真選組の沖田さん(ドS)と型月の沖田さん(病弱) 作:芋けんび
今年もよろしくお願いします。
今回は箸休めのマヨラー視点です。
ミツバから手紙が届いた。
内容は大体元気してるかとか、総悟と桜之進に変わりはないかといったものが殆ど。手紙は月に4〜6通くらい屯所に届けられるが、手紙と一緒に激辛煎餅まで毎回送ってくるのはどうかしてると思う。
誰があんな味覚を崩壊させるような激辛食えんだよ。
あれが届く度に「一体誰がこの劇物を処理するか?」という真選組一重要な会議が行われるのだが、もっと重要な案件はなかったのだろうか。
最終的には近藤さんが「じゃあ誰が食べるかクジ引きで決めよう!」とあまりに理不尽な提案をしてくるのが常。
いや、だったら最初の会議は何だったんだよ。
一度、「そんなに嫌なら食わなきゃいいだろ」と言ったこともあるが、どうやらそれはタブーらしく、近藤さんからは「せっかく"真選組の皆さんで召し上がってください"って送ってくれてるんだから食べなきゃミツバ様が悲しむだろ!」と何故か怒られ、総悟からは「死ねぇぇぇぇぇ土方ァァァァァ!!」と本気で斬り掛かられ、追い討ちでバズーカまで撃ってくる始末。
隊士全員からもブーイングの嵐だった。
かくなる上は沖田に助けを求めるしかねぇと沖田を見れば「あの激辛煎餅美味しいですよねぇ。沖田さん結構好きなんですよ。土方さんもお一つどうですか?今ならお団子も一緒にもれなく付いてきますよ」とズレた意見しか言わねぇ。
前々から思っていたが、沖田はかなりのド天然だ。おまけに戦場じゃ猪突猛進気味に敵に突っ込む脳筋バカときた。
そのくせ総悟の野郎と同等かそれ以上に剣の腕が立つ実力者でもある。
女人禁制の真選組で唯一特例で入隊を認められたのは、他ならぬ沖田桜之進のみ。剣の腕前もあるが、単純に松平のとっつぁんと近藤さんが、「沖田を娘のように溺愛しているから」という親バカ過ぎる理由によるものが大きい。
「土方さーん。言われていた書類持ってきましたよ」
噂をすればなんとやらだ。
自室で書類整理をしていると、外からあいつの声が聞こえてくる。
「沖田か。入っていいぞ」
入室を許可すれば「失礼しまーす」と間延びした口調の沖田が部屋に入ってきた。
「書類ってこれでいいんでしたっけ?」
「ああ。ご苦労さん、確かに受け取った。もう戻っていいぞ」
「はーい…あっ、そうだ。土方さん土方さん。ちょっと聞いてくださいよー」
踵を返して部屋を後にするのかと思いきや、不満げに口を尖らせた沖田が話し掛けてきた。
まるで学校の休み時間に友達と雑談でもするかのようなフレンドリーさに思わず呆れ混じりのため息が漏れる。
こいつは昔っから緊張感に欠ける。誰が相手でも物怖じしない勇気と度胸には俺も感服しているが、誰これ構わずに親しみさを出すのは感心しねぇ。やる気のない緩い隊長と舐められかねん。
だが、コイツがいりゃ真選組の士気が上がるのも確か。やれ「沖田隊長に振り向いてもらう」だ、「沖田さんは俺の母になってくれるかも知れなかった女性だ」だの。動機こそ不純だが、それで隊士共がやる気になるってんなら重畳だ。
正直俺にはこんな脳筋バカの何処がいいのか全くわからんが。
「見てわからねーのか?仕事中だ。後にしろ」
片手を振り動かして『早く帰れ』とジェスチャーする。あの野郎、山のようにある書類を全部俺に押し付けやがって…。
「うひゃー凄い量の書類ですね。えーと?器物破損、建造物等損壊による請求書と始末書?何ですかこれ?」
俺の言葉を聞いてるのか聞いてないのか、沖田がテーブルに置いてあった数枚の紙を手に取る。
「お前…人の話を…。まぁ、いい。全部総悟の野郎がやらかしたものだ。ったく…。街中でバズーカを撃つなってあれほど言ったろうによ…」
「そーちゃんは土方さんが大好きですからねぇ。土方さんが注意すればするほど、喜んで破壊と暴力を繰り返しますよ」
「なにその全く嬉しくもなんともないツンデレ。混沌しか生み出さねぇじゃねーか」
やり過ぎるなと口を酸っぱくして警告しているが、それを改める所かそれ以上に酷くなりつつある現状に頭を抱える。
アイツのひねくれた性格というか、捻じ曲がった性根を正すなんざ到底無理な話だ。
ドラえ〇もんのきこりの泉にでも放り込まねぇ限り、何も変わらんだろう。
「お前からも総悟に何とか言ってやってくれ。俺が文句言ってもロクに聞きもしねェ」
「んー、沖田さんが言っても変わらないと思いますよ?」
「少なくとも俺よりかは効果あんだろ。アレはお前に懐いてるみてぇだしな」
「まぁ、確かに?朴念仁の土方さんよりは効果ありそうですねぇ」
「お前今なんつった?」
聞き間違いか?さり気なく俺をディスらなかったか?気のせいか?気のせいなのか?
「沖田さんが土方さんの悪口を言うなんてそんなのある訳ないじゃないですか。気のせいですよ!き・の・せ・い!」
「目ェ泳がせながら言っても何の説得力もねーぞ」
やっぱりこの阿呆とは一度腹割って話し合った方がいいんじゃなかろうか。上司相手にここまで舐め腐った態度でいられるヤツなんざ、コイツとあの
「そういえば土方さん。ミツバさんにお手紙の返信は書かなくていいんですか?」
「ぶっ!?」
「ちょ、汚っ!?いきなり何するんですか!?」
「茶飲んでる時にお前がいきなり変なこと言うのが悪ぃんだろうが!」
コイツ…、何でミツバから手紙が届いてることを知ってやがんだ!?誰にも手紙は見られてねェはずだ。
「額に『ミツバさんから手紙が届いた』って書いてありますよ」
「ンな訳ねーだろうが。寝言は寝て言え」
「まったまた〜。そんな照れなくても。目を泳がせながら言っても何の説得力ありませんよ?」
「うるせぇ!!」
あれ、コイツこんなウザキャラだったっけ?てか、勝ち誇った顔でドヤ顔すんな。何も勝ってねぇよ。
「まぁ、本当は私宛にミツバさんからお手紙が届いていたので、もしかしたら土方さんとそーちゃんにも届いてたりするんじゃないかなって思ったんです」
「最初っからそう言え。ああ、確かにあいつからの手紙は俺にも届いてたぞ」
「たまにはちゃんと返事を書いてあげた方がいいんじゃないですか?ミツバさんも
「…っ。ふん、余計なお世話だ」
血の繋がりがないと言っても一緒にいればやっば似るもんなのか?笑った顔がミツバによく似てやがる…。
俺じゃあいつを幸せにはしてやれない。ロクでなしの俺なんかよりも相応しい相手が見つかるハズだ。
惚れた女には幸せにはなってもらいたい。
俺みてーなヤツは、陰ながらあいつの幸せを応援してさえすればいい。
「頑固一徹ですねぇ」
こちらに背を向けて去って行く沖田からそんな声が聞こえた気がした。