【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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アンケートのヘイズル系統はAOZ全般に広がりますのでご注意ください。また、AOZはセンチネル同様に機体のみ採用し、極々僅かにお話(1話にも満たない)を入れる予定です。



憎しみを断つ光と生む光

バイオセンサー

 

それはアナハイム社でさえ全てを理解し切れていない未知のパーツである。分かっている範囲では高いニュータイプ能力を持つパイロットに限定される条件付きで、その力に応じて搭載機の性能を総じて飛躍的に向上させた。つまり、確実に言えることはチューンアップの超高性能小型部品であるが、シンが目の当たりにした超常的な現象は間違いなく常用外と思われる。

 

大出力のメガ粒子砲の一撃を弾くIフィールドと似た作用は到底わからなかった。MA級の余剰出力が無ければ実現できない防壁を遠隔操作によって味方機に付与する。シンは自他共に認めるオールドタイプ(ニュータイプ台頭に伴う便宜的に呼称)だが、カチコチ頭を柔らかくする努力は怠らないで新しきを受容する姿勢を見せた。

 

そして、あり難く頂戴した好機は漏れなく使い果たす。

 

「憎しみを断つ光か…ロマンチストにでもなったつもり」

 

常道を外れた光景にサイコガンダムMK-Ⅱでさえも度肝を抜かれる。あれだけ激しかった砲撃はピタリと止んだ。しかし、戦闘特化型コンピューターにされた強化人間は本能のままに怒り狂う。享受した彼とは真反対に理解を拒んで矯正を試みた。

 

「この一身に憎しみはたらふく貰うてる。今更な…」

 

デュアルサプライシステムの最大出力を維持したまま高度な照準システムに人力を加えて一撃必中を心掛けるべし。百発一中の砲百門より百発百中の砲一門が勝るため手を尽くした。射撃の腕は他のエースに劣ると言うことは何ら言い訳にならない。

 

銃口は一時的に大きな光玉を作るが直ちに極太の光線となり宙を貫いた。空気が一切無いためビームを漸減する要素は皆無である。その一撃は敵超弩級MAの頭部を焼き抜いた。正しくは撃ち抜いたと表現すべきだろうが鮮明な文字に起こすには「焼く」の方が適している。

 

頭部を損失したサイコガンダムMK-Ⅱは制御装置をゴッソリ失って強制停止を余儀なくされた。あれだけ元気そうに飛び回ったリフレクター・ビットは一様にフヨフヨ浮くだけである。もはや、あの悪魔に脅威は感じ得なかった。

 

そして、願わくば二度と憎悪の権化が世に送り出されないことを祈る。

 

「これでビームライフルは使えなくなった。キャノンは使えるがここはZと合流して移動砲台に」

 

悪魔を撃破したMK-Ⅲは戦闘力が急転直下する。と言うのも、デュアルサプライシステムは強力であるがフルチャージ発射後は残弾が底を突く弾切れになった。破壊力には相応の代償が課されている。幸いにもエネルギーが別系統であるビームキャノンを装備するため、決して戦えないわけではないが戦闘力は低下することに変わりなかった。対艦戦闘すら覚束ない以上カミーユのZガンダムと合流してWRの便乗を図る。

 

一先ず、彼の戦いは終わった。

 

~エウノミアー~

 

「敵弩級モビルアーマー(モビルフォートレス)の停止を確認。アトミックキャノン発射用意」

 

ファは徹底的に頭と体に叩きこんだ手順をなぞる。彼女は成人すらしていない年齢だが辛い経験を詰め込まれた。心がへし折れてもおかしくない彼女は大人顔負けに芯が強くあり、素早く逆襲の機会を我が物にすると幼馴染の恩人に引き抜かれる。彼女のため申しておくが戦争に酔っておらず、理想を挫くも現実を拾い上げて戦いに挑んだ。

 

先行した仲間は無事に超大型機動兵器を撃破し艦隊を引っぺがす。隕石を即席の隠れ蓑にしがら器用にグリプス2まで迫り、長砲身を誇るアトミックキャノンの展開を開始した。あまりにも巨大なため外付け式の発射装置が自動で作業を進めてくれ、パイロットは正確に撃つことだけを意識する。

 

(繰り返す。射線から退避せよ…繰り返す)

 

すると、通信にエゥーゴ側と思われる警告が入った。情報共有システムが表示したのは敵艦隊を貫く一直線の街道である。派遣ジオン部隊はエゥーゴから艦隊殲滅術の詳細を明かされていたため直ちに納得した。ファは核砲弾の発射用意を進めて待つばかり。

 

(閃光軽減措置)

 

街道を通過した光の列車を受け機体が自動的に視覚への影響を和らげてくれた。本来は核炸裂時の眩い閃光から守るためだが応用が利く。

 

話題の光の列車はエゥーゴ艦隊所属のMSが発したメガ・バズーカ・ランチャーだった。グリプス2動力源破壊には不採用とされるが対艦隊に転用されている。様々な制約と不便が重なるが大出力ビームは性質上直線に対して焼尽を働いた。MSに比べれば鈍くて回避が難しい敵艦隊なら通用すると判断され投入される。

 

悪評が多い兵器は期待に応えた。見事にサラミス改を数隻撃沈する戦果を上げる。コロニーレーザーやソーラーシステムと違いMSで運用される移動砲台のため派手さには欠けるが十分に満足できた。有り難いことに弾が吸われそうな敵艦が消え存分に照準を絞れる。エネルギーを供給する動力源を完膚なきまで破壊するため、核砲弾の威力を踏まえた最適な狙いを射手に与えた。

 

「毒を以て毒を制す…ね」

 

ファの怒りが詰まった砲弾は唸りを上げグリプス2に進む。障害となる艦隊も迎撃機もいないフリーだった。当然ながらアクティブ防御システムは構築されておらず迎え入れるだけとされる。仮に構築するなら莫大な面倒がかかって非効率的な上に今時砲弾なんて古めかしい武器は使わなかった。

 

カートリッジ式を活かした5発の砲弾は長砲身が生む高弾速を纏い突入する。核の威力を最大にするため特製の砲弾は特殊弾頭に特殊信管を有した。弾頭は柔らかい金属を貫徹して内部に侵入を果たし、信管は丁度良いタイミングに作動するよう絶妙な調整が組まれる。徹底的な自動化の時代でも絶妙を求める際は人間の技術が求められた。

 

グリプス2はレーザー発射のため圧倒的な量のエネルギーを溜め込む。そこに小型核が突入して炸裂したため、筆舌し難い破壊に破壊が無限に連鎖した。当初の予定では動力源となる区画を破壊するだけだが思った以上に連鎖が発生しコロニー自体も大爆発に巻き込まれる。ティターンズが本腰を入れて改造したが流用であることに変わりなくダメージコントロールは通用しなかった。人員の被害が皆無であることは不幸中の幸いかもしれない。

 

「こちら秩序の鉄槌を執行を完了。目標は完全に沈黙」

 

グリプス2が破壊されたことはティターンズ防衛艦隊に大きな衝撃を与えた。防空圏内に突入を許した機は僅かしかなかったが奇襲を受けるとは思いもしない。一応の慰めであるがエゥーゴ艦隊にはかなりの損害を与えており痛み分けと言えた。しかし、月を焼くコロニーレーザーを不可逆的に発射不可能にされたことは敗北を意味する。代替手段として無差別毒ガス攻撃が懐に備えられていたが艦隊が消耗した以上は作戦続行を中止せざるを得なかった。

 

ティターンズ艦隊は撤退を選びゼダンの門へ帰投する。エゥーゴは追撃せずサイド2の防衛に留まり派遣ジオン部隊は第二作戦のため、ソロモンを経由してサイド7を目指した。ソロモンから出てくるラコック艦隊と合流し新生ドズル艦隊筆頭としてア・バオア・クー奪還作戦に臨む。

 

~ジュピトリス~

 

「シロッコ様、グリプス2は破壊され作戦は頓挫したようですが」

 

「当たり前だ。あんな知恵のない作戦が成功するとでも思ったか。まったく…これだからな」

 

サイド7に居残った木星帰りの男は愛するジュピトリスで宇宙を俯瞰した。己の信条から常に第三者として動いて外野から楽しむことを第一としている。そして、この知恵無き世界を天才である自分が治めるべきだと思っていた。

 

しかし、珍しく彼には不安要素がある。

 

「あの男ばかりは何も見えん」

 

続く

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