注意
この作品はどくいも様のカオス転生ごちゃまぜサマナーの三次創作です。

ごちゃまぜ世界で半終末の世を底辺モブクズ転生者が過ごす話

注)主人公はモブクズです。
人によっては気分が悪くなる描写が含まれますのでご注意下さい。

P.S.
9月9日、最後におまけを追記しました。

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上の方の転生者の話(https://syosetu.org/novel/276363/)が行き詰まっているので、下の方の転生者の話を書いて中和しようと思った。

続くかは不明

P.S.
9月9日、最後におまけを追記しました。


【カオス転生三次】モブクズ転生者がいく

「あ〜ぁ〜」

ボロいアパートの小汚い一室、

テレビやテレビゲームやPC、何故か中央に鏡の代わりに名刺入れが設置された大き目の神棚等が乱雑に設置され、漫画や本や食べかすが転がっている。

 

その中で欠伸を上げて福木吉行はのそのそと布団をどけ、枕元の携帯端末で時間を確認する。

 

布団の周りにはペットボトルや、菓子パンやおつまみの容器が散乱しており、寝転がったままその中から適当に手に取り、携帯端末で掲示板にレスしながらながらむしゃむしゃと遅めの朝食をすます。

 

 

 

【邪教の結晶?】悪魔召喚プログラムについて語るスレ127【はいメシア製です。】

 

 

322 名無しのデビルサマナー

バージョンアップが来たぞ!

 

転生者用悪魔召喚プログラムver1.5

・ショップ機能の拡張

・覚醒者向けHP小アップパッチ

・各種不具合の修正

 

323 名無しのデビルサマナー

今回は控え目だな。

 

323 名無しのデビルサマナー

また未覚醒者向け機能追加は無しかよ。

もっと充実しろ。

国外だと普通に未覚醒者でも使えるんだろ?

 

324 名無しのデビルサマナー

GP低いから当たり前定期

 

325 名無しのデビルサマナー

むしろなんで追加されると思った。

 

326 名無しのデビルサマナー

さっさと覚醒修行受けろ定期

 

327 名無しのデビルサマナー

嫌じゃ嫌じゃ!

また一日中ぶっ続けで燃やされるのは嫌じゃ!!

 

328 名無しのデビルサマナー

あー、地獄修行逃亡組か・・・

気持ちは分からんでもない。

 

329 名無しのデビルサマナー

地獄修行の中でも最初位の奴じゃねーか

 

330 名無しのデビルサマナー

次の修行は暗いところでゆっくりするだけだから楽だぞ

 

331 名無しのデビルサマナー

暗いところ()

 

332 名無しのデビルサマナー

ゆっくり()

 

333 名無しのデビルサマナー

やってられるか!

というわけで気軽に覚醒&悪魔対策するため、悪魔召喚プログラムの未覚醒者向けパッチを要求する!!

 

そして未覚醒者用、簡易でないマイ式神を手に入れるんじゃ!

 

334 名無しのデビルサマナー

なにこいつ

 

335 名無しのデビルサマナー

本音は最後だろw

どんなキャラがいいんだ?

 

336 名無しのデビルサマナー

とりあえず、面倒くさくなくて、身の回りの世話を全部やってくれて、外部との交渉もやってくれて、エロも戦闘もやってくれる女の子

 

337 名無しのデビルサマナー

ここまで堂々と式神のヒモになる宣言する人始めて見た。

 

338 名無しのデビルサマナー

なお必要分のマッカ

 

339 名無しのデビルサマナー

働けニート

 

 

 

 

「働いてるから、欲しいんだよ

っと、

あ〜今日の3時からしばらく仕事か・・・

だりぃなぁ・・・」

 

吉行はぼやく。

 

そのまま、現実を忘れようとソシャゲを起動させる。

どこかで見たような白い塔の場面から少女達がピクニックしているアニメーションが表示される。

・・・この手の元の世界にあったソシャゲを再現したソシャゲはいくつかある。

 

「今日こそ、水着キョウカを引くぞ。

・・・あれ、ピックアップ明後日までだった・・・?」

 

仕事は一週間程で、仕事が始まったら昼夜問わずあまり端末を弄る暇がないので、今日の仕事開始までには引かないと間に合わない。

 

ボーナスが出ているクエストを巡って日課をこなしスタミナを使い切った後、無心になってガチャを回す。

 

しかし、

 

「クソッ、出ねえ。最低保障の金1枚目、三連続とかふざけんな。」

 

天井前にジュエ・・・ゲーム内通貨が尽きた。

買おうとショップ画面を開くが、既に口座は空で、何度か資金ショートさせたことで減らされたクレジットカードと通信費合算支払いの限度額を超えているので支払いはできなかった。

 

「クソッ」

 

布団に端末を投げ出す。

今回の仕事で金が入るのもあってここ一週間で散財した結果、今使える現金が尽きた。

 

「はあ・・・、あのクソ女のとこにタカリに行くか、」

 

そうつぶやくと吉行はのそのそと起き上がって、腕につけた腕時計と探知用の腕輪型の簡易式神が寝ている間に外れていないか確認した後、枕元に置いてある指輪をはめると、床に転がっているシャツとズボンを着て、単語カード帳の様に束ねてある枕元の簡易式神を雑にポケットに突っ込み、最後にイルカがあしらわれたヘルメットを被って外に出ていく。

 

 

 

吉行はアパートの前に止めてある原付きに乗って、街の中心から少し離れた朧月神社に向かった。

 

一見、広めで落ち着いた雰囲気の歴史がありそうな神社だが、よく見るとカタギとは思えない人間が時折出入りしている。

 

神社の関係者用の駐車場に停めると、吉行はヘルメットをつけたまま面倒くさそうに社務所の待合室に向かう。

 

依頼待ちで時間を潰している現地人異能者のデビルバスターを尻目に、吉行は受付に座っている黒髪の巫女に声をかけた。

 

「ちょっとアレに会いたいんだけど」

 

あからさまに苦い顔をされる。

 

「仮にも筆頭巫女頭様をアレ呼びするのは・・・」

 

「いるんだろ。」

 

「・・・はい、お待ち下さい。」

 

「すぐに呼んで、

いつぞやみたいに時間稼ぎするなよ。

ガイア連合からの仕事が控えてるんだ。」

 

「・・・はい。」

 

しぶしぶ、といったように受付は奥で事務をしていた巫女を呼んで、奥に言伝を頼む。

 

それを尻目に吉行はどかっと休憩室の椅子に腰を下ろし、端末から掲示板を開く、

・・・依頼を受けに来た周りのデビルバスターからうっとおしげな目で見られているが気にした素振りも見せない。

中にはスキルとして発動するレベルでは無いが、未覚醒者なら怯える程度の力で軽く威圧しようとする者もいるが、吉行の被っているドルフィンヘルムにあっさり弾かれる。

 

「お待たせしました。

あの、筆頭は身重なので・・・」

 

「ん」

 

巫女の言葉に耳も貸さず、目も合わせずに、ずかずかと勝手知ったる奥の部屋に入っていく。

 

 

 

筆頭の応接室に入ると、長い白髪を背中まで伸ばした3,40程の巫女がいた。

命を感じさせない凍える様な冷たい表情とは裏腹に腹部がぷっくりと膨らんでおり、妊娠しているのが分かる。

 

「今日はどのようなご要件で・・・」

 

「金だよ。金」

 

「・・・今月分のみかじめ料はもう払ったはずでは?」

 

「月あたりとか決まってないだろ。もらってない月もあるし、

僕がもらいたい時にもらいたい分だけ払え」

 

「・・・いくらですか?」

 

「今月は一回貰ってるし、十万」

 

「・・・分かりました。」

 

冷たい表情のまま、ごそごそと隣の金庫を開けて、札束を取り出して紙で包んで、机の上に丁寧に置く。

 

「お受け取り下さい。」

 

「僕は十万と言った。」

 

吉行は苛ついた表情を浮かべて言う。

 

「いつも、お世・・・」

 

「黙れクソ女、いい加減な世辞は聞き飽きた。」

 

そう言うとさっさと紙を剥がして札束から十万ほど抜き出すと振り返りもせずに出ていき、障子戸を力いっぱい閉める。

異能者用に作られた頑丈な障子戸はトンと静かな音を立てて閉まる。

 

吉行はそのまま廊下を歩く、と、

 

「にぃさま。」

 

「おにぃさま。」

 

よく似た囁く様な静かな声が聞こえた。

吉行は少しバツの悪そうな表情を浮べて、声のした方を見る。

 

母親に似た無表情をほんのりと赤らめ、微かな喜色を浮かべた十二歳程の長い白髪にそれぞれが髪の左右逆に赤い髪飾りをつけた双子の巫女がいた。

 

「おー、瑠依に璃依、こんにちは、

お客さん対応は良いのか?」

 

「うん、にぃさまの対応が最優先だから、」

 

「はい、おにぃさまへの対応が最優先ですから、」

 

「「来ているなら、声をかけてくれてもよかったのに」」

 

「あのク・・・二人の母親に用事があってな。

すぐ済む用事だったんで、仕事邪魔するのも悪いかな思って」

 

言い訳する様に吉行は言う。

 

「お金ならいくらでもあげたのに、」

 

「あげましたのに」

 

「いっ・・・ま、まあそうだけど、

デビルバスター対応してたからな、邪魔する訳にもいかないだろう。

ただでさえ嫌われてるのに、割り込みなんてしたらさらに雰囲気がヤバくなる。」

 

本当は別に気にもしてない事を言い訳じみた口調で言う。

 

「・・・今日は、これからお仕事なの?」

 

「・・・あのお仕事ですか?」

 

「・・・ああ、そうだ。しばらくは会えなくなるな。」

 

珍しく、少し、ためらう様に吉行は言う。

 

「気をつけてね。」

 

「気をつけてください。」

 

「「母様の時みたいなことにならないように」」

 

「ああ、瑠依と璃依もな。身の安全には気をつけろよ。」

 

そんなことを少し喋ってから吉行は白髪の双子の巫女と別れた。

 

 

 

コンビニで五万円分ポイントをチャージして、スイーツを買って、意気揚々と吉行は家に凱旋する。

 

家に入ると、束ねた紙状の簡易式神がどれも死んでないかを確認すると、ヘルメットを脱ぐ。 

 

そのまま再び布団に寝転がり、買ってきたスイーツを食べながら天井までガチャを回す。

 

「お、来た来た。

遅いよキョウカたん。」

 

吉行は、開放演出を見ながらそんなことを呟く。

そのままストーリーを見たり遊びつつ、時間を見るたび、時折ため息を吐いて来たる仕事の時間への憂鬱を吐き出す。

 

そして、

 

「はぁ・・・支度しなきゃ、」

 

そう言うと、布団から起き上がり服を脱ぐと、洗面所に行って歯ブラシを咥える。

そうしてそのまま風呂に入った。

 

 

 

迎えに来たガイア連合支部所属の式神に連れられ、吉行は近くのガイア連合の支部にトラポートする。

 

ちらほら、彼を知っている現地人から時折なんでコイツが優遇されてるんだという嫌な視線を受けるが、支部所属の式神が連れている中で、堂々と手出しするほど頭のおかしなものはおらず、無事に受付につく。

すると、ネームプレートに柚木と書かれた短い黒髪の事務員が話しかけて来た。

 

「こんにちは、何か御用ですか?」

 

「依頼を受ける予定の福木吉行です。」

 

「はい。確認します。

・・・福木吉行さんですね。

・・・特別派遣依頼でよろしかったですか?」

 

「はい。」

 

「それでしたら、今回の派遣先はこちらになります。」

 

「はい・・・

はぁ!?また地方組織?しかもこれ昔、ウチらの中位クラスが解決担当したとこじゃねーか!

いい加減にしてくれよ。ちゃんとしっかりした外様を回してくれ、」

 

「ですが、報酬は・・・」

 

「ですがもなにもない、さっさと外様を回してくれ、」

 

「残念ながら私の一存では・・・キャンセルなさいますか?」

 

「今月分の金がもうないんだよ。あなたで駄目なら上を、千山さんを出して、」

 

「そう申されても・・・」

 

「早く出して、出せ」

 

「あー福木さん、すいませんね。

この子入って来たばっかりなんで、」

 

「千山部長!?」

 

「どうも、で、またこの手の地方勢依頼とかふざけてるのか?」

 

「まあまあ、少し奥で話しましょうか、条件等ありますし、」

 

「・・・そういうことか、要はまたか」

 

「いえいえ、こちらとしてもちゃんと先方が依頼をこなされることを期待していますよ。」

 

そんなことを喋りながら吉行は奥に向かう。

 

 

 

 

「あの人、何なの?本当に私達と同じ転生者なの?」

 

しばらくして、受付仕事の担当が終わった後、短い黒髪の事務員・・・柚木楓は事務所でそう愚痴る。

楓は、近年の世界のおかしさと、最近見つけた転生者掲示板で聞いた話から終末が訪れることを理解してしまい、ついこの間ガイア連合に所属した。

特に栄達等を求めず、安全に安定して暮らせればそれでいいやと、あまり旨みがないと知りつつ前職と同じ事務職としてガイア連合に加わっている。

 

「まあ、そう言ってやるな。

別に同情する必要はないけど、福木さんもなかなか哀れな人だぞ。」

 

「千山部長、終わったんですか?」

 

「ああ、いつも彼に出してる条件プラスアルファでまとまった。」

 

「あの人だけ特別扱いなんですか?」

 

「ああ、この地方からの特別派遣依頼は、向こうが不義理した場合、下手したら転生者同士でのざこざに発展しかねないんだけど、福木さんなら基本的に追加のマッカを払えば、それ以上、転生者同士の問題にはしないからな。

 

それもあって、少し問題のありそうな地方勢からの特別依頼をまわすことが多くて、向こうの不義理に付き合わされる事が多いから怒るのも無理はない。」

 

「不義理って・・・ほぼ傀儡な地方勢が私達に?」

 

「ああ、より正確には私達ブラックカード持ち相手というより派遣された彼や事務方に対して、だな。

だから解消できない。

 

見ておくと良いよ。私達が何故現地人異能者を好かないのか、その理由の一端だから、」

 

 

 

 

そのしばらく後、吉行は極楽にいた。

惜しげもなく並べられる高級な美食に、美女による接待、贅をこらした演目と今時こんな接待があるのかと、つい先程までいた小汚いアパートの一室が夢であったかの様に思えてくる。

 

「どうです?楽しんでいらっしゃいますか?」

 

吉行が披露した雑な一発芸を大袈裟に褒められていい気分になっていたところで、長い黒髪を結って高価そうな桜色の着物を来た二十歳ほどの女に声をかけられる。

 

「ああ、楽しい、」

 

「お酒は飲まれないんですか?

よろしければ注ぎましょうか?」

 

「あ、いや酒は好きじゃないし、それに今晩から仕事だからな。酔って寝ちゃったりしたら大変だ。」

 

「ご立派ですね。」

 

「いやいや、そんなことは・・・

ところで今夜のお相手、で良いんですよね?」

 

「はい、この賑原の地の守護を担っております松戸家の長女 縁と申します。

お見知りおきを、」

 

縁は丁寧に一礼する。

 

「あー久しぶり、でいいんですかね。昔は結構ツンツンしていたのに、」

 

「・・・申し訳ありません。お目見えしたことがありましたか?」

 

「大昔、ガイア連合の発足当初、ここが管理していた、騒がし原異界の周辺監視依頼を請け負ったことがありまして、その時にちらりと、」

 

「まあ、それは不思議なご縁ですね。

今日、ここに来られたのにも縁を感じます。」

 

「縁さんだけに?」

 

「まあ、」

 

そう言って縁は、吉行のつまらない冗談に笑う。

 

「それはとにかく、今日、ここに来たのは偶然、自分はただのガイアの種馬ですよ。」

 

「・・・そんなこと、おっしゃらないで下さい。」

 

ひし、と縁はしゃがみ、吉行と視線を合わせながら言う。

 

「あなたが来てくれて、本当に嬉しかったのですよ?

見捨てられ、霊能の才なく滅びるしかなかった我ら一族郎党に、強い霊能の才を宿す子種をくださることになって、

ガイア連合の黒札持ちの皆様も、私達と子供を作るとなると尻込みする中、あなたが私達の苦境に応え来て下さったこと、それがとても有難く、救われたんですよ?

来てくれて、ほんとうに、ありがとうございます。」

 

「・・・そうですか、ありがとうございます。」

 

吉行は、目をそらして下を向いて、何かを堪えるように呟く。

 

「ささ、湿っぽい話はやめて、宴を楽しみましょう。」

 

「・・・そうですね。」

 

そうして吉行は、再び極楽の夢に浸ることにした。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

宛てがわれた客室、電気もつけない暗がりの中で、吉行は先程の宴会の後片付け場からくすねてきた酒を一人、呷っていた。

頭には持ってきたイルカをかたどったヘルメットを被っている。

 

「知ってた、こうなるって」

 

傍らには今日種付けする筈だった松戸縁の姿は無い。

依頼はキャンセルされた。

 

「あの偉そうだった娘を、布団の上で、へりくだらせて思う存分啼かせたかった・・・

・・・少しは優しくするつもりだったのに、」

 

吉行は先程のやりとりとかつて監視依頼を受けてここに派遣された時の事を思い出して呟く。

 

「あのクソ共め、覚醒者のブラックカード持ちが来たらあっさり手のひらを返しやがって、

 

あなたのことをありがたく思ったのは本当ですけど、この人は、異界を崩壊させて、助けてくれた大切な恩人で、私たち一族の未来のために、許して下さい、

とか、綺麗なセリフぬかして、ふざけんなよ・・・

 

アレもアレだ。何が、すみません、この人達が雑に種付けされるために、騒がし原異界のボスを討伐して、この人達を助けたんじゃないから、だ。

 

それが嫌なら最初から種付けしとけよ。

依頼で雑に種付けされると聞いてようやく動く気になったからって、この段でしゃしゃり出てくんな。

 

結局、俺らブラックカード持ちは、アイツラにとって霊能の才に優れた子を産むための優良種馬としか見られて無くて、

覚醒者は未覚醒者より有能な子種が出るから、それを利用されてるだけだってのにほんと馬鹿、莫迦だよなぁ・・・」

 

一人、盃を呷る。

 

・・・今頃、縁は異界を崩壊させてここを救った覚醒転生者と致しているのだろうが、

 

「つまんね、」

 

そう呟き吉行はさらに盃を呷る。

こういう事態になる事は、吉行の場合よくある。

 

最初はキレ散らかすこともあったが、何度も繰り返す内に、もう現地民はそういうもんだと諦めた。

それに、相手のテリトリーで安易にキレ散らかした結果、ナニかされたり、やって来たレベル持ち転生者に物理的に止められる事もあったので、不満や怒りを感じても、相手のテリトリーでは黙って引き下がることにしている。

 

代わりに、安全が確保されたガイア連合直下の施設内で事務方を交えた話し合いの場では、こういうことをやらかした地方勢を罵倒したり、色々と要求することもあるが、

 

「はぁ・・・バカらし、でもまあその分、働かないで楽なマッカ稼ぎにはなるな・・・

歓待受けるだけ受けて何もせず、キャンセル料割り増しで貰えるっていい仕事でね?」

 

何回も自分に言い聞かせていたことを呟き、酒を呷る。

事実、今回、吉行は何も損をしていない。むしろ得しかしていない。

ただただ、惨めなだけである。

 

そのまま一晩、吉行は酒と一夜を過ごした。

 

 

 

 

「おい、どういうことだ!

また、関係者俺らが来て、依頼をキャンセルされたぞ!」

 

吉行はガイア連合の受付で短い黒髪の事務員・・・楓に怒鳴る。

向こうで文句を言えなかった分、こちらで取り返すように吉行は怒鳴る。

 

不幸にも再び担当になってしまった楓は、千山課長、早く帰ってきてと思いつつ、対応する。

 

「はい、こちらの不手際で申し訳ありません。

キャンセル料の振り込みの件ですか、」

 

「それもあるけど、これで何度目だ!いい加減にしろ!」

 

「・・・その分の違約金の支払いも追加契約に含まれているはずでは?」

 

「もちろんだ。で、それが苦情陳情するのになんの関係がある?

こちとら予定潰して、準備もして行ったんだ!こう何度もキャンセルされたら困る、いい加減にしろ!」

 

そのまま吉行が苦情を述べる。

 

それに思わず、楓は言う。

 

「依頼をキャンセルされたのには、福木さんの方にも問題があったのでは?」

 

「はぁ?」

 

「先方からも文句が来ていますよ。請負人の態度が悪かったのでキャンセルしたため、契約に基づき、キャンセル料を減額したいと、

ただいま千山課長が対応にあたっておりますが、」

 

吉行はものすごい顔をした。

 

「か、あっい・・・おまっ」

 

にわかに場が殺気立つ、

 

「柚木さん何言ってるの!

すみませんっ!

柚木さんも謝って!」

 

慌てて、隣で他の人の対応にあたっていた楓の先輩が割って入り、頭を下げる。

 

「すみませんっ!」

 

「あ、すみません!」

 

楓も感情に任せて本来言うべきでない事を言った事に気付き、謝罪する。

 

「はっ、ふー・・・

はぁはぁ・・・」

 

吉行は息を大きく吐いて堪える。

そこへ、

 

「申し訳ありませんが、そこまでにしていただけませんか?」

 

「千山課長・・・」

 

「福木さん、部下が申し訳ありませんでした。

先方の"誤解"は解けましたので、全額振り込みとなります。

それと、今回の件と部下の不始末について謝罪したいので、どうぞこちらへ、ほら柚木さんも」

 

「はぁー・・・」

 

吉行は息を大きく吐く。

 

「分かった・・・」

 

そう言うと、吉行は千山に付いて奥に向かう。

 

 

 

 

「千山部長・・・すみません。」

 

吉行が納得して帰った後、楓は千山に謝罪する。

 

「こちらこそ、僕の判断で起こった事で、彼の対応させちゃって悪かったね。

先方との交渉が長引かなければ僕が対応したんだけど、

だけど、よりにもよって、先方から聞いたあのことを言って反論するのはいけないよ。」

 

「結局、嘘だったんですか?」

 

「うん、大嘘、そりゃあ確かに先方に乗せられて調子に乗ってたみたいだけど、キャンセルされるまで、先方を侮辱する様な事は言ってないし、先方として単に契約キャンセルでかなり出費が出そうだから減額したかっただけみたい。」

 

「監視してるんですか?」

 

「これ系の依頼だと、契約以外でも種付けさせようとしたりとトラブルが多くてね。

請負人の希望があれば記録機能と通信機能のついた簡易式神を持たせることになってる。

というか、」

 

千山は楓を見る。

 

「俺たちと地方勢の言うこと聞いて、まず無条件に地方勢信じるのは良くないよ。

基本的に、あいつら俺たちよりも隠し事とか嘘つくこと多いから、」

 

「ですが・・・」

 

「確かに彼は態度悪いし、未覚醒で種付け依頼を受けてる時点で偏見を抱くのは仕方ないけど、」

 

「そうです、種付け依頼です。

あんな依頼を出さなければならないほど追い詰められた依頼人に好き勝手して、無責任に妊娠させて、

それで、依頼人を昔助けた、依頼人にとって大切な人がその話を聞いて止めさせに来たら、そのことで割増しのキャンセル料を要求するなんて、人として酷すぎません?」

 

「・・・あー、やっぱりそういう認識だったか、

それ、一面では正しいかもしれないけど、かなり偏った見方だよ。」

 

「?」

 

「まず、なんでその大切な人・・・俺たちの中の覚醒者がその話を知ったと思う?」

 

「公示・・・ですよね?

対象の個人名は出さないものの、依頼出した所属組織は公示されますよね。

昔会って、気になってる人が種付け依頼の対象になってて、転生者同士で寝取られたとかの問題が起きないようにするために、」

 

「それなら、こんな直前ではなくて事前に連絡が来て先方と本人の間で対応を交渉するんだけど、そういうことは無かったんだ。

 

つまり、このことを大切な人が知ったのは請負人が来る少し前か直前、もう依頼が確定した後なんだ。」

 

「つまり、依頼が確定した後、知らない人とするのが嫌になったから好きな人・・・覚醒者転生者に連絡したってことですか?

それは、仕方なくはないですか?

誰でも知らない人の子供を妊娠するよりも好きな人の子を産みたいですし、

好きな人に個人的に連絡するのは当然では?」

 

「依頼が確定した後で?」

 

「それは・・・」

 

「それに、そもそも本人の意思確認もあるよ?」

 

「それは地元のため・・・」

 

「そう、根本は地元のためにできるだけ強い転生者の子種が欲しいってだけなんだよ。

 

つまり、もともと覚醒転生者に振り向いてもらえない現地勢が、このままじゃ数日以内に雑に誰とも知らない人の子供産ませられるよ、いいの?

と、知り合いの覚醒転生者の情に訴えてるだけ、

 

依頼出したのは、本命の有力覚醒者を振り向かせるための当て馬が欲しいって事で、

それでも相手が振り向かなかったら、仕方ないんで当て馬を受け入れるという話なんだ。

 

つまり彼は最初から当て馬だったって訳だ。」

 

「・・・それでも、好きでもない人の子供を産むよりは・・・」

 

「だから、ウチとしては、規制できないし、止めさせることもできない。

禁止して、地方勢の子が気になってる覚醒転生者が、その子が知らぬ間にNTRれてたのを知ったらそれこそ発狂して揉めるだろうし、

 

でも、派遣された転生者が相手を気に入った時に、やってきた転生者と大揉めに揉めて、覚醒者のグループと非覚醒者のグループ巻き込んで、一触即発になったこともあったんだ。

 

その点、福木さんは割り増しキャンセル料と苦情だけで済ましてくれるから、いい方なんだ。」

 

「福木さんはそのことを・・・」

 

「最初の時点で予測してたと思う。

こういうことが起きやすい案件だったし」

 

「・・・だから、あんなに苦情入れてたんですね・・・

苦情自体は十マッカと今度はちゃんとした所を紹介すると約束したら治まりましたけど・・・」

 

「いつもならどっちかで済むんだけどね。

まあ、現状一マッカ=二千円位の価値だから、不利益は出ない不都合押し付けたor受付が失言リスクしたから二万円位というのはちょっと高めだろうけどね。」

 

「なんというか・・・哀れですね。」

 

「・・・確かにそう。

だけど、一応言っておくけど、あの人、未覚醒だけど、昔は異界監視依頼引き受けてたり、現地人支援したり、これまで他所からガイアに依頼が来た種付け依頼を何十回もこなしてて、入ったばかりの君より組織貢献度はずっと高いよ?

どういう形であれ、彼を安易に見下すのは良くない。」

 

 

 

 

吉行は、キャンセル料込みで入手した2万10マッカと2万マッカ相当のガイアポイント、残り一千万円から百万円と五百マッカだけ財布に突っ込み、後はガイア銀行に預けてガイア連合支部から出た。

本当は全部マッカで支払ってもらいたいが、マッカは希少で全額マッカ払いになることはまずない。

何が悲しくて一部とはいえ紙切れで支払いを受けなければならんのだ。かといってマッカを紙切れと交換するのももったいないし、と、わりとダメな事を考えながら吉行は歩く。

 

 

 

と、

「福木くぅ~ん?」

 

バカにした声がかけられるが無視して吉行は歩く。

 

「おい、無視すんな。」

 

拳銃と鈍器や刃物で武装した数人の男女が道の前方を塞ぐ、

吉行が振り向くと後ろにも似たような装備の男女が道を塞いでいた。

 

いつの間にか、人通りは無くなっていた。

 

「受付嬢の柚木さん脅して儲けた金でする豪遊は楽しいか?」

 

「・・・」

 

吉行は答えない。

 

「黒札持ちだからって、そんな事して許されると思ってんの?」

 

「・・・」

 

「覚醒もしていないお前には、よその女泣かせて手に入れたその金や、その装備は過ぎたもんだ。

俺らが有効活用してやるから寄越せ。」

 

「・・・」

 

「なんか言えよ。それともブルって声も出ねえ?」

 

「トシさん、そりゃ、俺たちレベル持ちの気に一般人が当てられたら動けなくなるなりますよって、」

 

「それもそうか、ははっ」

 

「わははは」

 

囲んでいる皆が一斉に笑う。

 

福木は止めていた息を吐き、彼らを無視して進む、

 

「なんだおめえ、」

 

そのまま、前方にいた男が吉行に銃を向け・・・向けようとした瞬間に、前方を囲んでいた男女が吹き飛んだ。

 

「うがぁ!」

 

「な、なんだ?」 

 

どこから来たのか、いつの間にか、吉行の目の前に長い銀髪蒼眼の黒いジャケットの上に防弾ベストを着て黒い金属っぽいベレー帽を被り、ロングソードを両手持ちした少女が立っていた。

 

手には黒色の得体のしれないオーラを放つ籠手を着けている。

 

そのまま吉行は前に立つ彼女にすれ違いざま、声をかける。

 

「ありがと。報酬は70マッカでいいか?」

 

「いいえ、御主人様をこういう奴らから守るのは私達の務め、報酬なんていらないわ。

それより、遅くなってごめんなさい。」

 

「ん、そうか、ありがと、任せたから。」

 

それだけいうと、吉行は去っていく。

 

「おい、こら、福木!待て!」

 

叫んでいる、先程まで彼を馬鹿にしていた武装集団のリーダーらしき男に、彼女は氷の眼差しを向ける。

 

「アーリャ・A・クードレかよ・・・

福木に力を授けられた元一般人の福木の奴隷が、

本来その力は、俺たちが得るべきものだったんだぞ!」

 

「寝言しか言えないの?

御主人様が御主人様自身のリソースをどう分配しようが勝手でしょう?

それに奴隷だなんて・・・」

 

それに少しアーリャは頬を赤らめ微笑む。

 

「あの人が本当に私をそう扱ってくれたら良かったのに、」

 

「うわっ、気持ち悪っ、これだから黒札狂信者ってほんとキモい!」

 

「それがどうかした?」

 

「あんな未覚醒ザコのクズの福木が黒札とかおかしいと思わないのかよ!?

あれだけの権限、力、霊的資源を扱うにふさわしいと思うのか!」

 

「ええ、悪魔に顔と手足を食われた私を見捨てた貴方達、いえ私達よりは、

 

それに・・・

 

いい加減、御主人様の名前をその臭い口から吐くな。」

 

そう言うと、アーリャはロングソードを振るった。

 

 

 

 

「簡易式神の探知の敵対反応消失と・・・

アーリャは片付け終わったか、

ざwwまwwwぁwwwwww

あのバカども支部の中から敵意マシマシでこっち狙っていて、式神の敵探知に引っかかってたんでアーリャ呼んでやったわww」

 

吉行は腕の腕輪型式神に触れながら思う存分嘲笑い転げる。

 

「そういや、最近、アーリャ拗らせすぎてさらに頭におかしくなってる感じだったけど、大丈夫か・・・?

まあ、今回ので少しは奉仕欲満たせただろうしマシになるだろ。」

 

そんな雑な事を考えながら吉行は電車に乗る。

行きは支部の式神のトラポートで来たが帰りは歩きである。

タクシーも良いが、そのまま乗るとタクシーごと攻撃される可能性もあった。

・・・そもそも運転手に魅了をかけて変な所にご招待というのもあり得るが、

 

吉行は、しばらくぼんやりと車窓から流れる街並みを見た後、はっとなって携帯端末を取り出し、ソシャゲを始める。

 

自宅の近くの駅で降りたあと、帰り道を行き、人通りから離れた路地に入る。

 

と、腕輪の簡易式神が反応を見せた。

 

「・・・この反応は悪魔か」

 

呟く、

そっと鞄に手を入れる。

 

周辺を見回す。

人気はない、

・・・微かに血の匂いがする

 

そのまま、端末を手に取り、朧月神社の璃依に電話をかける。

 

「にぃさま?もう終わったの?」

 

「終わったってーかいつものキャンセル、」

 

「そう・・・」

 

ホッとした様な気配が電話越しに伝わる。

 

「それより、式神の反応があった。

悪魔発生、レベルは3程度、おそらく単体、場所はこれからメールで送る。

若干名の犠牲者が出てる可能性あり、」

 

「大丈夫!?すぐに人を送るから!」

 

「大丈夫、大丈夫、発見もされてないし、着くまで現場監視もやっとくぞ。」

 

「でも、にぃさま、危ないよ。」

 

「大丈夫だよ。

・・・それとも、もう未覚醒者には任せられない・・・?」

 

「そんなこと言うなんて、ずるいよ、にぃさま・・・」

 

悲しげな声で璃依は言う。

 

「あ・・・」

 

「じゃあ、にぃさまにデビルバスターを送り込むまでの間の周辺の監視をお願いするね。

報酬は、えーと・・・五万円で良い?」

 

「ちょっと高めだな。分かった。よろしく。」

 

そう言うと吉行は電話を切った。

 

 

 

「璃依、おにぃさまからですか?」

 

「うん、瑠依、至急、にぃさまをあんまり嫌っていないレベル3に対処可能なデビルバスターを呼んで、今、悪魔が出て、にぃさまが周辺の監視してるから、

ちょっと、にぃさまの様子がおかしいから冷静な判断ができないかもしれない。」

 

「分かりました、璃依、いつものおにぃさまなら、このまま帰って、全部デビルバスターに任せますものね。

・・・依頼の取り消しで、自分を否定されて辛かったんでしょうね。」

 

「うん、ひどいね。瑠依」

 

「はい、許せないですね。璃依」

 

「私達で慰めないとね。瑠依」

 

「私達で癒やして差し上げませんとね。璃依」

 

唱和するように話し終えると、双子巫女はすぐさま信頼のおけるデビルバスターに出動を依頼するため、待合室を訪れた。

 

 

 

「クソ・・・なんで僕は璃依を・・・」

 

そう呟くと、吉行は周辺を油断なく見回し、位置情報をメールで送ると、あたりを回りながら式神の反応を確かめて、悪魔がいると思われる範囲を確認する。

それもメールで送る。

 

血の匂いが広がっている。

 

やはり犠牲者がいるようだ。おそらく一人か二人、

異界化はしていないものの、悪魔が現れたせいか周辺のGP、ゲートパワーが下がり、人を寄せ付けない空間になっていた。

 

と、

 

「たすけて・・・」

 

吉行の耳に微かな声が聞こえた。

 

「・・・」

 

悪魔の放つ人寄せの精神波の類なら吉行の被っているドルフィンヘルムが跳ね返す。

跳ね返されないということは、実際の音であり、声であるということだ。

 

本来なら無視して、デビルバスターの到着を待つのが正しく、いつもは吉行もそうする。だが・・・

 

バカな現地異能者を潰した万能感か、はたまた地方勢に当て馬にされた無意識の不満か、

 

吉行は、さらに式神が詳しい情報を集められるからと、そっと、悪魔がいる中心部ではないものの危険度が高いと判断した路地に足を踏み入れてしまった。

 

血の匂いはさらに濃くなる。

あと少しで、もっと詳しい情報が分かる・・・

 

次の瞬間、

風が動いた。

 

「ジャッ!」

 

なにかの叫びともに吉行の首元が食いちぎられた。

 

次の瞬間、

 

パ、キン・・・!

 

何かが砕けるような音とともに、神々しい白い光と、禍々しい黒い光が周りを照らす。

 

その中で吉行は崩れ落ちる。

 

『ギャー!!』

 

声にならない精神波が響き、吉行を殺した何かが消えていく。

 

あとに残ったのは、倒れている吉行だけだった。

 

「いつつ・・・あークソ・・・」

 

ムクリと吉行は起き上がる。

こぼれた血は服についているが、食われたはずの首元はいつの間にか再生していた。

 

「もう悪魔や敵はいない、か、GPも正常に戻ったし、」

 

そう言うと、周辺を見回しポケットから簡易式神の束を取り出す。

 

束ねてある簡易式神の内、三つが裂けていた。

 

「発動が遅いっての、攻撃を感知した時点でハマムドの自爆簡易式神が発動するはずなのに、攻撃食らってからとかさぁ、

おかげで簡易リカームドラ式蘇生式神まで発動する羽目になったわ。」

 

吉行が持っている簡易式神の束は、特定の条件で自滅することで簡易式神のマグネタイトと魔力を使って特定の効果を発生させるもので、

悪魔からの攻撃を感知すると自爆して攻撃した相手に発動するハマとムドの式神と、人間からの攻撃を感知すると発動するジバブーの式神、

そして吉行本人が死んだときに吉行本人のみを復活させディア程度に回復させる簡易リカームドラ式神の四種類が複数束ねられている。

自爆以外に普通にMP消費での発動ができないのは、それをやろうとすると簡易式神の霊格が上がって、未覚醒者には扱えなくなるためだ。

 

すっかり正常に戻った路地で、吉行は周りを見回した後、声のした方へ行く。

 

・・・そこには手足や内蔵を貪られ元の形も分からなくなった人だったものがあった。

 

銀色の短い髪からなんとなく人だと言うことは分かるが完全に人の形が分からなくなっている。

 

「死んだのか・・・」

 

と、

 

ひゅー・・・

 

肉塊の喉が動いて空気がこぼれた。

露出し破れた肺も微かに蠢いている。

 

「生きてる!?

やばっ、大丈夫かっ!」

 

慌てて、吉行は鞄の中から傷薬を取り出してかけると同時に、束ねた簡易式神の一つを外して、それから溢れる血をつけて肉塊に貼り付ける。

 

「契約解除!契約!」

 

傷薬の作用で血が止まり、一部欠損が補われるが、大部分は欠けたままだ。

 

端末を開いて、先程までいたガイア連合支部に連絡して救急車を呼んでもらう。

 

「大丈夫か?救急車は呼んで、適当な処置はしたからもう大丈夫だ。生きて帰れる。」

 

声をかける。

声をかけることで被害者の意識を現世に留め、生還しやすくなる=簡易リカームドラ式神の発動が抑えられる。

 

それが終わると、瑠依に連絡する。

 

「瑠依」

 

「おにぃさま?何かありましたか?」

 

「出現した悪魔は排除、GPは正常化、」

 

「おにぃさま!?

大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫、大丈夫、式神が壊れただけ、それより要救助者1名確認、傷薬をかけて蘇生式神は持たせたけどかなりヤバい状態でこっちじゃ直せそうにないから、支部の方に連絡入れたぞ、」

 

「おにぃさま・・・無理はなさらないでくださいね・・・

そちらへ向かっているデビルバスターの人へは連絡しておきます。

が、現場清掃と異常がないかの確認で来ますのでお気をつけて、」

 

「了解、」

 

そうして、吉行は端末をしまう。

そして再度、出血は止まった肉塊の様になった被害者を見て声をかける。

 

と、

 

「死んだのか、」

 

声に振り返ると短い茶髪の吉行の知り合いの現地人異能者と現場処理担当の朧月神社の長い黒髪の巫女がいた。

 

「いや、まだ、生きているぞ。」

 

「お前の事だよ。」

 

異能者は吉行の首元が血で染まったシャツを示す、

 

「・・・」

 

「もう、未覚醒者でも異界監視できてた雑魚ばっかの時代じゃないんだよ。

双巫女ちゃんたちに心配かけるな。」

 

「・・・」

 

「だんまりか、」

 

そこでついてきていた巫女が口を開く。

 

「それ、治すんですか?」

 

なんとか、生きている肉塊を指差していう。

 

「ああ、」

 

「一般人でしょう?そこまでなったらもうどうしようもないのでは、

式神手術によって治すだけの価値があるとも思えませんし、」

 

「うるせぇ、代わりにお前にその分の霊的資源を使って霊的素質を上げる手術をしろってか?」

 

「民間人一人を助けるより、そうした方が、より多くの人が助かります。

今回も私達が十分な霊能の才を持っていて、十分な霊的感覚を持って街中を探知できていればその人は犠牲にならずに済んだのに、」

 

「デモニカと悪魔召喚プログラムや各種霊的装備で問題無いだろ。十分量は身内価格で一般ガイア連合員には出回らないやつも売ってやってる筈だろ?」

 

巫女が付けているアームターミナルを指して言う。

 

「ですが・・・」

 

「一族に霊能の才が欲しければそのうち産まれるあのクソ女の息子に孕ませて貰え、

ウチでも強めの黒札覚醒者の子供だから安易に式神臓器を移植するよりは強い子供になるぞ。

それに、すでにデモニカと悪魔召喚プログラムがあるのに探知できなかった以上、お前らへの移植で生やせる程度の霊能の才じゃ、移植したところで探知できない。

それより、持っている悪魔とデモニカのレベルを上げろ。犠牲者を減らすならそっちのが遥かに近道だ。」

 

吉行が言いたい事だけ言った所で、救急車がやって来た。

中から出てきたデモニカを装備した救急隊員が肉塊の様になった被害者を救急車の中に運び込む。

吉行は少し悩んで、救急隊員と被害者に一声かけると家路についた。

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

小汚いアパートの一室に入ると吉行は一息つく、

手洗いうがいをすると、部屋の一角にある大きめの神棚の前に行って、破れて壊れた簡易式神を、神棚の名刺入れから中に入れる。

 

「ご苦労さん。」

 

吉行は一礼すると、寝転がって端末をいじり始める。

 

「行け行け!そのままゴールしろ!

あー・・・」

 

端末に表示されたソシャゲのレースが終わり、ホーム画面になる。

 

と、

 

ピコリン

 

吉行の端末にメールの着信が来た

吉行は内容の確認をする。

先程見送った怪我人に関して医療班から連絡が来ていた。

 

「あー・・・やっぱり霊基も損傷してて、霊薬治療だけじゃなくて移植が必要かよ・・・

しかも完全に回復させるには、簡易パーツじゃなくて、本式の奴使わないとだめと、これ、下手したら覚醒するんだよな・・・

まあ覚醒したらしたで、働かせて手術費用のマッカ回収できるけど、

で、どんな人なんだ?男ならほっとくけど。」

 

吉行は写真や個人データを確認する。

・・・

 

「アーシャ、女、15歳、半崩壊以前からのロシア移民で日本育ちか・・・アーリャと近いな。ロシア移民コミュニティ内で知り合いだったりするかな?

お、結構かわいいじゃん、本式手術確定で・・・

全治療で、2万マッカ・・・?」

 

悩む。今回の仕事で稼いだマッカが吹き飛ぶ。

 

「・・・やろう、その代わり、もし覚醒したらしっかり取り立ててやる。」

 

吉行は覚悟を決めて医療班に電話を入れて手術をお願いした。

 

「あっ・・・一部現金払いで・・・駄目か、ガイアポイントなら・・・三割・・・せめて五割までなんとかならん?」

 

 

こうしてモブクズな未覚醒転生者は女神転生の世界を過ごしていく・・・

 

 

 

 

 

 

おまけ

今回の始末と補足説明

 

 

「今回の松戸家への処分は、種付け依頼の禁止と提携団体のランク査定見直しのみですか・・・」

 

「甘いかもしれないけど、国の霊的防御に責任を持っている以上、国の霊的防御を脅かすものでもない限り、潰すのは難しいからね。

変に国内に空白地帯ができたり、地方神や地方行政との契約引き継ぎで揉めて、得体のしれない悪魔に入り込まれでもしたら、転生者にとっても面倒なんだ。

ただ、私達や幹部勢からの覚えは悪くなるから、色々な不利益が出てくる様になる。

だけど、もしこれがきっかけで、以前みたいに転生者グループ同士の諍いになりそうになったら、責任取らせて提携団体から、仮所属団体まで落とすけど、」

 

事務処理を行う楓に千山は言う。

 

「そういえば、その未覚醒俺たちと覚醒俺たちの諍いって、どうやって解決したんですか?」

 

楓は千山に問う。

 

「それなら、どっかのキ・・・式神製作者が、それなら揉めてる相手の理想にさらに近づけた式神を、対象になってる娘をベースに生体素材込みで作ればいいよな!

人間は式神と、式神は人間と恋愛すればいいと思うんだ!

と言って、式神を双方にプレゼントして解決したよ。」

 

「おい」

 

思わず楓は突っ込む。

 

「そい・・・その人曰く、特定の人間そのものは、どうやっても公平かつ万人が満足できる分配が不可能な資源だけど、

対象の人間の外見やキャラクター性といったその人らしさ自体は、式神を使えば量産して分配できるから、万人が満足する分配を実現可能とあた・・・言ってたんだ。」

 

「・・・それで双方は納得したんですか?」

 

「とりあえず、一目惚れした依頼で来た未覚醒俺たちの方は納得したんで問題は無くなった。」

 

「・・・覚醒者俺たちの方は?」

 

「やらかした団体は、仮所属団体まで落とされたんで、問題になった覚醒転生者が面倒を見てる。

なんだかんだで、自分達の危機を助けてくれた上、気乗りしない妊娠をぶち壊してくれたから、問題になった娘も本気で惚れてるし、

まあ、プレゼントされた式神の方が色々な面で上だから、わりと地獄みたいだけど」

 

「単に子種だけが目当てだった、というわけでもないんですね。」

 

「まあね、自分達を救ってくれた相手がもう一度、今度は自分を助けてくれたというので結構本気になるよ?

 

だから全体にこういう事例があると周知もしてるけどあんまり意味は無いし、

助けた方もそうであってもやっぱり助けた人が雑な扱い受けて妊娠するのは嫌という思いは止められない。

 

・・・だからこそ、こちらが派遣した請負が恋の敵役とか道化とか踏み台になるんだよね・・・」

 

「・・・ところで、未覚醒なのに式神を持てるんですか?」

 

「それに関しては、大型シキオウジロボと同じく地脈を使って動かす構造で、覚醒して自分のマグネタイトを送れるようになるまではガイア連合支部支部内のマグネタイト供給がある所でしか動かせない仕組みになっていたんだ。

それで貰った人が覚醒するまでガイア連合が所有権を持ち、ガイア連合から無期限レンタルしてるという形にした。

 

さすがに未覚醒での本式式神の所有は禁止という原則は崩せないから、」

 

「ということは、ああいうキャンセルがあると、対象に似せた式神を作って渡すんですか?」

 

「契約があるとはいえ、先方の生体素材使うから、揉めそうな場合は、だけどね。

一応、向こうから取るキャンセル料はそれ込みだけど、対象を元に調整して似せた式神しか駄目で、

かつ、俺ら製の下級式神な上、覚醒しない限り外に出して戦闘させることもできない完全な愛玩用だから、

さすがに不義理した相手をベースにした愛玩用式神なんていらない、理想の式神か、それが駄目なら金というパターンが多くて、あんまり作られることは無いな。

今回の福木さんも持ってないし、」

 

「そういえば、その式神製作者って、課長の知り合いなんですか?」

 

「先輩のエイラニキの知り合いだから、知り合いの知り合いかな?直接会ったことは無いけど特定のスレに出没するから駄弁ることはある」

 

 

 




・・・銀髪多すぎない?

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