【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

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以前行っていましたが、会話に限定して「MS」を「モビルスーツ」に直しています。

もし、逆に読みづらければ遠慮なくお申し付けください。

※いつもより少し短めになっていますので、穴埋めでもう一話投稿日中に出すかもしれません


アッシマーは終わらない

時は少し遡る。

 

サイド1を発したスパルタン隊はコロニー付近に停泊するジオンの軽巡洋艦を確認した。同時にジオン側はムーア同胞団と誤認している。スパルタン隊はれっきとした地球連邦軍の特殊部隊だが、パイロットの中にムーア同胞団出身が在籍した。ジオン艦側の誤認を必ずしも間違いとは言い難いが、基本は純性の地球連邦軍で構成される。

 

「どうしますか。退避勧告など警告を発するぐらいは可能ですが」

 

「やめなさい。以前なら警告なんて生温く即刻撃沈したけど、現在は相互不干渉を合意して無駄な苦労になる。それに、本艦の任務はリビング・デッド師団を吸収した南洋同盟を討つこと。我々は何も見ていません」

 

「承知しました」

 

本当の偶然でジオン艦と遭遇したが「何も見ていない」と処理した。ジオン艦も察したのか「知らない」と言わんばかりに停泊を継続している。少し前ならともかく現在は互いに不干渉で合意した。ここで戦闘に移れば約束を反故にしたと汚名が付いて回る。そして、デリケートなコロニー宙域で戦闘を回避できるにもかかわらず、自ら仕掛けて戦闘に突入したことは許されざる大罪に匹敵した。

 

やはり、ここは知らない・見ていないが正解なのだろう。

 

「南洋同盟の動向は?」

 

「目立った行動は見せていません。しかし、離散したティターンズを掻き集めるなど確実に勢力を増しています。ジオン残党もいて規模は拡大を続け内容も充実しているため、単なる反乱軍と判断するのは極めて危険と思います」

 

「わかっている。地球上での戦闘で損害を出してしまった。本艦のモビルスーツ運用能力から増援を受け入れたが足りない」

 

「私ではご不満でしょうか」

 

「いいえ、ブラン少佐のアッシマー隊には全幅の信頼を置いています。アッシマー隊に限り独立した戦闘を許可しているのが証拠ですよ」

 

南洋同盟追撃の任に当たるスパルタン隊は地球上での戦闘で大きな損害を被った。その穴埋めで地球連邦軍の一個精鋭小隊を受け取る。それがブラン・ブルターク少佐のアッシマー隊だ。彼が指揮する部隊はエゥーゴ及びカラバとの戦闘ですり減り、サイコガンダムの無差別攻撃を止められなかった失策から解体されている。

 

しかし、ブラン少佐自体は無差別攻撃を指示した事実は無かった。所属は地球連邦軍のため大半の責任をティターンズに押し付けて無罪放免を与える。ただ、母地である研究所を失った都合で異動が命じられた。彼の卓抜された実力をスパルタン隊の司令官に買われると、独立した指揮権を認められ、南洋同盟追撃任務に参加する。

 

そして、至極当然のようにアッシマーを運用した。地球連邦軍の主力機はティターンズ機の手直しが決定している。したがって、アッシマーが空を飛び回ることは少なくならざるを得なかった。それでも、性能は同時期の可変機でもトップクラスに高い。パイロットの技量次第で大化けする潜在能力を秘め、TR計画ではドラム構造が評価された末にTR3ことキハールに繋がった。

 

その見た目の割に一切侮れないのがアッシマーである。

 

「我々のアッシマー隊は宙域戦闘仕様に改修されている。南洋同盟の切り札とも対等に渡り合う自信がある」

 

「えぇ、存じております」

 

相も変わらずの自信家でもパイロットの腕は確かで指揮官の戦術眼にも優れる。アッシマーの特性を活かした戦闘は見事で、戦場が宇宙に移っても宙域戦闘仕様で対応した。エースパイロットに戦場の違いは関係なく、むしろ可変機の強みを引き出せると生き生きと舞う。

 

そんなアッシマー隊が異様に聞こえても、実はスパルタン隊の中で常道を貫いた。強襲揚陸艦スパルタンにはアトラスガンダム(宇宙戦仕様)、パーフェクトジオング(スパルタン隊仕様)と如何にもな機体が勢揃いする。もちろん、普通の機体もあるが特殊部隊故にカスタムされた。数少ない量産機のアッシマーは健常に振り分けられる。

 

「私はアッシマーの整備に行ってきます」

 

軽く作戦を確認してからブラン少佐は退室して格納庫で整備が続く愛機アッシマーの所へ向かった。どれだけ愛機が好きなんだと言いたくなるが、実は部下達と密談するためであり、格納庫内でも人が寄らず死角となる場所で合流した。

 

部下達はエゥーゴ及びカラバとの戦いから連れる、まさに気心の知れた仲で連携力は抜群に高い。当初はハイザックをSFSで運用したが、ブラン少佐と協同するためアッシマーを与えられた。アッシマー3機を1小隊として戦うのが基本に定まる。

 

スパルタン隊随一の可変機を運用する強襲隊を為した。

 

「少佐、やはり異常です。嘗て、ジオンのリビング・デッド師団が生み出したリユース・P・デバイス。それを奪取する目的と雖も機体はやけに揃い踏みでした。ムーアの政治力や地球連邦の意向が強く反映されている。そう見るしかありません」

 

「私も違和感を覚えた。鹵獲したというニュータイプ専用機にガンダムタイプが配備されている。あまりにもで偏りの顕著が過ぎた。南洋同盟との戦いは格好のアピールになると認識しているのだろう」

 

「我々は捨て駒にされた可能性が…」

 

「無きにしも非ずだ」

 

リビング・デッド師団を追撃し南洋同盟を討つ大義がある。しかし、それにしても、スパルタン隊は下手な精鋭部隊よりも遥かに強力だ。アッシマー隊が補充の増援で送られる必要性を感じない程にである。ジオンから鹵獲したニュータイプ専用機、ガンダムタイプだけで恐怖を覚えてもおかしくなかった。

 

しかし、ブラン少佐は別の方面で嫌悪感を抱かざるを得ない。

 

「ニュータイプに頼らなければならないとは恥ずかしい。それに信頼も出来ん」

 

「信頼し頼るべきは己の腕だけ」

 

「その通りだな」

 

地球連邦軍オークランド研究所の守備隊に就いた過去から、ニュータイプや強化人間に対する不信感を人一倍に有した。また、ホンコンシティを無差別攻撃したサイコガンダムの失態も響いて助長される。

 

また、ブラン少佐のアッシマー隊はスパルタン隊と別の密命を帯びた。本当の彼らは『増援』ではなく『監視役』として派遣されている。ムーア同胞団前首長の子がいたり、ニュータイプがいたり、統合参謀本部第三局次長がいたり、構成員は癖があるどころの話ではなかった。地球連邦軍の上層部は羽振り良く回したが、南洋同盟に触発されて裏切る可能性を踏まえて監視役を送る。

 

ブラン少佐自体は上層部への気持ちは決して芳しくなかった。しかし、それ以上に嫌悪感を抱いたのがスパルタン隊や南洋同盟なのだろう。天秤にかければ1秒も経たずしてガクンと均衡は崩れ、監視役を承諾して隊内部から敵味方の情勢を探った。

 

アッシマーを操り舞うことが出来るなら、それに越したことは無い。役割がどうであろうと構わない。

 

「我ながら、うまく立ち回っている」

 

ブラン・ブルタークに薄ら笑みが浮かんだ。

 

続く

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