前略 トレセン学園のトレーナーですがブラック労働過ぎて今日もまたロイヤルビタージュース 作:雅媛
レインボーに入れた人はタキトレに謝れ。
あと、白毛に投票した皆さんは、フラペチーノ氏が書いている そのウマ娘、星を仰ぎ見る の主人公スターゲイザーちゃんが白毛ウマ娘トレーナーの先駆者としているのでそっちも見てくるように。
ちなみにハンドルネームのチーノの部分はフラペチーノさんから頂いております(本人確認済)。残りの部分については誰からもらったか、皆さん予想してみていいですよ賞品は出ません。
生徒会の事務方の新体制に、アオハル杯とグランドライブの企画書を持って、トレーナーは理事長室を訪れた
最近新しく理事長になった秋川やよい理事長は、なかなかしたたかな人物だ。
お金に関してはどんぶり勘定がすさまじい上に、場合によっては私財を投げ打つ豪快な性格をしている。これだけ聞くと激アマちゃんに聞こえるが、当然そんなことは一切ない。
飛び級で大学を卒業し、最年少で学園理事長になった少女は甘くないのだ。
あの幼く見える外見に油断して、悪事を見抜かれて飛ばされた人間は少なくない。
企画なんかも出来が甘いとすぐに却下されてしまう。
彼女にやり込められた者は聞けど、彼女を丸め込めた相手は今まで見たことがなかった。
ヘボい企画書を持っていった程度では理事長はさすがに怒ったりはしないだろうが、それはそれで緊張の瞬間である。
部屋に入ると、秋川理事長と、駿川たづな理事長秘書が豪華な部屋の真ん中にいた。
「謝罪。トレーナーには苦労を掛けた」
「理事長に謝られるほどのことはしてないですよ」
直球での謝罪に少しやりにくさを感じるトレーナー。
恩を売って上手く企画をねじ込む予定だったが、こう謝られてしまうと少し難しくなりそうだし、向こうもトレーナーがしてきたことを把握しているのだろう。
説明が省けそうだと思うことにして、トレーナーは説明を始めた。
まず、生徒会顧問については、代行が外れて正式に顧問になることが決まった。
理事長側から見れば、取れる手段はトレーナーを排除するか、誰かを追加でつけて権限を分けさせるか、丸投げするかの三択しかない。
あの生徒会の惨状を把握しながら放置していたのを考えれば、理事長には信頼できる人員がいなかったのだろう。そんな中、貧乏くじを引きに来たトレーナーが現れたのだ。これ幸いと丸投げして押し付ける。単身でどうにかしようとしていたトレーナーへの褒美でもあり、トラブルを起こしたらまた切り捨てればいいだけの生贄でもある。
ドラスティックな判断としても、人情としても、当然の選択であった
「ということで、これから頑張ってくれ」
「それでですね、生徒会発案のイベントが二つありまして、それの認可もお願いしたく、企画書を持ってきました」
「!?」
理事長は驚いた。ただでさえ生徒会顧問は激務であり、体調を崩して辞めるものが後を絶たない仕事だ。
にもかかわらず、仕事をさらに増やしに行く姿勢。ウマ娘の未来を考えていると感心するとともに、頭が大丈夫か、心配になっていた。
一方たづなさんはやはり狂人だったかと納得していた。
トレーナーがロイヤルビタージュースを大量に購入していることは知っていた。ロイヤルビタージュースと言えば体に良く疲れが一発で取れる一方、この世の不味さを凝縮したような味で味覚がおかしくなるレベルの飲み物であり、トレーナーとウマ娘の関係すら壊しかねない魔の飲み物である。
それを1日3杯分のペースで買っていくのだから、担当ウマ娘への虐待疑惑が上がってたづなさんが調べていたのだ。ところが、トレーナー自身があの泥水の方がましな飲み物を1日3杯飲んでいるのがわかったとき、たづなさんは考えるのを止めた。
企画書の概要を二人して読んでいく。
片方はチーム戦を主体とした新レースの設立
もう片方はレースに拠らないグランドライブと、それに伴い募集される一口スポンサーである。
どちらも片手間にやれる仕事ではない。専属で職員を何人か増やしてもいいレベルのものだ。
「質問。予算と人員はどれくらい必要だ?」
「それぞれの会場の使用予定は別紙に書いてあります。アオハル杯の方は学生ボランティアで対応しますし、グランドライブの方はライトハローさんの会社から人手が出ますから、特に学園からは何もいらないかと」
アオハル杯の賞品ぐらいは学園から出してもらえるといいですね~ とのほほんと述べるトレーナーに、理事長は危機感を覚える。
生徒会に、こんな二大イベントの利権を握るトレーナーの権力は絶大になるだろう。
しかも、学園側からの援助は不要と言っている。利権を独占されかねない状況だ。
トレーナーは過去は善良だったが、将来も善良とは限らない。一人が多くの力を持ちすぎるというのは健全な状況ではない。
だが、やるなというのも難しい。すでに生徒会から実施の要請という形で企画が上がってきている。粗を探して引き延ばすか、というのも考えたが、それはウマ娘のためにならない。権力闘争を優先して、ウマ娘のことを劣後させるのは秋川やよいの信念に反する。進むか、引くか。理事長は難しい選択を迫られ、そして決めた。
「さすがにこれだけのイベントをトレーナー一人で行うのは難しい。今度理事長代理兼任でトレーナーに復活する、樫本理子氏にお願いしておくから、分担するといい。あと、こちらの駿川たづな秘書もできるだけそちらに手伝わせよう」
「理事長、大丈夫ですか?」
「どうにかなる」
トラウマがあるが優秀で信用できる人材としてプールしていた樫本トレーナーと、腹心である駿川たづなをこのヤバい奴につけることに決めた。
ただでさえ少ない手元人材を使わせられるのはつらいが、やむを得ない。それに、これらのイベントが形になれば、学園はさらに発展するだろう。
「一人でも大丈夫ですよ?」
「失敗したくないイベントであるならば、人は多めに割くべきだ」
「なるほど確かに」
そんな理事長の内心に気づかず、トレーナーはのほほんと、同期の桐生院トレーナーも誘おうかなーなどと能天気に考えていた。