【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける 作:5の名のつくもの
新型ガンダムの強奪を狙うロンドベル隊は想定外に襲われた。サイド1がジオン軍による奇襲を受け、強奪は諦めて冷静な対処を試みるが、連鎖的にイレギュラーが発生している。MS隊を率いるアムロ・レイは戦場を俯瞰して指示を飛ばし、奪取対象の新型ガンダムを味方に引き入れる方向に転換した。予定した武力を伴う強引な方法ではなく、ジオンの奇襲を逆手に取った引き入れにシフトする。
「ZZガンダムは敵モビルスーツ隊に火力を発揮し続けてくれ!無理に戦わなくていい!ロンドベルがカバーする!」
(お、おうよ!)
アムロは己の経験から、新型ガンダムに乗り込む羽目になった少年に負い目を感じた。凝り固まった規律を持ち出さないで可能な限りの支援を提供する。ロンドベル隊の司令官であるブライトも「緊急時故にやむを得ない」と判断した。新型ガンダムに乗る少年をロンドベル隊に引き込む代わりに事象を揉み消している。ブライトもアムロの過去から負い目を覚えたわけだが、実はガンダム伝説の再来を期待していた。
とはいえ、新型ガンダムの操縦は覚束なくて心配になる。ただ、一個艦隊に匹敵する馬鹿げた火力を発揮でき、少年は作業用モビルポッドを動かした経験を転用した。更に己の直感を信じてガンダムを動かしてジオン機を寄せ付けない。
総じて、幸運が積み重なった。
「ジオン機も弁えている。荒廃しても民間人がいるコロニーを損傷させるわけにはいかないか」
アムロの目はジオン機が奇襲を仕掛けた割に消極的なことを見抜いた。これはサイド1というコロニー宙域であることが大きい。コロニーは概して脆弱な物であり過貫通を起こす、ビーム兵器の使用は奨励されなかった。実弾兵装も大々的に使用する場と言えない。サイド1防衛隊を含めたロンドベル隊もジオン機も誰もが消極姿勢を余儀なくされた。
これが功を奏し、ガンダムはロンドベル隊により迅速な保護が行われる。そして、相も変わらず圧倒的な火力を吐き出すのはアナハイム社が開発した『ZZガンダム』と識別した。MSの大型化と高火力化の頂点に達した機体と思われる。
これにはアムロも感嘆の声を漏らさざるを得なかった。
自分が愛した最初期のガンダムは極めてシンプルな武装構成である。それがどうだ、今は火力の百貨店と化した。まだ半世紀も経過していないのにもかかわらず、数え切れない、度重なる戦争が促進したのである。MSを取り巻く技術は恐竜的な進化を遂げた。
昔を懐かしむのは程々に切り上げて戦場を俯瞰するが戦況は有利である。ジオン機は消極的で自軍の被害を最小限に抑える行動が目立った。ZZガンダムを狙う素振りを見せても本気ではない。ロンドベル隊は「ZZガンダムの保護」と「コロニーを傷つけない配慮」が足を引っ張った。お互いに弾を消耗するだけの不毛を極める。
ズルズルと引きずるだけかと思われた。
まさにその時である。
「来る!」
アムロに強烈な威圧感が襲いかかった。
「久し振りだな。アムロ!」
「お前は!?」
原則として、アムロに冷や汗を浮かばせる相手は同等のニュータイプに絞られる。仮にニュータイプと置いた場合はニュータイプが放出する特有のプレッシャーを感じた。しかし、今回はプレッシャーとは別と思われたる。いわば、威圧感が襲来した。すかさず、アムロはZプラス用のビームライフルを撃ち放つが綺麗に回避されている。
照準越しに見える敵機は白く塗装された次世代のザクだった。
「シン・マツナガっ!」
「マシュマーはしくじったか」
マシュマーはガルスJの単騎で奇襲を試み突入口を作ることに成功した。しかし、突如として、新型ガンダムと呼称する『ZZガンダム』が自ら姿を現すと状況は一転する。呼応したロンドベル隊が素早く穴を埋めてマシュマーを弾き出した。失敗を悟ったマシュマーの部下が救援に現れると、これにキャラ隊も加わって正面衝突に移行している。
「ミネバ親衛隊各機へ、マシュマーとキャラの隊を支援しろ。私はロンドベルを抑える」
ソロモンから連れる仲のミネバ親衛隊はマシュマー隊及びキャラ隊の支援に回した。損害は少ない方が良いと相場が決まっている。ミネバ親衛隊機は最新のドライセンに統一されており、自慢の重装甲を押し立て守らせる。
ドライセンは改良型のロケット・バズーカとビーム・トマホークによる白兵戦に特化した。痒い所に手が届くよう、マシンガンを腰にマウントさせる。マシンガンはバズーカが使えない近接戦に備えたが両腕部三連装ビームガンの代替を務めた。当初は両腕部に三連装ビームガンが搭載される予定だったが、ドライセンの重装甲が削られてしまう。これはいただけないとして採用せず、近接戦向けのマシンガンを持たせた。
ジオン紋章を守る白狼のマークが刻まれたドライセンが両部隊の救援に向かうのを見送る。
「マシュマーはZZガンダムを抑えている。キャラはマシュマーの援護に入るが、どうもロンドベルが邪魔か。ならば、私が引っぺがすしかあるまい」
朝潮と親潮の如きジオン系と連邦系が合流する、潮目のソロモン工場で受領した新鋭機の出番が来た。対外的なパフォーマンスを考えても、単騎でロンドベルに挑むのが最適と判断する。1年前まで味方だった友を敵と定めるのは心苦しいと思いがこみ上げた。
いや、甘さを捨てなければ勝てぬだろう。
「シン・マツナガ、ザクⅢ参る!」
「やはりお前が」
「思い出話に興じている暇はない。悪いが部下のため、ロンドベル隊は私が止めさせてもらう」
「やれるものなら!」
「いくなっ!」
アムロが制止するも一機のジムⅢが飛び出した。このジムⅢだけは強化型のようで見た目がゴテゴテしている。ベテランかエース向けのカスタム機と読むが、肝心の腕前は特段にもならない。どれだけ優れたMSでも腕が追従しないと100の力は出せなかった。逆に骨董品でも腕が良いと本来は50の力が100にまで引き上げられる。
「若いな」
ビームライフルとマシンガンを並行させた射撃から、一転して二本のビームサーベルで切りかかった。上手く仕掛けたように思われたが、何とも言えない、あっけなく弾かれては追撃のビームを撃ち込まれる。ただ、一応でも精鋭らしく盾を合わせて免れた。
「アムロにしては面白くないモビルスーツじゃないか。君にこそ、例の新型ガンダムが相応しいと思ったが」
「その姿で言われると、何も言い返せないな」
(知り合い…なのか?)
アムロと言えばガンダムというのが定説である。しかし、上層は彼の反乱を極度に恐れて量産機以上でガンダム未満の機体にZプラスC1型を与えた。複数生産されたZガンダムやその後継機、完全新規のガンダムを与えるのはあり得ないと言わんばかり。いくらなんでも、それは無いだろうと同情の念が浮上した。
そんな彼と対比されるのがロンドベル隊に単騎で挑む白い次世代型ザクだろう。いつまでも骨董品で戦われては困った。かと言って、正規の身分で戦う際にザクから離れると士気向上の効果を見込めない。総合的に勘案した結果が次世代型の『ザクⅢ』である。ジオンの古き良き汎用機思想を継承しながら、TRなど連邦系を混ぜ込んで開発された。
しかし、相応にコストが嵩んでいる都合で高級量産機に設定される。高級士官やエースなど限定的な配備に留まり、主力量産機はガザ(後期型)とドライセンが務めた。現在は親ジオン派のアナハイム社と交渉してザクⅢの汎用性を維持してコストダウンを図った量産機を計画している。
「ロンドベル隊の皆様には、ジオンの白狼を相手してもらおうか」
続く