テスト本番の日がやって来た。
「さて、お前たちに最初の関門がやってきたわけだが、質問はあるか?」
「僕たちはこの数週間真面目に取り組んできました。このクラスで赤点を取る生徒はいないと思います」
「随分な自信だな、平田。もし、お前たちが夏休みまでに退学者を出すことなく乗りきることができれば夏休みにはバカンスに連れてってやろう」
「ば、バカンス?」
「ああ。青い海に囲まれた島で夢のような生活を送らせてやろう」
「な、なんだこの妙なプレッシャーは...」
「皆.....やってやろうぜ!」
「「「うおおおおおおおおお!!!」」」
全員に問題用紙が配布され、合図とともにテストが始まった。これが、あのDクラスなんだろうか。テストが始まる直前まで余念のない須藤達。それを見て、倣うように緊張感をもつ他のクラスメイト。雪ノ下は『世界を変える』と言った。この光景はその一端なんだろうか…。これからこのクラスがどうなっていくのか見てみたい。オレはそんな事を感じるようになっていた。
…
茶柱先生が教室に入るとDクラスの生徒たちの顔が強ばった。
「先生、今日は中間テストの結果が発表されると伺っていますが、それはいつですか?」
「お前はそこまで気を張る必要はないだろう、平田。あれぐらいのテストは問題ないだろう?」
「……教えてください」
「喜べ、たった今発表する。放課後だと手続きが間に合わないこともあるからな」
「それは……どういう意味でしょうか」
「慌てるな。今点数を発表する」
茶柱先生はそう言って、以前の小テストの結果発表の時と同様、大きな紙を五枚張り出した。
「正直に言って、感心した。お前らがここまでの高得点を取るなんてな。90点以上が10人以上いる科目もあるぞ」
その光景に、生徒たちは歓喜の声をあげる。須藤たちの得点を確認する。全教科でで45点以上を超えているようだ。今回、このクラスから退学者がでる。そんな事態は免れたようだ。
「っしゃ!!」
須藤が立ち上がり、池や山内たちもそれに続くように立ち上がる。
「見ただろ先生!俺たちもやるときはやるってことですよ!」
池がドヤ顔を決める。
「ああ、認めている。よくやった。文句なく合格だ。次の期末テストでも赤点をとらないよう精進してくれ。以上だ」
そう言って茶柱先生は教室を出ていった。
「平田くん、これで依頼は達成という事で問題ないかしら?」
「ああ、もちろんだよ」
「では、放課後、部室に来て頂戴」
「わかったよ」
「須藤くん、山内くん、池くん。あなた達が勉強をする理由は覚えているかしら?」
「バスケのプロになってアメリカに行く為」
「「可愛い彼女を作る為」」
「それが分かっているならいいわ。これで私からの特別授業は終わりよ。もちろん、これからも勉強で疑問点があれば、いつでも質問してくれてかまわないわ。これまでよく頑張ったわね」
思いがけない雪ノ下からの労いの言葉。山内と池は地獄の日々を思い出したのか、少し涙ぐんでいる。
「や…やべえ……俺…雪ノ下に惚れちまったかも…」
「ごめんなさい。正直迷惑よ」
……
「あーやっと解放されるー」
「だらしないわよ。櫛田さん」
ゆきのんが飲み物をいれてこちらにやってくる。紅茶のいい香りが徐々に部屋を満たしていく…。あぁ、ゆきのんの部屋だ。この匂いを嗅ぐとあらためて実感する。
「ずっと山内の相手だよっ?毎日が地獄じゃない?」
「では、須藤くんか池くんがよかったのかしら…」
「いやいや、どれも無理っ!それになんで、私が巻き込まれる前提なのっ」
「??」
「不思議そうな顔しないっ!」
「それでもあなたにも得るものがあったでしょう」
「そうだねー。テストでこんな点とったの久しぶりだよ」
「ふふっ、よく頑張ったわね。『桔梗』」
「……ねっ、もう一回言ってよ」
「嫌よ。櫛田さん」