誰しもが経験してもおかしくない、本当のような嘘のお話

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本当のような嘘のお話

大学時代。当時、付き合っていた彼女とのお話。

 

 

それは夏休みの最中。

 

お盆休みに入る少し前と言ったところか。

 

蝉がシャワシャワとうるさい時期。

 

その頃になるとやはり人がまばらでね。

 

キャンパス内も静かだったよ。

 

当時、ゼミ長をやっていてね。副ゼミ長(女性)と飲み会の打ち合わせをしていたんだ。

 

 

ああ、ゼミ長には成り行きでなっちゃってね。押し付けらえたんだ。

 

そこで知らない人もいるから、ここは親睦でも深めようと言う目的で、飲み会を企画。

 

場所や日程も決めて、副ゼミ長が帰った後に、適当に卒論で使う資料の整理もして、図書館を出たらそこに彼女は居た。

 

 

「あの人はだれ?と彼女は問うてくる。

 

夏とは言え夕暮れにもなれば薄暗く、彼女の表情は見えなかった。

 

それでも僕は特にやましい事も無いから普通に説明したのだが、僕の考えは金平糖より甘かったようだ。

 

「私がいるのにどうして!?」

 

と襲い掛かられたよ。

 

喉笛をギュッと絞められるとね、声が出せないんだ。今になって思えば、頚椎とかに異常が残らなくて良かったと思う。

 

あの時ほど、人通りが少ない時期を恨んだ事は無い。なんせ止める奴が居ないのだから。

 

溢れ出る涙に、目の前の殺意。脳裏に浮かんでは消える思い出…

 

 

生まれて初めての経験だったよ。

 

高校時代に柔道をやっていたが、それでも振り解けない。

 

手の甲を拳でグリっとやって、怯んだ時に路上で人を投げた。体落としで見事一本だったと思う。

 

悶絶する彼女を気にかけつつも、この状況だと誰かに見られたら警察沙汰だな…と思い逃げた。

 

何より殺されたくなかった。

 

そのまま駅まで逃げて、ちょうどよく来た電車に駆け込んだ。

 

「追いかけて来てないか!?早く出発してくれ!!」

 

息も切れ切れで辺りを見渡すと、車内には海水浴帰りの家族、バイト帰りの学生など他人に無関心な者たちがチラホラいるだけでひとまずホッとした。

 

 

ホッとして実感した。

 

首に残る痛み…そして…

 

「ああ、俺は殺されかけたんだ」という恐ろしく認めたくない現実。

 

その日から特に大学へ行く予定なども無く、夏休み中だったから家で大人しくしていたよ。

 

ただ単に、夢だったと思いたかったんだ。

 

だからこそ、いろいろ考えた。

 

普段は温厚な彼女だったから。

 

「生理だったのかな?」とか「嫉妬深いのかな?」とか「警察やゼミの先生に相談した方がいいのかな?」って。

 

結局、どうするべきか結論は出ないままの状況でゼミの飲み会の日になったんだ。

 

ゼミの皆で「卒論はどうする?」とか「就活がうまくいったよ!」と言った話題の中で、ある学生から噂話が聞こえてきた。

 

「ある1人の学生が精神病院に入った。」

 

この時には僕は思いもしなかったよ。

 

これが彼女の事だったなんて。

 

 

これに気付いたのは夏休みが終わって、しばらくしてから。

 

あのような事があった以上、彼女の方からアクションがあると考えていたけど一向に動きがなく、何より姿を見なかったんだ。

 

食堂に行っても、同じ授業の時も、好きと言っていたファッションのお店にも居なかった。

 

それから特に何も問題なく、卒業する時には「そういえば、こんな事もあったな」程度に落ち着いていて過ごしていた。

 

本当の恐怖はそれからだったのに…

 

 

卒業して、3ヶ月ほど経った頃、社会の荒波に足掻いて、なんとか仕事にも慣れて来た時に気付いてしまった。

 

「気配」とか「オーラ」と言うか「気」って信じているかな?

 

何となく人が近くにいるぞ、みたいなのが分かる感じをイメージしてくれたら分かりやすいかもしれない。

 

僕はね。

 

ふと気付いてしまったんだよ。

 

彼女の「気配」に。

 

 

当時は名○○市の○川まで通勤していたのだが、

 

乗り換えの駅でそれに気付いてしまった時は、一気に汗が噴き出たよ。

 

「アイツが出てきた…?また殺しにくるのか?」

 

と勝手に想像して恐怖し、怯えながら、警戒しながら通勤した。

 

これが酷くストレスだったのも覚えている。

 

駅に着いたらまず、気配の確認をしてから周りを警戒しながら移動する。

 

彼女が居ないと確認できた時の安堵感はすごかったよ。

 

そんな通勤が1〜2ヶ月くらい続いた時かな。

 

気付いたら気配も感じなくなっていた。

 

「もう大丈夫なのかな」って思った。

 

そう思ってしまった自分が馬鹿だった。

 

そこから更に1ヶ月くらい経った頃の出来事。

 

枯れ葉が舞い、ちょっとセンチメンタルな時期。

 

電車を乗り換える為に移動していたら、くたびれたサラリーマンや学生カップルと言った不特定多数の人たちとのすれ違い様に「久しぶり」と言う声が聞こえた。

 

すぐに振り返ったよ。

 

そしたら居た。

 

地下鉄に消えていく彼女の姿。

 

ちょっと膨よかになったけど、間違いない彼女の「気配」…

 

当然、それからは警戒しながら通勤した。

 

同僚と一緒に行動するのも避けた。同僚が殺されかねない。

 

「またあの恐怖が続くのか…」とか、いっそ開き直って「来るなら来い。返り討ちにしてやる」と無謀なことを思っていた時もある。

 

でも、やはりストレス。

 

駅のトイレや職場で嘔吐する事もあった。

 

 

「どうにかしないと死ぬ…いや、いっそ死んだ方が…」

 

そんな事を考え始めた時だった。

 

彼女の「気配」を全くと言っていいほど感じなくなった。

 

まとわりつくような視線、人混みから感じる狂気、僕に近づいた人にも危害を加えるかの様な悪意。

 

「アイツ死んだのか?」と思うぐらいの差があった。

 

 

それから季節が冬になるくらい時期。

 

寒くて、人肌が恋しくなる季節だよね。

 

いつもの通勤中に見かけてしまったよ。

 

乗り換えの為に移動するまでの間に…

 

知らない男…恐らく新しい彼氏と歩く彼女が繁華街に消えていくのを…

 

あれから数年。

 

その男が無事に生きているかは誰も知らない…

 

というよりか、正直な話、自分の身が安全になったと言う安心感でそれどころじゃなかった。

 

彼女と2人で歩いているのを見た時に

 

「その女は危険だ!逃げろ!」

 

とは思ったけど…何より「俺は助かった…?もう安心していいんだ…」と安堵した自分がいたんだ。

 

僕はね…好き好んで死にたくないから、その彼氏さんに生贄になってもらった。

 

僕が助かるために。

 

 

この経験で色んなことを学んだよ。

 

相手がこうだろうと勝手に決めつけて考える政治家のような考えの甘さ。

 

好いている相手を殺すぐらいの狂おしいく金平糖のような歪な形の愛情。

 

相手を独占したいと言う蜘蛛の糸みたいに絡みつくような狂気。

 

周りが敵に見えるぐらい怯える捨て犬のような猜疑心。

 

生き延びる為なら他人を見捨てる、かつての皇帝が求めた不老不死みたいな生への執着心。

 

何も知らない間に死へと向かう好奇心旺盛な猫のような無知。

 

結論「人間って怖い」

 

この経験を忘れず、僕は今も生きている。


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