前略 トレセン学園のトレーナーですがブラック労働過ぎて今日もまたロイヤルビタージュース   作:雅媛

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第三話 トレーナーの胸部もゴールドシップの胸部も非常に豊満であるが、ともあれサイレンススズカの胸のボリュームには気を付ける必要がある

「着替えがない……」

 

 寮の風呂に連れ込まれ、文字通り隅から隅まで洗われたトレーナーは、困っていた。

 今まで着ていたのは、三日間、風呂も入らず眠りもせず着替えもせず、着続けていた服だ。

 三日間熟成されたウマ娘ちゃんスメルがたっぷり浸みこんだ上に、ところどころにこぼしたロイヤルビタージュースが浸みこんでおり、ヤバい臭いがしている。

 風呂で綺麗に洗われて、綺麗になった現状だと気づいたが、乙女がさせてよい臭いではない。

 汚物に等しい物体であるこれを、綺麗に洗われた今、再度着る勇気はトレーナーにはなかった。

 だが、自分のほかの服はトレーナー寮の自分の部屋にある。

 バスタオル1枚でそこまで駆け抜けるのは無理だ。絶対捕まる。バスタオル1枚の痴女、トレセン学園に現れると記事になりかねない。

 そうなったら社会的にも精神的にも死を迎える。多分肉体的にも死にたくなる。

 いや、バスタオル1枚で頑張るからいけないのではないか、3枚ぐらいあればどうにかぎりぎり許されないか。

 そんな無駄な発想に至り、体中にバスタオルを巻き始めたトレーナーのところに、ゴールドシップは戻ってきた。

 

「何してんだ、トレーナー」

「バスタオル1枚で寮に着替えを取りに行ったら犯罪ですけど、3枚ぐらい使えばどうにかならないかなと思いまして」

「色々見えちゃいけないものが見えてるから、アウト度は上がってるな」

 

 乱雑に巻かれたバスタオルの隙間から、乙女的に見えてはいけないところがちらちら見えている。こんな姿が外で見つかった瞬間、もしもしポリスメンであり、明日の朝刊にはトレセン学園のトレーナー、淫行で逮捕、とか載ってしまう。

 飼い主としての責任を感じながら、ゴールドシップは持ってきた着替えをトレーナーに手渡した。

 

「ひとまずアタシの服で、一番小さいの持ってきたから、これ着とけ」

「ゴールドシップさんの服ですか…… サイズ、合うかなぁ」

 

 大人の女性らしく出るところはとても出ている豊満な体型のトレーナーだが、運動不足で現役時代と比べてウエストも豊満になりつつある。

 ゴールドシップのどこに内臓が入ってるんですか? みたいなウエストとはかなり差があるのは一目瞭然である。

 もっと大きな差は身長である。170cmもあり、ウマ娘としてかなり高身長なゴールドシップに比べ、トレーナーはタマモクロス以下の自称140cmしか身長がない。

 体型を見なければ、子供料金でも乗り物に乗れるし、一部の絶叫マシーンには搭乗拒否をされるレベルである。

 

 まあ何にしろ、ひとまず試着してみようと下着を取り出すと、黒のレース付きの勝負下着が出てきた。

 結構アダルティな雰囲気を醸し出している。いつもの色気がないトレーナーの下着とは雲泥の差だが…… これ、ゴールドシップの服ってさっき言ってたよな、と思いながら、トレーナーはゴールドシップの方を振り返った。

 ゴールドシップは明後日の方を向いていた。

 

「これ……」

「いや、アタシはとってもアダルティな大人だからさ」

「……」

「マックイーンと言い合いになって、勢いで買ってみたはいいけど着る勇気が出なかった奴ですごめんなさい」

 

 ゴールドシップはあっさりゲロった。

 ちょっと勇気が必要なアダルティな下着だが、まあ、三日間熟成ウマ娘下着よりはましだろうと思い着用する。サイズ的にはちょっときつかったが、着れないほどではなかった。

 

「やべーなトレーナー、大人の色気が、えいっ、えいっ、むんっ、だ」

 

 ちんちくりんに色気も何もないと思うトレーナーであったが、褒めてくれているようなので素直に聞いておく。

 そして次に取り出した服は、なぜかフリフリひらひらマシマシの、ゴスロリ服であった。

 なぜこれになったのか、再度ゴールドシップの方を振り向くと、ゴールドシップは明後日の方を向いていた。

 

「これ……」

「トレーナーのサイズに合いそうなのがそれだけだったからさ」

「……」

「だ、大丈夫ちゃんと洗ってあるから」

「着たことあるんですね」

「い、一回だけなんだぜ! 小さすぎて今はもう着れないんだぜ!!」

 

 長身で美人系のゴールドシップがフリフリの服を着る姿を、トレーナーは想像した。

 結構似合っている気がする。というか黙っていれば美人だしたぶん可愛いのではなかろうか。

 

「ふむ」

「ああん? 文句あるのかよ!!」

「いえ、多分すごくかわいいから、着た姿見てみたいなって思っただけですよ」

「……まあいいのぜ。さっさと着るのぜ」

 

 口調が崩壊しているゴールドシップは置いておいて、トレーナーは渡された服に着替えた。

 サイズがやはりあっておらず、袖が完全に余ってアグネスタキオンの勝負服みたいになっている。ぐるぐる回せばブンブンと袖が回った。

 幸いスカートの方はぎりぎり引きずらないぐらいの長さであり、移動することはできそうだ。

 

「よし、次は飯にしよう!!」

 

 そういうゴールドシップに抱えられ、トレーナーは食堂へと連行されるのであった。

 

 

 

 食堂で食事をしようとして、困ったことが起きた。

 なんせ、今のトレーナーの服は萌え袖を超えたタキオン袖である。

 箸もスプーンもフォークも何も持つことができない。

 そもそも食べることが不可能なのだ。

 

「食べられない……」

「仕方ねえな、食べさせてやるよ」

「いや、それはとても恥ずかしいから遠慮します……」

「なんでだよ、要介護1のアグネスタキオンは、いつもトレーナーにこうやって食べさせてもらってるんだぞ」

「私がトレーナーで、ゴールドシップさんはただの学生じゃないですか」

「ちげーよトレーナー、ゴールドシップ様はトレーナーの飼い主だ。つまりすべての権利を握っている。OK?」

「OKじゃないです」

「問答無用!!!」

 

 ゴールドシップは、熱々煮込みニンジンハンバーグを一口切り取り、トレーナーに差し出してくる。

 このまま逃げようとすると、おそらく熱々煮込みニンジンハンバーグはトレーナーの頬に着弾し、とても熱いだろう。

 仕方なく口を開けるトレーナー。

 ゴールドシップが差し出した熱々煮込みニンジンハンバーグは、無事トレーナーの口に入った。

 

「ちゃんと食わねーと大きくなんねーぞ」

「私もう成人してますから、食べても横にしか育たないですよ」

 

 20をとっくに超えている状況で、食べた程度で身長が伸びるとはとても思えない。

 ゴールドシップは自分を幼児か何かと勘違いしているのではないかとトレーナーは考え始めた。

 ちなみに関係のないことなのだが、ゴールドシップの胸部は豊満であり、トレーナーの胸部はさらに豊満であった。そして、サイレンススズカの胸のボリュームには気を付けないといけない。

 

「いいじゃねーか、横に育つのも健康な証拠だ」

「ただでさえウシ娘とか言われることもあるんですから、これ以上育ちたくないですよ」

「このおパカッ」

「痛っ、何するんですかぁ」

 

 ゴールドシップが血相を変えてトレーナーの頭をはたく。

 トレーナーは頭を抱えて抗議するが、ゴールドシップは真剣な表情を崩さない。

 

「おまえ、牛なんて言ったら妖怪スぺに乳を搾られるぞ!!」

「なんですかそのダイナミックセクハラ…… というか妖怪スぺって誰ですか」

「日本一のウマ娘を目指す北海道出身の酪農系アイドルウマ娘だ。実家ではよく牛の乳搾りをしていたらしいが、東京だと乳しぼりができないだろ。ホームシックと併発して、でかい乳を搾ろうとする妖怪に変身した」

「そんな状態の子放置してて大丈夫なんですか? というか同室の子大丈夫なんですか?」

「同室のスズカは胸がないから大丈夫だ」

 

 そして、サイレンススズカの胸のボリュームには気を付けないといけない。残念ながら搾るほど胸がないのだ。

 

「それだとゴールドシップさんも狙われそうですね」

「ああ、ただ、妖怪スぺはダンゴムシが苦手だからな。ダンゴムシ投げつければ逃げていく。トレーナーも万が一に備えてダンゴムシをもっておけ」

 

 そういいながらゴールドシップはポケットからダンゴムシを取り出し、トレーナーに手渡した。

 トレーナーは窓を開けて、袖をうまく使ってダンゴムシを外に捨てた。

 

「なんでそんなことするんだよ! ダンゴムシだって生きてるんだぞ!!」

「生きてるダンゴムシをポケットに入れておく方が可愛そうです」

「…… 確かにそうだな」

 

 ゴールドシップはポケットから大量のダンゴムシを取り出すと外に捨てた。

 ちょっと気持ち悪いぐらいの数が出てきた。

 

 その後、ゴールドシップは手をちゃんと洗って、消毒もして、トレーナーの口にハンバーグを持っていく作業を再開する。

 ダンゴムシちゃんはかわいいが清潔さの面ではかなり問題がある。ゴールドシップは非常識だが衛生の知識は最低限持ち合わせているのだ。

 トレーナーもあきらめて、ゴールドシップに夕食を食べさせられるのに応じるのであった。




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