前略 トレセン学園のトレーナーですがブラック労働過ぎて今日もまたロイヤルビタージュース   作:雅媛

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第二章 トレーナーがやっぱりロイビタをキめながら頑張る話
第一話 ゴールドシップのトレーニングは普通でないに決まっているが、一番やべーのはトレーナーってそれ一番言われてるから


 トレーナーの本業は担当ウマ娘をトレーニングし、勝たせることである。

 当然トレーナーはそれにも手を抜いていない。

 ここを削り始めたらトレーナーを辞めろという話になっていく。だから、トレーナーが削るのはいつも睡眠時間である。

 基本的に、座学が終わる昼食後から、夕食を共にとるぐらいまではトレーナーはゴールドシップと一緒にいる。場合によっては門限ぎりぎりまで一緒に遊んでいたりすることもある。

 

 

 

 今日はトレーナーとゴールドシップは海に来ていた。

 府中から海辺まではかなり距離があるが、ゴルシちゃんワープをもってすれば一瞬である。

 しかも今回は、合同練習ということで、桐生院トレーナーと樫本トレーナーも一緒に来ている。

 

「なぜ、学園の裏山のトンネルを抜けたら、海にたどり着くんですか……」

「トレーナー、しっかりしてください!!」

「あの非常識ペアのことを常識で測ったらだめですよ!!」

「府中から海まで近い場所でも30km以上あります…… 歩いてたどり着ける距離ではないはず……」

「トレーナー!!」

 

 非常識すぎる現象に、樫本トレーナーは現実を受け入れられず、担当ウマ娘のビターグラッセとリトルココンが必死に正気に戻そうとしていた。

 

「ミーク、海ですよ!!」

「……うん……」

 

 一方桐生院トレーナーとハッピーミークのペアだが、ハッピーミークがずっと腕にしがみついており、トレーナーのことを睨みつけている。

 桐生院トレーナーが飲み会の後、知らない(ウマ娘)の匂いをべったりつけてきてから、ミークはトレーナーをナリタトップロード(N T R)されることを心配してずっとへばりついていた。

 そして本日、その相手がゴールドシップのトレーナーであると匂いで理解したのだ。

 こいつが、桐生院トレーナーを奪い取ろうとしている相手だと理解した(誤解した)

 だからこそ、ずっとトレーナーを警戒し続けているのであった。

 

 そんな視線をまったく気にしていないのが、ゴールドシップとトレーナーのペアである。

 ゴールドシップは片手にはスイカ、片手には水鉄砲を持っており、楽しむ気満々である。

 トレーナーは片手にヒョウタンを、もう片手には弁当を持っている。

 

「おい、トレーナー、そのヒョウタンはなんだ」

「トレーニングに使おうと思って。あとで教えるね」

「なるほど、まるで分らないな」

 

 ゴールドシップにも予想できない行動をするトレーナーである。

 ゴールドシップのトレーナーとなるには、ゴールドシップを超える必要があるのだ。

 

「ひとまず着替えようぜ」

「ふっふっふ」

「どうしたんだトレーナー?」

「私はすでに水着を服の下に着て来ているのです!!」

 

 ゴールドシップの用意したフリフリの服を脱ぎ捨てると、学園のスクール水着が露わになる。

 低身長とはいえ、肉付きが良い成人女性のトレーナーが着ていると、やはりコスプレか何かにしか見えないものだ。おそらく学生時代の物なのだろう、サイズが微妙に小さく、胸や尻がぱっつんぱっつんになっていた。

 

「そうか、やる気満々だな」

「ゴールドシップも早く着替えてきてくださいね」

 

 トレーナーの荷物が謎のヒョウタンと弁当だけなことにゴールドシップは気づいていた。

 つまり着替えの下着はない。

 だが、それを指摘しないだけの優しさがゴールドシップにも存在した。

 

 

 

「ということで、最初はヒョウタンでウナギを捕まえます!!」

「おー!!」

(((どういうこと!?)))

 

 トレーナーの提案に、ゴールドシップはノリノリであり、樫本トレーナーとその担当は困惑した。

 

「ウナギは捕まえられたらこちらの籠に入れてください。私が捌きますから!!」

「すいません、ゴールドシップのトレーナー。これは何のトレーニングなんでしょうか?」

 

 さすがに樫本トレーナーがそのトレーニングの趣旨を聞く。

 何のためのトレーニングか、熟練(熟女ではない)の樫本トレーナーにも全くわからなかった。

 

「禅ってあるじゃないですか」

「はい」

「あれで精神統一して悟りが開けるわけです」

「はい」

「つまりそういうことです」

「??????」

 

 説明を聞いても何もわからなかった。

 混乱した樫本トレーナーを置いてきぼりにして、ゴールドシップとトレーナーはウナギを捕まえ始めた。

 

 ブンブンとヒョウタンに付いた紐をつかんで振り回し……

 

「そおい!!!」

 

 そこに流れていた小さな川に投げ込んで、ウナギを取り始めるゴールドシップ。海は全スルーである。

 

「川遊びも楽しいですね、ミーク!!」

「……はい」

 

 楽しそうにヒョウタンでウナギを押さえようとする桐生院トレーナーに、ぴったりとくっついて桐生院の触感を楽しむミーク。二人ともスクール水着のため、普段より密着度が高い。

 なお、桐生院は運動不足ではなく、サイズもあっているのでスクール水着にトレーナーほど違和感はなかった。

 

「これ、何の意味があるんだろう」

「さあ?」

 

 困惑しながらも他のメンバーの真似をしてヒョウタンを手にするビターグラッセとリトルココン。

 なお、混乱し蹲る樫本トレーナーの方は見ないようにしている。

 XX歳運動不足の樫本トレーナーのスクール水着姿は、トレーナーの水着姿を圧倒的に超えるレベルのコスプレ感である。一人だけアニマルなビデオの登場人物のようだ。

 担当ウマ娘はその現実を直視できなかった。

 

 

 

「よし、一杯取れたぞトレーナー!!」

「大量ですね、ゴールドシップ。蒲焼でいいですか?」

「ウナギのゼリー寄せも食べてみたいのぜ!!」

「じゃあ頑張って作ってみますね」

 

 ゴールドシップはウナギを5匹も捕まえてきた。

 1匹はぶつ切りにしてゼリー寄せに、4匹は開いて蒲焼の準備をし始めるトレーナー。

 

 一方トレーニングで変な電波を拾ってしまった二人がいた。

 

「そうか、空間と時間とウマ娘の関係はすごく簡単なことなんだ……」

 

 ビターグラッセは何かの真理に到達しそうになっており

 

「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うがなぐる ふたぐん 」

 

 リトルココンは何かヤバいものを召喚しようとしていた。

 

「おい、トレーナー、変な光が降り注いで、タコみたいなのが空間を割って出て来てるんだが」

「あれはタコですね。結構おいしいんですよ」

「よっしゃ、じゃあ狩るぜ!! まかせろー!!」

 

 そうして二人のウマ娘の狂気から生まれたタコみたいなサムシングはゴールドシップとトレーナーに一目散に襲い掛かった。

 だが、ギャグ補正を得たゴールドシップとの力の差は歴然であり、ヒョウタンを振り回しながらの一撃でタコもどきはダウンした。

 なんかタコにしてはいろいろ余計なものがついているが、多分タコである。

 その後、すぐにタコもどきはトレーナーの手でタコライスにされるのであった。

 

 

 

「そう言えば、このトレーニング、いったい何だったんですか」

 

 十分担当トレーナーに擦りついて、絶好調になったハッピーミークを引きずりながら、桐生院トレーナーはゴールドシップのトレーナーに尋ねた。

 ヒョウタンでウナギを捕まえる、全く意味の分からない行動である。

 

「禅に関係する国宝の絵で、そういうことをするのがいいですよっていうのがあると聞いて、それを参考にしてみたんです。精神的な修練になるかと思いまして。Z☆E☆Nですし」

「トレーナーは禅をなんだと思ってるんだ」

「なんか真理を理解したり、高次の存在と交流したりできる方法?」

「確かにその通りだったな」

 

 疲れ切って倒れているビターグラッセとリトルココンに樫本トレーナー。

 彼らには少し、この特訓は早かったようだ。

 

「あの、トレーナーさん」

「なんですか、桐生院さん」

「禅に関する国宝って瓢鮎図ですよね、多分」

「確かそんな名前だったと思います」

 

 トレーナーはすべてうろ覚えである。それでトレーニングに良く組み込もうと思った話である。

 

「なあトレーナー」

「なんですゴールドシップ」

「瓢鮎図は、ひょうたんでナマズを押さえるという禅の公案を描いた、1415年(応永22年)以前の作。室町幕府将軍足利義持の命により制作された(by Wikipedia)ものだ」

「ナマズ…… ……ナマズ!?」

「そうだトレーナー、鰻じゃない。というかなんで鰻だと思ったんだ?」

「いやなんでだろう……」

 

 トレーナーは致命的な失敗に気づいた。

 ウナギとナマズを間違えるなど、なんということだ。ポチとタマぐらい違うではないか。

 

「まー、楽しかったしいいんじゃね」

「私たちも楽しかったですよね、ミーク」

「葵は渡さない……」

 

 根本的な勘違いをしていたトレーナーであったが、参加していたうちの三名にはおおむね好評であったので、トレーナーは良しとした。

 なお、被害者として倒れているチーム樫本の三人は、力尽きており苦情を言うだけの余力が残っていなかった。

 

 

 

 トレーニングの後は、トレーナーが作った鰻のかば焼きと、鰻ゼリーと、タコライスで夕食になった。

 鰻ゼリーはやっぱりまずかった。調理方法以前の問題として料理としての軸がずれている。

 残念ながら、不人気で残ってしまったので、力尽きて地面に倒れ伏しながら食欲がなさそうにしている樫本トレーナーに全部あげることにした。

 絶叫して飛び上がったのだから、きっと元気が出たのだろう。

 

 そうしてトレーニングにより、ゴールドシップの賢さは上がり、ハッピーミークのやる気もあがり、樫本トレーナーたちの正気は下がった。

 なお、帰りのトレーナーはノーパンであったことをここに書いておく。




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