ロンメルの受難   作:ゆっくり霊沙

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浮野の戦い

 ある日清洲城に書類整理の手伝いに出向いていると藤吉郎とばったり会った

 

「お久しぶりでございますなロンメル殿、しかし大きくなりましたな」

 

 藤吉郎だが、信長に使える小者であるが普請奉行、台所奉行等を率先して行い頭角を現していた

 

「藤吉郎じゃないお久しぶり! 学校に居た頃が懐かしいね」

 

「はい。しかしロンメル殿は今じゃ足軽大将でしたか、出世しましたなぁ」

 

「藤吉郎も学校卒業してから城仕えとして大活躍と聞いているよ。この前台所奉行として薪の値段を今までの3分の1にまで減らしたり、清洲城の塀を迅速に直したらしいじゃない。流石学校1の天才」

 

「いやいや、武功を立てられていない拙者はまだまだ……」

 

「武功だけが功績じゃないよ。裏でしっかり城を回す人が居ないと城は脆い。それに城についてよく知ることができれば自身が城持ちになった際に下を上手く使えるからね」

 

「城持ち……」

 

「使える者は妖怪でも使うのが織田信長様だ。藤吉郎も頑張っていれば報われると思うから一緒に織田家を盛り上げていこう!」

 

「はい!」

 

 秀吉は後年ロンメルの事をこう評価している

 

「信長様ご存命の頃より大立ち回りを続け、身1つで出世し、学校に通わせて貰えたご恩により今の秀吉有りけり。それはそれは強烈な憧れの対象でござった。身分が低い者にも腰が低く、偉ぶらず、粛々と仕事をこなす様をよく見習ったものだ」

 

 と……

 

 

 

 

 

 

 戦が無いので内政に力を入れているが、ロンメルは他国と米相場の値段の違いに気がつき、調べてみると甲斐や信濃が高く、尾張、関東の武蔵、下総は安いことに気がついた

 

 そこでロンメルは差額を利用した米転がしを実行、無理の無い範囲で借金もして特産物を購入し、それを関東で転売、売れたお金で米を買い込む

 

 季節が10月……収穫期なのでいつも以上に相場が下がっており、120石ほど買い込むことができ、それを凶作で困っている武田領で高く売りさばく

 

 この時私の馬30頭もつれていき荷台に10個ずつ俵を乗せ、合計300俵を運ぶ

 

 道無き道を進み、関所を飛ばし、武田領にて売り払うと購入金額の1.8倍にもなったため、交易品を購入

 

 これを3回ほど繰り返す頃には笑いが止まらない程の大金となり、十一の借金(10日で1割り増し)を返してもロンメルの手元には650貫近くが残る

 

「ただこれはもうできないな」

 

 たまたま道中山賊が居ないルートだからよかったものの、山賊に襲われたりしたら大損だし、米屋に1日に3回も通った為顔も覚えられてしまったので今度行ったら北条氏に通報されかねない

 

「まあでも650貫も有れば色々な道具が作れたり他の作物を交易で手に入れることができる……大太刀も新調しなきゃな……無理して使ったから手入れしてても切れ味が落ちてきているし」

 

 ロンメル愛刀の交換を決意、尾張1の鍛冶師に大太刀を打って欲しいと100貫渡して依頼した

 

 100貫も貰った職人は大興奮、失敗を何回かした後3か月後にロンメルの元に大太刀が届く

 

「この大太刀の名前は影月……打っているとき月光で浮き上がった影を切断しているように見えたのでそう命名しました」

 

「影月……良い刀だ。ありがとうございます」

 

 ロンメルは名刀影月を手に入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 永禄元年(1558年8月)

 

 ロンメル黒髪の3つ子を出産

 

 勿論父親は信長で男2人に女1名だった

 

「なぁ妖怪は妖怪を産まないのか? 少し期待していたのだが」

 

「うーん、産まない人は本当に産みませんから……信長様の血が強すぎるのかもしれませんが」

 

「そうか? それはそれで良いな! うむこやつらは余に似ているな!」

 

 そう言って信長は五郎、六助、鶴と名前を付けると食事を取り談笑する

 

「大太刀を新調したと聞いたが」

 

「はい。前の大太刀はあそこ(神棚みたいな場所)に飾り、今の大太刀はこちらに」

 

「……重いな」

 

「前よりも力が増えたので重くしました。打撃でも殺せる自信があります」

 

「……おお! 見事な作りぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「……のう、ロンメル、お前は余を裏切らぬよな」

 

「いきなり何をいうのですか……信長様が死ぬまで見届けますよ……妖怪ですから」

 

「そうか……ずっと側に居るとは言わないのだな」

 

「それは濃姫達が居ますゆえに……私は子供達のために戦い続けなければいけません」

 

「いや、お主の才は泰平の世こそ輝く物であろう。米の収穫量を跳ね上げ、様々な事業で益を出しておろう」

 

「いえ、私は戦国の世でなければ才を使いきれませぬ。平和な世で産まれましたが、ここまで人殺しの才があるとは思いませんでしたので……」

 

「そうか……」

 

「お父上様!」

 

 だっだっだっと黄坊が走ってくる

 

「お父上様! お久しぶりでございます」

 

「おお! 礼儀正しいな! 信行みたいじゃな」

 

「やー! 信行おじさんお父上の敵!」

 

「はは! 敵じゃない。もう余の家族だ。もう争ったりはせんからな」

 

「そうなの? あのね! あのね! 名前書けるようになったの! おだきぼうって!」

 

「そうかそうか! 黄坊は利口じゃな」

 

「母上に色々教わるの! 強くなってお父上の役に立つの! ねー! 黄衣! 黄衣!」

 

「黄坊なに? あ! お父上だ!!」

 

「お主ら見ないうちに大きくなったな」

 

「あたしもお父上の役に立つの! そろばん? 習って役に立つの!」

 

「黄坊も! 黄坊も!」

 

「そうかそうか! 励め励め! そして色々な事をして学べ! 知るは力ぞ」

 

「「はい!」」

 

 わーきゃーと言って走り回る2人を見て信長は

 

「あ奴らの為にも天下を平定せねばな……しかし、本当に利口じゃなあ奴ら」

 

「普段は悪ガキですよ。馬小屋にいつの間にか入って遊んでいたり、近所の子供と石合戦に参加していたり」

 

「はは! 余の子供らしいわ! 色々痛い目を見ながら成長していくものだ。死ななければ良い。これからも頼んだぞロンメル」

 

「は!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからまもなく信長は尾張統一の為に岩倉織田家を倒すために兵をあげる

 

 このために信秀の死後独立勢力となっていた織田信清に信長の姉犬山殿を嫁がせて勢力を組み込み、浮野の地にて合戦が発生

 

 勿論ロンメルも参加し、柴田勝家、丹羽秀永と連携して序盤から岩倉織田家を圧倒

 

 特にロンメル率いる鉄砲隊と弩を渡していた弩隊による連携攻撃により敵右翼を壊走させ、右翼側から中央に斬り込んだ

 

 ロンメルが先陣を切り、約100人を殺害したところで信清隊が戦場に到着し、そのまま包囲しようと動いたところで敵は壊滅

 

 ただこの包囲作戦をしているときに流れ矢が信清に直撃して絶命

 

「悪いな、ロンメル様の密命でな」

 

 信清暗殺は尾張統一の邪魔でしかないと判断したロンメルの独断であり、部下の忍衆を動員し、半乃助の指揮のもと戦場の混乱に紛れて暗殺に成功した

 

 信清が暗殺されたことで岩倉織田家はなんとか本拠地の岩倉城に逃げ延び籠城の構えを取る

 

 信長はそのまま城を包囲し、数週間後岩倉城は落城、関係者を追放し、織田信清の領土も吸収したことで信長は尾張統一を達成した

 

 ただ、包囲中に弟の信行が再び謀叛を計画していると柴田勝家から密告があり、信行を呼び出して殺害

 

 この信行美濃の斎藤家だけでなく今川とも通じようとしており、信長も許すことができないと判断したのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「信行なぜ、なぜだ……なぜ再び裏切った……」

 

「信長様……」

 

 清洲城の寝室にてロンメルを呼び出し信長は落胆している姿を晒していた

 

 尾張を統一したのに浮かばれなく弟を殺さざるえなかったことに酷く悲しんだ

 

「信長様、戦国の世は弱いのは罪なのです。信長様は信行様が付け入れる隙があると思われるほど弱く見えた。ただそれだけなのです」

 

「弱いは罪か……ならば余は強くあろう。斎藤も今川をも打ち倒し天下に号令をかけるのだ!」

 

「そのいきでございます」

 

「ロンメル、今回の武功により300石を追加し、戦目付に任ずる。これからも余の為に働け」

 

「は!!」

 

 ロンメルは500石を持つ戦目付へと昇進した。これは現在の母衣衆と同列であり、ロンメルは小隊長から中隊長へと抜擢されたこととなる

 

 これをもってロンメルは上級武士の仲間入りとなった


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