ロンメルの受難   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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茅野の時間

 演劇会の発表会という行事も終わり、いよいよもうすぐ冬休み

 

 冬休みは皆で暗殺旅行を決行するつもりだ

 

「しっかし杉野熱演だったな! あんな邪悪な顔が出来るとはねぇ」

 

「やめろよ、神崎さんと共演できるからって力入りすぎちゃって」

 

「でも演技力がある人って格好いいと思うよ」

 

「ま、まじで! 俺野球辞めて役者目指そうかな!!」

 

 神崎さんに言われたことで真剣に考え始める杉野君

 

 しかしやっぱり皆暗殺のことで頭がいっぱいだ

 

 烏間先生から予算はたっぷり確保してあるとのことで、極寒の環境を利用した暗殺や雪山を水に変えて襲うプランなど色々と考えていた

 

 殺せんせーが席を立ったのを見て皆で話し合う

 

「ロンメルさんっていう最高戦力をどうぶつけるかだよな」

 

「ロンメルさん何か良い案ない?」

 

「クックックッ水攻めがやっぱり無難だから私が雪崩に巻き込まれるふりして殺せんせーが慌てて助けると思うから雪に触手の動きを阻害する薬品を混ぜれば私も動けないけど殺せんせーも動きが鈍ると思うからそこを上手く狙撃できれば……」

 

「人工的な雪崩を起こすには爆薬が必要だから俺がやるよ」

 

「殺せんせーの触手の動きを阻害する薬品は私が!」

 

「狙撃は俺と速水だな」

 

「ええ」

 

 竹林君が爆薬の調合、奥田さんが薬品、狙撃を千葉君と速水さんコンビのリベンジ

 

「あとやっぱり精神攻撃はどんな暗殺でも織り混ぜた方が良いよな」

 

「岡島どうだ?」

 

「バッチリ集まってるぜ! 殺せんせーのあれやこれやが」

 

「でかした」

 

 そうこう話していると校庭から爆発が発生した

 

 皆驚いて教室の窓から外を見るとダメージを受けた殺せんせーと【触手を生やした茅野さん】が外にいた

 

「……!? 何で茅野さんが触手を!?」

 

 私は一瞬思考が停止してしまった

 

 なぜ茅野さんが触手を生やしているかわからずに

 

「あーあ、渾身の一撃だったのに」

 

「茅野さん……君は一体……」

 

 殺せんせーの問いに茅野さんは答える

 

「ごめんね、茅野カエデは本名じゃないの……雪村あぐりの妹……それを言えばわかるでしょ人殺し……達」

 

 殺せんせーとロンメルの方を茅野さん……いや、雪村あかりは指を指した

 

「しくじっちゃったものは仕方がない。切り替えないと……明日も殺るよ殺せんせー、場所は直前に連絡する」

 

 そう言って茅野さんはどこかへ行ってしまった

 

「どういうことだよ……ずっと触手を隠してたのか!?」

 

 岡島君の問いにイトナ君がありえないと答える

 

「メンテナンスもしないで触手を運用していたとしたら地獄の苦しみが続いていたハズだ。脳みその中をトゲだらけの虫がずっと暴れている気分だ。表情にも出さずに耐えきるなんてまず不可能だ」

 

「……しかも雪村あぐりの妹だって?」

 

「前の担任の先生じゃねぇか」

 

 雪村あぐりの妹雪村あかりのことをロンメルはよく知っていた

 

 雪村先生が自慢の妹だ、天才子役で子役ながらドラマの13本(主演3本)、映画7本(主演1本)の活動をしていた天才というか化物である

 

 殺せんせーもロンメルも雪村先生から雪村あかりの写真は見せてもらえなかった

 

 それは雪村先生がなんかの拍子で雪村あかりの姉だとバレて変なことになれば妹に申し訳ないし、邪魔をしたくないからという妹思いの理由であった

 

 雪村先生の妹がまさか暗殺教室に潜伏し、更に触手を隠し持っていることをロンメルや殺せんせーにすら悟らせない演技力……まさに怪物である

 

「すげぇや顔つきから雰囲気まで全然違う」

 

「この演技力じゃ1年近く正体隠してられるわけだ」

 

 磨瀬榛名(ませ はるな)……それが雪村あかりの芸名であり、彼女は幾つもの顔、名前を操り、正体を隠していた

 

 今思えばロンメルが居ないタイミングで行った巨大プリンの暗殺もロンメルにバレないタイミングを見計らって決行し、違和感を感じさせないために行った可能性すらある

 

 ロンメルはゾッとした

 

 これが演じる……無害だと思っていた者がいきなり敵になる恐怖……予想外の裏切りはここまで精神を動揺させるのかと

 

「殺せんせー、ロンメルさん……茅野……先生達のこと人殺しって言ってたよ」

 

「なぁ……過去に何があったんだよ」

 

「こんだけ長く信頼関係築いてきたんだからもう先生やロンメルさんをハナから疑ったりはしないよ」

 

「でももう話してもらわなくちゃ2人の過去の事を」

 

「でなきゃ今の状況に納得できない。そう言う段階にきちゃったんだよ」

 

「「……」」

 

 殺せんせーとロンメルは顔を見合わせる

 

 そして殺せんせーが口を開く

 

「わかりました。先生達の過去の全てを話します。ですがその前に茅野さんはE組の大切な生徒です。話すのはクラスの皆が揃ってからです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日の夜7時

 

 茅野は決戦の場所を椚ヶ丘公園の奥のすすき野原とし、全員がそこに集まった

 

「まずは殺せんせーを殺る。次にロンメルさんを殺る」

 

「茅野さん、その触手をこれ以上使うのは危険過ぎます! 今すぐ抜いて治療しなければ命に関わる」

 

「え? 何が? すこぶる快調だよ。ハッタリで動揺させてくるのやめてくれない殺せんせー」

 

 渚君が今まで茅野さんが楽しく過ごしてきた皆との時間は演技なのか聞くと

 

「演技だよ。これでも私役者でさぁ、渚が鷹岡先生にぼこぼこにされている時じれったくて参戦してやりたくなった。死神に蹴られた時なんかはムカついて殺したくなったよ」

 

「でも耐えてひ弱な女子を演じたよ。殺る前に正体バレたらお姉ちゃんの仇が討てないからね」

 

「お姉ちゃん? ……雪村先生のこと?」

 

 不破さんが質問すると

 

「そう、この怪物達に殺されてさぞ無念だっただろうな。教師の仕事が大好きだった。皆のこともちょっと聞いてたよ」

 

「知ってるよ茅野……2年の3月から2週間ぽっちの付き合いだったけど、熱心で凄く良い先生だった」

 

 と竹林君が答える

 

 杉野君が

 

「でもよ雪村先生を殺せんせーやロンメルさんがいきなり殺すかな? そう言う酷いこと俺らの前で1度もやったこと無いし」

 

 皆が茅野さんを説得し始める

 

 殺せんせーの話だけでも聞いてみてはと

 

 この暗殺が殺し屋としての最適解だとは思えないと

 

 イトナ君は触手を持っていたが故に今の危険性を言い当てる

 

 ロンメルから見ても茅野さんの体温は上昇を続けていた

 

 代謝異常による大量の汗、発熱と脳の血管に異常な速度で流れる血液……そしてリンパや神経、血液等が触手に栄養を吸われているのが透き通る世界で見て取れた

 

 しかし、皆の話を一蹴、茅野さんは熱を触手に集めることで触手は発火し、その火がすすきに引火する

 

 炎のリングが出来上がる

 

 状況の急激な変化に弱い殺せんせーは茅野さんの豹変と炎に囲まれたという状況の変化で茅野さんの攻撃をさばくのに精一杯だ

 

 刻々と茅野さんの命のタイムリミットが近づく

 

 茅野さんの攻撃はまるで火山弾の様に苛烈で容赦が無いが、触手に精神が乗っ取られ始めているのかちぎった触手を見て異常に興奮していたりと異常行動が目立つようになった

 

「死んで!! しねぇ!!」

 

 ロンメルは友を助けるタイミングを探っていた

 

 決定的な隙を

 

 殺せんせーが顔だけ残像を飛ばして皆に語りかける

 

「皆さん手伝ってください! 一刻も早く茅野さんの触手を抜かなければ!! あと1分で生命力が触手に吸われて死んでしまう!! 彼女の殺意と触手の殺意が一致している間は触手の根は神経に癒着して離れません!」

 

「戦いながら引き抜きます! 先生はあえて最大の急所を突かせます。ロンメルさん……先生は行動不能になるかもしれません。そしたらあなたが茅野さんの触手を抜いてください! 皆さんの誰でも良い! 茅野さんの殺意を一瞬忘れさせてください」

 

「殺意をって」

 

「どうやって」

 

「方法は何でも良い、思わず暗殺から意識をそらすことを」

 

「でもその間茅野の触手は殺せんせーの心臓の中にあるんじゃ」

 

「先生の生死は五分五分です。ですがクラス全員が無事に卒業できないことは……先生にとって死ぬことよりも嫌なんです」

 

「30秒たったら決行します! とびっきりのをお願いします!!」

 

 

 

 

 

 

 殺せんせーの心臓に茅野さんの触手が深く入った

 

 殺せんせーは茅野さんを抱き締めた

 

「君のお姉さんに誓ったんです! 君達からこの触手を離さないと!」

 

 渚君が行った

 

 茅野さんにキスをした

 

「今!!」

 

 私は持てる技術を全て使い茅野さんの触手を根ごと引き抜いた

 

 皮膚の一部が剥がれるが、私の触手で作った万能細胞で傷痕が残らないように綺麗にしていく

 

「フゥゥゥゥ!」

 

 ブチン

 

 全ての根を引き抜いた

 

「茅野さんはこれで大丈夫……殺せんせー!!」

 

「ぐふ……流石に堪えました……心臓の修復には時間が」

 

 その瞬間誰かが発砲した

 

 私の触手が間に入り弾丸の軌道をずらす

 

「対先生弾! ……柳沢!!」

 

「使えない娘だ。肉親の復讐劇ならもう少し良いところまで持っていけると思ったのだがな……最後は俺だ。俺から全てを奪ったお前達に対し……命をもって償わせてやる……いこう二代目……3月には呪われた生命に完璧な死を」

 

 そう言い残して彼……いや彼らは消えた

 

 黒い皮のジャージで顔まで隠した男と共に……

 

 

 

 

 

 

 茅野さんが目を覚まし、殺せんせーの心臓の修復を終わらせ殺せんせーはゆっくりと話し始めた

 

 

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