本作品は以下企画用に作った短編小説です。
https://www.pixiv.net/novel/contest/transportationnovel

企画用に作った作品が幾つかあるので、その一部をこちらにも転載という形で投稿します。
他の企画用で書いた作品も投稿するかもしれませんが、時期、タイミングは作者の気分次第なので、気が向いたら読ん頂けるだけでも幸いです。

先行きが不透明な時代の中、貴方は今何処にいますか?
何に迷っていますか?
その理由は単独ではなく、様々な理由が重なったものもあるでしょう。
若しくは、振り返ってみれば単純なことが原因かもしれません。

人生と言うレールは、生きている限り続くもの。
どうか、納得のいく駅に辿り着きますように……

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人はみな、誰もが同じ、誰もが違う列車を持っている。
敷かれたレールの上を歩むもよし。自分だけのレールを作って走るも良し。

人生とは、貴方の敷いたレールそのもの。故に、貴方の敷いたレールを決めるのは、何時だって貴方だけ。時には手押し車を押すように、ゆっくり進んだ時もあったでしょう。時にはジェットコースターのように、ひたすらに突き進んだ日々があったかもしれません。或いは……今、貴方はレールを描くことが出来ないまま、立ち止まっているかもしれません。

空へ羽ばたく列車を見て、羨ましく思うこともあるでしょう。未知の世界を歩む列車を妬ましく、或いは羨むこともあるでしょう。

だけどどうか、忘れないで。貴方の列車は一つだけ。
空を駆けるも、海を走るも、或いは、世界を走るのも。
走るのは何時だって、誰かの列車ではなく貴方であり、貴方の列車なのです。

だから今日も、貴方はレールを敷くのです。
貴方だけの、駅を求めて。


貴方だけの駅を探しに

 はじめのいろは、きいろとあかでした。

 

たつこともできないわたしを、きいろとあかはあたたかくみまもってくれました。

 

 1人で立てるようになったわたしは、近くに住んでいるわたしと同いどしのオレンジとあそぶことが増えました。

 

ときどきころんで、いたい時もあったけれど楽しいじかんでした。

 

わたしとオレンジは友だちになりました。

 

それから、お日さまが昇って、またしずんでいく時を見ながら、わたしとオレンジはまい日のようにあそびました。

 

温かい時、暑い時、涼しい時、寒い時。

 

そんなじかんを繰り返した数が、かたほうの手で数えられなくなった頃。

 

お父さんとお母さんが、学校という場所へ行くためにのりものを作ると言いました。

 

お父さんとお母さんは、わたしののりものを作るお手伝いをしてくれました。

 

だけど、そのほとんどはわたしで作りました。

 

「どうして、作ってくれないの?」

 

自分で上手く作れずに投げだしそうになったわたしが、お父さんとお母さんに言いました。

 

「自分を作るのは、自分だからだよ」

 

お父さんの言葉に首を縦にふるお母さんでしたが、わたしにはよく分かりません。

 

でも、少しずつ出来るのりものを見て、がんばろうと思いました。

 

そうしてわたしははじめて、自分ののりものを作ったのです。

 

わたしはオレンジとあそんだ時に、のりものが出来たことを言いました。

 

すると、オレンジももうじき出来る、と言いました。

 

にゅうがくしきの前日に出来上がる、と言っていました。

 

「じゃあ、えきへ行く日にみせあおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、にゅうがくしきの日。オレンジはわたしと同じようにのりものを持ってやってきました。

 

「かっこいいだろー」

 

「そうかなぁ」

 

色はお父さんとお母さんにお願いしたけれど、のりものだけはオレンジだけで作ったみたいです。

 

「そういえば、僕のお父さんも同じことを言っていたような」

 

「なんなんだろうね」

 

「わかんね」

 

「だよね」

 

わたし達は他愛のない話をしながら、最初のえきへ向かいます。

 

えきへ行くために作った手で押せるのりものは、問題なくレールの上に乗りました。

 

まわりには、お出かけした時ほどではないけど、沢山の人がいました。

 

そして、わたしと同じように手で押せるくるまでやってきました。

 

わたしの手押しの車と似ているけれど、みんな少しずつ色が違っていました。

 

赤が濃いくるま、黄色が濃い車、オレンジが濃い車……それだけじゃなく、色んな匂いがありました。

 

海の匂いや草の匂いのような、嗅いだことの無い匂いもありました。

 

「すげーな。見たことない人、いっぱいだ」

 

「わたしも」

 

えきでは、茶色の電車から降りた先生が授業をしてくれました。

 

教科書、というものを使って私達は色んなことを知りました。

 

休み時間や放課後にはクラスメイトと遊んだり、時には喧嘩もしました。

 

何時までも同じ時間が続くかと思いましたが、そうではありません。

 

私達は次の駅へ行かなきゃいけないのです。

 

最初に作った手押し車では、次のレールには乗らないと先生に教えて貰ったので、皆は新しく荷車を作り始めます。

 

「うーん、作るの面倒だな。お父さんとお母さんに手伝って貰えればなぁ……」

 

「気持ちは分かるけど、忙しそうにしている中ではねぇ……」

 

「まぁ、そうだよな。それに、前に一度作っているから何とかなるだろ」

 

そうして、私達はレールに乗せられる新たな荷車を作りました。

 

まだ手押しの荷車だけど、お父さんやお母さん、先生達の列車と比べるとまだまだ拙い荷車だけど、私も幼馴染も形自体は何とかなっているはずだ。

 

本当なら、手押しじゃなくて先生たちのように自動で運べるようにしたかったけれど、それはまた今度。

 

次の駅から先へ行く時に、試してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の駅は、私達の作った荷車が何百台も収納出来る程の大きな駅でした。

 

「でっけー……」

「だねー……」

 

村の駅と違って、町の駅は想像以上に人がいた。

 

今まで知らなかった様々な物や生徒達の荷車。

 

これが、お父さんやお母さんが言っていた都会へ出た時の光景なのか……そう思った程に。

 

「それにしても、色々な物があるんだな」

「もう、物を壊したりしないでよ」

「誰がするか、っての」

「そう言って、村の駅で備品壊したの誰だっけ?」

「ちょっ、あれはちゃんと埋め合わせをしただろ!?」

 

幼馴染は相変わらずの調子だ。だからこそ、新しい場所でも臆さないのだと思うけれど。

 

「あ、そろそろ先生が来るみたいだな」

「そっか。じゃあ、話を聞かないとね」

 

町の駅にいた教師は、村の駅に居た教師と違う人でした。その人も村の駅の先生と同様に、色々な勉強を教えてくれます。

 

だけど。

 

「つまんねー」

「でも、テストもあるし、やらないと」

「はぁーー……ま、部活やる為にもやらないとな」

 

その人が教える勉強は退屈で、詰まらないと感じた人もいました。

 

「お前、本当に歴史の授業だけは生き生きとしているよな」

「そ、そうかな?」

「ああ、他の授業は何度も寝ているのを見たぞ」

「そ、そうかなー……そうかも」

 

或いは、その内容を面白いと感じて、自分たちで調べていく人もいました。

 

だけど、村の駅にいた頃よりもその内容は難しく、一時期は駅の中にあるレールからすら脱線しそうになった……そんな人もいました。

 

「やっべー、赤点取った!」

「何でそうなるかなぁ……」

「いや、すまん。折角、教えて貰ったのに」

「だったら、さっさと補修の課題提出してきたら?」

「あー、それはもう出した」

 

 そんな駅だからこそ、今まで以上に楽しいことや辛いことがありました。

今まで一緒に過ごしてきた友達が別の友達と一緒になり、独りになった人もいました。一緒に遊んだ友達や、部活動等の体験が、代わりの無い財産になった人もいました。

 

「へぇー……そんなにスコアが良かったんだ」

「ああ、お陰で推薦が貰えることになったんだ!」

「本当、凄いじゃない!」

「ああ。まぁ……勉強はまだダメなんだが」

「せめて、赤点を取らないようにしなさい」

「頑張る……」

 

或いは……周りが全て敵に見えて、駅の中や自分の荷車すらも壊してしまいたい……黄色と赤の荷車を別の色で塗り潰したい……そう思った人もいたかもしれません。

 

「私のやりたいことを、どうしてお父さんが駄目って決めつける訳!?」

「それが、お前にとって不味いことだからだ」

「だとしても、早い。もう少し、色んな物事を知った上で決めた方がいい。そもそも、誰かの成功を妄信する真似は、必ずその身を持ち崩すぞ」

「……あーー、もう。お父さんなんて、知らない!!」

 

実は私にも、そんな時期があった。家出をするかしないかの喧嘩だったけど、幼馴染からも止められたこともあり、一旦は言う通りにしようと思いました。

 

 

 そんな状況でも、私達は次の駅へ行く為に、荷車を作らないといけません。でも、以前使った荷車はもう使えません。タイヤがレールに合わないし、何より私達自身が荷車へ入りきらなくなるほど大きくなったからです。

 

だから皆、慌てて次の荷車を作ります。だけど、全員が作れた訳では無く、一部の学生達は作成中の荷車を抱えて、私達が知らない場所へ旅立って行きました。

 

次の駅がある場所はとある市の中。だけど、その市には町の駅と同等の駅が幾つもありました。だからこそ、皆が行く先は同じではなかったのです。それは勿論、私もでした。

 

「そっかー。お前はそっちの駅に行くのか。ま、家も近いんだし、また会う事もあるか」

「そうね、あんたも赤点取って部活に出られない……なんて真似は、もう止めなさいよ」

「流石にしないわ。というか、家出しようとした奴に言われたくないな」

「うっ……言ってくれるわね。ま、まぁ。その時のことは、感謝してるわよ」

「全く。ま、あの時みたいな暴走はもうするなよ。巻き込まれる奴の身にもなってやれよ」

 

幼馴染はそう言って、意気揚々と次の駅に向かって進み始めます。その姿がやがて目で追えなくなった頃……

 

「私も、そろそろ行かないと」

 

私も、私の目指す駅に向かって走り出す。次に作る荷車に、私は独自である工夫を施した。それは、荷車をけん引するように二輪車を取り付けたことだ。これのお陰で、私は楽に荷車を運ぶことが出来るようになった。最も、凄い人はもっと進んでいて、動力を使うことで何もせずとも運ぶ人もいた。それが羨ましいと思ったけれども、だけど、仕方ない。それが今の私のなんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 市にある駅は町の駅程の大きさを幾つも内包しているのだから驚きだ。とはいえ、構内自体はそう大きく変わっていない、その点は少しホッとした。ただ、私はこの場所でまだ独りきり。せめて、友人が出来ればいいけれど……

 

「やぁ。もしかしてだけど、君も一人?」

 

不意に、声をかけられた。一瞬、白い君に目を奪われたけど……流石に警戒心が勝った。

 

「そうですけど、何か?」

「実は、僕も1人でね。他の人が違う駅に行っちゃったから、どうしようかと思いつつ1人で歩いていたんだ。そうしたら、君がいてさ」

 

事情は分かった。だとしても、いきなり声をかけられると、こちらも少しドキドキしてしまう。

 

「貴方は何処の町の駅から来たの?」

「僕か。僕は、海の町の駅から来たんだ。それにしても、ここはあまり潮の匂いがしないんだね。それで、君は何処から来たんだい?」

「私は……ここからちょっと離れた所の町かな。景色とかはここと余り変わらないかな……って、あ!」

「どうしたの……って、時間。やばっ、教室へ急がないと」

 

そうして始まった、市の駅で過ごす時間。

勉強が以前よりも難しくなり、追い付くのが大変になったけど……彼と話す時間が楽しくて。気が付けば、それすらも些細な事だと感じ始めていた。

それが誰かを慕う気持ちだと知ったのは……随分と後のことだったけれど。

 

 

 ただ、この駅も同じように、ずっと同じままではいられない。

何時か鳥が巣立つように、私達も次の駅へ行かないといけないのだ。

ただ、今回はレールの先があらゆる場所へ繋がっていた。

更なる駅へ向かい、深い学びを得るのか。

それとも、社会という新たな駅へ向かい、その場所で過ごすのか。

或いは、誰もいないレールに向かって、ひたすらに走るのか。

先を思えば思う程、私はどう生きたいのかが分からなくなる。

 

「どうしたんだ?」

「あ。えっと……」

 

どうしてか。決まって彼は、私が困ったタイミングで声をかけてくる。

そして、その声を聞くだけで、顔を見られるだけで胸の奥に温かい気持ちが染み渡っていく。

 

「その、次の進路があるじゃない?」

「そうだね。それで、どうしたいんだ?」

「……それが、分からないの。どうしたら、いいんだろう」

「ご両親は、何て言っていたんだ」

 

その言葉を思い出す。

私が町の駅で過ごしていた時は言い争いなんて何度もしたのに、どうしてあの時そう言ったんだろうか……のんびりと満月を眺めるような目で言われると、蒸し返すようでやり辛い。

ただ、その言葉だけは。今もこうして、息を吐くように口に出来る。

 

「自分で後悔しないように決めることだって」

 

でも、後悔しないことってなんだろう。

どの道を行けばいいか分からないこの先を、どうしたら後悔しないように過ごせるのだろうか。

 

「……俺さ。今まで言っていなかったんだけど、一つ、やりたいことがあるんだ」

「それって?」

 

普段から、色んなことに興味を持っていた彼のことだ。どんなことをしたいんだろうか。

 

「この世界を回ってみたいんだ」

「……え、じゃあ」

 

もしかして、ここを出て直ぐに彼は……

 

「まぁ、今じゃないんだけどさ。何時か、そうしたいと思うんだ。だからさ、後悔しないことじゃなくて、今やりたいことを考えればいいんじゃないかな」

「私が、やりたいこと?」

「そう。例えば、君は色んな名所に詳しいだろ。だから、それを深く知ってみたい、とか。それを基に、次の行先を決めればいいんじゃないかな?」

 

確かに、私は歴史に興味があった。定期的な試験でも、歴史だけは対策しなくとも十二分な点数を取ることが出来た気がする。それに、暇な時は図書室へ行って、国の歴史や有名な建造物を調べていた。

 

「……なるほど。それは確かにそうね」

「そう。僕も誰かに言えたわけじゃないけどさ……もし、途中でやりたいことが変わったら、その時にもう一度考えればいいだろう。ずっと変わらないものなんて、無いんだから」

「それもそうね……急な話に付き合ってありがとう……って、どうしたの?」

 

一つ、呼吸があった。深く、何かを決心した様子にも見える。

 

「実は僕さ。旅へ行く前にもう少し勉強したいと思ってる。それで、ここから結構離れるんだけど……僕は都内のカレッジへ行こうと思うんだ。それでもし、君が歴史を専攻したいなら、一緒にそこを受けてみないかい?」

 

……ああ、そうか。私は、何時だってそうしたかったんだ。

目の前の彼の背中を追いかけていたつもりだったけど、違ったんだ。

きっと、私はずっと前から──

 

「うん。でも、その為にはまず、試験に通らないとね!」

「それもそうか。少し、気が急いていたかな」

 

呼吸を整えるように、誤魔化すように彼は咳払いを一つ。まぁ、だけど。

 

「いやぁ。それでも、私達ならそのカレッジも問題なく通ると思うよ」

「だ、だよな!」

「でも、油断は厳禁よ。君、私より成績良くないでしょ?」

「う、うぐっ……!」

 

 

私達が走るレールの先、その終着駅が何処になるかは分からない。

 

──その先が陸なのか、空なのか、海なのか。それが未だに分からないまま。

 

今は走れているけれど、止まってしまう時も。或いは、急加速するかもしれません。

 

──嵐の中を、暗雲の中を、あらゆる人が走り続けている。

 

それでも、私は──私達は何時だって、走っている。様々な貨物を、人を運ぶ列車のように。

 

──誰しもが抗って、全力を尽くして走っている。そんな人々の軌跡が、歴史になるように。

 

 

「今日はありがとう。途中まで一緒に帰らない?」

「うん、そうだね」

 

私達の頬は、茜色の空のように染まっていた。

 

 

だからこそ私達は、何時か着く駅を作る為に。今日もレールを敷くのです。

 

──だからどうか、自分の列車だけは捨てないで。例え、沢山の大事な荷物を零しても、喪っても。それを何時か、笑って話せるようになるまでは。零した物も、喪った物も含めて、今の貴方なのだから。

 

 







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