【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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今更になりますが時系列は正史及び外伝、異史総じて後ろ倒しになっています。つじつま合わせのためですので、恐れ入りますがご理解のほどよろしくお願いいたします。


地盤固めに徹し

ニューディサイズの蜂起に関しジオンと地球連邦は秘密会談を開くと迅速に合意した。ジオンは「地球再侵攻の蜂起」に併せて「中立・不介入・不干渉」と手を出さないことを明言する。地球連邦はニューディサイズ蜂起の鎮圧に全力を注ぐが、ジオンに何らかの形で損害を与えた場合は補償することを約した。なお、ジオンはニューディサイズや地球連邦から攻撃を受けた場合に限り、個別的自衛権を行使して必要最小限の反撃行動に出ることは捨てない。至極真っ当でも地球再侵攻に及ばない範囲に限り反撃した。

 

ジオンは地球連邦のゴタゴタ騒ぎには不干渉を貫徹する。

 

ただ、地球連邦に生じた隙を衝き地盤固めに奔走した。

 

~サイド1~

 

「シャングリラの状態は劣悪らしい。海賊が襲撃してくる危険がある。常に警戒を怠るな」

 

ジオンの巡洋艦はサイド1のシャングリラ近郊に停泊している。彼らは各コロニーを転々として自治組織や牛耳る民間企業等と接触し、ジオンの名の下で行われるコロニー復興支援を持ちかけて本国と仲介した。一年戦争時の壊滅的な被害を与えたのはジオンのため、決して対ジオンの感情は良くなかった。とは言え、ティターンズの弾圧を受けては対地球連邦も芳しくなかろう。ジオンは前戦争の補償と称した復興支援を掲げて既に親ジオン派は工業又は農業で復興を歩んでいる。急速な拡大でジオンに不足しがちな工業と農業をコロニーから輸入して賄った。一応でも、アクシズに資源採掘用の小惑星をドッキングさせるが足りない。

 

そこで、今日はサイド1のシャングリラに寄った。サイド1は最初のコロニーで由緒あるが極めて複雑な様相を呈する。つい最近まで戦闘が行われたコロニーがあったり、ティターンズの毒ガスで壊滅したり、ジオンの核攻撃で破壊されたり等々の酷い有様だった。端から厳しいと予想して動いたが案の定のため、指揮を執る士官は敵情視察と割り切る。

 

すると、ジオン艦を確認したのか連邦も動いた。

 

「地球連邦軍のペガサス改級を確認!」

 

「一切手を出すな。見て見ぬふりを徹底しろ」

 

地球連邦軍の演習場が置かれているのだから、別に連邦艦が出て来てもおかしくない。それは百も承知だが情勢が情勢だけにピリピリせざるを得なかった。しかし、指揮官は腕組みで仁王立ちして「見て見ぬふり」を命じる。ジオンと地球連邦は一時的に相互不干渉で合意した。よって、ここで下手を犯せば無駄な炎が舞い上がるため知らぬふりが好ましい。

 

どうやら、サイド1から別の宙域へ移動するようだ。ジオン艦を刺激しないため収納可能な砲は収納し、収納不可能な武装は照準をずらしている。その様子はジオン巡洋艦からも確認でき、こちらも砲を向けず挑発を厳に慎んだ。

 

ここでの挑発の応酬は恐ろしく不毛なのだろう。

 

「マシュマー様…」

 

「分かっている。あれは地球連邦軍のムーア同胞団に与えられた強襲艦。嘗ては空母を運用していたと聞くが、連邦軍が取り込む際に与えたのだろう」

 

一見して地球連邦軍の強襲艦だが強く主張するマークがあり、それこそがサイド4の『ムーア同胞団』を示していた。ムーア同胞団は壊滅したサイド4にてジオン軍と激闘を繰り広げ、勝ち負けつかない引き分けで終わる、その功績を盾に地球連邦に取り込んでもらい勢力を保持した。典型的な反ジオンのため接触時は緊張が高まるも不毛を悟り「見て見ぬふり」で離脱していく。

 

「噂によれば、宇宙に退避した南洋同盟を追撃する任務に就いているとかいないとか」

 

「南洋同盟はその性質から連邦かジオン、その他と全て問わず吸収した。更に我々の中にも紛れ込んで離反を促進させている。既に旧リビング・デッド師団や一部残党軍、ティターンズが逃げ延びたと報告を受けた」

 

「それでは、地球連邦としては手を出す意味が薄いように」

 

「いや、地球連邦はおろかジオンも無視できない事情がある。ここでは語れない裏があるんだ…」

 

指揮官のマシュマーは珍しく苦渋に満ちた表情だった。

 

南洋同盟は宗教で繋がる性質上来るものは拒まない。元ジオン、元地球連邦、元ティターンズなど出身は気にしない。宇宙難民の受け入れも行い一般的には慈善活動を展開する団体と認識された。しかし、最近になると野心を放出して地球連邦から離反する。そして、事実上の独立を宣言し交戦状態に陥った。

 

「ジオンでも見逃せない事情が…」

 

南洋同盟はジオンに対して平穏を保っているが急に牙をむいて来てもおかしくない。南洋同盟の首領は地球連邦を見限った。よって、ジオンに鞍替えするとは限らないだろう。また、それ以前の問題としてジオンが生み出した禁忌の技術が流出した。南洋同盟を殲滅せずとも技術だけは回収しないと安心して勢力を拡大することは不可能である。

 

そして、ジオンと地球連邦に共通して利害一致と見て取れる事項も存在した。

 

「暫くはシャングリラで様子見する。ジャンク屋から情報を抜き取れるかもしれない」

 

話はシャングリラに戻り、嘗ては理想郷と宣伝された地の没落は激しい。今はジャンクの巣窟となっている。治安も悪くて海賊行為の危険があるため、マシュマーは厳戒態勢を解かないが、ジャンク屋たちに情報提供を求める見返りに金を渡して安全を確保した。

 

もっとも、万が一のコロニー内や間の戦闘を想定し、最新鋭機を携えて戦闘の用意は怠らなかった。

 

「噂のガンダムと見えることが出来れば好都合だ」

 

~ジオン本国~

 

「マシュマーから南洋同盟討伐に向かう、あのムーア同胞団を確認したと報告が入った。南洋同盟はリビング・デッド師団の生き残りがおり、ジオンとしても無視することが出来ない第三勢力である。そして、なによりもアナハイム・エレクトロニクス社を保護するため、地球連邦と部分的な共同戦線を張る可能性が高まった」

 

ハマーンは本国より高度な秘匿性が確保された通信で、本国=ソロモン=ア・バオア・クーを繋いで緊急会議を開いた。本国はハマーン、ソロモンはラコック、ア・バオア・クーはブレックスと豪華な顔ぶれである。なお、アクシズが省略されているのは本国近郊まで移送され、本国を構成する一部という扱いを受けているためだ。

 

「皮肉なことだ。お互いに奪われた物があって、共通の敵を持つことになろうとは」

 

「アナハイム社を失うことはジオンと地球連邦共にとって見過ごせない。我々のエゥーゴも重大な懸念を表明する」

 

「ジオンは個々の情勢に対しては概して静観を貫いている」

 

ジオン視点では南洋同盟にリビング・デッド師団を奪われ、禁忌の技術であるリユース・P・デバイスが流出した。MSは登場から急速な発展を見せたが、この技術によってMSはおろか戦争全てを変えかねない。その脅威度は中世の世界大戦で登場したV2ロケットに例えられた。

 

そして、ジオンと地球連邦に共通する事項がアナハイム社の存在である。実は南洋同盟の首領はアナハイム社を諸悪の根源と捉え、人類の限界を悟ると共に根源から断ってしまおうと行動に移した。アナハイム社は民間企業に過ぎないが、ジオンと地球連邦にMSや艦艇など幅広く製品を売っている。

 

アナハイム社を失うのは宇宙全体にとって大きな損失だ。グラナダといった月面都市と図太いパイプを繋いで、アナハイム社を失うわけにはいかないという点で両国は共通する。なんと皮肉にも両国は水面下で調整を図り、部分的な共同戦線を張るのが予定された。

 

「ただ、我らは地盤固めに邁進している。どう動くか難しいところだ」

 

難儀が絶えない宇宙は全く読めない。

 

続く

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