ウルトラ5番目の使い魔   作:エマーソン

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第48話  激ファイト!エイティ&ウルトラセブン

 第48話

 激ファイト!エイティ&ウルトラセブン

 

 宇宙恐竜 ゼットン 登場!

 

 

 ウルトラセブン、元・光の国の恒点観測員340号。ウルトラ警備隊とともに、数々の宇宙侵略者と戦い抜いたウルトラ兄弟のNo.3だ。

 だが、セブンの活躍から13年後の1980年。地球は人間の心の生み出すマイナスエネルギーから生まれる怪獣の脅威にさらされていた。この危機に、ウルトラの父は若きウルトラ戦士を地球に派遣した。

 彼の名はエイティ、ウルトラマン80。彼はマイナスエネルギーの発生を抑えるためには地球人の心を正しく育てることが必要と考え、地球人・矢的猛と名乗って中学校の教師として働いた。

 次々に襲い掛かってくるマイナスエネルギー怪獣。さらには宇宙からの侵略者や宇宙怪獣たち。矢的猛は地球防衛組織UGMとともに、勇敢にそれらに立ち向かっていった。

 矢的猛は、エイティは戦い抜いた。そしてその中で、地球人の心と力は、邪悪な怪獣たちに決して負けないという確信を得た。

 地球人たちの成熟を見届けて、エイティは地球を去った。

 しかしエイティは地球を後にしてもなお、地球人たちのことを気にかけ続け、それから二十六年後にその思いはひとつの形となって結実することになる。

 人々は思っている。ウルトラマン80は今でもどこかでウルトラ兄弟No.9として平和のために戦い続けていると。

 

 そして今、エイティは時空を超えたハルケギニアで、ウルトラセブンとともに強敵ゼットンに挑もうとしている。

「シュワッ!」

「デュワッ!」

 エイティとセブン、銀の戦士と真紅のファイターが同時に構えを取った。

 対するゼットンは身長だけで九十メートルを超える超巨体。その身は黒一色で、二人のウルトラマンを見下ろしながら、まるでロボットのように恐ろしいほど悠然と歩を進めてくる。

 二人は自分たちの背にしているものを一瞬だけ顧みた。ゼットンの進む先には、ラグドリアン湖を望む町が広がっている。漁業でやっと成り立っているような寂れた町だが、そこに住まう人々のささやかな幸せを見捨てるようなことはウルトラマンには決してない。

 とはいえ、身長差が倍もあるような相手とは組み合うことすら容易ではない。セブンの身長は四十メートル、まるで大人と子供の差だ。それに、怪力のミクラスでも止められなかったゼットンに、いくら二人がかりでも……いや、そんなことくらいで二人の戦士の目にひるみはない。

〔エイティ、敵はゼットンだ。わかっているな〕

〔ええ、兄さんたちからレクチャーは受けてきました。ゼットンの弱点は……〕

 エイティは事前に勉強してきた内容を簡潔に説明した。セブンは、エイティの話はわかりやすくて助かると思いつつ、即座に作戦を組み立ててエイティに答えた。

〔うむ、だが油断は禁物だ。いくぞ!〕

 迫り来るゼットン。まるでこちらを警戒する風もなく目の前までやってきた威容はまるで壁のようだが、壁とは越えるためにあるものだ。

 セブンとエイティはゼットンの左右へとさっと跳んだ。先手必勝、二人はゼットンの頭部へ向かって同時に光線を放った。

『エメリウム光線!』

『ウルトラアイスポッド!』

 セブンの額のビームランプから放たれた光線と、エイティの目から放たれた光線が巨大ゼットンの頭部で炸裂する。だが、ゼットンの皮膚にはなんの変化も見られない。

 大きいだけではなく、防御力も相応に優れているようだ。巨大ゼットンは揺らぐこともなく、犯人を探し求めるようにぐるりと旋回してエイティを見下ろしてくる。そして、その顔の発光体から巨大な火球を放ってくるのを、エイティは腕を胸元でクロスさせて受け止めた。

『ウルトラVバリアー!』

 火球はエイティに受け止められて四散し、エイティにはダメージはない。さらにエイティは完全に自分の方を向いているゼットンの後ろで構えるセブンに向けて叫んだ。

〔今です! セブン兄さん〕

 その声に応えるように、セブンはがら空きとなったゼットンの背中へ向けて、L字に組んだ腕から必殺の光波熱線を放った。

『ワイドショット!』

 セブン最強の白色光線がゼットンの背中に突き刺さる。

 ゼットンに正面から光線を撃ってはいけないのは鉄則だが、背中は光線を吸収することはできず弱点となっている。そしてゼットンが一体なら、必ず二人のうち一人は背中を狙うことができるというのがセブンの作戦だった。

 弱点の背中を撃たれてはいかにゼットンでも……しかしなんということか、セブンのワイドショットは間違いなくゼットンの背中に当たったのに、貫くことはできずエネルギーを拡散されて止められてしまったのである。

「ジュワッ!?」

 ワイドショットが効いていない? 驚くセブンの見上げる前で、ゼットンは巨体からは信じられないほど俊敏に旋回してセブンに狙いを定めてきた。

 セブンが危ない。エイティはゼットンの後頭部をめがけて、その手に光の槍を作り出して投げつけた。

『ウルトラレイランス!』

 光の槍はゼットンの後頭部に見事命中して爆発した。しかし貫くことは叶わず、ゼットンはなおも小揺るぎもしていないが、続けてエイティは空高く飛び上がってゼットンの頭に高速でジャンプキックを叩きつけた。

『ウルトラ400文キック!』

 強烈な蹴りがゼットンの角を弾いて火花を散らし、わずかにゼットンが姿勢を崩した隙にセブンはゼットンの間合いから脱出した。

〔大丈夫ですか?〕

〔すまんエイティ。しかし、急所の背中にワイドショットを当てても効かんとは〕

〔角になら効果があるかと思いましたが、こちらもほとんどダメージは無いようです。このゼットンは、いったい……〕

 ゼットン族の急所と思われる場所への攻撃がことごとく効果がないことに、エイティもセブンも戸惑った。すると、虚空からこれをのぞき見していたグラシエが愉快そうに告げてきた。

「ハロー、さすがは名にしおうウルトラ兄弟。普通のゼットンであれば今の攻撃で終わっていたでしょう。ですが、そのゼットンはハイパーゼットンのパワーを受けて身体能力を大幅に増強しています。簡単にいうならば、全身が生体反射外骨格で構成されているようなものです。さて、勝てますかね?」

〔なに!〕

 その名称は知っている。かつてエースが苦戦を強いられた強化ドラコの全身を覆っていた特殊な装甲だ。物理的攻撃に強く、エネルギー攻撃を一切受け付けない。ただでさえ強力なゼットンの全身がそんなことになっているというなら、それはもはや弱点などないということになる。

 だが、戦慄するセブンにエイティは力強く言った。

〔いいえ、完璧な怪獣なんているわけがありません。必ず、どこかに弱点があるはずです〕

〔……そのとおりだ。あのゼットンが体の強さを誇るというのならば、我々は決して折れない心の強さというものを見せてやろう。頼むぞ、エイティ〕

 弟に教えられてしまったなとセブンは思った。ウルトラ兄弟はそれぞれ違った強さを持っているが、エイティの困難にくじけない強さは誰にも負けない。強力なマイナスエネルギー怪獣や、極悪無比な侵略宇宙人たちからウルトラ兄弟の援護を受けることなく地球を守り抜いた心の強さは伊達ではない。

 セブンとエイティを吹き飛ばそうと、ゼットンの手から放たれた光波が二人を襲う。とっさにかわした二人は再びゼットンの左右に跳んで構えた。

〔本当に無敵かどうか確かめてやろう!〕

 エイティは腕を振ると同時に手のひらに赤い矢じり型の光刃を二つ作り上げて投げつけた。

『ウルトラダブルアロー!』

 光刃はゼットンの頭の周りを縦横に飛び回り、大木の枝を切り払うように何度もゼットンの頭を切りつけた。ゼットン角、目、後頭部、しかしどこに当たっても乾いた音を立てるだけで、ゼットンの皮膚には一ミリも食い込まないで跳ね返されてしまう。

 では上がダメなら今度は下からだ。セブンはゼットンの足に組みつき、全力をかけてひっくり返そうと試みた。

「デュワアァァァッ!!」

 下半身の不安定さは要塞型の怪獣の共通の弱点のひとつだ。あのキングジョーもセブンとの戦いではパワーで圧倒したものの、転倒させられてしまったら、その重さと頑丈さが裏目に出て敗因になっている。そうでなくとも、素早い動きを得意とするゴドラ星人も足をすくわれて戦意を喪失してしてしまったりと、人型のものにとって大地を踏みしめる足は安心と自信の源だ。

 だがゼットンももちろんやすやすと足をすくわせはしないと、根を張った巨木のように踏ん張って動かない。そこへ、エイティが反対側からも体当たりをかけた。

「シュウワッ!」

 前後に揺さぶられて、さしものゼットンの巨体もバランスを崩されてぐらりと傾いた。エースはベロクロン二世と、タロウがモチロンと相撲で勝負したように、エイティもすもう怪獣ジヒビキランと対戦したことがある。

 ウルトラ兄弟は相撲と奇妙な縁でもあるのだろうか? いや、ウルトラ兄弟が代々守ってきた日本、その国技であるSUMOUはいずれ宇宙に羽ばたくスポーツとなるのかもしれない。日本文化の影響力は歴代兄弟も染まったくらい濃いものであるし、いつかは地球人のデザインしたTシャツが宇宙で一大ブランドを築く日が来るかもしれない。

 さて果てない未来の話はいったん置いておいて、相撲という地球人の格闘技がウルトラ戦士にも受け継がれているのは確かである。数百キロにも及ぶ力士同士が相手を土俵の外まで押し出すために研究された技術はゼットンの巨体をも動かし、ついに片足が完全に宙に浮かされたゼットンは仰向けに倒れ込んだ。

〔今だ!〕

 大の字に倒れたゼットンに向けてセブンとエイティはジャンプした。空中で一回転し、ゼットンの腹をめがけて同時に膝蹴りを叩き込む。

「デヤァッ!」

「トゥアッ!」

 二人の強烈な一発を腹に受けて、ゼットンの体が痙攣し、苦しげなうめき声が漏れた。しかしまだ致命打にはいたっておらず、ゼットンは体を起こして二人を振り払い、頭部からの火球で反撃をかけてきた。

「ダアァッ!」

 セブンのウルトラバリアーが火球をはじく。さらに飛び散る炎に紛れて、エイティがゼットンにディスク状に圧縮した光の刃を投げつけた。

『ウルトラスラッシュ!』

 これぞ初代ウルトラマン直伝の八つ裂き光輪のエイティ版だ。本家とは違ってノコギリ状の刃こそついていないディスクカッター型だが、その切れ味は本物で、バルタン星人6代目を真っ二つにしている。

 火球へのカウンターとして放たれたウルトラスラッシュはゼットンのボディのど真ん中へと突き刺さる。しかし命中直前にゼットンが腕を広げて受けの姿勢を取ると、光輪はゼットンの体前面を構築する吸収板に溶けるように消えてしまったのだ。

〔やはり、このゼットンも光線吸収能力を持っているのか〕

 多くの者が光線を決め手とするウルトラ戦士に対して、ゼットンが天敵のような存在である理由がこれだ。本来なら、背中がその弱点となるのだが、共通の弱点がなく、ゼットン本来の強みはそのままなどという無敵要塞のどこに一穴があるというのだろうか?

 ゼットンは傷一つない幾何学的な巨体を広げ、再び感情のない漆黒の処刑装置が稼働を始める。

 その目的は【ウルトラマン抹殺】。ゼットンの腕が予備動作なく前に突き出されると、その手の先から火球が放たれた。

〔こいつは手からも火球を撃てるのか!〕

 顔から放たれるものより弾速の速い火球は一瞬で二人に迫った。

 爆発、紅蓮の炎が高く上がる。だが二人は爆発の瞬間に炎より高く飛び上がっていた。

「シュワッ!」

 飛翔したセブンとエイティはゼットンの周りを旋回する。ゼットンはそれを見上げ、正確に狙いを定めてくる。エイティはその気配を肌で感じ、セブンと次の作戦を目配せしあった。 

〔セブンにいさん、我々ももっと息を合わせて戦いましょう〕

〔よし、遅れるなよエイティ!〕

 セブンとエイティはゼットンの周りを高速で回転し始めた。ぐるぐると飛ぶことで、攻撃の狙いを定めさせないようにして目を回させる作戦だ。

 ゼットンを相手にそんな子供だましな? いや、これがなかなかあなどれないのだ。ゼットンはレーダーになっている角で二人の軌道を正確に計算して撃ち落とそうと火球を放ってくる。だがエイティはこれをひらりとかわして、指先から機関銃のように光線を撃っておかえしする。

『シューティングビーム!』

 光線はゼットンの周囲で爆発して火花を散らす。

 さらにセブンも空中から地上のゼットンへと、開いた両手の指先から二本のレーザー状の光線を放った。

『ダブルビーム!』

 直線状のビームは地を這ってゼットンを爆発の渦で包み込んだ。

 それでもゼットンにはいまだにダメージらしいものはない。けれど二人の狙いはゼットンの弱点を探すだけではない。

〔よし、このままゼットンを人里から引き離すぞ〕

 ゼットンはこちらを追撃してきている。恐らくはウルトラ戦士がこのままではエネルギーを使い果たすだろうと計算の上のことだろう。

 だがそれはこちらにも好都合だ。人家を破壊する気兼ねがなくなれば、こちらとしても存分に戦える。

 湖のほうへおびき出そうと、セブンとエイティは空中からさらに光線をゼットンに向けて放った。

『ラビッド光線!』

『スパーク光線!』

 断続発射される小型光弾とエイティのカラータイマーから放たれる雷撃光線がゼットンを襲う。だがゼットンは台風をものともしない摩天楼のようにビクともしない。

 ゼットンの周りを回転しながら打ち上げられてくる火球を回避しつつ、ゼットンを誘導しようとするセブンとエイティ。その行為は二人のエネルギーを浪費するばかりでゼットンにはなんら影響を与えられていない……かと思われたが。

 ぐらり……突然、それまで無機質に火球を打ち上げていただけと思われていたゼットンの巨体が不自然に揺れた。頭部がふらつき、火球の狙いが逸れてきている。これこそがエイティが狙っていた瞬間だった。

〔どうだ。極めれば機械だって目を回すんだ。思い知ったか〕

 かつて、エイティはロボット怪獣メカギラスとの戦いで、メカギラスの周りを高速で回転することでメカギラスの機能を大幅にダウンさせたことがある。精密な機械といえども繰り返し繰り返し強い刺激を与えられ続ければ異常を起こすものだ。

 ただ、セブンはエイティの言葉を少し複雑な思いで聞いていた。機械でも目を回す、それはセブンにも心当たりのあることなのでエイティの作戦に乗ったのだが、セブンの経験の場合は少し趣が異なる。かつてオーロラ怪人カナン星人に操られてしまったウインダムと戦うことになってしまったとき、セブンは追いかけてくるウインダムをグルグル走りながら追いかけさせて目を回させてダウンさせたことがある。要は身内の不始末からの経験で、あのときのウインダムの醜態はカプセル怪獣の戦歴の中でもかなり恥ずかしいものだからだ。

 感情を持たず、精密機械のように動くゼットンといえども、生物でも機械でも異常は必ず起こす。回転に酔ってふらつくゼットンに、セブンとエイティは空中から勢いをつけて同時に急降下キックをクロスさせた。

「デュワァ!」

「トゥアッ!」

 二人のキックは空中で交差してゼットンの頭部で激しく火花を散らした。

 今度こそどうだ? 着地したセブンは振り返ってゼットンを見上げた。しかし、ゼットンはまだ回転酔いから冷めてはいないものの、外傷らしきものは一切ない無事な姿をさらしている。

〔むう、なんという頑丈な怪獣だ〕

 セブンは舌を巻く思いだった。ここまで攻撃してダメージがないとは、まるでキングジョーのようだ。

 残った手段はアイスラッガーを使った一点集中攻撃で生体反射外骨格に切れ目を作るしかないか……できたとしても、あの巨体に対してどれほどの穴を開けられるかは未知数だが、やるしかない。

 だがセブンが決断しようとしたとき、エイティがそれを静止した。

〔待ってください。セブン兄さん、あのゼットンはどこを攻撃しても効かないようですが、一か所だけ効果がある場所がありました〕

〔む……だがそこはゼットンの要と言うべき場所ではないか? そう、奴のエネルギー吸収板だ〕

 セブンはいぶかしんだ。ゼットンを転ばせて腹に一撃を加えた時に、確かに奴は苦しそうにもがいた。しかしエネルギー吸収板はあらゆる光線を吸収してしまう、ゼットンの最強の盾である。打撃で破ろうにも、それはゼットンと真正面から対峙することを意味する。

 けれども、エイティはひるまずにセブンに言った。

〔ゼットンの正面の皮膚だけは、吸収板があるために生体反射外骨格にできなくなっているんです。確かにあそこには光線は効きませんが、だからこそ突破できればゼットンに一発で致命傷を与えられるでしょう〕

〔最強の盾で守られている部分こそ一番の急所というわけか。だが、どうやってあの無敵の盾を突破する?〕

〔光線でも物理でもダメなら、その二つを合わせればいいんです。我ら二人が力を合わせれば、それができます〕

〔よし、わかった〕

 セブンはエイティの作戦を呑んだ。すでに二人ともエネルギーを大きく消耗して、ビームランプとカラータイマーが点滅を始めている。それに、人里から離れることに成功し、かつゼットンの回転酔いはあと数秒だけだが続く。好条件が整っている今しか試すチャンスはない。

 セブンとエイティはゼットンの真正面で構えた。チャンスは一度。セブンは渾身の力を込めてアイスラッガーを投げ放った。

「デアッ!」

 アイスラッガーには二種類の投法がある。白熱のエネルギーをまとって一直線に敵に突き進んでいくタイプと、エネルギーをまとわずにブーメランのように高速回転しながら楕円軌道で向かっていくタイプだ。今回のタイプは後者で、エネルギーを吸収してしまうゼットンに対してエネルギーをまとったタイプを投げても無駄になってしまう。ならば最初から打撃力にだけ振り向けたほうがいい。

 アイスラッガーは猛スピードで回転しながら、まだ満足な防御姿勢をとれないゼットンのエネルギー吸収板の真ん中に命中した。が……アイスラッガーはゼットンの体を両断することはかなわず、その刃先をわずかにエネルギー吸収板に食い込ませただけで止まっている。

 しかし、それで十分。狙いはその”奥”。今だ! エイティはアイスラッガーへ向けて、腰のウルトラバックルからエネルギーを発射した。

『バックルビーム!』

 ビームはアイスラッガーに吸い込まれて、刃を通じてゼットンのエネルギー吸収板のほんのわずか奥へと注ぎ込まれた。だがその程度では……と思われるが、実際はそうではない。たとえば今では家々の屋根に普通にある太陽パネルは大きく重く思えるけれど、実際はパネル本体は非常に薄くて軽いのである。エネルギーを変換するために必要な厚さは紙のように薄く、その下にあるのは単なる土台に過ぎない。

 つまり、エネルギーを吸収できる表層さえ突破することができれば、その下はもろい。そこに大量のエネルギーを注ぎ込まれれば、ゼットン自慢のエネルギー吸収板は裏側からハンマーで殴られた鏡のように大きくひび割れていった。

〔やった!〕

 ゼットンの胸部には大きくひび割れが走り、腹部の発光体も灰色に変わっている。ゼットンは想定外のバヴに思考回路がエラーを起こしたように、頭部の発光体を点滅させながら体を痙攣させて棒立ちだ。セブンはアイスラッガーを戻し、エイティに合図した。

 これで無敵の巨大要塞を攻略するための方程式の完成だ。セブンとエイティは腕をL字に組み、吸収能力を失ったゼットンにそれぞれの必殺光線を撃ち放った。

『ワイドショット!』

『サクシウム光線!』

 白色の光波熱線とプリズム色の破壊光線が同時にゼットンに突き刺さる。破壊されたエネルギー吸収板を通して体内に膨大なエネルギーが送り込まれ、ゼットンの巨体はその照射に数秒間耐えたかに思われたが、全身がひび割れ光が漏れだした。

 そのまま硬直し、光の彫像と化すゼットン。そして体内から焼きつくされたゼットンはゆっくりと倒れ込むと、億万の破片へと大爆発して散ったのである。

 勝利。人里から離れたので歓声はなく、見守っていたのは水の精霊と森の鳥たちだけであっても、セブンとエイティはこれが大きな勝利であることを確信していた。

〔やりましたね、セブン兄さん〕

〔うむ、この地方を覆っていた闇の力はあのゼットンとともに消えた。我々の勝利だ〕

 このゼットンを生み出したのはシャルルの王の座を求めてやまない『渇望』のマイナスエネルギーだった。手に入らないものを求めて求め続けて、ついには何を何のために求めていたのかもわからなくなるくらい巨大になって暴れ続けた暗い力も、奪うためではなく守るために戦う二人の戦士の前に敗れ去った。

 だがただでとはいかない。セブンとエイティのカラータイマーは点滅を続け、二人はうなづきあった。

〔我々のエネルギーは残り少ない。私たちにできる仕事は、ここまでだな。エイティ、私のいない間にあちら側で何があったのか、聞かせてもらいたい〕

〔わかりました。しかし、この星に残る敵はまだ強大です。終わったわけでは〕

〔心配はいらん。この星の人間たちも地球人たちに負けないくらい強い。我らはやるべきことを果たした。後は他のところで戦っている者たちを信じようじゃないか〕

 エイティはうなづいた。そして、セブンがこれだけの信頼を持つにいたったハルケギニアの人間たちがどんな人々であるのか、興味がふつふつと湧いてくるのを感じていた。

 この地での我らの役目はもうない。セブンとエイティは戦塵の消えた青い空へ向けて飛び立っていった。

「デュワッ!」

「シュワッ!」

 空に消えていく二人のウルトラ戦士。その後ろ姿を、ラグドリアン湖の水面の下から水の精霊が感謝の眼差しとともに見送っていた。

 

 これで勝利の星は二つ。しかし、次なる敵はさらに強力だ。

 トリステインの自然豊かな一地方ド・オルニエール。そこではウルトラマンガイアとアグルがEXゼットンと激闘を繰り広げていたが、全てにおいてゼットンを大幅にパワーアップしたと言えるEXゼットンのパワーとスピードの前に消耗戦を強いられ続けていた。

〔藤宮、まだ大丈夫かい?〕

〔心配は無用だ。だが、こいつのパワーは無限のようだ。なんとかして決定的な一撃を与えなくては、俺たちでも勝ちの目は浮かばないぞ〕

 EXゼットンはただでさえ強いゼットンの耐久力とパワーを引き上げ、さらに俊敏な格闘能力を付け加えたような強力な個体だ。弱点らしい弱点はなく、甲虫の鎧をまとったような強固な手足を機敏に使ってガイアとアグルの攻撃をはじき、付け入る隙をまったく見せない知能の高さも有している。

 それでいて、ガイアとアグルのエネルギーが有限なのに対してハイパーゼットンから吸収したエネルギーを莫大に体内に保有している。あのエネルギー量に対抗するためにはウルトラマン二人分を持ってしてもまだ不足だ。

 攻めあぐねるガイアとアグルに向かって、EXゼットンは一兆度の火球を超えた超破壊エネルギー弾を放とうとチャージを始めた。そのとき! 空からまばゆく輝く光が二人とEXゼットンの間に舞い降りてきた。

 

「メビウース!!」

 

 ウルトラ兄弟10番目の若き戦士、ウルトラマンメビウスの登場だ。

 メビウスの登場でEXゼットンは火球の発射を中止して警戒する構えに戻り、ガイアとアグルを背にしたメビウスは二人に振り返りながらあいさつした。

〔お久しぶりです。高山さん〕

〔君は……ミライ、ヒビノミライくんか〕

 我夢の脳裏に、超8兄弟として共に戦った記憶が同調してくる。メビウスとガイアは深く関わったわけではないが、あの戦いで肩を並べた記憶、戦いの後にダイゴに聞いた話でミライのことも知っていた。

〔それに、初めまして、ウルトラマンアグルさん〕

〔なるほど、お前が我夢が言っていた別世界でのウルトラマンか。お前が現れたということは、時空間の封印が解除されたというわけだな。終わりが近いというわけか〕

〔はい、すでに各地には僕の兄さんたちが向かっています。ですが、まだ勝ったわけではありません。まずはこいつを倒さなければ。力を貸してください〕

 助力を願ったメビウスだったが、その必要はなかった。ガイアとアグルはメビウスの隣に並び、力強く構えを取ったのだ。

〔まずは目の前の問題を解決しなくちゃ次に進めない。助けが来て感謝するのは僕たちのほうだよ〕

〔この世界を守ることは、間接的に俺たちの世界を守ることになる。異論は最初からない〕

〔ありがとうございます。僕らの力を合わせて、このゼットンを倒しましょう〕

 三人のウルトラマンの力はEXゼットンを超えることができるのか? 今、世紀の戦いが始まる。

 

 

 続く

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