真選組の沖田さん(ドS)と型月の沖田さん(病弱)   作:芋けんび

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お風呂の回



苦楽を共にした仲間だからこそ逆に意識してない事もある

 

真選組の屯所には浴場がある。だから、いつも隊士たちは交代で入りにいくのだが、如何せんそこまで大きい浴場でもないので、順番待ちの行列ができることが日常茶飯事。

 

待ち時間にしびれを切らしてお風呂を我慢できない者達は皆、近くの銭湯に向かう。寧ろ、そっちの方がすぐ湯船に浸かれる為に手っ取り早いだろう。

 

しかし、一部の真選組の男達はわざわざ長い待ち時間のある屯所内の浴場に入ろうとする。それは何故か?男達は浴場で発生するとある事件に胸を躍らせているからだ。

 

事件と言っても怪我や事故ではない。

通学路の曲がり角でパンを口にくわえた可愛い転校生とぶつかる。そんな甘いトキメキのあるハプニング。

 

「やや、また一回り大きくなってません?サラシで潰して隠すの結構大変なんですよねぇ」

 

沖田さんのお風呂タイム。

 

真選組隊士たちが毎日のように利用するその広い浴槽の中で一人の少女が楽しげな鼻歌を歌いながら体を洗っていた。少女の名前は沖田桜之進。

 

そして彼女の最大の特徴は……胸に大きな脂肪が二つあることだ。つまり彼女は紛うことなき"女"なのだ。

 

普段は男装をして髪を一つ結びにしている彼女だが、今は完全に無防備。髪紐を外した白髪の長い髪。沖田の体は、女性らしい丸みを帯びていて、胸もかなり大きい為か腰から臀部の曲線は少し細めに見えるがそれでも十分すぎるほど肉感的だ。

 

おまけに白い肌はシミひとつなくスベスベとしていて美しい。顔立ちも中性的ではあるが美人といって差し支えないほど整っている。

 

男装時の凛々しさもあってか、よく女性から告白される事もあるとかないとか。

 

「恋愛とかよくわかんないんですよねー」とは本人の談。

 

まぁ何にせよ、この世のものとは思えない美少女が入浴しているわけである。しかも全裸。これは男なら興奮しない訳がない。

 

『どうだ?中の様子は見えるか?』

 

『駄目だ。この角度からだと何も見えねぇ。くそ、なんてザマだ!あと少しで沖田隊長のあられもない姿を拝めそうだってのに!』

 

浴場の外の窓から数人の人影あった。どうやらあれこれとアイディアを出し合って浴場を覗こうとしている様だ。

 

『もう俺ら全員で浴場に突入した方が早いんじゃないか?別に沖田隊長が入浴してるから男は入っては駄目、なんて局中法度はないんだしさ。沖田隊長だって「別に混浴でも構わないですよ。気にしないので」って言ってたろ』

 

『何言ってやがる!局中法度に書いてなくとも人として、いや、男として駄目だろうが。それに、こんなナヨナヨした体を沖田隊長に見られたら俺は生きていけねーよ!』

 

『だからあれ程ダイエットをしろって言ったじゃねーか。ラ〇ザップやれよ。てか、それが本音だろお前』

 

『ん?おい、誰か浴場に入って来たぞ』

 

覗き仲間の一人の隊士がヒソヒソ声で全員に伝える。

 

「何だ、沖田もいやがったのか」

 

「うわぁ!背後から急に声をかけないで下さいよ!ビックリするじゃないですか!」

 

腰にタオルを巻いた完全オフモードの土方が浴場に入ってくる。

 

「お前が無防備なのが悪ぃんだろ。入ってもいいか?嫌なら出ていくが…」

 

「もうやだなぁ。変なところで気を使わないで下さいよ。土方さんらしくもない」

 

「それどう意味だ?つーか、毎回思うんだが、お前気にならねーのか?」

 

「へ?何がです?」

 

湯船に浸かって沖田に背を向けた状態で土方が更に話を続ける。

 

「真選組には女はお前しかいねー。隊士全員、お前が女のは知っちゃいるが、だからこそ野郎の目線とか気になんだろ」

 

「はぁ…。目線、ですか?」

 

「何だよその反応は。まさか、本当に何も感じてなかったのかお前」

 

「隊士の皆さんから視線を時たま感じてはいましたけど、別段気にはしてなかったですね。私にとって真選組は家族みたいなものですし」

 

平然と答える沖田を見て「筋金入りのバカか」と頭を抱える土方だったが、すぐに諦めたようにため息を吐いた。

 

ちなみに先程の沖田の反応の通り、隊士達からは恋愛感情を持った目を向けられているのだが当人は全く自覚していない。それだけでも大問題だというのに、その事を沖田が知らない。

 

「近藤さんなんて酷いんですよ。私がお風呂に入ってる時にたまにばったり会うんですけど、私が入浴しているのを見るや否や大慌てで『えええええええ!桜ちゃん!?待って待って!ごめん!本当にごめんなさい!今すぐ出て行くから通報は勘弁して!』って猛スピードで逃げるんですよ?」

 

「あの人はピュアだからな。お前と一緒に風呂に入る勇気は持ち合わせてないだろ」

 

「でも、そーちゃんもお風呂一緒になると顔を真っ赤にして逃げますよ」

 

「ほう、そうなのか?アイツにしちゃ珍しい反応だな。ドS王子も中身はガキンチョってことか」

 

土方と沖田はそんな会話をしながら湯船に浸かるとお互い背を預けるように座る。すると、沖田の背中と土方の背中が触れ合う形になる。

 

沖田は土方より小柄ではあるが女性としては平均的な身長なので、こうして並ぶと二人の体格差は一目瞭然だった。

 

「土方さんは逃げないんですね。さすが女性からモテモテの色男は違いますねぇ。よっ!日本一のモテ男!って、あいたぁ!?」

 

「茶化すんじゃねぇよ!頭ぶっ叩かれてーのか!」

 

「もう既に叩いてるじゃないですか!乙女の頭を何だと思ってるんですか全く!」

 

「乙女だぁ?ああ、そういやお前って女だったな。悪ぃ、普通に忘れてたわ」

 

「流石に酷すぎませんかそれ!?」

 

土方のあんまりな発言に涙を浮かべながら怒る沖田だが土方は涼しい顔だ。沖田を女として見ている男がいたら恐らくこんなやり取りは想像すらできないだろう。

 

軽口を言い合いながらもじゃれ合っている二人。端から見るとただの友人同士に見えるが、彼らは紛れもなく"男と女"なのだ。

 

昔からの付き合いに慣れきってしまった為、女性としての意識をどこかに置いてきてしまったのかもしれない。

 

「もう怒りました!土方さんなんて知りません!先に上がらさせていただきます!」

 

「おう、別に構わねーぞ。俺はあと少し入ってく」

 

「ふんだ!後で後悔しても知りませんからね!」

 

「後悔って一体何を後悔すんだっつの…。上がったらしっかり体を拭けよ。風邪引いても知らねーからな」

 

「わかってますよ!」

 

プンスカと怒りながら浴場から出て行く沖田を見送った土方は再び大きな溜息をつく。

 

「相変わらず可愛げがねぇな…」

 

沖田がいなくなった浴場で一人呟いた土方の言葉は誰に聞かれることも無く、反響することもなく消えていった。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

一方その頃、脱衣所では沖田がタオルで濡れた髪を乾かしながら着替えていた。

 

「っと、桜姉ぇじゃねーですかぃ。風呂上がりで?」

 

今から風呂に入ろうとしてたのか、総悟が脱衣場にやってきたところで丁度鉢合わせになった。

 

「はい、そうですよ。そーちゃんは今からお風呂ですか?」

 

「ええ、そんなところですぜ」

 

「そうでしたか。ゆっくりと仕事の疲れを癒して下さいね」

 

「そうしやーす」

 

「ところでさっきから気になっていたんですが、どうして目線を逸らして喋っているんです?」

 

沖田が首を傾げる。確かに彼女の言う通り、先程から沖田が目線を合わせると、総悟はすぐに顔をほんのり赤くして別の方向を向いてしまう。

 

何か変なものでも付いているのだろうか?と自分の身体を見回してみるも特に変わったところはない。

 

「(あー、なるほど。お風呂に入ろうと思ったらお風呂上がりの姉がいて何となく気まずいってやつかな?)」

 

沖田は心の中で納得した。沖田と総悟は血が繋がっていない義姉弟だ。初めこそお互いの仲は良好とは言えなかったが、そこに二人の姉のミツバが介入する事で、少しずつ関係は改善されていき今では本当の姉弟のように仲良くなった。

 

しかし、それでも思春期を迎える男子にとっては複雑な心境なのだろうと沖田は考えたのだ。

 

「そーちゃん、お風呂上がりって暑いですよねぇ」

 

「…弟をからかうのは止めてくだせぇ。それよりも早く服着ないと湯冷めしますよ。唯でさえ体もメンタルもクソ雑魚なんですから」

 

沖田は悪戯っぽい笑みを浮かべると、わざとらしく胸元を大きく開けて見せた。その瞬間、総悟の顔は茹でダコの様に真っ赤に染まった。

 

「(これが胸キュンってやつですか!なるほど、これは確かに良いものですねぇ)」

 

先程も言った通り、普段から沖田は男装をしている。その為、こうして肌を露出させる機会は滅多にない。沖田自身も女扱いされるのはあまり好きではない。魂が男だからというのもあるが、女とわかるや否や、急に態度がデカくなり此方を下に見る人間が多いからだ。

 

しかし、だからと言って、自分が女性であることを否定するつもりは無い。むしろ、女性らしい部分も自分の一部だと最近は受け入れている。

 

総悟が「男装した方が野郎共から舐められねーですぜ」と助言をしたのも自身の姉を心配してのことなのかも知れない。

 

沖田自身、総悟のことはもちろん好きだ。だが、それは恋愛感情ではなく姉弟愛。つまり家族としてだ。

 

だから、こうして異性としての反応を見せてくれるのは素直に嬉しいし、可愛いと思う。総悟の反応を見て楽しんでいると、突然、背後に気配を感じた。振り返ってみると、そこには腕を組んで仁王立ちしている土方の姿があった。

 

「いだぁ!?に、二回も人の頭を楽器みたいに叩くことないじゃないですか!」

 

「アホやってないでとっとと着替えろバカ。総悟は早く服脱いで風呂に入っちまえ」

 

「桜姉ぇになに暴力振るってんだ土方コノヤロー!!」

 

「おめーが困ってるからこっちは助けてやったんだろーが!?」

 

どうやら、先程の沖田との総悟とのやり取りを見ていたらしい。土方は沖田に拳骨を落とすと、そのまま手早く着替えて出て行ってしまった。

 

「全く、土方さんは本当に乱暴者ですね」

 

「…………」

 

「そーちゃん?どうかしましたか?」

 

「いえ、何でもねぇです」

 

「そうですか?それならいいんですけど…」

 

「んじゃ、風呂に行ってきやーす」

 

総悟は沖田に小さく頭を下げると浴場へと向かって行った。





この小説は友情、勝利、成長、努力はあっても(恋愛は)ないです
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