前略 トレセン学園のトレーナーですがブラック労働過ぎて今日もまたロイヤルビタージュース 作:雅媛
さて、夏にはゴールドシップのメイクデビューにグランドライブの初回お試しライブ、さらにアオハル杯の初回と盛りだくさんのイベントが待ち受けているが、どれにもかかわっているトレーナーは、全てをこなさないといけなかった。
アオハル杯の方は、今回完全にお試しである。
学園全体に広報をしているが、どれだけ人が集まるか、全く未知数であった。
かといって、一定数の人数が参加してくれないと開催の意味がない。
今回行われるのは芝2000m。3人1チームなので、出来れば6チームは欲しい。
なので、あらかじめトレーナーは参加してくれそうなメンバーに声をかけるのであった。
まず声をかけたのは生徒会のメンバーだ。
「ということでルドルフさんにもお願いしたいんだけど」
「別段構わないが……」
ルドルフが言いよどむ。
「それでさらに注文なんだけど、私が選んだメンバーを勝たせるように動いてほしいんです」
「なるほど」
ルドルフとトレーナーの懸念は、結局ルドルフが全力で走ればルドルフが勝ってしまうということだ。
チーム生徒会となって、シンボリルドルフ、エアグルーヴ、ナリタブライアンなんて出た日には、モブなんて鎧袖一触からの焼肉定食である。
余りに強すぎてつまらない。
だから、チーム生徒会は生徒会メンバー二人に、トレーナーが用意した一人を加えて、その一人をチーミングで勝たせてもらうという方法を取ってもらうことにした。
「で、誰なんだい、そのトレーナー君が選んだメンバーは」
「いい子ですよ。入っておいで」
「ハルウララだよ、よろしくね!!」
「トレーナー君、アオハル杯はどんなレースプログラムだったかな?」
「芝2000m、中距離の予定ですね」
にっこり笑うトレーナーに獰猛に、楽しそうに笑う生徒会長。
ハルウララ、前世の馬では全く勝てなかったアイドルであり、ウマ娘になってからはダートと短距離の適性があるので案外G1は勝てるぐらいの才能があふれ出し始めた子である。
ただ、それはあくまでダートで短距離、せいぜいマイルの話である。
中距離の芝は無謀すぎる挑戦であった。
この逆境に、無駄に生徒会長は燃えていた。
まず勝てない状況である。
距離適性も、バ場適性もまるでないウララを、サポートして勝たせるなど無謀もいいところだ。
しかし、狂気の沙汰ほど面白いことはない。
後、ウララが可愛くて単純に萌えていた。
「いいだろう。ウララ君、よろしく頼むよ」
そういいながらいそいそと抱き上げてウララを膝に乗せる生徒会長。
とても楽しそうである。
エアグルーヴが次は私に代わってくださいと言いはじめ、ナリタブライアンは面倒になって逃げだした。
他にもスマートファルコン、ミホノブルボン、サイレンススズカのチーム逃げ切りシスターズも参加してくれるという話を聞いているし、タイキシャトルもメンバーを集めてチームを作っていると聞いていた。
「最低限、チームの数はそろいそうかな」
「なあトレーナー、ゴルシちゃんのチームどうすればいいんだ?」
「え、ゴルシちゃん出るの?」
アオハル杯とゴールドシップのメイクデビューの時期が近いので、トレーナーは出ないものと勝手に思っていた。
「出たいなら出てもいいけど…… メンバーは」
「誰も集まんねー」
「え、仲良しな子結構いるじゃない」
ゴールドシップの交友関係は広い。メンバーあと2人ぐらいなら集まりそうな気がするが……
「最初はマックイーンとやろうかと思ったんだけど、マックイーンと組んだら強すぎんじゃん。で、悩んでたらイクノに取られた」
「残念でしたね」
「ウオッカやスカーレットと組んでもいいけど、普通に面白くねーんだよな」
悩んでいるゴールドシップ。
ウオッカとダイワスカーレットと3人でまともにやったら明らかにこの3人が勝つだろう。なんだかんだで協調性もあるからチームプレーもできるだろうし、実力は三人とも圧倒的だ。
だが、それでは「面白くない」のだろう。
まあ、そのあたりはゴールドシップに考えてもらおう。そういう人集めからトレーニングの一環である。多分。
一方参加者集めに苦戦しているアオハル杯に対して、グランドライブの方は無茶苦茶人が集まっていた。
出演者も参加者もいっぱいである。
一口スポンサー制度がかなり効いているのが一つ。
乙名史記者の広告が効いているのがもう一つの原因だ。
ウマ娘と一般の観衆の接点はかなり少ない。
レースとウイニングライブを除けば、あとは春秋のファン大感謝祭ぐらいか。
ウマッターやウマスタで発信している子もいるがかなり少数だ。
スポンサーになれば、スポンサー限定の練習参観なんかもあるし、トレーナーからの報告書も手に入る。
気に入ったウマ娘との接点を多く持てるのだ。
一方のウマ娘側も、備品や消耗品など、学園支給の物から脱却できて快適に生活できるというメリットが捨てがたいし、応援してもらえるというのも純粋に嬉しいものである。
そういった部分をうまく乙名史記者が広告してくれたおかげで、すでに企画会社の方へ問い合わせが殺到しており、その最初のお披露目であるグランドライブの参加者も大量に集まっていた。
トレーナーは、そんな中、新しい振り付けの映像を撮影していた。
余りに希望者が増えたので、ふるいにかける意味でも既存曲の振り付けを変えたのだ。
今までの振り付けは、センターがとにかく目立ち続けるものであったが、1曲の中で参加者全員に、センターの位置に立つ機会がある振り付けにしたのである。
当然そんな振り付けを考えたり教えたりするのは、トレーナーの仕事になってしまっていた。
「なかなか、ライブって難しいですね……」
一人で黙々とやるのはトレーナーの精神が耐えられなかったため、協力してくれているトレーナーに声をかけ、手伝ってもらっている。
桐生院トレーナーは身体能力は高く、動きは綺麗なのだが、ダンスのセンスがないのか、全体的になんとなく暗黒盆踊りみたいな動きになっていた。
見ていると少し不安になってくる不思議な踊りだ。
「……」
樫本トレーナーは体力切れですでに動かなくなっていた。
振り付けを考えるときには、彼女の豊富な知識と経験が生きていたのだが、それを実践する段階になって5分で、彼女はすでに動かなくなっていた。
ウマ娘なら、ここからロイヤルビタージュースを飲ませれば24時間戦えるのだが、残念ながらあれはヒトには強すぎるため、使用もできない。
しかし、こうするとどうするか。撮影桐生院、ダンスはトレーナーでもできないわけではないのだが、身長が低く、そのくせ体型は豊満すぎるトレーナーは、手足や体幹の動きが目立たず、一方で豊満すぎる部分がとても動いて目立つので、参考資料としてはいまいちなのだ。
ウマ娘にとって、最速の機能美はダンスの面でも憧れであった。
しかし、他のメンバーを思い出しても、ライトハローも成人女性らしい熟成した体型の持ち主だし、駿川たづなも、そこそこいい体型をしている。そうするとやはり、桐生院のスレンダーさが良いのだが…… なんせ暗黒盆踊りである。
他にスレンダーなメンバーは…… トレーナーは悩み、そして思いついた。
グランドライブの練習用ビデオ映像は、非常に出来が良いと評判だった。
特に、猫と一緒に踊っている小柄な栗毛のウマ娘が可愛いという声が多かった。
だが、そのウマ娘が誰なのか、知っているものはほとんどいない。
疲れ切った理事長は、仕事をするためにロイヤルビタージュースを飲んで、あまりの不味さに意識を飛ばしていた。
どの話から書こうか
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ゴルシちゃんのメイクデビュー
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アオハル杯初戦
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グランドライブ初戦