彼女は決して一流ではありませんでした。しかしその道筋は一流に匹敵するものでした。そういう泥臭いストーリーになっています
それを踏まえてお楽しみください
中国地方、岡山県の県北(例のアレではない)で彼女は生を受けた。
父は「太陽」のように輝かしい道を歩んでほしいと、彼女に「グランドソレイユ」という名を与え、大切に育てた。
母親がウマ娘であり、父は不動産を営んだ固い職業。父は娘に稼業を継いで欲しいと願っていたが、彼女はレースの道を志す。
「クラスの半分がウマ娘ってくらいのマンモス小学校だったんだ。これでもリトル時代は敵なしだったんだよ」
小学校時代は中国地方選抜のレース大会に出て善戦。
力のある様をアピールし、インタビューでも「将来はトレセン学園に入学して立派なウマ娘になりたい」と答える優秀な子供だった。
卒業後、憧れの中央トレセン学園を受験し、見事一発合格を果たすと、彼女のプロ生活が幕を開けた。
そして『フォボス』と呼ばれるチームに身を寄せる事になる。
デビュー戦、プレオープンを勝ち抜き、念願のオープン入りを果たすも、ジュニア期の重賞では悉く惨敗。
プロの世界の厳しさを思い知ることになる。
しかし彼女は落ち込むことはなかった。
「私は諦めが悪いんだ! 石に齧りついてでもこの世界に残ってやる!」
普通、実績のあるウマ娘はレースで上位人気に推されることが多い。
しかしグランドソレイユは毎回一番人気の推されることはなかった。
……なのだが、そういう時ほど彼女は力を発揮し、レースで勝つことから「彼女の走るレースは荒れる」「伏兵」と呼ばれ、上位人気ウマ娘からは恐れられる存在だった。
「ミスター伏兵と呼んでくれ! ……ウマ娘だけどね」
また、非常に頑健な体の持ち主であり、無尽蔵のスタミナを持ち、連投をもろともしない走りを見せ、3連投、4連投、果てには5連投と週末には顔を出すことが多かった。
「やめて、わたしのライフはとうにゼロよ! ……なんて言うと思った? これが大丈夫なんだよねー」
「……グランドソレイユ、おまえ本当に大丈夫か?」
「わたしは走らないと落ち着かないんですよ」
トレーナーが心配するほどだったが、彼女はあっけらかんとしていた。
しかし勝率は決して高くはなかった。毎回善戦するものの、中々一着には届かない。
ウイニングライブでも、一着のウマ娘の引き立て役に終わることも多かった。
「むむむ……」
中々殻を破れず、もどかしい日々が続く。
しかし彼女はどこまでも求道者だった。練習以外、この殻を破る術はないと分かると一心不乱に走り込みを続ける。
トレセン学園でも、「彼女ほど練習をしているウマ娘はいないのではないだろうか」と噂されるほどだった。
また、彼女の恐ろしいところは、その異常なまでの適性の広さだった。
芝、ダート、スプリンター、マイラー、ステイヤー……、ウマ娘には大抵『適性』があり、そこを目指して練習を積み重ねていくのだが、彼女は全く違った。
練習量と試合数の多さが、彼女の不得意なレースをなくしてしまったのだ。
そのためグランドソレイユは芝も、ダートも、短距離から長距離に至るまで走れる体を身に着けたのである。
「努力すれば報われるんだよ。わたしに不得意なものなんてないんだ」
そんな彼女の中等部での成績がこちらである。
中等部一年:15戦6勝
中等部二年:31戦8勝 重賞 GⅢ2勝 GⅡ1勝
中等部三年:28戦9勝 重賞 GⅢ3勝 GⅡ1勝
……走り過ぎである。
とはいえ、念願だった重賞勝利ウマ娘にもなり、またレースに出た頻度が多い事から、知名度も無駄にあった。
宝塚記念や有馬記念にファン投票で選ばれ出走する事もあった。
しかし夢だったGⅠには届かない。入着すら遠い。リトル時代は負けなしだった彼女も、プロの世界では思うように勝てず、地方のオープン戦ばかり出場することになる。
「……これ以上ないってほど練習したけど、わたしはここまでなのかな……才能がないと勝てないのかなあ……」
大歓声と応援に包まれた夢のGⅠレース、そこに彼女の姿はない。自分は観客席で戦況を見つめるだけ。それがたまらなく悔しかった。
しかししょげてても事態が好転するはずもない。一生懸命練習を続け、いつの日か、そう、いつの日か……とチャンスを待つことにする。
また、後輩の面倒見も良かった。
ジュニア期の重賞にわざわざ連れ添って同行したり、練習でお手本を見せる事も多かった。
「前ばかり見ないで。後ろにも視線を配るように走って」
「あなたは末脚が魅力なんだから後方から差しを狙ったほうがいいよ」
「フォームはこんな感じ。コーナーでブレないように。足腰の鍛錬は欠かさないようにね」
こうして地道にキャリアを積み重ね、中等部が終わった後も高等部に進学したグランドソレイユ。
だが、ここで彼女にとって悪い方向への転換期が訪れる。
「……骨膜炎ですね。リハビリも含めると、復帰は半年でしょうか」
「そんな……」
左脚の違和感から検査を受けた結果、骨膜炎と判明。向こう半年を棒に振る。
これまで頑丈な体だけが取り柄だと思っていた彼女にとって、生まれて初めての治療を必要とする怪我……。
その心境は、想像に難くない。
もう、走れないのではないか……?
そんな絶望感が頭をよぎる。
幸い怪我は何とか回復したものの、高等部一年目の成績は6戦0勝。入着ゼロと散々な結果に終わる。
そして……、
「もうわたしは不要ってことですかー!?」
「…………」
トレーナーから戦力外通告を受け、チームを去ることになってしまう。
トゥインクル・シリーズの世界はチームに所属し、トレーナーが付かないとレースに出る事すらできない。
このままでは退学の危機である。
「……まだ終わりたくない」
グランドソレイユは諦めなかった。
必死にチームを探した結果、『ダイモス』と呼ばれるチームに所属することができ、何とか踏みとどまることになる。
しかしそこでも結果を出すことができない。走っても走っても入着すら遠い。
第二のチームでの成績は8戦0勝。入着ゼロである。
「ここにもわたしの居場所はないの……」
何とか後輩の面倒を見る事で存在感をアピールするも、結果が出せないのでは厳しい。
結局、そのチームからも戦力外通告を受ける事になる……。
「クビ、か……」
無理もない。この時グランドソレイユは高等部二年。競走バとしてはとうにピークを過ぎた選手である。
伸びしろもなく、結果も出せない。そんな選手が整理対象になるのはごく自然な成り行きだった。
「…………」
深夜の寮のベッドの中、彼女は天井を見上げながら物思いに耽っていた。
実家に戻り、家業を継ぐ。そうすれば確かに将来は安泰だ。
華やかながらもとても厳しい競走バの世界。中には一勝もできずに学園を去るウマ娘もいるのだ。
それに比べれば、自分はよくやったと言えるだろう。
(クビになったのは事実……。それでも、それでもわたしは現役に拘りたい!)
グランドソレイユには、まだ現役に未練があった。これだけの仕打ちを受けても、心は折れていなかった。
(でも2チームから戦力外を受けたのも事実……。ならせめて、入学の時から憧れだったチーム『リギル』の入部テストを受けて、それで駄目なら諦めも付くかな……)
そして、高等部三年生の幕が上がる。
トレセン学園の中でも指折りのエリートが集う最強チーム『リギル』。
全国から訪れたウマ娘の中でも、特に素晴らしい素質がある者が入部を狙う名門中の名門。その入部テストに、新入生に交じって彼女の姿があった。
「グランドソレイユです。よろしくお願いします」
彼女の名を知る者はトレセン学園にも多かった。そして居場所を求めているのも知られていた。
しかしなぜ『ここ』なのか……。
どうせ冷やかしだ。
トレーナーの東条ハナはそう思った。
しかしこのテストにおいて、グランドソレイユは躍動する。一軍のメンバーと遜色ない走りを見せつけ、自身を強くアピールする。
そして入部テストが終了。発表まで一時間。メンバーは緊張しながら通知を待つことになる。
(……7番、9番、13番は合格ライン。後は彼女か……)
東条ハナは履歴書のグランドソレイユを見つめる。
(伸びしろはない……。でも結果を残したことは事実なのよね……)
判断に迷うところだ。彼女はコーヒーを啜りながらどうしたものかと考える。
そして……、
「ほ、本当に合格ですか!?」
「ええ」
グランドソレイユは見事合格する。背水の陣で挑んだチャンスを見事ものにしてみせたのである。
(うちはプライドが高くてエリート意識が強いウマ娘ばかりだから、こういう雑草魂みたいな娘が一人いればいい発奮材料になるでしょうね)
というのが、トレーナー・東条ハナの出した答えだった。
とはいえ、彼女の立場は決して良くはない。それはソレイユ自身も分かっていた。
「便利屋」「かませ」この程度の認識だった。
ところでチームに在籍するウマ娘はトレーナーに出走したいレースを提案する。
最強チームとなれば目指すのはやはりGⅠ。そして希望レースを提出するわけだが……、
「これがわたしの出走希望スケジュールです」
「なっ……!?」
グランドソレイユの提出した用紙を見て、東条ハナは目を丸くした。
「4月初頭から12月末まで全週末レース出場ですって!? ありえないわ! こんなものを認めろというの!?」
「はい」
「はいじゃなくて……!」
冗談ではなかった。ソレイユは真剣な表情でトレーナーを見つめる。
「分かっています……。自分のチーム内での評価が高くないことを……。ならばわたしは、燃え尽きるまでレースに出てみたいんです」
「無茶よ! 体がもつ筈がないわ! 壊れてからじゃ遅いのよ!」
「お願いします!」
トレーナーが必死に説得するも、ソレイユは首を横に振り続ける。遂には土下座まで行う。
結局、東条ハナは根負けする形でしぶしぶスケジュールを承諾する形になる。
「レース場には一人で行きますから。帯同しなくても構いません」
「……。ええ、分かったわ」
(私は……とんでもない爆弾をチームに入れてしまったのかしら……)
こうして、グランドソレイユの最後の一年が始まった。
そして地方オープン初戦、彼女は見事一着を勝ち取る。ソレイユからすれば、実におよそ2年ぶりの勝利だった。
更に翌週のレースも勝利。2連勝となる。
「いける……わたしはまだ通用するぞ!」
復活のカギとなったのは、新しく覚えたストライド走法だった。
従来のピッチ走法と組み合わせ、坂や直線で使い分けることで足りなかったもう一伸びを補う。
試行錯誤を重ねた新フォームもハマった。
これまでは角度の深い前傾姿勢だったがそれを浅くし、踵を意識しながら爪先で地面を蹴るような走りをすることで安定感が大いに増した。
その翌週、アンタレスステークスダート1800GⅢにも出場。これも勝ち、3連勝とする。
(頑張れてるよな、わたし……)
その後も善戦を続けるソレイユ。残念ながら天皇賞春には出場できなかったものの、ヴィクトリアマイルの出走が決定する。
競争バなら当然の、忘れていた欲が胸に宿る。
(GⅠ、獲ってみたいな……)
だが、この年のヴィクトリアマイルはタイキシャトルの独壇場と言われ、安田記念もヒシアマゾンとフジキセキの寮長対決とされ、ソレイユは全く目立たなかった。
そして宝塚記念にはテイエムオペラオーがいた。
彼女たちに適うはずがない、と出走を回避する陣営もおり、なおさら最強チームに対する取材は熱を帯びていた。
さて、一方でソレイユだが、諦める事無く練習に励み続けた。
「便利屋」「併走のかませ」などと囁かれようとも彼女は本気でGⅠを獲るために走り続けていたのである。
しかしただの便利屋にあらず、彼女の練習を見た取材陣は一様にこう言う。
「どんな練習も率先して行い、その片付けも率先して行う献身さがある。見事だ」と彼女を高く評価していた。
「さあみんな、今日も頑張ろう!」
一見当たり前のように見えるが、その当たり前を行っていたのがグランドソレイユというウマ娘であった。
そして観客が手を振ろうものなら すかさず手を振るサービス精神を持つ気前のよさ。
彼女の人格は若手に対する手本だけでなく 何時しかチームのムードメーカーとして花開いた。
事実、彼女が練習に現れるとチームの雰囲気が一変する。
誰よりもレースを走りながら、GⅠを獲った事は一度もない彼女ではあったが、ソレイユは腐ることなくキャリアを積み重ねてきた。
そんな彼女を、チームメイトはどう見ていたのか。
稀代の自信家にして己の走りに絶対的自信を持つテイエムオペラオーは、
「ボクは人を褒める事はめったにないんだが……、彼女の生き様は尊敬に値するね」
寮長も努め、熱狂的ファンも多いエンターティナーのフジキセキは、
「後輩の面倒見もいいし、自分の走りでみんなを引っ張ろうとする。高等部の人間とはあのようにありたいものだね」
ソレイユと同じく『リギル』に在籍し、大物ルーキーと囁かれたドゥラメンテは、
「……あの人から学べることは多かった。……あの人がいなければわたしは才能だけで走るウマ娘で終わっていたかもしれない」
皆一様に彼女を高く評価していたのである。
それだけではなかった。
ある日の事、
「実はわたし、趣味でこういうものを付けてまして……」
それは彼女がもっていたノートだった。そこには……、
ウマ娘視点でのスポーツ力学的な走りの基礎から応用、競バ場の傾向と対策、
学園内の全てのウマ娘のスコアリング、競バ場近くにある安くて美味しい料理屋まで網羅した珠玉のノートだった。
「こ、これは素晴らしいわ!」
トレーナーの東条ハナもこのノートには舌を巻いた。自分の指導に絶対の自信を持つ彼女だが、ウマ娘視点での指導法に関する教本は不足していたからだ。
「あなた、これをコピーしてみんなに配っていいかしら?」
「はあ、別に構いませんよ。何冊もありますけど。……まあ2流のウマ娘の内容なんて誰も興味持ってくれないと思いますけどね」
しかしそれは少し違っていた。
そのノートのコピーを配ったところ、
「……いいじゃないか、これ」
「グレイト!」
「ソレイユさん、グラシアス!」
思いのほか好評だったのである。その価値に気付いていないのは書いた本人だったが……。
そして、ヴィクトリアマイル当日を迎えた。
「負けませんよ、ソレイユ=サン!」
「うん、お互い頑張ろう、シャトル」
レースはグランドソレイユがタイキシャトルをぴったりマークする形で進んだ。
他のウマ娘もまた、タイキをマークし、前方に出る。
タイキの進む道を塞ぐしかない。これが対タイキ陣営の出した答えだった。
しかし最後の直線に入る前に、タイキシャトルは外に身を出してしまう。
「タイキシャトル、体を外に振った! 行けるのか!? ここから行けるのか!?」
「くっ……!」
「ソーリー。あなた達とは鍛え方が違いマース」
「やはりタイキシャトルだ! タイキシャトル強い! ……いや、内だ! 内を突いて伸びるウマ娘がいる! グランドソレイユだ!」
「はぁぁぁぁあぁぁあっ!!」
ソレイユだけがタイキ相手に懸命に粘る。
しかしあともう少しで並びかけるという瞬間、タイキは末脚を爆発させる。
もはやその差は、縮まらなかった……。
「強い! 強いとしか言えない走りだ! タイキシャトル圧勝ー! ヴィクトリアマイルを制したのはやはりタイキシャトルだ!」
ワアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!
タイキシャトルが腕を上げて声援に答える。
「皆さん、センキュー!」
その姿を、トレーナーの東条ハナは手元の時計を見ながら思った。
(勝ち時計を見れば、ソレイユのタイムは決して悪くない。タイキがそれ以上に凄すぎたんだわ)
「……おめでとう。タイキ」
ソレイユが握手を求める。二人は併走で何度も走った仲だ。
「ソレイユ=サン……」
「おめでとうございます。タイキシャトルさん」
「ハーイ、とてもハッピーデース。ハッピー、なのですが……」
「? どうかしましたか?」
「ソレイユ=サンには悪い事しちゃいマシタ。いや、違いマース。ソレイユ=サンがいたからこそ、ワタシは勝つことができたのデス」
その日の夜、『リギル』のメンバー総出でタイキのBBQパーティに付き合わされた。そして怒られた。
でも、タイキの顔はとても晴れやかだった。
一方でソレイユは、一足先に失礼と抜けると、レースの疲れがあるにも関わらず、夜練に精を出していた。
「……悔しいなぁ」
誰もいない練習場で、ソレイユは一人呟いた。
翌週の安田記念。
先行で好位置に着けていたフジキセキがハナを奪いに襲い掛かる。
「ここでフジキセキが1番手に躍り出た! 驚異のハイペース! 後続は脚を溜められていません!」
「フジ、タイマンだ!」
その中で唯一落ち着いて戦況を見つめていたヒシアマゾンだけが、一気に追い込みの脚を爆発させる。
「このハイペースで、あんな脚、嘘でしょ……!」
「駄目だ、付いて行けない……!」
後続のウマ娘が弱音をはく。やはり持って生まれた才能が違いすぎるのか……。
しかしこの二人に付いて行く唯一のウマ娘がいた。グランドソレイユだった。
「わたしも、混ぜてもらいますよ!」
「ははっ、いい度胸だ。掛かってきな!」
「勝つよ、この勝負!」
『三つ巴の戦いだ! 並んだ並んだ三人が並んだ! 残り100mを切った! 勝つのは誰だ!?』
「「「はああああああっ!!」」」
決着はヒシアマゾンがハナ差で最後にフジキセキを抜き、優勝した。フジキセキ2着。グランドソレイユ3着。
「ははっ! どうだいフジ、私の勝ちだな!」
「いやいや、やられたね……。仕掛け時も攻め手も間違っていなかったんだけど」
「…………」
その日は栗東寮、美浦寮の面子が集まってお祝いパーティが開かれた。
しかしソレイユの姿はいつの間にか消えていた……。
更に翌週の宝塚記念。
テイエムオペラオーは徹底マークにあい、抜け出すのが遅れてしまう。
その中で抜け出したのが、彼女がライバルと認めたメイショウドトウだった。
『ドトウ先頭だ! ドトウ先頭だ! メイショウドトウの執念が実るのか!? テイエムオペラオーはようやくバ群を抜け出したが苦しいか!?』
「今日こそ、今日こそ……オペラオーさんに、勝ちますぅ!」
「……まだだ! まだ終わっていない! 美しく華やかに、時には泥を浴びても煌びやかに、それがボク、テイエムオペラオーだ!」
『テイエム来た! テイエム来た! しかし……あと一歩届かず! メイショウドトウ、宝塚記念を制しました!』
「か、勝てた……オペラオーさんに勝てた……! やりましたぁ! 嬉しいですぅ……ふぇぇ……!」
「おめでとうドトウ。君はやはり、ボクが認めた最高のライバルだったよ!」
「オペラオーさぁん……」
一方でオペラオーに意識が集中し過ぎていたソレイユは5着と惨敗した。
「…………」
(GⅠ……取れなかったな……)
ソレイユは結局、春のGⅠ戦線で勝つことが出来なかった。
同じチーム『リギル』の面子と戦わざるを得ないという不利な状況で善戦を続けたのは称賛に値する。
しかしそれが結局裏目に出た。
トレーナーの東条ハナは「同じチーム同士で競い合わさせることでボトムアップを測る」という信条の持ち主だった。
この結果は完全な実力負けだった。
もしも宝塚記念ではなく、ダートの帝王賞を選んでいたら、『リギル』のメンバーがいない競合相手が少ないレースだったら、違う結果になっていたかもしれない……。
しかししょげていてもしょうがない。ソレイユはサマーシーズンに名乗りを上げる。