真選組の沖田さん(ドS)と型月の沖田さん(病弱)   作:芋けんび

3 / 13

過去話。
ショタ総悟の視点になります。


幕間 沖田と沖田と沖田

 

 

俺にとっての姉は姉上ただ一人。

どんな時でも姉上だけが俺の心の支えだった。

 

いっつもニコニコ笑いながら俺に話しかけてきて、俺が困ってれば必ず助ける得体の知れない女。

 

土足で人の心ん中に入るクセに、自分の過去は喋りたがらないミステリアスの女。

 

それが、沖田 桜之進との最初の出会いだった。

 

 

 

 

 

*******

 

 

近藤さんの道場に上がり込んでは剣術修行に明け暮れる毎日。あの憎たらしい土方は嫌いだったが、修行そのものは嫌いじゃなかった。

 

そんなある日、いつもの様に丸太を振って筋力トレーニングをしていると、近藤さんが一人のガキの連れて帰ってきた。

 

歳は俺よりも2〜3歳上くらいだろうか。

 

何でも買い物帰りに道端で死体漁りをしている少女を見つけて連れて帰ってきたらしい。

 

やってる事が誘拐のそれだといえば、「家族がいない孤児らしくてなぁ。見て見ぬふりも出来ねぇんで連れて帰ってきた」と笑いながら開き直っている。

 

この人はほんっとに他人に甘過ぎるんだよなぁ。

 

ドが付くほどお人好しで、涙脆いーーまぁ、この人のそんな部分が俺には居心地が良いと感じる理由なんだが。

 

しかし、同時に何でも受け入れてしまう程の優しさは、この人にとって最大の武器であり、弱点でもあると俺は思っていた。

 

「ん?」

 

ふと、感じる鋭い視線に目を向ければ、近藤さんが連れてきたガキが俺を真顔でじっと見つめていた。

 

敵意とかじゃなくて、こちらを観察しているかのような眼差し。

 

何故だか無性にムカついてこちらも負けじと睨み返してやるが、まるで効果がないのか俺に笑いかけてきやがった。

 

「(こ、こいつぅ…!)」

 

「そんなの怖くありませーん」とでも言いたげに笑うガキに腹が立ち、丸太を掴んでいる両手に力が入る。

 

「おーい、総悟〜!こっちに来てお前も挨拶しろよー!」

 

ニッコニコの近藤さんが俺を手招きして呼び掛ける。こっちの心情を知らないからとは言え、間が悪すぎぃ!

 

「えー、俺はいいぜ。今は丸太を振るので忙しいんだよ」

 

「はっはっはっ!女の子相手だから緊張してんのか?お前もウブな所があるじゃねーか」

 

「はぁ!?ちげーし!」

 

「クソ生意気なガキにも多少は可愛い所があるんだな」

 

「うっせー土方!お前にだけは言われたくねぇ!」

 

後から道場に来た新参のくせに生意気にも俺を小馬鹿にしてくるのがまじでムカつく。後で覚えてろよ土方…!

 

「私は沖田と言います。沖田さんって呼んでくれたら嬉しいです」

 

俺と同じ姓の『沖田』と名乗った子供が、花の咲くような眩しい笑顔のまま、ニコニコ顔で俺に歩み寄って来た。

 

「何で出会って間もない奴にさん付けしなきゃいけねーんだよ。てか、沖田って言ったいま?俺と同じ?」

 

一体何の偶然だよ。そんなホイホイばったり会うほど、『沖田』なんて苗字多くねーだろ。佐藤や鈴木とか田中じゃないんだし。

 

あ、わかったぞ。さては…コイツ俺のファンだな?

 

「なんだよその手は」

 

「握手ですよ。仲良くなる為のおまじないです」

 

「はぁ?嫌だよ、やらねーよ。何でお前みたいなガキと…っておい!無理やり握手させんな!強引かよお前!?」

 

「沖田同士で気が合うみてーだな」

 

そんな訳ねーだろ!?バカだろ。やっぱり土方バカだろお前。

 

「せっかくだ、総悟。一緒に稽古してみたらどうだ?」

 

「ぜってー嫌だ!」

 

「即答かよ…。しかしな、同じくらいの歳の子と勝負した方がお前やこの子の為にもなるぞ?」

 

「大体コイツ戦えんのかよ?どう見ても弱そうじゃんかーー」

 

 

私の方がキミよりも強い(・・・・・・・・・・・)ですよ」

 

 

つい数分前までの笑顔とは打って変わって、感情の一切を消し去った無表情のバケモノがそこに居た。

 

自分を大きく見せる為のでまかせ、もしくは自分の力を過信しすぎてる馬鹿かよ、と口を開いて言い返してやりたいのに声が出ない。

 

光を失った眼が俺を凝視する。

 

恐怖。不安。怯え。

 

冗談とは思えない凄みを感じて一歩後ろに後ずさる。

 

「(な、なんだよこいつ…)」

 

全身から一気にぶわっと冷や汗が溢れ出す。

 

無意識の内に手足が震える。全身の筋肉が緊張し、心臓の鼓動な張り裂けそうな勢いで早くなる。

 

「稽古、早くやりましょうよ。それとも真剣で殺りますか?」

 

「真剣で稽古するアホがいるわきゃねーだろ。道場血で汚すつもりかよ。そもそも、ガキのお前が何でそんな物騒な刀なんて持ち歩いてんだよ?」

 

「トン・キホーテに売ってました」

 

「んな訳あるか。どこのディスカウントストアに日本刀売る店があんだ」

 

「拾いました」

 

「言ってることコロコロ変わりやがるな。…どうすんだよ近藤さん?」

 

「さっき俺も捨てるなり預けるなりできないのか、って言ってみたが、『刀に取り憑かれてるから捨てても手元に戻ってくる』んだそうだ」

 

「どんな言い訳だ。まさか妖刀とか世迷いごとでも宣うつもりか」

 

「何か言いづらい事情があるんだろうさ。この歳でこんな物騒なものを持ち歩いてるくらいだ。理由を聞かない変わりに、絶対に許可なく振り回さない、人に怪我を負わせないことを条件に所持許可を出した」

 

「おいおい、正気か?どう考えてもロクなことにしかならなそうだろ。後でどうなっても俺は知らねーぞ…って、おい。大丈夫か?顔真っ青だぞお前。漏らしたか?」

 

「…え?う、うっせーな。気のせいだよ気のせい。つーか、漏らした言うな!」

 

俺の心情とは他所に、話が勝手に進んでいた。刀云々よりも、こいつが放ってた異常なまでの殺気と威圧感について問いただしてくれよ。

 

どう考えても普通じゃないだろこいつ。

 

「おい!稽古すんなら先輩を立てる為に接待して負けるんだぞ。それが後から入って来た後輩の最初の責務だからな」

 

「……」

 

おいこのやろー、無視すんな。

 

俺の言葉を聞いてるのか聞いてないのか、俺に背中を見せてある程度距離を取ると、床に置いてあった竹刀を手に取り、再び俺いる方向に体を向き直した。

 

「見たことねぇ独特な構えだな。あれば一体どこの流派だ?トシ、何か知ってるか?」

 

「いや…。俺も色んな道場に道場破りをふっかけてきたが、あんな構えは見たことがねぇ」

 

「後輩らしく、貴方を全力で叩きのめします。お覚悟を」

 

「どこも後輩らしくねーよ!それが先輩に対する仕打ちか!?」

 

怖いよ!何なんだお前!

 

そもそも、さっきまでの明るい口調はどこいったんだよ。戦いになったら急に人が変わったように別人になりやがって…!

 

「毎日のように丸太を千回振ってる俺に勝てると思ってんかよ…!このやろーー!!」

 

「いや、お前が振ってんのあれ丸太じゃなくて丸太の木の皮だろ」

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「そーちゃん、今日はお稽古に行かなくていいの?いつもは朝早くに家を飛び出して近藤さんの道場に走ってたじゃない」

 

眠りから覚めれば不思議そうにこちらを見つめる姉上の姿が目に映る。

 

「すみません姉上。僕もう道場に行きたくないっす。後から入って来た変なガキが『僕と稽古する』とか言ってボコボコにしてくるんです。あと土方がムカつくから行きたくないんですよ…」

 

「まぁ。その子はそーちゃんと同じくらいの歳の子なの?」

 

「多分、僕より2〜3歳上くらいです」

 

「総悟ちゃん総悟ちゃん!沖田さんと一緒に道場に行きましょ!」

 

「出たな!サド女!誰がお前なんかと道場に行くかよ!」

 

一体どうやって住所を突き止めたんだこいつ!?

 

「沖田先輩。稽古の時間っす」

 

「土方ぁぁぁぁ!!お前の差し金かよ!?」

 

「あらまぁ、土方さん。わざわざそーちゃんを呼びに来てくれたんですか?うふふ、ありがとうございます。お隣にいらっしゃるのがそーちゃんの言っていた…?」

 

「初めまして!私は沖田桜之進と申します!総悟ちゃんのお友達をさせていただいてます!」

 

「ご丁寧にどうもありがとうね。私はそーちゃんのお姉さんのミツバって言うの。良ければこれからもそーちゃんと仲良くしてあげてね。ふふっ、良かったわねそーちゃん。歳の近いお友達が出来たのね」

 

「総悟ちゃんはやめろ!ち、違います姉上!?こいつが勝手に僕を友達認定してきてるだけで…!?」

 

結局あの試合は俺の完敗だった。それも圧倒的な。

 

俺の猛攻に防御ばかりで一向に攻撃してこない沖田。俺は最初「攻撃する隙がないから後手に回るしかない」のだと思っていた。

 

でも、違った。

 

あいつは俺にカウンターを叩き込むチャンスをずっと待ってたんだ。

 

俺の振り下ろした竹刀をいとも容易く弾き返すと、いつの間にか俺の握っていた竹刀は宙に浮き上がっていた。

 

「やばい!」と思った時には首筋に竹刀を突き付けられていて「攻撃が素直過ぎますよ?」とはにかんで笑っていた。

 

近藤さんは沖田を「成長が楽しみな若者」と絶賛してたけど、土方のやろーは「相手に隙を敢えて見せてからのカウンターか。腕っ節に余程自信がなけりゃまず出来ない一手だな。だが、ちと動きに無駄が無さすぎねーか…?」と期待よりも、不安や警戒といった感情が入り交じった感想を言っていた。

 

土方のやろーの意見に納得する訳じゃねーけど、俺も沖田は危険な感じがする。ガキなのにガキらしくないのもそうだけど、昨日の試合のあの目は今思い出すだけでも震えてくる。

 

あまりの怖さに小便ちょっとチビったし…。換えのパンツを道場に置いておいて良かった良かった。

 

「それにしても、桜之進ちゃんの姓も沖田って言うのね?なんだか凄い偶然。」

 

「こいつは道端で死体漁りをしている所を近藤さんに拾われた孤児らしくてな。近藤さんが自分の道場に住まわせるつって聞かねーんだ」

 

「孤児?まだ子供なのにそれはあまりにも酷な話ね…。あ、そうだわ。家に今一人部屋が丁度余ってるから良かったら一緒に暮らしてみないかしら?」

 

「はぁ!?あ、姉上!いきなり何言ってるんですか!?僕は反対ですよ!」

 

まずい。

 

「あら、どうして?」

 

「こいつは戦いが大好きな戦闘狂女なんですよ!そんな奴と一緒にいたら姉上の身にもきっと危険が…」

 

「相手は女の子なのよ?そんなことを言ってはいけません。メッ!」

 

まずいまずいまずい。こいつと一緒に住む?冗談じゃねぇ!こんな獰猛な獣が姉上や俺の傍にいるとか落ち着いて寝れもしないぞ!?

 

「私なんかが一緒に住むだなんて…。ご迷惑ではないですか?」

 

「いいのいいの。桜之進ちゃんは一目見た時から何処かほっとけない気がしてたの。私の事は実のお姉さんだと思って接してくれていいからね?」

 

「土方ぁぁぁぁ!!お前も黙ってないで何か言えよ!」

 

「ん?俺は別にどっちでも構わねーよ。沖田同士で仲良くなれるんじゃねぇか」

 

「テメェ他人事だからって適当過ぎるだろ!?」

 

「んな事より先輩。今日も道場っすよ。ほら早く来るっす」

 

「離せ!離せったら!ぬがああああああ!!」

 

「これからよろしくお願いしますね。そーちゃん(・・・・・)

 

「お前がそーちゃん言うんじゃねぇ!」

 

ちきしょー馴れ馴れしいぞこいつ。あと頭撫でんな。ガキ扱いしやがって…!やっぱり沖田なんて大嫌いだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。