【復刻】ソロモンの白狼になって宙を駆ける   作:5の名のつくもの

98 / 113
全てが誰もが動き始める

高速戦艦ドズルとエンドラ&ミンドラの3隻は仲良く月へと針路を変えた。丁度良い時期に月が接近するため、親ジオンの色が強いグラナダ市へと向かう。月では親ジオン派と親連邦派が燻るのもあり抑え込みに入った。グラナダはジオン派が抑えてフォンブラウンはエゥーゴが権力を握り、工場で派閥の分かれるアナハイム社から情報を得られる。少なくとも、グラナダはジオンの特殊工作部隊が潜伏しているため上手く監視の目を潜り抜けられた。

 

その道中でシンは艦医から安静及び点滴を命じられる。ベッドに横たわりながらビタミン剤など栄養満点の点滴の管を通された。どうやら、艦医は本国直々の指示で健康状態を保つよう厳命されたらしい。本人はともかく、ジオンとしてはドズル・ザビの遺志を継ぎ、国家元首の後見人である、白狼や白刃と称えられるシン・マツナガには健康でいてもらわないと困るからだ。

 

ベッドに横になりつつ、副官というか秘書と言うか、どうも判断しかねるグレミーから報告を受ける。

 

「やはり、例の新型ガンダムは高火力・重装甲・高機動の全てを兼ね備えたか」

 

「はい、ガルスJのエネルギーガンを防ぐほどの重装甲に圧倒的な手数の武装、無理やりにでも機体を動かすパワーと聞きました。マシュマーに全く歯が立たないため消極的にならざるを得なかった、とまで言わしめております」

 

「私が接敵しなかったのは幸運かもしれない。そのようなモビルスーツを運用できる程に地球連邦の底力は末恐ろしい」

 

分かってはいたがリークされた情報と照合を進めたり、マシュマーの報告を受けたり、等により新型ガンダムは『ZZガンダム』と断定した。アナハイム社が究極のガンダムを突き詰めた機体として、「高火力」・「重装甲」・「高機動」の三拍子が全て揃っている。ガルスJのエネルギーガン(実質的にビームライフル)が弾き返され、ミサイルも歯が立たなかった。反撃として連装ビームライフルやビームキャノン、ミサイルと火力の百貨店を建てる。あまりにも火力が高く防御力もあるとマシュマーのガルスJは格闘戦に移行できなかった。

 

つまり、近づくことさえままならない。

 

「結果的にですが、ガンダムはロンドベル隊に渡ってしまいました。これで奪取や破壊はほぼ不可能です」

 

「元より想定した状況だろう。特段悲観するまでもない。地球連邦軍がZZガンダムを擁立すると申したなら、ジオンはガンダムに対抗するカウンター手段を送り出す用意があった」

 

「カウンター手段とは…」

 

「F機関が研究しているサイコミュだ」

 

地球連邦軍の誇るガンダムに対して、ジオンが送り出すカウンターはサイコミュである。

 

ガンダム伝説において、外すことの許されない激闘にア・バオア・クー攻防戦を挙げられた。アムロ・レイのガンダム(最終戦仕様)はシャア・アズナブルの操るジオング(未完成)と相討ちに終わる。当時の最新鋭機であるゲルググでも通用しなかったガンダムを撃破したのはサイコミュだ。

 

なお、青い巨星のグフや黒い三連星のドムなど、ガンダムを苦しめた場面は多々存在する。

 

「まさか、本国は強化人間とサイコミュ搭載型モビルスーツをセットで送ることが」

 

「決定に至っているのかは不明だが、考えられなくはない。まぁ、私の管轄から大きく外れた。サイコミュやら強化人間やらはハマーンが自ら率いている。詳しいことは私でも把握できないからな」

 

ジオンのサイコミュ研究は地球連邦に接収された。しかし、大半はさして重要でない内容で取捨選択により置いてけぼりにされる。ドクターやエンジニアなどから構成される研究機関が精力的に進めた研究はアクシズに移転された。ア・バオア・クー最終決戦前に技術者・化学者をアクシズへ疎開させたのが現在に繋がる。

 

そして、アクシズは独自の秘密研究機関である『F機関』を創設した。鉱物資源や人的資源にも限りがあるアクシズが超大国の地球連邦と戦うにはどうするべきかじっくり考える。現在はミネバ・ザビ様を国家元首に復古を果たしているが、国力の差は隔絶されており、真っ当に埋めることは絶対に不可能なのだ。

 

地球連邦は合理主義に基づき「圧倒的な量」を掲げるが、ジオンは国力を鑑みた苦渋の末に「圧倒的な質」を選ばざるを得ない。どうしても、持ちうるものが限られて多方面に向けられない事情があった。質の高さが魅力的なサイコミュへ一点集中させて対抗するしか手は無い。

 

もっとも、サイコミュ研究については自身もニュータイプであるハマーンが直々に指揮した。

 

機密を漏らさぬよう統制が厳に敷かれて、内実についてはシン・マツナガでさえ知らなかった。

 

「地球連邦軍の動き次第では月面の活動予定を変更するかもしれない。今のところ、アナハイム社グラナダ工場で特殊工作部隊と落ち合う。仮に地球連邦軍と接敵しても戦闘は可能な限り回避しろ。月面都市の市民生活が脅かされないよう全力を尽くす」

 

「マシュマーとキャラにも伝達し、強く求めます」

 

「すまない。この状態だから代理を頼んだ」

 

「このグレミーにお任せください」

 

その頃はというと。

 

~アクシズ~

 

「どのような調子だ」

 

「はっ、ニュータイプ人材の育成は前途多難でありますが、サイコミュを満載した弩級モビルスーツは順調に進んでいます。エルピー・プルというニュータイプでなければ、碌に動かすこともできない難易度の高さですが…」

 

「ワンオフで終わらせるつもりはない。キュベレイを量産化させたのだ。不可能ではあるまい」

 

「建造することは可能です。しかし、パイロットというのが難しく」

 

ハマーンは本国から近くのアクシズに隠密で赴き、自身の直下に置いたF機関より直接口頭で首尾を聞いた。サイコミュ及びニュータイプ研究は最上級の機密保持が図られ、機能を本国に戻すことなくアクシズでの研究を継続させる。これは本国では市民の目が多い上に他コロニーからの人間が訪れるため、情報漏洩を防ぐ面では不備が否めないからだ。ただし、F機関はアクシズ内で相次ぐ機能の本国移転で空いた区画に入居し拡大を続ける。

 

「まぁ、よい。人材の育成はモビルスーツを開発するよりも難しい。ジオンが宇宙を制圧するにはサイコミュの力が欠かせん」

 

「よく存じております。故に我々は強化人間を提案いたします」

 

「地球連邦軍も同じことをしている。真似では勝てないぞ」

 

ニュータイプ伝説が過大に評価されているのは否定できない。ニュータイプの威力は目を見張った。しかし、ピンポイントに選抜することは至難の業を通り越してしまう。仮に素質のある者を見つけて一から育成すると雖も長時間を要し間に合わないことは明白だった。ハマーンも自身の経験から一定の理解を見せても指揮する者として妥協するわけにはいかない。

 

そこで、提示されたのが強化人間という案だが、地球連邦軍も同様の研究を行った。敵と同じことをしていては良くて互角で悪くて劣る結果に至るだろう。しかし、ジオンはティターンズ解体等の事情で亡命を希望するサイエンティストを幅広く受け入れた。

 

「崇拝に近い指揮官を据えることで高度な連帯感を有し、欠点である安定性を改善することに成功しました。強化人間を集中運用する一種の兵団を組み、崇拝者の一般兵指揮官を置くのはいかがでしょうか」

 

「強化人間兵団か。我ながら、恐ろしき部隊を作ることになろうとはな。ならば、注文がある」

 

強化人間は無理矢理な部分が大半を占めて安定性に欠ける。地球連邦軍もサイコガンダムの例があり、独断専行を止められず無差別攻撃により、一つの都市が壊滅する黒歴史を世に残した。安定性向上の工夫が考案される中で、最も高い効果を示したのが崇拝者の性質を帯びた、一般兵の指揮官を置くことである。ある種の親交意識が連帯感を生じさせて逸脱を防止した。指揮官は一般兵のため軍上層の指示に忠実に働いてくれる。

 

なるほど、上手くやった。

 

「仰せのままに」

 

「指揮官も生半可な兵士では務まらないだろうよ。私が思う最適な兵は…」

 

続く

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。