前略 トレセン学園のトレーナーですがブラック労働過ぎて今日もまたロイヤルビタージュース   作:雅媛

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第二話 襤褸雑巾をゴミ箱に捨てるのは善行だが人をゴミ箱に捨てるのは悪行であるならばこの襤褸雑巾とウマ娘の中間の物体はどう扱うべきか

 ゴールドシップは悩んだ。

 ベンチの上に襤褸雑巾らしきものが落ちている。

 そして臭い。とても臭い。3日間風呂に入っていないウマ娘の匂いがする。もしくはブルーチーズ。

 だが一方で、遠目から見ればウマ娘にも見えなくもない外見をしている。近くから見ると臭いで目がショボショボするのでよくわからない。

 つまりこれは、襤褸雑巾にも見えるし、ウマ娘にも見える物体である。

 

 ウマ娘なら、誰かを呼ぶべきだ。なぜここに倒れているのかわからないが、あまり良い理由ではないだろう。

 襤褸雑巾ならばごみ箱に捨てるべきだ。学園内は綺麗に保たないといけない。ゴミを放置すればどんどん汚れていってしまう。

 だが、これがウマ娘と襤褸雑巾の中間の存在だったらどうするべきか。それも考える必要があるだろう。これが、ウマ娘か、襤褸雑巾か確定はしていない。言わばシュレディンガーの猫である。であるならばこれがその二つの中間的存在である可能性もある。

 

 ウマ娘と襤褸雑巾の中間的存在についてどうするべきか、ゴールドシップは知らなかった。多分生徒手帳にもどうするべきか、書いてなかったと思う。

 ひとまずウマ娘の要素を考えて助けるべきだろうか。

 そんなことを考えながら、その物体Xの襟首を親指と人差し指で摘まんでもち上げる。

 臭いし、汚そうだし、ウマ娘だったとしてもあまり触れたくない物体だ。

 通常のウマ娘の1倍もない物体Xは簡単に持ち上がった。

 そうしてゴールドシップは気づいたのだ。物体Xの胸元にトレーナーバッジが輝いていることを。

 

 トレーナーバッジをつけているということは、これはトレーナーである。

 ウマ娘のトレーナーか、襤褸雑巾のトレーナーかはまだ判断がつかないが、トレーナーであることは間違いない。トレーナーは人でもなれるし、ウマ娘でもなれると聞いたことがあるが、もしかしたら襤褸雑巾でもなれるのかもしれない。そこはよくわからない。

 とにかくトレーナーである。それがベンチに落ちていた。これはたぶん捨てトレーナーというやつである。

 なぜなら、道端に猫が落ちていれば捨て猫だし、それが犬だったら捨て犬だ。で、ある以上落ちていたトレーナーは捨てトレーナーだろう。

 捨てトレーナーなら持って帰って飼うこともやぶさかではない。寮は動物禁止であるが、案外みんなこっそり動物を飼っている。捨てトレーナーだって飼えるはずである。

 相性が悪かったらちゃんと保健所に連れていく。ゴールドシップはそう決意して、寮へと移動し始めるのであった。

 

 

 

 トレーナーが目を覚ますと、そこは知らない天井であった。

 ベンチで倒れていたはずだが、誰かが助けてくれたのだろうか、ベッドであおむけで寝ているようだ。

 ひとまず起き上がろうとして、首に違和感を感じる。

 手で首元を触ると、革製の何かが首に巻かれていた。

 

「え、なにこれ!? 首輪!?」

「起きたか、捨てトレーナー」

「捨てトレーナーって何!?」

 

 徹夜でもうろうとしている頭に、ゴールドシップの発言は理解するには高度過ぎた。

 何を言っているかさっぱりわからない。

 

「大丈夫だ、ゴルシちゃんが拾ったからにはちゃんと飼ってやるし、万が一相性が悪くてもちゃんと保健所に連れて行ってやるからな」

「保健所!?」

 

 ツッコミどころが多すぎて、回転が鈍っているトレーナーの頭ではツッコみきれない。

 

「まあまず、最初に聞こうか」

「何を?」

「ご飯にする? 

 お風呂にする? 

 それともゴ・ル・シ ♡」

「えっと、じゃあゴルシで」

 

 完全に馬鹿になっている頭でトレーナーは答えた。

 何故ゴルシを選んだか。

 ゴルシとはいったい何なのか。

 そんなことは全くわからない。

 ただ、トレーナーはゴルシを選んだ。

 そして、それで運命が決まった。

 

「お前、面白い奴だな!! いやー、良い捨てトレーナーを拾ったぜ!!」

 

 ゴールドシップは上機嫌である。

 このトレーナーこそが、ゴールドシップが探し求めていた『面白い』トレーナーであった。

 一方トレーナーは困惑していた。

 目の前のウマ娘、多分ゴールドシップと言う名前のウマ娘だと記憶しているが、彼女に首輪をされて、ペットにされているというわけのわからない状況である。

 

「あの、ゴールドシップさん?」

「なんだ? トレーナー!」

「お風呂入りたいのですが」

 

 さすがに3日もお風呂に入っていないのはやばい。というか着替えていないのもやばい。

 それに、風呂に入るといえば隙ができて逃げだせるかもしれない。

 そんなことを考えて提案したトレーナーであったが……

 

「たしかに、三日ぐらい風呂に入ってないウマ娘の匂いがするもんな! ヨシ、風呂に入れてやる!!」

「え、いや、自分で入れますし」

「遠慮すんなトレーナー! 飼い主が隅から隅まで洗ってやるよ!!」

「ちょ、ま、んぎゃあああああああ」

 

 ゴールドシップに首根っこを摘まれたトレーナーは、風呂場に連行されていく。

 途中ですれ違った生徒たちは、そんな異様な光景でも、誰も気にも留めない。なんせゴールドシップである。気にしたら負けだと、彼女らは知っていた。

 後なんか臭いので関わりたくないのもかなりあった。

 

「へるぷ、へるぷー!!」

「ほら、あんまりうるさくすると寮長さんに見つかって保健所に連れていかれんぞ」

「なんで保健所~!!!!」

 

 現役のウマ娘に、三徹の過労ウマ娘では力比べで勝てる訳がない。

 そのまま連れていかれたトレーナーは、お風呂で文字通り隅から隅まで洗われてしまうのであった。




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