【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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モビルフォートレスの頂点

シンらを阻むモビルフォートレスのサイコガンダムMK-2は完成されたことを胸を張って言い放った。地上でホンコンの街を無差別に破壊した素の方は試作型のため、MK-2になってようやく完成されている。カタログ上の数値を参照するとジェネレータ出力は大幅に減じているが、これは運用に係る機体の適正化のためであって素が過剰なだけだった。それに伴い軽量化も行われ鈍重な機体は決して軽々とは見えないが幾分か動きやすくなる。

 

しかし、真に恐れるべきは機体の改善ではなかった。

 

(オールレンジ攻撃!)

 

「厳密には違うが…オールレンジ攻撃に準拠しているな」

 

(あのビットだ!あれが悪さをしている)

 

シンとフォウは直ぐに見抜いた。サイコガンダムMK-2を始点にして各機に対してオールレンジ攻撃が加えられることを暴く。まずの前提としてサイコガンダムは機体全身に大量のメガ粒子砲を備え、たった一機で数個艦隊規模の火力と弾幕を形成することを可能とした。これを基礎とした上での発展が反射(曲射)によるオールレンジ攻撃である。複数のリフレクター・ビットを射出し宙域に展開して、敢えて素っ頓狂な方向へ飛ばしたビームをビットに直撃させることで反射させていた。ビットは内部に小型Iフィールドを有しており、これを直撃の直前に起動させることで任意の方向へ反射させる。大出力メガ粒子砲の一撃はビットを介して拡散されて数を増してから敵機を包み込む回避不可能な破壊と化した。

 

なんと恐ろしい兵器だが攻撃一辺倒で終わらない。そうIフィールドを持つため敵のビームを弾いて無効化できてしまった。つまりは攻と守を部分的に両立させた贅沢な兵器と言えるだろう。なお、部分的としたのはIフィールドが実弾に無力な弱点が反映された。実弾を防げない弱点については機体を重装甲ガンダリウム合金で包んで補っている。

 

とにかく、本体とビットの組み合わせで文字通りの要塞を実現したことが分かれば良いだろう。

 

「ある程度は読める!」

 

純粋なニュータイプとして覚醒したカミーユ、昔取った杵柄で知っているフォウ、強化人間の能力を発揮するロザミアの3名は難なく回避する。残りの性質は一般人に過ぎないシンには酷かと思われたが、そんな心配は杞憂で終わった。敵機と各ビットの位置をコンマ秒も見逃さず思考に入れ、長年の経験から導き出されるメガ粒子砲の発射を読み切る。意識外の奇襲が常時下される可能性が高いにも関わらず臆せずに突っ込む度胸は見事だった。もちろん、無策に突っ込む愚は犯していない。ガンダムMK-Ⅲの人体の動きを極限まで再現した機動を活かしビットを片っ端からサーベルで撃墜した。

 

(活路が見えた!)

 

(でも、こっちの武器じゃ効かない)

 

ベテランの奮戦により対空に穴が生じ始めた。敵艦隊は誤射を恐れて随分と離れており、この場にはサイコガンダムMK-Ⅱしかいないかと思われる。いや、どうやら指揮監督を行うMSがいたようだ。時折彼らに一撃離脱を仕掛けて別の脅威を振りまく。サイコガンダムの指揮監督の間を用いるため、攻撃の頻度は低くなるが忘れた頃に来るため厄介だった。サイコガンダムMK-Ⅱばかり見ていると挟み撃ちに遭うのである。しかも、今は相討ちすら難しい状況だった。なんせ、こちらが主とするビーム兵器は通じないのが痛い。

 

すると、ここでフォウとロザミアが同じ疑問を持った。

 

(疲れが見えない。私の場合は1時間に満たなくても動きが鈍ったのに)

 

(本当だ。全然動きが変わらない)

 

「まさかな…」

 

両者は道は違えど強化人間で猛烈な訓練を受けた。どれだけ肉体が強化されても、要求が多大な場合は短時間動かすだけでへとへとに疲れる。素のサイコガンダムは操縦だけで動けなくなる負担が加えられるが、MK-Ⅱはリフレクター・ビットのオールレンジ攻撃を行った。ビットの位置は僅かでも誤れば自爆の恐れがあるため恐ろしく繊細な操作が必要になり、パイロットは人間離れした力を発揮しなければならない。

 

常識的に考えて実戦の場で長く続くとは思えなかった。

 

しかし、事実として全盛期を保っている。

 

「やはりか…パイロットを完全に兵器の部品に組み入れている。力のためには人間を高性能なCPUにするとは」

 

モビルフォートレスの制御は至難を極める。ただのパイロットでは暴走するから強化人間を用いるが、強化人間でも不安定で離反が起こった以上は再考を余儀なくされた。元来、マッドなサイエンティストはパイロットは部品と扱う節があり、その風潮が廃れることなく盛り上がってしまい最善手が最悪手と化している。

 

(そんな…どうにかして助けられないんですか)

 

「無理だ。外から把握できる範囲でも帰って来れない領域まで追い込まれていることが窺えた。下手に手を出せば引きずり込まれかねない。こういうのは憐れみを持つ前に仕留めることが一番の解放になるんだ。生憎だが私が一番の近くに位置している。よって、君たちは戦闘を継続するように」

 

(シンたい…)

 

「命令だぞ、カミーユ君。今ばかりかは大人の兵隊の力を使わせてくれ。なに、こういった仕事は未来ある君がやるべきことじゃない。私のように昔から暴れん坊で知られるエースが撃墜した方が未来を傷つけんからね」

 

そう言って白いMK-Ⅲは突貫を開始した。

 

カミーユが幻滅した大人たちの中でも唯一の例外として懸命に追い縋った背中は遠く離れる。何も言わず彼は戦闘を続行したが、予てから抱いていた憧れはより一層に強まった。ニュータイプである自分とオールドタイプのシンの差は広がるばかりである。

 

対して、激しくなる攻撃を掻い潜りながら接近を試みるシンは打開策を絞り出した。完全無欠のように思われたサイコガンダムMK-Ⅱには必ずウィークポイントが存在する。世の中に完全な兵器が出回ることはあり得ず、仮に出てしまえばそれは世界が滅亡する時だ。

 

「サイコミュの制御を担っているのはパイロットだ。なら、自ずとコックピットが一番の弱点になる。ただでさえ面倒な装置を満載した以上は自慢の装甲を張れん。万が一を考えて、ここはフルチャージで仕留めるか」

 

サイコガンダムは頭部にコックピットが設けられ、且つサイコミュ制御装置を備えている。最重要な箇所であるが普通のMAに比べ贅沢の限りを尽くしているため装甲を厚く張れなかった。高火力化の進んだビームライフルなら破壊できると踏んだが万が一のことを考えて確実を求める。ガンダムMK-Ⅲの物は特注品のため使わない手は無かった。

 

「デュアルサプライシステムなら…」

 

百式用EパックとMK-Ⅱ用Eパックを同時使用するデュアルサプライシステムを切り替え一回に全てを使い切るモードに変えた。律儀にも中途半端に残弾があったパックを盾裏に隠した新品と切り替えた上である。この間に猛烈なビームの嵐が舞うが回避しつつ更に接近した。狙う頭部にも小型のメガ粒子砲があって決して安全ではないが、才能でも何でもない愚直な経験から得た機動で圧倒し狙いを絞らせない。いくらか機動性が増したとはいえモビルフォートレスは鈍重であることに変わりなかった。

 

生粋のニュータイプでさえ捕捉しきれない者を準ニュータイプが捕まえられるわけがない。

 

しかし、数の力押したるオールレンジ攻撃の物量が襲い掛かった。

 

(この憎悪を終わらせる!)

 

「なんだ!」

 

MK-Ⅲを狙ったオールレンジ攻撃の一端が盾を犠牲にし受け止める前に弾かれた。盾には対ビーム緩和剤が使われたが大出力には勝てず爆散するはずだろう。あんなに綺麗に弾けることは極めて稀どころの話で済まされなかった。まるで意味が分からないとするシンだったが彼の機体はオーロラのような光に包まれている。

 

憎悪を断ち切ろうとする若者の意思がマシンを動かした。

 

「バイオセンサーか…やったなカミーユ」

 

続く

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