【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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ちょっと、色々とありましてですね。

察してくれると嬉しいです。

多方面にリハビリなので変な箇所があっても生暖かい目で見てください。

もし、見てくれないと皆さんの家にデビルガンダム細胞を贈ります。


矜持

シロッコは焦りを隠せなくなった。

 

天才を自称する以上は凡人に負けることは許されない。それどころか対等に戦った時点で破綻を余儀なくされた。もちろん、敵は一年戦争時より暴れ回ったエースパイロットのため、激しい戦いの末に打ち砕く幻想を抱いた。戦いについても美意識というべきか独自の感性を有し、常道を保持するが悉く外されている。

 

「人は弱い。だからこそ助け合い社会を作るのだ。それを理解せず一握りの人間が支配することなどあり得ん!」

 

「ザビ家の犬が!それを言うか!」

 

「勘違いするなアマチュア!ミネバ様は適材適所の実力主義を採られた、まさしく賢明な方である」

 

シロッコの抱く一握りの天才による統治、それは受け入れることができない。社会を引っ張る者が天才であり、各方面の能力に長けて辣腕を振るうことは認めた。しかし、そのような社会が長続きするとは思わない。それよりも弱くても助け合いながら、ゆっくりと前へ進んでいく社会の方が価値を見出せた。

 

もっとも、現実社会がそうとは限らない。助け合う社会が確立されていれば戦争が発生するわけが無く、全ての民が手を取り合って協力して共通の目標に突き進むはずだ。現実はどうだろうか。年単位で人間は争っては反省して再び戦争する。途方もない矛盾を重ね続けた。かく言う、ジオンも独立の正当性を掲げてコロニー落としという残虐非道な行為に手を染める。

 

シンの言うことは矛盾の塊だった。

 

悪く言えばくだらない理想論かもしれない。吐き捨てられても反論できなかった。シロッコは彼なりに独自の理論を組み立て行動に移している。その点では両者は共通して似た者同士と評せるが、根本的に交わることのない道を歩んだ。

 

「武人としての誇り!ミネバ様から授かった使命は捨て置けんのだぁ!」

 

「戯言を!」

 

気づけば周囲の友軍機は消え去り、とても気持ちの良いタイマン勝負が用意された。全体の戦況としてはジオン優勢であり、ティターンズはひっくり返す打開策を得られていない。全体の指揮を執るべき者がMS戦の沼に引きずり込まれ、指揮系統が事実上の寸断状態で統制はポロポロと崩れた。ティターンズはエリートなのだから自分達で考えて行動すればよかろう。それにも関わらず、各個撃破されるのは何故なのだろう。

 

まったく不思議な現象だった。

 

それはさておき、一般的に長時間のMS戦闘は消耗戦を意味する。戦う者のどちらか片方が僅かでも疲労による甘さを見せた瞬間に撃破された。しかし、このフィールドに限っては消耗戦が一切感じられない。人間の評価はともかく、能力だけは稀代のニュータイプであるシロッコは疲れを知らなかった。一般人に過ぎないシンを圧倒してもおかしくないのに互角が続いた。

 

「経験が物を言うんだよ、小僧め」

 

「愚弄するかぁ!」

 

能力は史上最強級のシロッコである。しかし、如何せん総じて経験が不足した。これは前にも指摘したことでご理解いただける。これを前提にした応用として、戦場の空気を読み取る力に隔絶した差が存在した。言わずもがな、白狼は積み重ねたキャリアに伴い培った「第六感」を携える。ニュータイプの勘と区別するため便宜的に「第六感」と呼称した。こればかりは本当に経験を積むしか鍛える術は無かった。確かにニュータイプは常人を逸した勘の良さで未来を予知する。かのアムロ・レイがノールック射撃でジオン機を撃墜した伝説を知らぬ兵士はいないだろう。

 

ただし、未来というのは一秒どころかコンマ単位で変わった。未来を固定することはあり得ず、機微を読み取らなければならない。いわゆる戦場の臭いというもので、これを感じ取れない者から散る運命を辿る。

 

その臭いはオールドだろうがニューだろうが関係なかった。

 

「我が命はミネバ様と共に!」

 

敵味方問わず周囲の機体を寄せ付けない、まさに鬼神は傍観者カミーユを圧倒する。カミーユも覚醒を果たした。Zガンダムのバイオセンサーとの相互作用で因縁の敵を退ける。ハンブラビ隊は素晴らしい連携であと一歩まで追い詰めた。しかし、覚醒Zガンダムとガールフレンドの適切な支援により撤退に追いやられた。カミーユらは無理な追撃は慎んで勝ちと静観を拾いあげる。周囲を一瞥するが勝ちは確実と見えた。ティターンズは実質的に司令官を失い指揮系統に混乱をきたし、ジオン=エゥーゴ共同戦線の前に続々と撃破されていく。

 

カミーユはアーガマやラーディッシュの直掩に回ろうかと思った。すぐに取り消して恩師の戦いぶりに感銘を受けて万が一に備える。もし、恩師が窮地に陥った際は救出に入るつもりだ。いつでも乱入できる態勢を整えたが不要そうである。

 

「なんて戦い。あの男と互角に立ち回るなんて」

 

「ソロモンの白狼の名に偽りなしね」

 

「あれが究極のオールドタイプ…」

 

アムロ・レイをあと一歩まで追い詰めた武勇がある。シン・マツナガは一時だけニュータイプと疑われた。しかし、本人談と客観的な数値のデータからオールドタイプ(普通のパイロット)と判断される。準サイコミュ兵装こと有線ワイヤー式のインコムも扱えなかった。また、射撃兵装も実弾のマシンガンで間に合う。彼曰く「距離を設けて射撃するぐらいなら、思い切り近づいて格闘戦で仕留めるんだ」と名言を残した。

 

これを聞いたカミーユは絶句を強いられたらしい。

 

「勝てない…絶対に」

 

アムロ・レイを見届けたブライト艦長が証人として、少年カミーユ・ビダンは疑義を挟む余地のないニュータイプだった。数多の戦いを経る中で守るべき愛する人を得たり、師と仰ぐ英雄を間近においたり、勢力間の駆け引きの道具にされたり、その他等々から短期間の内に史上最強にまで昇り詰めた。オーパーツたるZガンダムを操ってフォウとファの支援を背にすれば無敵を誇る。

 

(いつかあの人を超えてみせる)

 

カミーユの憧れが通じたのか分からないがシンは王手を打った。シロッコの格闘戦も少年少女には脅威と映るも白狼の前には及ばない。新参者が木星帰りで得た超常的な力は古兵の熟成され尽くし円熟を超えた技術に勝てない唯一の例外に当て嵌まった。格闘戦で求められる読み合いと化かし合いの駆け引きは経験がものを言う。

 

最たるのはイレギュラー対応であり、両者の間に如実に差が現れた。

 

「斧の使い方は振り回すだけに限らんぞ!」

 

「古典的な!」

 

斧は伐採の道具として切れ味抜群のため投げることもあり得た。ザクは大型ヒートホークを思い切りぶん投げる。ジオは冷静に2本の隠し腕を器用に使って弾いている。

 

「古典に活路を見出したり!」

 

脅威を感じなかった斧投げを捌いて、いざ反撃に移ろうとした際に目の当たりにした。

 

それは、無重力に身を任せクルクル浮いている丸い物体である。

 

「格闘戦は化かし合いの場である。己の力に覚えるから奇手奇策を忘れる」

 

「なっ!?」

 

シロッコは瞬く間にまばゆい閃光に包まれる。シンは斧を投げた僅かな間に敵機の視界を部分的に遮った。距離を詰めて近接格闘戦に移る素振りを見せる。その実際はフラッシュ・グレネードを放り投げた。時限式のため無重力空間を浮遊して丁度よくジOの目の前に到達すると閃光を与える。カメラを通じて視認する閃光は軽減されるが、ゼロ距離で生じた場合は軽減し切れない。一時的止まりと雖もコンマ秒が勝敗を分ける戦場では致命的となった。

 

ニュータイプなら突発的なイレギュラーに対し冷静に対処できる。

 

いいや、感情をコントロール出来なければニューもオールドも大差なかった。

 

「これで終いだ!」

 

続く

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