真選組の沖田さん(ドS)と型月の沖田さん(病弱)   作:芋けんび

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まるでダメなおっさん

 

「あっちぃぃ…やばいってこれ。何でこんな炎天下なんだよ。誰がこんな常温にして地球熱々にしろなんて頼んだ。郷ひろみも無言で首降るレベルだよこれ。燃えてるんだろうか〜、感じてるんだろうか〜すら聞くまでもない程の猛暑じゃねーか」

 

身を焦がさんばかりの太陽が上空でサンサンと輝く。額から流れる汗を不愉快そうに片手で拭う銀時。

 

「なぁ、ハゲ頭のおっさん。もう帰っていいよね?俺もう帰っていいよね?」

 

「え?よくわかんねーけど、帰っていいんじゃねーの?」

 

「いい訳ねーだろ!こっちはな、買い溜めしてたイチゴ牛乳が切れて糖分不足でイライラしてんだよ。何も知らねーくせに余計な口を挟むんじゃねーよ!」

 

理不尽な逆ギレに、坊主頭の少し強面なおじさんは涙目になりながら両手で顔を覆う。

 

先に話しかけたのは一体どっちだよと、ツッコミを入れる者は残念ながらこの場にはいない。

 

「あれ?万事屋の旦那じゃないですか。コンビニ強盗の帰りですかい?」

 

「会って早々に変な言い掛かりやめてくんない?片手にレジ袋ぶら下げんのが見えねーのかお前。つーか、ここで何してんの?」

 

「巷で何かと問題になってる辻斬りがここいらで目撃されたってんで、その聞き込みですよ。旦那もフラフラ出歩いてると目ェつけられますぜ」

 

「不吉なこと言うんじゃねーよ。本当に現実になったらどうすんだっつーの」

 

感情の読み取れない目元のまま、悪戯っぽく笑いながら「冗談ですぜ」と間の抜けた返事を返す。

 

「そういえば、この間の連続婦女子誘拐事件の件では協力ありがとうございやした」

 

「婦女子誘拐?…あー、あれか。別に気にすんな。今をときめくアイドル様に前金貰っちまったし、真選組のマスコットとして手伝っただけだからな」

 

「土方さんは余計なことしてくれやがって、とボヤいてやしたが、万事屋の旦那が連中の気を引いてくれて助かりましたぜ。あの場に姉上がいてくれりゃ、もっと俺も楽できたんですがね」

 

「姉?総一郎くん、姉貴いんの?」

 

「総悟でさぁ。ええ、上に2人ほど姉が。1人は同じ真選組の隊長なんで、何れ旦那も会うと思いやすぜ」

 

「へぇー…」

 

このドS王子に姉だって?

 

全く想像つかない。その姉とやらも超ドSなのか、と内心で失礼なことを考える銀時。

 

「ちなみに団子が好きなんで、もし見かけたら餌付けしてやってくだせェ。俺の姉上はそれで喜びますんで」

 

「自分のお姉さんを野生動物みたいに言うんじゃねー!それでも弟かお前ぇ!?」

 

「何言ってるんですか旦那。慕っているからこその愛情表現でさぁ。姉上がウチにいるお陰で、真選組のイメージも少しは回復傾向にありやすからね」

 

「犯人追っかけ回して逮捕するに飽き足らず、ついでに暴行や破壊活動してりゃ世間様からの評価なんてガタ落ちするに決まってんだろうが」

 

「ごもっともです。これも全部土方さんが悪いでさぁ。俺はただ指示に従って動いてる(・・・・・・・・・・)だけなんで」

 

わざとらしく視線を下に向けてため息を吐く。責任の全てを副長の土方に丸投げする気でいるようだ。

 

「悲しげな顔で何かとんでもないこと言ってるよこの子。自分だけ責任から逃れる気満々で俺怖いよお母さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

商店街通り。

 

ここには飲食店、服屋、薬屋、デパート、コンビニ、と様々な店が立ち並んでおり、大勢の人で賑わっている。

 

その中でも、大通りを少し抜けた先にある大江戸公園は老若男女に人気のスポットである。

 

「はぁ…。また面接に落ちちまった…。どいつもこいつも俺がホームレスだと知るや否や、手のひら返して門前払いしてやがってよ!ああ、そうだよ。俺は無職でホームレスの負け犬だ。でも、それの何が悪いってんだ!こんちきしょうが!」

 

噴水近くのベンチ座っていた黒いグラサンの男は、怒りに身を任せて飲み終わった空き缶を投げ捨てる。カランカランと乾いた音が地面に響いた。

 

「あのー、もし、そこのお方。ダメですよポイ捨ては。飲み終わったらちゃんとゴミ箱に捨てましょうね?」

 

項垂れていた男が聞こえてきた声に反応して顔を上げると、真選組の隊服を着た白色のマフラーが特徴的なポニーテールの人物が目の前に立っていた。

 

「うぐっ、すんません…お巡りさん。す、すぐ拾うんで、あの…罰金は勘弁してください!今その金が底ついてて…!」

 

「あれ?貴方は…」

 

「へ?お、俺の顔に何か付いてる?」

 

「いえ、すみません。人違いでした。それよりも、随分と切羽詰まってますね?何かあったんですか?」

 

「良ければ話を聞きますよ」と軽く微笑んだポニーテールの隊士は、男の隣に座った。

 

警察に嫌な思い出しかない男は、反射的に断ろうとするが、

 

「私は沖田って言います。気軽に沖田さんって呼んでください」

 

「これはどうもご丁寧に…。真選組にもあんたみたいな腰の低い奴がいるんだなぁ。あ、俺は長谷川ね。間違ってもマダオじゃないから」

 

「長谷川マダオさんですか。いいお名前ですね!」

 

「違う違う!マダオは名前じゃないから!いや確かに名前っぽいけども!?マダオはね、堕ちる所まで墜ちた、いわば蔑称みたいなものさ。仕事があって、帰る場所があって、安全な寝床がある。そんな人間にとっての当たり前がどれだけ大切かなんて、自分が何もかも失った側の人間にならねぇとわかりはしねぇ。何もかも失って色んな人間からゴミを見るような冷たい視線を浴びせられてる俺だから…って、ああ!ごめんごめん!こんなおっさんの愚痴なんて聞いても嫌になるだけだよね?」

 

蓄積していた不平不満が爆発したのか、相槌を打つ暇も与えぬ勢いで喋り倒すが、桜之進は嫌な顔1つせずに話を聞いていた。

 

「構いませんよ。話してスッキリするなら幾らでも話してください。困ってる人を助けるのも警察の仕事ですから」

 

「そういってもらえると俺も救われた気持ちになるよ、へへっ…。まだ若いのに随分と立派な志を持ってるんだなぁ。キミ、本当に真選組なの?まとも過ぎておじさんビックリなんだけども」

 

「商店街にある魚屋のおじさんにも同じセリフを言われましたよ。あの…、真選組ってそんなに印象悪いんですか?」

 

「悪いっていうか、やり方が荒いんじゃない?この間なんて、ベッコベコのパトカーで違反車両を猛スピードで追いかけながら『だから止まれつってんだろうが!今すぐ止まりやがらねーとバズーカぶち込むぞゴラァァァァァァァ!!』って拡声器で怒鳴ってんのおじさん見たぞ」

 

職権乱用とも言える横暴な逮捕。一般市民にバズーカをなんの躊躇もなく撃つのは日常茶飯事。ガラの悪い集団がいると思ったら実は真選組だった、など。真選組は世間からの評価は辛口なものばかり。

 

「ちょ、それ絶対ウチの土方さんじゃないですか。副長が一体何やってるんですか!?」

 

侍の心、いついかなる時も、忘れることなかれーー

 

真選組という血気盛んな侍たちが集まる場所で、規律を守らせるために作られた鉄の掟。

 

それが、局中法度だ。

 

掟を破った者は切腹という無慈悲でそれ相応の罰によって裁かれる。鉄の規律を考案したのは他ならぬ副長の土方十四郎なのだが、その副長が掟破りとはどうなのだろうか。

 

「見回りが終わったら土方さんに文句言わなきゃ…」

 

「ふう…。色々話してたら胸ん中につっかえてたもんが無くなった気がするよ。こんなまるでダメなおじさんの愚痴を熱心に聞いてくれてありがとな。若い兄ちゃん」

 

「いえいえ。少しでもお役に立てたのなら幸いです」

 

この世の終わりのような表情で項垂れていた長谷川だったが、今はどこか晴れ晴れとした面持ちで話を聞いてくれた桜之進に対して礼を述べた。一方の桜之進は、これで自分の役目は終えたとばかりに徐にベンチから立ち上がってーーー

 

「あと、私はこんなナリでも一応()ですよ?」

 

と、最後に特大の爆弾を放り投げてその場を立ち去って行った。

 

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