【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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クリスマスどうお過ごしでしょうか。私はホットコーヒーを飲みながら書き溜めの編集に精を出しております。夜はチキンを貪りながらワインをがぶ飲みする予定です。


クリスマス作戦

外回り線で大きく迂回したシンらはソロモンの新生ドズル艦隊と合流しゼダンの門奪還に続いた。中々のハードスケジュールであるがジオンにとっては厄介なティターンズを追い込んであと一歩の所まで来ている。一応の仲間であるエゥーゴは消耗して力を失いつつありこの戦いに勝って最も得をする勢力はジオンだ。美味しい所だけを掻っ攫う漁夫の利を狙って最後の戦いに臨むのである。

 

しかし、外回り線は遠回りを余儀なくされた。最短距離の内回り線を通るティターンズ艦隊より時間を要する。追撃出来ずにゼダンの門を含めたサイド7に逃げ込まれるかと思ったが、敵軍はMSはもちろん弾薬も推進剤も全部を消耗していた。辛うじて動ける戦力のため最短距離を最高速で駆け抜ける余裕は残されない。新品の艦隊が猛追すれば追いつく計算だった。

 

そして、ゼダンの門は限られた残存兵力で防衛しなければならない。先んじて開催されたティターンズとアクシズの会談は破談で終わった。ジオンが求めた「新生ジオン公国復古の追認」は議論の間もなく拒絶し、ティターンズの「ジオン解体」も馬鹿にしていると突っ撥ねる。更にはジャミトフ謀殺も加わって両勢力は話し合いの甲斐なく物別れし戦闘に入った。

 

サイド7

 

「偵察機より報告。敵軍は想定された防衛陣を構築し艦隊と多数のMSを展開している模様です。全てリークのあった情報通りなのでクリスマス作戦は予定通り実施すべきかと」

 

「よろしい。準備砲撃と共にアステロイド・ミサイルを撃ち込め。その後第一次攻撃隊を出撃させよ」

 

数か月前から計画を立てていたジオン側のア・バオア・クー奪還作戦は『クリスマス作戦』と呼ばれる。時期的には遅れたが良い子の居座るゼダンの門へサンタがプレゼントしようというわけだ。そのプレゼントとは宇宙要塞攻略の切り札アステロイド・ミサイルである。小型の小惑星を使った質量兵器は有効性を確保するため戦艦と巡洋艦の砲撃に紛れ込ませた。

 

アステロイド・ミサイルは小惑星に誘導装置と推進機関をくっ付けだけの単純明快の四字が似合う。炸薬は全く入っておらず破壊力は質量と運動に依存するが破壊力が極めて高かった。何千年の歴史が作り上げた小惑星の岩盤は恐ろしく硬く、高速で岩がぶつかったら痛いだろう。近場を浮かぶ岩を拾って簡易的な装置と機関を付けるだけでよいためコストパフォーマンスに優れた。硬さに物を言わせてゼダンの門の金属製ゲートを破壊して突破口を開きMS隊を突っ込ませる算段だった。

 

「全艦砲撃開始。同時にアステロイド・ミサイルを発射せよ」

 

「構うな全軍突撃!」

 

集結したアクシズ艦隊は全速で突撃を開始する。

 

この時のために蓄えた大戦力はメガ粒子砲を発射し防衛陣を崩そうと試みた。ティターンズ艦隊はドゴス・ギアを筆頭にアレキサンドリア級とサラミス改級を並べたが、何故か統率が取れていないように見えてしまうのは気のせいか。初めての本格的な戦いで緊張しているのではなく、本当にティターンズの統制は既にグラついた。長らく組織を率いたジャミトフが退場され新進気鋭のシロッコが立ったことは必ずしも良い効果を得られない。中には懐疑的な目を向けている者もおり、あわよくば地球に離脱しようと画策する者さえ出た仕舞いだ。エマ・シーンやブラン・ブルタークなど良心的な兵士は少なくない。これは余談だがブラン少佐は先の戦いで幸か不幸か護衛対象を失い、戦う意味が消えたため早々に所属していた研究所に戻る道に移った。

 

「グワダンよりヴァルキリー。ガザDの発艦急げ」

 

艦隊の後方に位置したヴァルキリー宇宙空母は連装三段式を活かしてMA形態のガザDを吐き出す。変形時は実質的な戦闘機のためガザDは一斉に飛び立った。アクシズはこの空母による物量攻撃を敵に投げ付け、大挙して敵艦隊に迫るガザDは迎撃機が塞がる前に手を打つ。

 

「ヒヨッコでも使える機体で助かる。実戦で鍛え上げるだけだな」

 

ガザ隊を率いた熟練パイロットは笑いながら自機を誇った。ガザDはシリーズ特有の物量を遺憾なく発揮し100機以上も飛行する。可変して殺到する様子は異様であるが意外と合理的な戦法が採られた。大半のパイロットはアクシズ育ちのヒヨッコ達であり、旧ソロモン軍の熟練者が速成で叩き上げられている。しかし、実戦経験に欠け不安が残るため戦法を工夫して解決した。ただでさえ数で勝るガザは最初にミサイルを斉射し敵を包み込む。

 

「狙いは当てずっぽうで構わない。全機ミサイル発射!」

 

若干のタイムラグはあれども一様にミサイルが放たれた。ミノフスキー粒子が散布された中では有効性を減じられるが利便性は変わらない。1機当たり14連装と4連装を2基ずつ持ち、30発以上のミサイルが100倍になって迫った。仮に狙いがミノフスキー粒子の影響で乱雑になっても面制圧力で補うことができ、艦とMSが懸命に対空砲火を形成しても全て無効化することは至難に尽きる。

 

「ひっ!」

 

「臆するな!」

 

流れる対空機銃の弾にヒヨッコは冷や汗を流すが叱咤する。相手の狙いも狂っていて十分に速力で躱せた。ガザの地味な強みはMA形態時の被弾面積の小ささである。変形すると高さは既存機の半分程度になり被弾面積は随分と縮小してくれた。ビグロ以上の機動性と平べったい形状により「当たらなければどうということはない」を証明する。

 

「砲兵隊は離脱し対艦戦闘に移行せよ。戦闘機隊は一敵機に対し最低でも一個小隊であたれ」

 

100機以上のガザ隊は二手に分かれた。片方は精鋭が集まる空間砲兵隊で対艦戦闘及び対地戦闘に充当される。もう片方は基本の戦闘機隊で迎撃機の相手をした。戦闘機隊はヒヨッコが多い関係で3機小隊を組ませ敵が単騎でも多対一を意識する。

 

古来から弱者の兵法は物量に依拠した殲滅だった。

 

ガザ隊はミサイルを撃ち尽くすとハイパー・ナックルバスターの斉射に移行する。ジェネレータと半直結式のため連射は効かないが一撃の破壊力は侮れなかった。並みの機体では盾を使わないと受け止め切れないが数が数のために避け切れない事態が多発する。

 

ガザ隊の物量攻撃で混乱を生じさせたことを確認したハマーンは自身も戦場に赴くことを宣言した。

 

「第二次攻撃隊を出せ。私も出る」

 

「キュベレイの用意、急げ!」

 

ハマーン専用機として開発されたキュベレイは奇しくも純白の塗装である。宇宙空間で目立つ白は戦闘を不利にさせがちだが負けなかった。彼女よりも早く白い機体で無類の強さを誇る者がいることは忘れてはならない。

 

ハマーンはその者を慕い己の力及ばないことを理解した。何を言うのか、嘗てはフラナガン機関で稀代のニュータイプに数えられたにもかかわらず力が及ばないとは驚くだろう。しかし、そのニュータイプすら凌駕するのが気高き白い狼なのだった。一年戦争で白い悪魔ガンダムと互角に渡り歩き、連邦軍大艦隊を相手に単騎で突っ込み敵将を討ち取った英傑だろう。

 

「このキュベレイで到着までに露払いに興じるか。雑踏を与えては失礼にあたる」

 

ジオン驚異のテクノロジーを集結させたキュベレイは華麗に宇宙に躍り出た。ミネバ親衛隊のリック・ディアスとシュツルム・ディアスを提げたハマーンはジオンの正当性を訴えるためティターンズ撃滅を図るが、実際の心情としては到着を目指す英傑の合流前に雑踏の排除である。彼には相応の舞台を提示しなけれならなかった。

 

「白狼が来た時がティターンズの最後だ」

 

続く

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