【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
追記
UA30万ありがとうございます
始まりはガンダムと共に
サイド1の廃コロニーを隠れ蓑にマシュマー&キャラ隊は潜伏した。
マシュマーはキャラ隊と合流しても積極的な行動は採らない。民間人に変装させた工作員を増員して情報収集に徹した。ハマーンへの報告の場では叱責を覚悟して硬直を余儀なくされる。
ただ、それは杞憂で終わった。
「よく持ち堪えたな。マシュマー」
「はっ!しかし、積極性を欠く行動と今更ながら恥じております」
「恥じるな。お前の判断は正しい。怒りに身を任せてサイド1を襲撃してはならん。アナハイム社から追加の情報提供があり、ロンドベル隊の動向を把握した。サイド1の守備を務めるのは半分誤りらしい」
「半分が誤りですか」
ハマーンはアナハイム社から情報提供を受けている。アナハイム社は民間企業であることを盾に中立を貫いた。しかし、実際は一枚岩ではなく連邦軍から寄せられた情報を流している。新型ガンダムの試験をサイド1演習場で行うのは正しいが、ロンドベル隊はガンダムを強奪するため動いた。
連邦軍の内部でガンダムを巡る騒ぎが起こるのは珍しくない。アルビオン隊はラビアンローズに寄港した際、ガンダム試作三号機こと『デンドロビウム』を(事実上)強奪した。
「我らにとって、ガンダムは明確な脅威である。同時に、ロンドベル隊に下るのも避けたい。言いたいことは分かるな」
「よくわかりました。しかし、キャラ隊を含めましてもです。連邦軍の拠点に攻め入る程ではございません」
マシュマーは自信家だが冷静な指揮官である。私的な信仰心は抑え込んで「厳しいことは厳しい」と率直に伝えた。彼を見定めていたのか、ハマーンは微笑を浮かべる。
「私を見くびるな。お前達へ強力な援軍を派遣している」
「お心遣い、わが身に染み入ります」
サイド1自体が地球連邦軍の拠点である上にロンドベル隊とは恐れ入った。マシュマー隊とキャラ隊の二部隊が合流しても厳しい状況に変わりない。よって、マシュマーとキャラの両名は協議の末に、サイド1に来るガンダムの撃破又は奪取は不可能と判断した。
「その増援はどなたが来られるのですか」
「聞くまでもなかろう」
「あらためて、心配をかけて申し訳なかった。見ての通り、私は五体満足だ。安心してもらいたい」
マシュマーとキャラが直立不動で敬礼する姿は印象的かもしれない。癖のある二人をピシャリと封じられる人物は片手で数えられるが、政治と外交の舞台で戦うハマーンは本国に残り不在だ。
「まさかソロモンから直行されるとは…」
「ソロモンへの出張を変更した。応急修理を済ませてから直行の強行だよ。ハマーンからロンドベル隊と刃を交えて欲しいと言われてな」
「ロンドベル隊と敢えて刃を交える…」
そう、増援とはシン・マツナガ大佐の高速戦艦ドズルである。
幸いなことに、彼は当時格納庫でMSの整備作業の監督に出ていた。特に負傷することなく五体満足である。狙撃も艦橋をギリギリで掠らせる程度のため、ドズルの損害も微小と判断された。一先ずの応急修理で間に合わせるとハマーンの命を受けてサイド1へと増援に変わり向かう。
建前はコロニー共栄圏を築くため地球連邦軍の牙城を崩すことにある。裏の本音はマシュマー&キャラ隊でも手を出せない、例の新型ガンダム及びロンドベル隊と刃を交えて実戦という貴重な情報を得たい。あわよくば、奪取も狙いたいが贅沢は求めなかった。情報を集められるだけ集めてスタコラサッサで逃げ帰る。
「ア・バオア・クーの旧エゥーゴ兵には悪いが、ジオンの正義はアースノイドを排したスペースノイドの繁栄に定まった」
「甘えは要りません。勝った者が正義です。地球連邦を追いやり、南洋同盟との共同戦に引きずり込み、最後に第三勢力を撃破すれば丸く収まります」
「上手く行くか、まだわからんだろう」
ジオンの方針としては第一弾階として宇宙から地球連邦を追いやる。そして、第二段階は講和条約を締結して対南洋同盟の共同戦線を全面的に拡大する。最後の第三段階はジオンと地球連邦の連合軍で第三勢力を叩いた。なお、地球への再侵攻は端から放棄している。一年戦争の二の舞を演じるのは御免だった。
もちろん、壮大なプランが完璧に嵌るのはあり得ない。一日にしてひっくり返ることも十分に考えられた。よって、本国のハマーンらは強硬姿勢を見せても連日会議を開き、ありとあらゆる事態に対応する修正案を練る。
「それは私よりも上の人間が考えることだ。さて、君たちの部隊について知りたい」
「お先にどうぞ」
「では、私どもマシュマー隊は軽巡エンドラを母艦に活動しております。搭載機はガルスJが1機にズサが5機の計6機です。頭数と火力は揃っているように聞こえますが、相手を踏まえると全く足りていないと申し上げます」
「相手が悪すぎる。なに、謙遜しないでいい」
マシュマー隊は新鋭機で固められ、『ガルス』と『ズサ』から構成された。
ガルスJは近接戦を意識した汎用機である。武装はエネルギーガン、各種ミサイル、バルカン、伸縮式アームパンチ、ビームサーベルと多彩を極めた。しかし、次期主力量産機に選ばれない。というのも、ガルスJは設計段階から実験機の性質を帯びた。地球連邦系統のリニア・シートやムーバブル・フレーム等の技術をジオン系統に組み合わせる。両国の技術が噛み合ってどうなるのかを調べる意図が込められ、選定に際しての競合でライバル機であるドライセンに負けても仕方なかった。
ズサは中距離の火力支援を担う。機体本体にブースター付ミサイルポッドを備え、単機で小隊並みの火力を発揮した。更に複数機が纏まると中隊から大隊並みに跳ね上がる。ミサイルがミノフスキー粒子散布下で使えないが、簡単に数を稼げるのは無視できない強みだった。また、発射後は重荷を切り離して本体で白兵戦も担える。本体の武装は統制ビームライフル、バルカン、小型ミサイル、拡散ビーム砲、ビームサーベルを装備した。
「キャラ隊はミンドラを母艦にリゲルグとシュツルム・ディアスの計6機を動かします」
キャラ隊は一転して、旧式化した機体を近代化改修した『リゲルグ』と『シュツルム・ディアス』を運用する。
リゲルグは名前から読めるようにゲルググを改修した。素直な操縦性のゲルググを基に訓練機に仕上げる。しかし、思った以上に良好な性能を発揮すると格闘戦を好むパイロットへ支給された。改修で追加された肩部バインダーのおかげで高い推進力を誇る。武装は統制ビームライフルやグレネードランチャー、ミサイル、ビームランサーが揃った。
シュツルム・ディアスも名前からリック・ディアスを改修する。本機はアナハイム社が改修した際にジオンに横流し(里帰り)されてジオンが我が物顔で運用した。大きな改修内容としてバインダーをジェネレータ内蔵式に換装した。機体と独立したビームカノンが追加されており推進力も増大した。ただし、格闘戦能力は低下して持ち前の火力で押し切る運用が要求される。武装は先述のビームカノンにバルカン、ビームピストル、クレイバズーカ、ビームサーベルとあまり変わらなかった。
「ありがとう。不足していると言う割には十分だと思う。新型ガンダムの撃破とロンドベル隊の壊滅を望まなければ十分に戦えた」
「一つよろしいでしょうか」
「なんだ?」
「恥ずかしながら、大佐はどのようなモビルスーツを使われているのでしょうか」
「あぁ、口で説明するよりも出撃した方が早いな。百聞は一見に如かずだからね」
これを聞いて出撃が待ち遠しくならないか?
続く