンの門攻略である。前者は主にエゥーゴが担当して後者はジオンが請け負う分業が敷かれるが、消耗しているエゥーゴを鑑みてジオンは小艦隊を派遣して援護を命じた。実情を知らない兵たちは「けち臭い」と悪態を吐いたが、アーガマを代表とした精鋭部隊は驚きを以て受け止める。

 

「エンケラドゥス作戦発動まで10…9…8…」

 

オペレーターの声が静寂を切り裂く。民間船の偽装ベールを脱いでサイド2に肉薄した真なる姿シャ・ルルド・ゴールは護衛艦ケルゲレンと共に作戦圏内に入った。本作戦の名はエンケラドゥスと名付けられたが、これは絶対的支配を試みたティターンズへの反旗を象徴している。そんな作戦が開始されるまでのカウントダウンが「0」を高らかと宣言した直後に本格的な攻撃の火ぶたが切って落とされた。

 

「エゥーゴ艦隊、砲撃を開始したもよう。予定では準備砲撃の後にMS隊を出撃させます」

 

「私もガンダムで宙に出る。ケルゲレンに帯同し緊急の補給作業に備えろ」

 

艦長であるシンは予め決めていた計画に則り指示した。ソロモンからの付き合いがある気心の知れた部下は何も言わずに手を動かす。嘗ての主ドズル・ザビ中将を承継した現場主義を貫き通す彼のため後方支援に移行してくれた。所詮は民間船のため最前線に出ることは自滅の道を辿り、持ち前の積載量を活かした運用能力で支援に徹するが吉である。対して、ケルゲレンは純粋な戦闘艦だが単騎で大艦隊に立ち向かえるわけがなかろう。したがって、2隻共に中のMS隊を発進させたら直ちに隕石帯に退避し迎撃を避けつつ戦況を探った。

 

MS隊発進の準備を進める彼らより前にエゥーゴ艦隊は準備砲撃を開始して迎撃を抑え込む。戦艦及び巡洋艦の時代が終焉を迎えたとはいえ、MSでは実現できない(例外あり)長射程と高威力を兼ね備えたビーム砲の攻撃は有効だった。ビーム攪乱幕による防御が実現されているが実弾のミサイルを使用すればよい。大艦巨砲主義が廃れても何てことは無く生き残るのは当然だった。従来のサラミス改級巡洋艦と新型アイリッシュ級戦艦は火力を集中させ迎撃の雨を封じる。

 

そしてジオンの出番だった。

 

「ガンダムMK-Ⅲ並びにZガンダムが出るぞ!カタパルト準備!」

 

「後は頼んだ」

 

「ご武運を!」

 

白狼のマークが追加されたガンダムMK-Ⅲと変更なしのZガンダムにそれぞれパイロットが乗り込んだ。オーバーホールによって追加されたエレベーターとカタパルトの組み合わせが迅速な射出を可能にする。両機は仲良く同時にサイド2宙域に放り出された。アーガマ在籍時からコンビを組み連携してきたシンとカミーユは阿吽の呼吸を見せつける。無言の連絡なしに合流しては後続を待った。近代化改修を受けても本格的な戦闘艦には劣るため全機の射出には回数を要する。第二陣はフォウの量産型キュベレイとファのエウノミアーが追加された。慣らし運転を終えているため難なく動かす。

 

「特にだがエウノミアーに異常は無いか」

 

「はい、問題ありません。アトミック・キャノンも異常なく」

 

「よろしい。繊細な機体を押し付けて申し訳なかった」

 

エウノミアーにはグリプス2動力源破壊のため核砲弾が使われた。砲弾の小型弾頭とは言え通常の火薬が詰まった弾頭よりも遥かに丁寧さが求められる。ジェイ筆頭にして整備士たちが夜通しで調整し続けた。大事な瞬間に不発があっては冗談で済まされない。機体の1.5倍に匹敵する長砲身を誇るキャノンは器用に盾と肩を使って固定し体勢を整え、一発撃ち切りではないカートリッジ式を活用して複数発を撃ち込んで敵地を破壊し尽くす戦略兵器だった。なお、今回は三歩引いた位置に浮いて精密射撃を行う予定が組まれる。

 

余談だが、動力源破壊にはメガ・バズーカ・ランチャーを使うことも計画された。しかし、早々に却下されてしまう。実弾と違い高出力のビームは迎撃を無効化しながら圧倒的な弾速と威力を以て直撃した一帯を無慈悲に焼き尽くすだろう。絶大なメリットには多大なデメリットが存在した。一発だけでも発射には莫大な量のエネルギーが必要になるため射手のMSだけでは足りず補助の機体があると好ましいが非効率である。更には二発目の再充填が足を引っ張り融通が利かなかった。そして、何よりも準備の段階から無防備にならざるを得ないため、まさしく攻めにも守りにも中途半端なロマン砲である。総合的に勘案した結果は堅実さで勝る核砲弾が採用された。

 

話を戻し、最後に射出されたのはロザミア・バダムの機体である。彼女はギリギリまで治療行為を受け戦闘に耐えられるとドクターから許可を受けて出撃した。壮絶な強化人間の処置から単に出しては危険のため外側から抑えるMSが充てられるが、彼女にとっては棚から牡丹餅でカミーユ向けの機体であることは嬉しいことだろう。

 

「待たせちゃった」

 

「何とか間に合った。ジェイさんには感謝しないと」

 

「ジオンのZ計画の申し子『バウ』がこう使われるとは…」

 

ロザミアに与えられた機体はバウだった。本機はジオンが開発を進めた可変機の一部とされる。ガザシリーズの簡易可変機構は優れた生産性を発揮した。反対に性能は量産機の幅に収まる。数を揃える点では素晴らしいが単騎の力の点に変えると評価は変わった。したがって、高性能な可変機の開発が始まり、エゥーゴ&アナハイム社のZ計画を受けて加速する。組織に潜入させた者やアナハイム社との裏取引など様々な要素が絡み合ってZガンダムと似たバウが誕生した。当初の上下分離式可変機構はオミットされ、且つZガンダム同様の可変は完全再現しない丁度良いバランスが重視されている。ジオンのブロック構造とガザがエゥーゴのムーバブルとメタスに溶け合わさり、Zガンダムの設計を洗いざらい見直してグレードダウンした可変機構が考案された。

 

生産性や整備性は量産機に及ばないが性能は飛躍的に向上する。肝心の可変はワンオフの頂点たるZには及ばない難易度のマイルドに仕上がった。常軌を逸した技術革新の連鎖が予算の制約がある組織から一つの国であるジオンに移ったため間に合ってくれる。そんなバウは士官以上の高位のパイロット向けとされた都合で一定数の量産が計画された。量産計画の初期型に該当する本機はロザミアの狂気を抑え込む目的で簡易バイオセンサーが追加される改造を受ける。パイロットに合わせて機体が強くなることの真反対と考えてもらえば良かった。パイロットに反比例してデチューンを行い、敢えて操縦性などを下げることで暴走を困難にさせる。

 

いわば『バイオセンサー』の逆として『バイオリミッター』であろうか。

 

ジオンはサイコミュ研究が連邦より先に進んでいたため制御についても長ける。

 

「全員揃ったな。これより味方の支援には期待できない戦闘フィールドに突撃する。私とカミーユ君、ロザミア君で正面を張り、フォウ君はアウトレンジで我々の支援を担当するように頼むぞ。ファ君は適切な時機に遠慮なくアトミック・キャノンを発射してくれ」

 

「了解」

 

「はい」

 

「任せて」

 

「えぇ」

 

少年少女の皆がやる気に満ちて作戦を漏らさずにいることを確認してから唯一の大人は深呼吸した。この戦いでグリプス2を破壊せねば月が危ういどころか全てのスペースノイドが自立を脅かされてしまうのである。

 

「全機突撃!」

 

白き狼の復活だった。

 

続く

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