【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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ソロモン艦隊動く

ティターンズ艦隊を撃破してグリプス2を完膚なきまで破壊したジオン部隊はソロモンを目指した。エゥーゴは廃コロニーレーザーの無害化処理や隠れティターンズを摘発するため残留したが、ジオンは次なるア・バオア・クー奪還作戦に参加しなければならない。しかし、ティターンズが最短距離で撤退する航路をなぞっては偶発的な戦闘発生の恐れが高かった。よって、弾薬から燃料、食料に至るまで消耗品を補充する目的を含めてソロモンを経由する。

 

ソロモンはデラーズ紛争のドタバタ劇に便乗した旧ドズル軍が工作活動を通じクーデターを誘発して占領した。アクシズの地球圏突入に伴い兵は増員され一年戦争時の要塞に復元されている。鹵獲した連邦製兵器と既存兵器で構成されたソロモンはいつの間にか最新型で埋め尽くされた。まだアクシズに比べれば戦力は少なかったが月とサイド3から兵器が納品され続けルナツーに匹敵する大拠点となる。

 

新戦力を整えたソロモン軍は新生ドズル艦隊を称してサイド7を目指し出撃した。

 

~ソロモン~

 

ソロモンに到着した精鋭部隊は大艦隊に迎えられる。そのまま補給を受けようかと思われたがソロモン城主ラコック少将から直々に呼び出され、シンには『新造艦』が授けられることが伝えられた。

 

「ラコック少将、お心遣いありがとうございます」

 

「ドズル閣下がミネバ様をシン・マツナガ殿に預けたのだから、貴官には相応の艦を与えなければならなかっただけだよ。単に外面を整えるのではなく万が一でミネバ様を脱出させる際にあの艦が使われる。気を引き締めてくれ」

 

「グワダンでは足りませんか」

 

「いや、あくまでも万が一なんだが備えあれば患いなしだろう」

 

「はい。おっしゃる通りです」

 

ラコック少将は自分で艦隊を率いた。チベⅢを旗艦にしてエンドラ級巡洋艦を並べる大艦隊である。大型戦艦を持たないため砲戦火力が不足した点は搭載するMSの数で補った。なお、MSは可変機ガザDではなく従来の通常機である。要塞内部の工場はガザD等の可変機に対応できる近代化が未完了なため間に合わなかった。ただし、機体はアナハイム社からライセンス権を譲渡されたネモとハイ・ザックを生産して配備する。リック・ディアスもあるにはあるが操縦難易度やコストから指揮官向けに留まった。ソロモンは月に親ジオン地域がある事を活かして着実にアナハイム社との連携を強めている。逆にアナハイム社はティターンズが自社を排除する方針を打ち出したため次のパートナーにジオンを選択した。それもあってか、アナハイム社に対し多大な影響力を確保した上で艦艇を特注する。

 

それこそミネバ親衛隊大佐シン・マツナガに与えられるに相応しかった。

 

「高速戦艦ドズルか。閣下が生きられていたら…」

 

「少将、もしもは厳禁です。今は現実を見るしかありません」

 

「全くだな。さて、あれはアナハイム社が建造した戦艦だが巡洋艦サイズになる。もちろん、モビルスーツの戦闘に重点を置いてあるから今までと変わらない。火力も相応に高いが足の速さを活かした機動戦術が求められる」

 

「心得ております。しかし、随分と後部のスペースが空いてますな」

 

「あぁ、言っただろう万が一のためだと。緊急時に備えて推進剤の増加タンクを付け惑星間航行を可能にしてあった。最悪の場合を考えたら各地を逃げ回るか火星や木星に身をひそめるかを選ぶしかない。そして、再起を図ることを考えてな」

 

彼に与えられた艦は高速戦艦ドズルである。

 

ジオンが手持ち無沙汰なアナハイム社造船部門に特注して建造された。その機動性は軽巡洋艦エンドラに匹敵する高機動でありながら砲火力はサラミス改を圧倒する。現代において肝心のMS運用能力は搭載機数こそグワダン級に劣るものの(比較するには不適応だが)アーガマと同等かそれ以上を誇った。多種多様な機体を円滑に扱うため専用区画は贅沢に割かれており、宇宙へは直接カタパルトで射出される。

 

「どこか角ばっていて連邦軍の艦のようですが…」

 

「ご名答。アナハイム社がエゥーゴ用に建造したアイリッシュ級戦艦を基礎としてわが軍のエッセンスを加えた」

 

「なるほど、どうりで」

 

ジオン軍の主力艦は原則的に流線形が意識され現在も受け継がれた。しかし、高速戦艦ドズルは全体的に角ばった印象を持ち連邦軍の主力艦を彷彿させる。それもそのはず、建造を担ったアナハイム社は広義の連邦軍であるエゥーゴ向けのアイリッシュ級巡洋戦艦をベースにした。単艦の砲戦能力とMS運用能力を高めた巡洋戦艦にジオン色を加えて練り込み本艦が完成している。

 

万が一にミネバ・ザビが尋常でない危機に陥った際は本艦がグワダンに代わり緊急脱出艦となる。彼女の実父の名を冠した艦は親子二代に渡り右腕を務める白狼及び白刃が率いた。他の旧ドズル派の面々には申し訳ないのだがドズルの真なる右腕はシン・マツナガである。視察に赴く際は必ずシンを護衛に就けた程に信頼し、己が塵となる最期を悟ると生まれて間もない娘を託した。当然ながら三つに割れていた軍がおいそれと頷くわけが無かったが結果を以て黙らせる。

 

歯向かうのであれば幾らでもすればいいだろう。

 

だが、必ずしも望む結果にはならないことを教えてやる。

 

ニュータイプでさえ歯が立たぬ白き刃に挑む者は何処なりか。

 

「今更になって艦を渡すのはな…ティターンズ側に大きな動きがあったからだ」

 

「と、言いますと?」

 

「奴らは首領であるジャミトフを謀殺しシロッコと名乗る男が躍り出た」

 

「まさか!」

 

これは平静を貫くシンも驚きを隠せなかった。ティターンズを結成して戦闘を続けた全スペースノイドの敵ジャミトフが暗殺されるとは予想だにしていない。いくら厄介な政治系軍人と言えども知らぬ所で退場されては困った。アクシズの本隊が特殊部隊を用いるなどして排除したならまだしも、現実は急速になり上がった野心に満ちる男が空いた椅子に座っている。

 

とても信じたくない事実だった。

 

「ただでさえ指揮系統が混乱しますから悪手にしか思えませんが…」

 

「もちろんだ。実はアクシズはティターンズの招きにより最初で最後の会談を設けた」

 

ハッと気づく。

 

「その時に暗殺を謀りジオンに押し付ける。そうすれば士気を損なわず、且つ穏便に指揮権が滑り落ちる…」

 

「流石のキレ味だな」

 

普通に考えて長らく組織を率いた人間が後継を置かず去ると引継ぎどころではない混乱を招いた。暇な閑散期の中なら時間をかけて整理と新体制構築を行えるが今はどうだろうか。言わずもがな戦時中のため洒落にならなかった。しかし、上手く責任を敵に擦り付けて士気を維持しつつ、仕組んだ№2の人物がスライドすれば最小限の混乱で終わる。客観的には棚から牡丹餅で運が良い程度にしか見えなかった。

 

「会談に出たのは…」

 

「心配には及ばん。使者を纏った特殊部隊の兵だから無事だよ。こちらもあわよくばを願ったが、まさかこんなことになるとは予想していなかった。それにしてもシロッコと名乗る男をどう思う?一応、私の所にも諜報員から情報が届いているけども君の意見を聞きたかった」

 

「率直に申し上げて、稀代の化け物であると思います。僅かな期間で謀略を思いつき、あっという間に権力を掌握しました。追い詰められた狐ですが決して侮ることは許されません。木星星団を率いて帰った者は特異な力を発揮した前例がある以上は恐ろしき難敵と断定します」

 

「勝てるか?」

 

「私は白い悪魔と戦ったことがあり、生きて帰って来た数少ないパイロットです」

 

ジオン復帰に伴い少しずつ髭を蓄え始めた男は淀みなく答える。ラコックは笑みを浮かべ絶対的な信頼を寄せた。

 

「頼むぞ、白狼」

 

「はっ!」

 

続く

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