真選組の沖田さん(ドS)と型月の沖田さん(病弱)   作:芋けんび

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真面目な人ほど一度ハメを外すと物凄い

 

沖田さんは思った。

 

万事屋にいるであろう超大型犬。正確には犬型宇宙生物である定春をモフモフしたいと。誰にも明かしてないが、この沖田さんはかなりの動物好きである。定春は愛らしい外見とは裏腹に、よく人の頭に噛み付く。漫画やアニメだとかなりの出血してる描写がある事から、深く噛み付いているのは間違いない。

 

「(それがどうしたと言うんだ。俺は定春ちゃんをモフモフしたいんだよ。あの悪魔的に抱き心地が良さそうなモフモフ。絶対に病みつきになること間違いない!)」

 

「で、ウチには定春って言う大きなペットもいるアル」

 

丁度神楽の口から定春の話題が出る。沖田が「そんなに大きいんですか?見てみたいですねぇ」と言うと、「そんなに見たいなら家に来るヨロシ」と意外とあっさり万事屋銀ちゃんへと招き入れられる。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「ここが万事屋の内部ですか!うわぁ…結構広いんですねぇ」

 

興味津々と言った様子で辺りをキョロキョロと見渡していた。

 

「勝手に人の物に触んじゃねーぞ。ったく、家ん中にポリスメンがいる思うとどうも落ち着かねぇ…」

 

「でもおっきーはあのチンピラ集団(真選組)と違ってあんま嫌な感じはしないアル」

 

神楽の言う通り、何かとクセが強い真選組の隊士達と比べるとどこか落ち着いた雰囲気が沖田にはあった。目の前で子供のようにはしゃぐ人物があのドS王子の姉と言うのだから驚きだ。

 

「二人ともおかえりなさい。あれ?お客さんですか?」

 

居間から出てきた新八が沖田を見て首を傾げる。

 

「あ、お邪魔します。初めまして、真選組の沖田桜之進と申します。気軽に沖田さんって呼んでくださいね」

 

沖田が人懐っこい笑顔で自己紹介をすると、新八が「え、あ、いや、これはどうもご丁寧にありがとうございます?えっと、ここの社員の志村新八です」と若干驚きと戸惑いを含んだ声色で自己紹介した。

 

「沖田という事は、沖田さんのご親族の方なんですか?」

 

「はい、そーちゃんのお姉さんです。と言っても義理なんですがね。あははっ…。弟がいつもお世話になっています」

 

「え!女性の方だったんですか!?すいません。真選組って言うもんですから、てっきり男性だとばかり…」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ。真選組はそもそも男性しか入隊出来ませんから驚くのも無理はないと思います」

 

「つくづくあのサドの姉とは思えない謙虚さネ。実はおっきーもドSだったりするアルか?」

 

「ドS?うーん、どうなんでしょうか。自分ではよくわかりません…。あ、でも、そーちゃんは血の繋がっていない私に対しても優しいんですよ。たまに意地悪ですけど…。まぁ、そんな生意気なところも可愛いなって思いますが!」

 

神楽の問い掛けに沖田は一瞬目を丸くし、困ったように笑いながら答える。だがすぐに嬉しそうに頬を緩ませた。

それを聞いた神楽と新八が同時に本人に聞こえない程度の声量で呟いた。

 

―――結構ブラコンアルな(なんですね)……―――。

 

「お前だって自身の姉にベッタリなだろーがぱっつぁんよォ」

 

「い、いきなりそういうこと言うのは止めて下さいよ銀さん!?て言うか今の聞いてたんですか」

 

「あーー!!」

 

居間に入ると沖田が一際デカい大声を上げた。何事かと思い全員がそちらへ視線を向けると、沖田が定春に抱き着いていた。

 

「大きい!この子が定春ちゃんですか!生で見ると本当に大きいですねぇ。あの、抱き締めても宜しいでしょうか?大丈夫です、優しく…優しく致しますから!」

 

「ワン!」

 

「大丈夫、先っちょだけだからみてーなテンションでやらしいこと言ってんじゃねーよ!?あんま調子に乗って触ってると痛い目見んぞ。知らないからね。頭噛まれても俺は知らないからね」

 

「ガブ」

 

「ふわァァ!?」

 

「銀さん…もう手遅れです…」

 

新八のその言葉の通り、沖田はすでに頭をガブリと噛み付かれていた。かなり強く頭に噛み付いているようで、尋常ではない血の量が出ており沖田の白い肌に紅が滲む。しかし当の本人は満面の笑みを浮かべたままであった。

 

「元気いっぱいですねぇ。ふふっ、本当に可愛いなぁ。…あの、不躾なお願いばかりで申し訳ありませんが、記念に一枚写真撮ってもいいですか?」

 

「何の記念んんんん!?呑気に写真撮ってる場合か!状況わかってんの!?お前は現在進行形でこのバカ犬に噛まれて頭から大量の血が出てんだぞ!もっと自分の体を大切にしろ!」

 

「物凄い力で噛み付いていて中々離さないネ!定春ゥゥゥゥゥ!」

 

「(あれ?沖田さんって一見常識人っぽい感じに見えますけど、実はかなりやばい人なんじゃ?)」

 

新八がそんな事を考えている間にも、どんどん血が流れ出て沖田の顔色がみるみると青ざめていく。

流石に見兼ねた銀時と神楽は必死で定春の口から引き剥がそうとするのだが、全く歯が立たない。沖田も痛みを感じているのかいないのか、ずっと笑顔のまま「可愛いですねぇ」と壊れた玩具のように同じ言葉を繰り返すだけであった。

 

 

そんな時ーーー

 

 

 

ーーピンポーンーー

 

「はぁ、やっと離しやがった。んあ?チャイム?一体誰だよ…こんな時によォ。ババアが家賃取り立てにでもきやがったか?」

 

銀時がぶつくさ文句を零しながら居間を出て行く。玄関のドアを開けるとそこにはーー

 

「げ、おめーはヅラの傍にいる変な物体じゃねーか。何でここにいやがんだ。あり?ヅラはどうした?」

 

「……」

 

「お、おい!勝手に他人の家に入んなよ!?不法侵入で訴えんぞテメー!つか、ちょい待て!今沖田が万事屋にいるんだけどぉ!?」

 

桂のペットであるエリザベスが立っていたのだ。銀時の質問を無視したエリザベスは、彼を押し退けて無言のまま室内へと入っていく。

 

「エ、エリザベス!?」

 

新八と神楽がエリザベスの来訪に驚いている間にも、エリザベスはスタスタとソファ一直線に歩いていく。

 

「?どなたです?万事屋さんのお知り合いですか?」

 

「(マズイって!どうすんですかこれ!最悪のタイミングで天敵同士が鉢合わせてますよ!!)」

 

「(落ち付けヨ新八。まだおっきーはエリザベスがヅラの仲間だって気付いてないアル。適当に誤魔化せばきっとバレないアル)」

 

「(そもそもヅラの野郎は何で隣にいねーんだよ。自分のペットが迷子になってるってのによォ。ここは迷子センターじゃねーんだぞ。ペットの躾はちゃんとしろっての。兎に角、沖田に気取られねー様にしろよテメーら)」

 

三人はヒソヒソ話をしながら成り行きを見守る事にする。エリザベスは無言のままソファに腰掛けると、何をする訳でもただじっとしている。

 

「あ、ああ!こいつは俺達の知り合いでな!今日会うことになってんだわ。そうだよな、エリザベートくん」

 

「いや、何処の血の伯爵夫人ですか!?そもそも明らかに足下を見る限り男性ですよねこの方!?」

 

《エリザベートじゃない、エリザベスだ》

 

「何で自分から墓穴を掘ってるアルか!?」

 

「ヅラみてぇなこと言ってんじゃねーよ。自分から見えてる地雷踏み抜くとか何考えてんだ。そもそも『エリザ』の部分しかあってねーだろうが」

 

「それ先に言い出したの銀さんですよね!?何でエリザベスが言ったみたいな空気感を出してるんです!?」

 

「エリザベス?ヅラ?…何か聞き覚えのあるワードですね。ひょっとして飼い主の方は黒髪で長髪の攘夷浪士だったりします?」

 

沖田が腕を組んで首を傾げる。その様子に三人はギクリとした。だが、エリザベスは何も言わずに黙っているだけだ。

 

いや、よくと見れば体が小刻みに震えていた。

 

沖田の服装を見て真選組だと気付いたらしい。あまりにも反応が遅すぎる。何故入ってきた時に何も思わなかったのか。

 

《通りすがりの迷子だ》

 

「(迷子になってんのはお前の意味不明な発言だろーが!どんな言い訳!?もうちょいマシなこと思い付かなかったのか!?)」

 

「ああ、なるほど。迷子の方ですか。かぶき町は意外と広いですからねぇ。人の通りも激しいですから、自分が何処にいるのかわからなくなりますよね」

 

「(ん?あれ?こいつもしかして気付いてねーのか?あの馬鹿共(真選組)の中じゃかなり常識人っぽいから、1発でモロバレ、即御用かと思ったが、割と抜けてたりする?て言うか、あらぬ誤解を生みそうだからいい加減その血だらけの顔を何とかしてくんない?)」

 

「あの、沖田さん。これで顔を一回拭いてください。見ていて怖いです…」

 

「あ、すいません…。お気遣いありがとうございます」

 

新八が水で濡らしたタオルを沖田に渡す。銀時は心の中で「ナイスだ!ぱっつぁん!」と新八に拍手を送っていた。

 

「良ければ、沖田さんが交番までご案内しましょうか? 大丈夫です!お姉さんにドーンと任せてもらって構いませんよ」

 

《気持ちだけもらっておく。彼らに依頼したい事があるのでな》

 

「そうですか?まぁ、本人がそう仰るのであれば、私も無理にとは言いませんが…」

 

沖田は苦笑しながら頬を掻く。

 

依頼という単語を聞いて銀時達は顔を見合わせた。エリザベスが自分達に一体何を頼みたいというのだろうか。

 

「仕事の邪魔をする訳にもいきませんので、私はこれで失礼しますね。突然申し訳ありませんでした。タオルも洗って今度お返しに伺いますね?」

 

場の空気を察してか、定春の頭を一撫した沖田はペコリとお辞儀をして、居間を出て行った。バタンという音と共に扉が閉まる。それを見届けた銀時はエリザベスに向き直った。

 

銀時達にはエリザベスが何を考えているのか分からなかったが、取り敢えずソファに座る事にした。エリザベスは相変わらず黙ったままでいる。

 

銀時はボリボリと頭を掻きながら口を開いた。

 

「で、俺らに依頼ってなんだ?お前の隣にヅラが居ないって事は、アイツ絡みの依頼か?」

 

エリザベスはプラカードを掲げる。そこにはデカデカとこう書かれていた。

 

《桂さんが辻斬りに斬られた。今も行方がわからない》

 

「なっ!?」

 

銀時の表情が変わった。それは神楽や新八も同じである。エリザベスは真剣な眼差しで三人を見据えた。

 

ーーでも、あんなに強い桂さんが簡単に死ぬとは思えない。あの人を探すのを手伝って欲しいーー 

 

「手伝うって言ってもよォ、手掛かりの1つもねーんじゃ、行方知れずのヅラを探すなんて難しいだろーが」

 

「最近巷で噂されている辻斬りと何か関係があるんでしょうか?」

 

「任せるネ!ヅラは必ず私達が見つけるアル!」

 

「おまっ、ンな勝手に決めんじゃーー」

 

「あれ?銀さん電話鳴ってますよ?」

 

「誰だよ…こんな時に…」とぼやきながらも、銀時はエリザベスに背を向けた。そして、机に置いてある受話器を手に取る。

 

「はーい、万事屋でーす。え?仕事の依頼?」

 

そして数分間、電話の主と会話をした後に受話器を元の位置に戻した。

 

「新八、神楽。ヅラの件はお前らに任せたわ。俺ァ今からちょっくら出かけてくっから」

 

「え?いやそんな急に言われても…!?」

 

それだけ言い残すと、銀時はエリザベスの前から立ち去っていく。

残された2人はお互いに顔を見合わせる。

エリザベスはそんな彼等を見て、申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。

 

《頼む、桂さんを見つけてくれ》

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「おい、ザキ。沖田のヤツを見なかったか?」

 

廊下を歩いていた監察方の山崎に土方が声をかける。

 

不機嫌な副長の表情から察するに、また沖田隊長が何かやらかしたのではないかと内心で考える。

 

土方と総悟の二人はよく言い争いの喧嘩をする。と言うよりは、総悟が一方的に土方に突っかかって土方がそれに対して怒る場面が多い。

 

「副長、何かあったんですか?」

 

「大江戸公園に見回りに行ったきりで、あいつから報告が一切ねぇんだ。何かあったのかと思ってな」

 

「大江戸公園?ああ、桜ちゃんの事だったんですね。すいません、副長が沖田隊長って言うもんですから勘違いしてました」

 

「あー、悪ぃ。紛らわしい呼び方しちまった」

 

土方は決まって桜之進の事は”沖田”と呼ぶ。”桜”と呼ぶ事もあるが、土方の中では沖田呼びが定着しつつある。理由は何となくその呼び方の方がしっくり来るから、であった。

 

土方はバツの悪い顔で頭を掻く。

そんなやり取りをしていると、また別の隊士が二人のもとにやって来た。

 

「副長。これ今日の報告書っス」

 

報告書を片手に現れたのは八番隊副隊長の藤堂凹助であった。しかし、彼の傍らには隊長の沖田桜之進の姿はなかった。

 

「凹助?何でお前が報告を…。沖田のヤツはどうしたんだ?」

 

「隊長なら万事屋に行ってくるって言ってたスよ」

 

「は?万事屋?何でそこでアイツらが出てくんだよ」

 

意味がわかんねえと言いながら眉間にシワを寄せる。

 

「何でも公園内を見回り中に、万事屋と偶然出会ったらしいっス。彼らの大ファンだと嬉しそうにメールで言ってました」

 

「それがこれです」と携帯を開いてメールの内容を土方に見せる。

 

 

 

From 沖田ちゃん

Sub やばいです!!(>_<)


 

藤堂さん藤堂さん!

やばいですよ!マジやばです!

いま大江戸公園を見回りしていた最中なのですが、

なんと万事屋銀ちゃんの坂田さんと神楽ちゃんに出会いました!生で見たのは初めてだったので、もうテンションが⤴︎⤴︎

いやー、土方さんや総ちゃんから話は聞いてましたが、中々に面白い方々ですねぇ。

 

沖田さんが万事屋さんの大ファンだと明かしたら、皆さんが家に招待してくれるそうなので、ちょっと行ってきます!

 

むふー!早く定春ちゃんをモフモフしたいです!

(((o(*゚▽゚*)o)))

 

 

P.S

大江戸公園、及びにその周辺には不審人物の姿は確認されず。八番隊の隊士は担当の場所の見回りが終わったら屯所に戻ること。

 

 

 

「P.Sじゃねーよ!?何だこのアホ丸出し文面は!最初と最後で文体変わりすぎだろ!P.Sの部分の文面だけ他人が書いてねーか!?…比較的真面目で俺と同じ常識人ポジションだと思ってたが、どうやら俺の思い違いだったらしい。戻って来たら士道不覚悟で切腹だ」

 

「俺と同じ…常識人?お茶やコーヒーにマヨネーズぶっ混む人は常識人とは言わないんじゃーー」

 

「何か言ったかザキ?」

 

「い、いえ!何でも!?」

 

「まぁまぁ、副長。我々は日夜、市民や国を守る為にずっと気を張り詰めて仕事してる訳じゃないですか。ましてや隊長格の職に就いてると言っても彼女はまだ十代の若者ですよ?男だらけの空間で常にそんな仕事の責任感と緊張感に晒されてれば、ハメの一つもを外したくなるんじゃないスかね」

 

桜之進の報告メールを見て額に青筋を浮かべる土方。一方、凹助は苦笑いをしながらフォローを入れていた。

 

「沖田のことになると随分お喋りになりやがるな。何だ?あいつに気でもあんのか?」

 

「茶化さないで下さいよ…。単に妹同然に可愛がってるだけッス。恋愛感情なんてありません」

 

陽気で人懐っこく、職務態度も至って真面目な彼女だが、時折こういった周りを困惑させる謎の行動に出ることがある。戦闘時の雰囲気の変化も相まって、彼女の隊に属する隊士達の間では『沖田隊長二重人格説』が噂されているとかいないとか。桜之進よりも年上で昔から桜之進を知っている凹助は「まぁ、あの沖田隊長の姉だし」と大して気にした様子はなかった。

 

「ただいま戻りましたー!」

 

「沖田隊長。帰ってくるのが遅いっスよ」

 

「おう沖田。随分とウッキウキな顔してるじゃねーか。万事屋んトコは楽しかったか?」

 

「はい!…はい?ひ、土方さんんんんん!?あ、あの、これには深い訳がありまして…!」

 

「士道不覚悟で切腹な」

 

「ド直球過ぎませんかッ!?」

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