【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
ジオンに亡命を希望する技術者・研究者は意外と多かった。彼ら/彼女らは持ち前の技術・研究を手土産に恭順の意を示す。中には地球連邦の秘密研究所で強化人間関連に従事した者もおり、直近では旧ティターンズのローレン・ナカモトがガンダムMK-Ⅴを提供した。ガンダムMK-Ⅴはニューディサイズでも運用される。地球連邦の思想と準サイコミュ兵装を丸ごと入手できる点から価値を高く見積もった。
したがって、ローレンはジオン国立研究所の上級職員に引っこ抜く。
ジオンのニュータイプ研究は旧キシリア派が一大勢力を誇った。しかし、アクシズの帰還と旧ドズル派が実権を握ると組織は全て解体されている。内部の研究員も厳しい選抜が行われた。ミネバ様への忠義は絶対で頭脳や性格など、下手な兵士よりも事細かに調べられ評価が与えられる。当然だが、殆どの者が生きるために絶対の忠義を誓った。頭脳も当然ながら優れた者しかいない。
ただ、研究者の中にはマッドなサイエンティストがいるものだ。
結果を出すだけに、バランスの調整は困難を極める。結果は常に出しており、上層を満足させた。具体的な例を挙げると「強化人間の治療法(解毒)の確立」・「準サイコミュ兵装の使用難易度引き下げ」・「ファンネルの省エネ及び搭載数増加」となる。
この中で、MSに直結するのは準ずるを含めたサイコミュ兵装だった。
満足にサイコミュ兵装を運用できる機体にキュベレイが浮上する。キュベレイはハマーン・カーン専用機で持ちうる技術の粋が注入された。代償に、操縦からファンネルの操作まで難易度は恐ろしく高かった。これではワンオフで効率が悪いため総じてデチューンし、難易度を下げた量産型が登場しているが、原則としてニュータイプ又は強化人間の運用に限られてしまう。
このパイロットが極々限られる問題に対して、一般兵でも扱える準サイコミュ兵装を搭載した機体を計画した。ジオングで培って連邦から得た有線式ワイヤーのインコムを磨き上げる。これを既存機に準サイコミュ兵装として組み込み、一機当たりの火力を底上げした。同時にトリッキーな戦闘スタイルを切り開いた。
なお、現在はガンダムMK-Ⅴを基に開発中の精鋭部隊向けが確認される。
そんな、素晴らしい成果を出す研究者たちが一様に「解せない」というのが白狼に収束した。なぜなら、彼はニュータイプに覚醒したシャア・アズナブルと並ぶ存在なのだから。なんせ、かのアムロ・レイと戦えば互角の戦いを展開してみせた。全宇宙中継された際の映像が残っているため、否定のしようが無い。直近の直近では木星帰りのパプテマス・シロッコに勝利した。
これがニュータイプと判明すれば、何てことは無くストンと腑に落ちてくれる。
しかし、彼はれっきとしたオールドタイプなのだから、これが全然納得できなかった。
「ワイヤーの動きは改善されている。だが、攪乱としては依然として子供だましに過ぎないな。私には容易に読める」
私はニュータイプ研究所の頼みにより実戦方式の訓練で標的機を務めた。腕利きの一般兵では飽き飽きしてデータを収集できないと言われ、エースパイロットが強化人間やニュータイプだと同じ土俵であるが故に意味がないらしい。あくまでも、普通のパイロットの中でトップクラスを求めた。
幸か不幸か分からないが、必然的に私に収まった。
まぁ、部屋に閉じこもって管理職の仕事に時間を割かれるよりかは遥かに楽しい。
「少し揉んでやろう」
(!?)
「はは、なに、無理に追いつこうとしないでいい。無理と思った時は食いつかず離れる。相討ちより生還する方が圧倒的に価値があるぞ。生きて帰り次につなげること以上に大事なことはない」
実戦さながらの動きでも彼らには気を遣っている。私が生前から持つ才と積み重ねた経験、毎日の日課としている研究が融合した時の戦闘力は洒落にならなかった。もちろん、近接の格闘戦で真価が発揮されるのであって、中遠距離の射撃戦はさっぱりというのはご愛嬌である。
「あまりにも狙いが正確過ぎると殺気として現れる。私のような古兵はブラフを仕掛けないとね」
(な、なるほど)
腕利きのニュータイプ候補が冷や汗を浮かべる程に機動は洗練された。我らがジオンのニュータイプ候補は数多い。あくまでも、「候補」のため母数が多くならざるを得ないが、有線式インコムを上手く操ってみせた。しかし、誰もに共通する点に正確な射撃を求め過ぎる。一撃必殺の少ない弾で敵機を撃墜し省エネを心がけるのは立派だった。しかし、私のような古兵はブラフを織り交ぜることで戦いを有利に進める。
「対ニュータイプで意識しているのは、豊富な実弾兵装を用いること。君達の機体がビームを主体としていることは決して間違いじゃない。戦いの中で常に残量を気にしなければならず、数を稼ぎ辛いことは留意すべきだ。実弾は古典的だが堅実で数を稼ぎ易く、敵機に撃ち込み続けて阻害できる」
私は実弾兵装を好み続けた。実際に標的機として操るゲルググJはコンパクト・ビーム・マシンガンをマシンガンに換装する。ザクは局地戦仕様で戦場が限定される場合にしか使えなかった。よって、汎用機と設計されたゲルググJを独自にチューンした専用機を一先ず運用する。
話を戻し、実弾兵装はビームが主流となった今でも絶大な長所を活かした。ビームは機体の出力に依存し、仮にEパック式でも息切れし易い。一撃必殺で仕留めればよいと考えても、外さない確証はどこにもなかった。実弾兵装は堅実で使い易く予備を携行すれば長期戦に耐え得る。そして、ビームよりも絶え間なく弾幕を張り敵機の機動を阻害させられた。これが対ニュータイプに威力を発揮する。
随分と先であるが、実弾兵装を満載したスタークジェガンがクシャトリヤと好勝負を演じたのが証拠だ。
「グレミー」
(は、はい!)
「君のバウは可変機だ。ニュータイプを相手したら、どうする?」
ちなみにだが、前線仕込みの教育を叩き込むためグレミー君も連れて来た。トト家という名家出身であり士官のため試作可変機が与えられる。アナハイム社から得たZガンダムの設計を参考にしたが、パイロット共々荒削りな点が多く残った。
(可変時の速度を活かした一撃離脱戦法を仕掛けます。変に格闘戦を挑むよりも一撃離脱で火力を集中させ、迅速に離脱することが最も安全だと思います。いかがでしょうか)
「間違いではないが、教科書通りになることに注意するんだ。可変機体は正面に火力を集中させられ、持ち前の高速性能より、一撃離脱戦法を得意とした。グレミーのバウはビームライフル、ビームバルカン、ミサイルの三種が該当する」
(はい、理解しているつもりです)
「ただ、突入時は多少照準が狂っても回避機動を織り交ぜないと撃墜されかねない。いかに火力を集中させようと単調な動きでは容易に狙撃される。ガザは集団戦法で火力集中に特化しているが、バウはよくても複数機の小隊単位に留まる」
バウは別のアプローチから開発された可変機である。ガザシリーズがブロック構造を採用した簡素な機体であるのに対し、バウはアナハイム社からZガンダムの設計を入手すると模倣して制作された。グレミー君の機体は試作の一つで将来的な量産化を目指し、訓練や実戦の場で貴重なデータを収集するために前倒しされている。ガザシリーズの集団戦法と異なり単騎又は複数機の小隊での戦闘が見込まれて彼の技量が勝負を決めた。
したがって、相手がニュータイプ及び準ずる者を想定した訓練も行われる。
まだまだグレミー君は甘いが優れた素質を有しているのは間違いなかった。
「厳しい時は素直に退くことも賢い選択だからな」
対ニュータイプの講義は終わらない。
続く