前略 トレセン学園のトレーナーですがブラック労働過ぎて今日もまたロイヤルビタージュース   作:雅媛

23 / 24
第四話 ファイナル、つまりすべてを終わらせるレースならば何でもいいはずなので、ひとまずミホノブルボンガンダムは許されるだろう

 今年の年末年始はイベントが目白押しである。

 グランドライブを行い、アオハル杯が開催され、次に行われるのはURAファイナルであった。

 

 もっともこの後、全ての最強を決めるトゥインクルスタークライマックス杯が行われる予定であり、前座のようなポジションになってしまっているこちらは、何かしらの特徴をつける必要があった。

 

 そうして始まったのが、この無差別級何でもありダービー、芝2400mであった。

 この前のアオハル杯で、芝をすべて食いつくされてから、どうにかして芝を再度復旧した技術班は泣いた。

 

 

 

 そもそも、URAファイナルの責任者の所在が不明だった。

 グランドライブはライトハローとそのイベント会社が

 トゥインクルスタークライマックスは乙名史記者とその新聞社が

 アオハル杯は生徒会とタイキシャトルが

 それぞれ中心となってスタートさせたものだ。

 

 だが、URAファイナル自体は雑にURAから理事長の秋川やよいに丸投げされ、またそこからトレーナーに適当に任された、本当に無責任の極みのようなイベントになっていた。

 だからトレーナーが好き勝手した。そして他のイベントと違い、それを止めるものは誰もいなかった。

 

 そうして出来上がったのが、URAファイナル(いろいろな面で終わっている)レースであった。

 

 

 

 あらゆる制限を取り払って最強を決めるという建前のせいで、ただのカオスになったURAファイナル、明らかにいろいろ終わっているレースが今始まろうとしていた。

 

「ということで実況のトレーナーです」

「解説の乙名史です」

「URAファイナル、始まっちゃいましたね」

「下手な小細工をするからこうなるんです。でも、内容はなかなか楽しみなメンバーが集まっていますよ」

 

 自分の目標としていたトゥインクルスタークライマックスを邪魔する目的で始められたURAファイナルに良い印象がない乙名史記者は毒舌を吐くが、それはそれとしてレースは楽しむつもりらしい。

 

「では一番、バイクに乗ったウオッカさん、+412kg。後部座席にはダイワスカーレットさんです」

「バイクはお父様に借りてきたらしいですね。整備が良くされていて素晴らしいです」

 

 ご機嫌にバイクを見せびらかすウオッカ。免許は取り立てらしい。

 後部に座る予定のスカーレットも内心は期待しているらしく、尻尾が揺れている。

 

「続いて二番、張りぼてゴルシちゃん、+(ぴー)kgです。中のウマ娘はゴールドシップとメジロマックイーンさんです」

「製作は学園理事長の秋川やよいさんです。謎のフォルムですね」

 

 長い首と、長い胴体がどんな動物を模しているのか、二人にはわからなかった。

 異世界の馬など知るわけがないのだ。

 理事長がなぜこのフォルムにしようとしたのか、知ろうとすれば命にかかわるからおすすめはできない。

 

「そう言えば、この前走のバ体重、ゴールドシップのですね。つまり、メジロマックイーンさんの体重は「それ以上は止めてくださいまし!!」」

 

 メジロマックイーンの体重は完ぺきなのだ。

 

「では続いて、三番、サトノコプター、+1942kgです」

「ヘリコプターを持ってくるとは、財力を感じますね」

 

 サトノダイヤモンドが運転するヘリコプターの登場である。

 メジロマックイーンがしゃっくりをするたびに呼ばれるため、最近ではマックイーンはサトイモのまえでしゃっくりをしなくなってしまった。

 

「四番、悪の科学者により18mに巨大化させられたヒシアケボノです」

「食費、大変そうですね……」

 

 ちなみにタキオンとは関係ないが、なぜかタキオンはたづなさんに追いかけられていた。

 

「五番、フルアーマーミホノブルボンアサルトバスター菊花決戦仕様です。こちらも18mあります」

「本体はどこかわからない18m級のロボットが「モビルスーツです」……ロボッ「モビルスーツです」……ロボ「モビルスーツです」……」

 

 ミホノブルボンにごちゃごちゃつきすぎて大きくなってしまっているミホノブルボンであるが、ロボットではなくモビルスーツらしい。譲れない何かがそこにあった。

 

「六番、レコード絶対ブッ壊す修羅イスシャワー(金棒装備)です」

「ライスね、レコードを壊すことに幸せを感じるんだ♡」

 

 黒いオーラをまとったヒールがミホノブルボンの隣に現れる。

 その視線の先には、18mのロボ「モビルスーツです」…… モビルスーツが存在していた。

 ちなみに金棒は○○なり一ハロンの設定である。

 

「七番、悪の科学者により改造された○面ライダービコーペガサスです」

「本人ノリノリで楽しそうですね」

 

 ちなみにこちらもタキオンとは関係ないが、やはりなぜかタキオンはたづなさんに追いかけられていた。

 

「八番、お色気担当のエアグルーヴ(花嫁衣裳)です」

「アイルランド内戦がまた勃発してしまいますよ」

 

 女帝の色気は国を割る。つまり彼女は傾国の美女だった。

 現にすでに、観客席ではどっちがもらうか、ファインモーションと姉殿下が戦っている。

 

「九番、何も知らないサイレンススズカ、体重に変更はありません」

「なぜこれに参加してしまったのでしょうか?」

 

 何も考えずにこんな魔境に参加してしまったサイレンススズカが呆然と立ち尽くしていた。

 

「本日のURAファイナルは、この総勢9名で行われます」

「何が起こるかわかりませんね。発走は、15分後です」

 

 混沌に埋め尽くされたレースが始まるまで、あと少しだった。

 

 

 

 

 バイクにヘリコプターに、18m級のヒシアケボノとロボ「モビルスーツです」モビルスーツがいるため、ゲートは使えず、ロープでスタートの合図を行うことになったレースが、始まった。

 

「遊びでやってんじゃないんだよ!」

 

 修羅イスシャワーが、さっそくレコードをブレイクするべく、ミホノブルボンに襲い掛かる。全長150cm以下の修羅イスと、18mサイズのミホノブルボンでは大きさに差がありすぎるが、なぜか互角に渡り合っている。

 

 そんな横をロケットスタートしたのは、張りぼてゴルシちゃんである。

 

「ウマ娘二人の力を使って、速度も2倍だぜ!!」

 

 謎の頭が悪すぎる計算式で、なぜか時速140kmの速度で走りだす張りぼてゴルシちゃん。

 その後ろを、遅れてウオッカのバイクが走り出した。まだ免許を取って1年も経っていないので、二人乗りができないことをスタート直前に気づいたため、ダイワスカーレットは置き去りであった。ゲートに体育座りをしているダイワスカーレットが哀愁を誘う。

 

 なお、無免許で運転しようとしていたサトノダイヤモンドは怒られて失格になった。ヘリの免許は18からなのだ。

 

「ジンクスは破るものです!!」

 

 と叫んでいたが法律を破るのは許されるものではなかった。

 

 その後ろをサイレンススズカとエアグルーヴが続き、最後に○面ライダービコーペガサスが続く。

 

「おかしい、○面ライダーに改造されたら成人男性の二倍の力を得るはずなのに……」

 

 想定より全くスピードが出ずに首をかしげるビコーペガサスだが、ウマ娘は平均成人男性の三倍のスピードで走るので、計算は何も間違いはなかった。

 最後に誰かを踏みつぶしかねないので立ち尽くすヒシアケボノが取り残される。

 ミホノブルボンと修羅イスシャワーの戦いは宇宙(ソラ)へと移っていた。

 

 

 

 東京競馬場2400mのコースは、スタートしてそうかからずに第一コーナーが存在する。

 そこにトップで入った張りぼてゴルシちゃんは、曲がり切れずに外へと吹っ飛んだ。

 ハリボテの運命である。コーナーは曲がれない。

 まあ、通常の倍の速度が出ているのだから、ハリボテでなくとも曲がれないだろう。

 

 そうして無事、張りぼてゴルシちゃんは、ゴールドシップとメジロマックイーンに分裂し、ゴロゴロと転がってコースアウトした。

 コメくいてー、の (ー▽ー) の顔で、二人とも倒れている。

 

 それを横目にサイレンススズカとエアグルーヴが走っていった。

 ウオッカがそれに続く。法定速度時速60kmを守っているので、ウマ娘よりは遅いのだ。

 ヒト息子の2倍の速度しかでないビコーペガサスがそのあとを続いていた。

 

 そうして向こう正面を通過し、第三コーナーに入ろうとしたところに……

 

「グルーヴさん、結婚しよう♪」

「わが心の女帝陛下、結婚してくれ!」

 

 アイルランド王家の2人が待ち構えていた。エアグルーヴへと求婚を始める二人。正直邪魔である。

 先頭を走っていたサイレンススズカは、2人を躱し…… おもむろに振り返った。

 

「エアグルーヴ、私を選びますよね?」

 

 いきなりアイルランド王家の2人の戦いに混ざったサイレンススズカ。

 先頭の景色以外にも譲れないものがあったようだ。

 それを見たエアグルーヴは……

 

「お前ら…… いい加減にしろ!!!」

「へぶっ!?」

「ぶへっ!!」

「あぼぁ!?」

 

 ついにキレて三人をはね飛ばしたのであった。

 仲良く三人ともダートコースの方へと飛んでいき、頭から突き刺さった。

 

「お前ら、レースはまじめにやれ!!!」

 

 くどくどと説教を始めるエアグルーヴ。どうやら堪忍袋の緒が切れてしまったようだ。

 ダートに頭から刺さりながら、正座する三人。

 説教はなかなか終わらなさそうである。

 

 残るウオッカのバイクと、○面ライダービコーペガサスが最後の直線に入る。

 ヒト息子の倍の速度しかないビコーペガサスでは、バイクには追い付けない。

 そんな時、ビコーペガサスに一つのアイデアが浮かんだ。

 

「ウマソルジャーバズーカを使えば!!」

 

 ウマソルジャーVの必殺兵器、ウマソルジャーバズーカで、先頭のウオッカを撃ち落とせば勝てるというとてもクレバーで暴力的な解決方法を思い浮かべた○面ライダーピコーペガサス。

 早速ウマソルジャーバズーカを呼び出したが……

 

「あれ…… 撃てない」

 

 みんなの正義の心を一つにしないと撃てないウマソルジャーバズーカは、うんともすんともいわなかった。正義の心もなければ、みんなもいない状況では当然である。

 

 このまま、ウオッカが1着になるか、ゴールまであと100mとなったとき……

 ゴール板直前、スタート地点で体育座りをしているダイワスカーレットを発見した。

 

 二人で乗ると約束していたことをウオッカは思い出す。

 1年間経たないと二人乗りできないことをウオッカは先ほどまで知らず、無邪気にそう約束したことが思い浮かぶ。

 そして、スカーレットを置いて走り出したターフは……

 

「スカーレット」

「なによ」

「すまねえ、二人でって約束したのに置いていって」

「いいわよ、あんたがパカだって知ってるから」

「でもさ」

「なによ」

「やっぱりお前が居ねーとつまんねーんだ」

 

 そういってバイクを降りるウオッカ。彼女が求めていたものが何かを、走ってきたからこそ本当に理解したのだ。

 二人だけの空気の中、何が起きたかを語るのは野暮だろう。

 ヒシアケボノが18mの空の上から二人を見守っていた。

 

 

 

 なお、レースはその後、残骸をもって走ってきた張りぼてゴルシちゃんがゴールしたことで終了し、タキオンはヒシアケボノを巨大化させたこととビコーペガサスを改造したことに関する冤罪で、府中刑務所に送られた。




評価お気に入り・感想お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。