前略 トレセン学園のトレーナーですがブラック労働過ぎて今日もまたロイヤルビタージュース   作:雅媛

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第六話 学生時代仲が良かった後輩と卒業後しばらく会わなくなって偶然また再会するとかそれはまるで恋物語のようだけど結局仕事の話だけして何も起きない話

 ゴルシちゃんにお姫様抱っこされながら、トレーナーが移動しているとスマートファルコンがビラ配りをしているところを通りかかった。

 時々見かける日常的な光景であり、スルーしようとしたゴールドシップであるが……

 

「ゴールドシップさん、ストップ」

「ん? どうかしたんだ?」

「学園時代の後輩がいました。ライトハローさん、お久しぶりです」

 

 トレーナーが手を振ると、ライトハローも気づいたようでトレーナーに向かってくる。

 そのままゴールドシップごとトレーナーを抱きしめる。

 

「お久しぶりです先輩。相変わらずウマ娘キラーですね」

「その渾名嫌なんだけど。どういう意味ですか」

「学生時代から何時もウマ娘侍らせてたくせに」

「昔も今も侍らせてないんですけど!?」

 

 再会して即発生した風評被害に、トレーナーは抗議したがライトハローはどこ吹く風である。

 

「私だって付きまとってましたし、生徒会長とか副会長に気に入られてたじゃないですか」

「生徒会の皆さんは私が庶務で雑用してたからだし、貴方は単に私のストーカーみたいに付きまとってただけですよね!?」

「ライバル蹴散らすの大変だったんですからね」

「話盛らないでください!」

「おいあんた」

 

 ゴールドシップが不機嫌そうにライトハローを振り払った。

 

「これは私のトレーナーだかんな。昔の女はお呼びじゃないんだよ」

「ふむふむ、なるほどなるほど」

「その訳知り顔がむかつく」

「ゴールドシップさん、少し交渉なんですけど」

 

 スマートフォンの画面をゴールドシップに見せながら、話を始めるライトハロー。

 自分の頭上でやり取りが行われているため、トレーナーには何を見せているのかはよくわからない。

 

「これでも5年間一緒に居ましたから、結構こういうの持ってるわけですよ」

「なんだよ、マウントか?」

「いえいえ。ただ、欲しくないですか?」

「……」

「どうせ昔と変わらずワーカーホリックなんでしょう? 今の方がひどいかもしれません。だったら、見てる人は多いほうがいいと思いませんか? 大丈夫です。夜の時間だけですから」

「……しゃーねーな。詳細はあとで相談だ」

「ふふ、連絡先教えてくださいね」

 

 トレーナーの頭越しに、ゴールドシップとライトハローの間で何か合意が結ばれていた。

 トレーナーは何が起きているかわからず、抗議にジタバタし始める。

 

「先輩、のけ者にされると幼児退行するんですよね。可愛いです」

「お前がやばい奴だというのはよくわかった」

 

 ゴールドシップはライトハローに戦慄した。

 

 

 

「それで、スマートファルコンさんと何してたんですか?」

「グランドライブの復活をしたいと考えてまして」

「グランドライブですか……」

「知ってるのかトレーナー!?」

「グランドライブとは、古代ローマに行われていた神にささげる儀式です。生贄などもいたと聞いていますが、ローマ帝国にキリスト教が浸透してきたときに自然消滅したと聞いています。それがシルクロードを渡り、中国でも流行し、遣唐使により日本に伝わったとか。そうですよね、ライトハローさん」

「全然違います」

「(´・ω・`)」

 

 堂々と説明したトレーナーのグランドライブの説明はバッサリとライトハローに切り捨てられた。

 最初の説明と全く違う説明をされて困惑していたスマートファルコンは、安心した表情を浮かべる。

 

「あんまトレーナーいじめるなよ」

「ゴールドシップさん、先輩は確かにいじめて涙目になっているときが可愛いのは否定しませんが……」

「さでずむ……」

「よくわからない説明をし始めた時にはちゃんと否定しないと駄目なんですよ。大変なことになります」

「そ、そんなことないよ?」

「先輩が訳わからない電波を拾った時は大体ろくでもないことが起きるんですからね!! あのよくわからないタコみたいな神様呼んだとき、本当に大変だったじゃないですか!!」

「たこ焼きパーティ、おいしかったですよね」

 

 ゴールドシップは感心した。

 さすがマイトレーナー。見たら発狂しかねないような神を呼び出しつつそれをタコ焼きにしたらしい。ゴルシちゃんでもなかなかできない所業である。

 

「ごほん、グランドライブは、ウイニングライブとは別に、ライブ単体で独立して行うイベントです。スマートファルコンさんが、勝利とライブが結び付きすぎているのを懸念していらっしゃったので、昔やっていたライブ形式を復活させてもいいかと思いまして」

「なるほどなるほど」

「どうです? 先輩も一口噛みませんか?」

「構わないけど、学園側に話は通した?」

「……」

「在学生は学園の方の許可ないとそういうの出来ないけど大丈夫?」

「……」

 

 にっこりと笑うライトハロー。

 こいつ、強引に実行してなし崩しで通そうとしてるな、というのをトレーナーは察した。

 学園に許可がいるというのは学生と学園の約束であり、第三者であるライトハローが守る必要はないのだ。そして実行してしまえば学園側も無許可を理由に処罰はしがたい。犯罪行為をしているわけではないのだ。

 

「一応学園側には話を持って行ったんですよ。特に会場は学園の物を使わせてもらえれば楽ですから」

「あー、断られましたか?」

「残念ながら……」

 

 一応筋は通そうとしたのは理解したトレーナー。

 だがおそらく条件交渉前に門前払いを食らったのだろう。

 トレーナーはため息をついた。

 

「まったく、誰にどう通すかは、こういう申請では大事だって何度も教えましたよね。なんで私のところに持ってきてくれないんですか」

「先輩、ここ2年ぐらい音信不通だったじゃないですか!!」

「あ、それはその…… トレーナー試験に集中してて…… あと携帯電話って苦手だから……」

「というか私、先輩がトレーナーになったっていうのも今日が初耳なんですけど!」

「ご、ごめんなさい」

 

 どうやらこのトレーナー、日常生活だけでなく交友関係もガバガバのようだということをゴールドシップは悟った。

 

「ひとまず私がその企画、もう一度学園に通してみるから、資料頂戴」

「そんなことより先輩、飲みに行きましょうよ!!」

「そんなことより!?」

「おいおい、アタシをおいてトレーナーを口説くのはNGだぞ。というかさっきからスマートファルコン置いてきぼりじゃねーか。口ぽかんと空けてこっちみてんぞ」

「あー、ひとまずご飯一緒に食べましょうか。スマートファルコンさんからもお話聞きたいし」

「あ、はい、わかりました」

 

 話を振られたスマートファルコンは反射的に答える。

 

「何が食べたいですか?」

「肉と酒がいいです先輩!!」

「あたしも肉がいいな、トレーナー!!」

「私、ファルコンさんに聞いたのですけど。あとライトハローさん、学生がいるところでお酒は禁止ですから」

 

 そんなことを言いながら、4人は学園近くの焼き肉食べ放題の店へと向かうのであった。




評価お気に入り・感想お待ちしております。

そういえばトレーナーさんの毛色ってなんだろう(未設定) 皆さんの印象は?

  • 鹿毛  一番多い
  • 栗毛  こっちも多い
  • 黒鹿毛 いうほど黒くない
  • 芦毛  白くて結構目立つ
  • 青鹿毛 青なのにこっちの方が黒い
  • 青毛  ウマ娘にいないレアな真っ黒
  • 栃栗毛 こっちもレアだけどウマ娘にはいる
  • 白毛  超レア
  • お前にレインボー

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