芝の獅子帝―サクラアスラン奮闘記   作:シェルト

126 / 126
リアル多忙といえ半年ほったらかしですみません…


答え合わせ 三人称視点

メイダンレース場 スタンド

 

 

(…まあ及第点ってとこだな。)

スタンドからアスランのゴールインを眺めたシリウスはそう結論付けた。

 

アスランが『荒療治』と評した今回の遠征。

課題解決と成長のためにはただの勝利ではなく、それ以上の何かが必要となる。

 

(しかし…テイオーの言った通りだったな…)

 

 

 

 

 

 

数週間前

トレセン学園 屋上

 

 

「なら聞かせてみろ。お前が思うアスランの『足りないもの』を。

満足のいく答えだったなら協力してやる。」

 

「分かった。

 

アスランに足りないものは、

 

 

 

 

 

 

『頭の柔らかさ』でしょ。」

 

 

シリウスの真っ直ぐな視線に怯むことなくテイオーは言い切る。

 

シリウスはそのままテイオーから視線をそらさない。

『そのまま続けろ』と無言の圧を感じたテイオーは口を開く。

 

「よくトレーナーは『自分だったらどう走るのか考えろ』って言う。

だからボクも考えてみたんだ。

 

もしボクがアスランと走るなら、どう走るかって。

 

そしたら、答えはすぐに分かった。

 

 

ボクなら…4コーナーでアスランが外に出ないよう徹底的にマークする。

もっと言えば、

 

アスランが『領域』を出すのを、いや、『出せない』状況に追い込む。」

 

 

『領域(固有スキル)』は非常に強力な必殺技とでもいうべき代物である。

 

発動すれば選手のポテンシャルを最大限に引き出し、大きな自信と高揚感でもって勝利を目指せる。

 

 

言い換えれば、

一度『領域』にハマった者は、『領域』を多用してしまう。

 

「アスランの場合4コーナーで外に持ち出して、領域を出そうとする。

先行か差しかに関わらず全てのレースでだ。

 

最後に何をするのかが分かっているのなら、そこさえ対策すればいいだけの話だからね。」

 

いくら強力だからといって多用すれば、それを前提に対策されるのは自明の理である。

 

ホームランしか狙わないというのが見抜かれているバッター相手なら、これほど楽な試合はない。

 

 

「だからシリウスはアスランに宿題をあげたんでしょ?

 

『領(・)域(・)』に(・)こ(・)だ(・)わ(・)ら(・)な(・)い(・)レ(・)ー(・)ス(・)を(・)し(・)ろ(・)って。」

 

テイオーはそうシリウスの考えを解釈する。

 

シリウスはテイオーの考えを終始黙って聞いていた。

 

 

「…まあ、ここ最近のアスランのレースは『領域』ありきだったからな。

おかげでソティスも対策しやすかったってもんだ。」

 

シリウスがハッと笑う。

 

「あいつ(アスラン)のレースを少し見たソティスが見抜けたんだから、てっきり同期やスピカのトレーナーは気づいているものと思っていたんだがな。」

「確かに…アスランはここのところ、『三冠ウマ娘』としてふさわしい勝ち方をって考えてたから、ボク達も視野が狭まってたかも。」

 

「でもお前(テイオー)は気づけたじゃないか」というシリウスの言葉にテイオーがふふんと微笑む。

 

「と、いうわけでシリウス!アスランを海外レースに連れていって!

海外レースはタフだって聞くから、『領域』使ってどうにかなるもんじゃないでしょ?」

「まあな。」

 

そういいながらシリウスはスマホを手にする。

 

「…ってなると香港…いや、今からならドバイでも間に合うな。」

「そういえば今度のドバイのレースにはアスランの同期も出るみたいだよ。」

「なら好都合だ、それでいこう。

出すレースは…やはりシーマが適当か」

「それなんだけどさ、ドバイターフにできないかな。」

「あん?」

 

スマホから目線をテイオーに移す。

 

「ターフは1800mだぞ?アスランは典型的な中距離ウマ娘(ミドルディスタンスホース)なんだから2400mのシーマクラシックが合ってるだろ。」

「だからこそだよ。

 

1800mはアスランの距離適性の下限に近いけど、走れなくはない。

マイル寄りのレースだから展開が早いし、とっさの判断力が必要だから、『領域』にかまってられないと思う。

それに、『領域』に目覚める前のレースで一番内容が良かったのはジュニア期の東スポ杯だ。

実績もあるし『修行』のレースとしてはちょうどいいんじゃないかな。」

「へぇ…」

 

シリウスが素直に感嘆のため息をこぼす。

 

(お子ちゃまだと思っていたがなかなかどうして、良い分析するじゃないか。)

 

と心の中では思いつつ、右手でテイオーの頭を撫でる。

 

「ちょっと子供扱いしないでよシリウスー!」

「分かった分かった。

 

まあいいだろう。後はアスランにどのタイミングで海外遠征を伝えるか…」

「うーん。伝えなくていいんじゃない?

どこ行くか伝えたらアスラン真面目だから絶対対策してくるよ。

 

なんならドッキリにしようと思ってるけど、シリウスも協力してくれない?」

「まあ乗り掛かった舟だから話だけ聞いてやる。

面白そうだったら協力してやろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…

 

(…まあテレビ局まで巻き込むとは思わなかったが…)

 

そうシリウスはフッと笑った。

 

 

(なんにせよ、これでサクラアスランの名は世界に知れ渡った。)

 

「ここからが本番だぞ。」

 

シリウスはそう呟いて席を立った。

 

 

 

 

 

 

同時刻

メイダンレース場 選手控室

 

 

控室では、次のレースである『ドバイシーマクラシック』に出る選手達が準備を進める。

 

壁にかけられたテレビでは自分たちの前のレースであるドバイターフの映像が流れる。

 

 

「やあやあマドモアゼルサンドイッチ。そんな熱心に前のレースを見てどうしたんだい?」

 

一人のウマ娘が、映像を凝視する紺色の詰襟姿の勝負服に身を包んだウマ娘に声をかける。

 

「サイラか。いやなに、

 

 

極東の桜が、咲いたのを見届けたまでだ。」

 

 

かつてジャパンカップにてアスランと戦い、辛辣な言葉を残した英国のウマ娘

 

『樫の旗艦』ハーツオブオークはそう不敵な笑みを浮かべた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生孤児ウマ娘の奮闘記(作者:しょうわ56)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

順風満帆とまではいかないが、普通の人生▼死んだ覚えも死に瀕した覚えもないが、何の因果かウマ娘世界に転生し、▼ウマ娘になってしまった▼ 「ウマ娘を育てる自信がない」▼しかし生まれて間もなく、そんな理不尽な理由で捨てられて孤児院育ち▼ご多分の例に漏れず貧乏な暮らし▼幼いながらもウマ娘としてのパワーは健在で、▼慢性人手不足の施設には重宝がられる▼小学校卒業に当たり…


総合評価:20804/評価:8.53/完結:122話/更新日時:2024年06月22日(土) 00:00 小説情報

ヤマ娘 ~Crazy Derby~(作者:灰の熊猫)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

シンボリルドルフは休暇で、ある地方へやってきた。▼そして地元では負けを知らない、そんなウマ娘がいると聞く。▼彼女は、『ヤマ娘』と呼ばれていた。▼――これは、そんな彼女が『ウマ娘』に成るまでの物語。▼  ◆  ◆  ◆  ▼アプリゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」の二次創作です。▼95話時点で、本編は完結しました。


総合評価:4723/評価:7.92/連載:104話/更新日時:2024年10月11日(金) 19:00 小説情報

紫電の女王の栄光の道のり(作者:雅媛)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

ヴィオラレジーナ▼紫紺の髪を持ち、のちに紫電の女王と呼ばれたウマ娘。▼彼女が異世界から受け継いだのは、輝かしい名前や能力ではなく、ある男性の魂だった。▼時にはライバルと競い、勝ち負けを繰り返しながら▼ライバルたちと栄光をつかむその結末まで▼彼女は走り続ける。▼んこにゃさん(https://twitter.com/Nkonya0529)からファンアートいただき…


総合評価:3870/評価:7.92/完結:62話/更新日時:2022年05月23日(月) 19:12 小説情報

比企谷八幡、ウマ娘トレーナーになる!(作者:生焼け肉)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

長いトレーナー過程を修了し、見事ウマ娘トレーナーとしての道を開いた比企谷八幡。▼ ▼そして彼は日本最大級のウマ娘教育機関である、正式名称【日本ウマ娘トレーニングセンター学園】、通称【トレセン学園】のトレーナーとして赴任する事になった。▼ ▼これは、トレーナーである比企谷八幡と今はまだ見ぬパートナーとなるウマ娘とのお話である。


総合評価:1102/評価:3.88/完結:1700話/更新日時:2026年09月18日(金) 18:10 小説情報

パクパクですわ!のキャラに転生したんだけど、何か違いますわ……(作者:クレナイハルハ)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

転生したら「パクパクですわ!」で有名なあのウマ娘のキャラになっていたのですが、何か変ですわね?▼まぁ、そんなことより今はスイーツですわ。▼【挿絵表示】▼※2022年7月11日より、各話に手直しが入ります。▼各話のキャラクターの変化や物語の変化はご了承ください。手直しが終わるまで本作は更新いたしません。


総合評価:22356/評価:8.36/連載:57話/更新日時:2024年10月23日(水) 22:07 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>