前略 トレセン学園のトレーナーですがブラック労働過ぎて今日もまたロイヤルビタージュース   作:雅媛

21 / 24
第二話 グランドライブでライブするなんて普通じゃね思ったゴールドシップはインド映画を参考にし、トレーナーはRBJ売りの少女となった

「ジュースはいりませんか? ジュースはいりませんか?」

 

 グランドライブの会場の片隅で、少女が飲み物を売っていた。

 真っ白な艶のない髪に、真っ黒な目の下の隈。

 肌も艶がなく、明らかにやつれたウマ娘だ。

 ザ、貧乏というオーラを醸し出した少女が、会場の片隅でジュースを売っている。

 

 ただの通行人でも大丈夫か聞いてしまうレベルの薄幸オーラを出している彼女を、グランドライブの会場に来ているようなウマ娘が好きな人たちが放置するわけがなかった。

 

「お嬢さん、ジュースを売っているのかい? いくら?」

「1杯100円です」

 

 偶然その少女を見つけた男性もまた、少女を心配し声をかけた一人だ。

 今回一口スポンサー制度を聞き、一人ぐらいサポートできたらという気持ちで、この場を訪れていた、一般ウマ娘ファンモブである。

 ひとまずジュースを売っているようだから、ということで一つ注文したところ、出てきたのは緑色の液体だった。

 野菜ジュースか何かだろうか。特に何も考えず飲み干した彼は……

 

 虹色に輝き、倒れた。

 少女の後ろには、虚ろな目をしたRBJゾンビが物陰で控えている。

 みな、RBJ売りの少女であるトレーナーがロイヤルビタージュースを飲ませた被害者である。

 ロイヤルビタージュースを飲み干すと、あまりの不味さに一時的に意識がなくなる。

 その状態の被害者を邪魔にならないように後ろに立たせて保管しているのだ。

 特に意味はない。そのうち目覚めるだろう。

 

 ロイヤルビタージュースの布教をして、満足そうなトレーナー。

 トレーナーのその胸部や尻は豊満だが、さらしを巻いて締め付ければ、身長が低いのも相まってただのやつれたロリウマ娘にしか見えないのだ。

 そんなのにひょいひょい引っかかった被害者は、両手両足の指の数を超えるほど出ていた。

 

「トレーナーさん、見つけましたよ」

「ゲッ、たづなさん!?」

「逃がしません!!」

 

 しかし、そんな悪行も長くは続かなかった。

 理事長秘書のたづなさん率いる、トレセン学園精鋭ウマぴょい警察に見つかったのだ。

 日々、違法なウマぴょいを取り締まる彼女らから、さすがのロイビタをキめたトレーナーでも勝てなかった。

 

「弁護士を呼べー!!」

「静かにしましょうね」

 

 そのままトレーナーさんは、府中刑務所へと収監されるのであった。

 

 

 

 さて、トレーナーさんのことはどうでもいいので、ゴールドシップに目を移そう。

 順調に重賞を勝ち、ホープフルステークスに勝利をおさめた彼女は、無事ジュニア年度代表ウマ娘に選ばれた。

 ジュニアウマ娘のトップになったのだ。

 

 こうなれば人気は非常に集まるし、ライブもそれはそれは期待される。

 今回年末に行われる第二回グランドライブでも、彼女は注目の的であった。

 だが、ゴールドシップのやる気は絶不調だった。

 

「やる気でねー」

 

 トレーナーが何か準備をしていれば、きっと、ゴールドシップの予想をはるかに超えることが発生し、面白いを超えた困惑をもたらしてくれるのだろうが、残念ながら今回トレーナーはゴールドシップのライブにかかわることを禁止された。

 あのけばけばしい洗脳ライトをばらまきながら、再度自爆でもされた日には、エアグルーヴの目がまたやられてしまう。

 そのため、トレーナーはライブ会場接近禁止命令が出され、ただただ書類仕事だけをさせられていた。

 だが、ロイビタ1日3倍分、通常のウマ娘のトレーニングで1日に必要とされる労力の100倍の労力を発揮できるトレーナーにとって、仕事の一部禁止は、非常にストレスを与える行為でしかなかった。

 そのせいで、暇を持て余した彼女は、RBJ売りの少女ごっこをして、今、独房に監禁されている。

 

 閑話休題、ゴールドシップである。

 ゴールドシップは坐禅を組んだ。

 そう、アイデアを得るために…… そうして、ゴールドシップは悟りっぽい何かを閃いたのであった。

 

 

 

 ライブの日、ゴールドシップのライブ会場では、非常に良いにおいが漂っていた。

 コリアンダーやシナモン、グローブやカルダモンといった、スパイスの混ざった香りである。すなわち、カレーであった。

 坐禅をしてゴールドシップは遥かなるインダス川の力を感じ、インドに目覚めたのだ。そして、カレーを得た。

 鍋でカレーを煮込むゴールドシップ

 なぜか横でヨガをやらされるウオッカとスカーレット

 あまりに硬くてヨガができず、ナンを焼かされているライスシャワー。そろそろナンシャワーになりそうである

 そして観客に振舞われるカレー

 

 期待してたのとまったく違う状況に、しかしあまりにおいしいカレーに、観客は困惑のみを覚えていた。

 

「つづいて、カレーに重要なジャガイモのため、メイショウドトウさんをジャガイモ男爵に叙勲します」

 

 カレーの匂いが漂う中、ファインモーション殿下が、厳かに告げる。

 目の前には縛られて転がされているメイショウドトウが「むーむー」うなっている。

 どう見ても拉致されてきたとしか思えなかった。

 

「神は、天に月を、地に華を、カレーにじゃがいもをくださいました。神の奇跡に感謝し、ここにジャガイモ男爵の叙任を行います」

 

 意味不明すぎる状況に、観客は困惑しながら涙を流す。カレーが辛すぎたようだ。

 勢いで進んでいく儀式に、しかしいきなり飛び込んできた者がいた。

 

「異議あり!!」

「貴様何奴!?」

「ジャガイモにカレーはロジカルじゃねえな」

 

 通りすがりのエアシャカールである。

 

「カレーにじゃがいもは全く必須じゃねえ。ジャガイモにこだわるようじゃ足元を掬われるぜ、お姫様」

「ですが、ジャガイモのないカレーはマーマイトがないイギリスのようなもの!!」

「それ、両方滅ぼした方がよくね?」

「……そうだね、シャカール」

 

 ともあれ、イングランドは滅ぶべきであると考える次第である、というのはアイルランド王家の演説にしばしば唐突に入る単語である。

 それくらいアイルランドはイギリスが嫌いなのだ。

 

 かくして、叙勲式は急遽キャンセルになり、ファインモーションはエアシャカールと豚骨ラーメンを食べに行ってしまった。

 残されたメイショウドトウだけがぽつんと地面に横たわっているのであった。

 

 ジャガイモがなくても、本格スパイスで作られたカレーは大人気であり、ゴールドシップのインド風な謎の踊りと相まって、無駄に人気が集まった。

 しかし、ホウレンソウで作られたグリーンカレーだけは、なぜか誰も食べることがなかったのをここに記しておく。




評価お気に入り・感想お待ちしております。

最強を決めるトゥインクルスター クライマックス どのレースに焦点を当てましょう

  • 芝短距離 バクシンバクシン!
  • 芝マイル エンジョイスピリットデース
  • 芝中距離 ボクが最強なんだから
  • 芝長距離 ライス頑張るね
  • ダート短 ウララ、頑張りまーす
  • ダートマ コパコパしてきた!!
  • ダート中 おばあちゃんじゃぞ♡

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。