1950年。北海道の函館にてとあるサラブレッドがデビューした。
10戦10勝。複数のレコードを記録し、人々の記憶に刻み込まれた3本脚で走る幻の馬。

日記が止まった1951年6月3日。東京優駿。
割れんばかりの熱狂の中、一生に1度の大舞台で颯爽と駆ける鹿毛の背中を追い掛ける誰からも見向きをされていなかった真っ黒なサラブレッド。
その馬は、一瞬の煌めきか、はたまた己の実力か、あの幻と並び立ちながらゴールの前を駆け抜けた。

同族から嫌われ、人間だけを愛していた真っ黒な馬は、スタート前に初めて自分から隣の鹿毛へと鼻を寄せたという。
真っ黒な身体が白く染まるのを見つめながら、


「悲しい話だ」
誰かが、苦しそうに鉛筆を滑らせた。





▷こちらは『幻の夢を追いかける花(https://syosetu.org/novel/293657/)』の加筆修正版です。
※『幻の夢を追いかける華』の注意書きがP.1にあります。お手間ではありますが、軽く確認して頂けますと幸いです。
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