ようこそ雪ノ下雪乃がいく教室へ   作:ゆうき35

4 / 12
放課後②

職員室を後にした私はその足で生徒会室へと向かう。道中辺りを確認しているとかなりの数の監視カメラの存在に気づく。

 

(全てが防犯というわけではなさそうね)

 

そんな事を考えながら歩いていると目的の場所に到着した。閉ざされた扉をノックすると女性の声で入室を促される。中で待っていたのは年上とは思えない可愛らしい女性といかにも風格があるメガネをかけた男性だった。

 

「1年生か。入学初日に生徒会室に何のようだ」

 

「私は1年Dクラスの雪ノ下雪乃です。本日、新たな同好会を立ち上げた所、担任の先生より活動内容が生徒会と一部重複する可能性がある為、事前に説明をしておいたほうがよいとアドバイスを頂きましたので、早速お伺いしました。お時間があるようでしたら少々説明の機会を頂きたく」

 

「ほぅ。生徒会長の堀北だ。活動内容を聞こう」

 

私は先生にも話した活動内容とコンセプト。また、1年Bクラスの担任である星乃宮先生が顧問となり保健室で活動していく事を説明した。

 

「この学校で新たな同好会を設立する場合、ポイントが必要となるが、それはどうした」

 

「既に茶柱先生にお支払いしています」

 

「何ポイントだ?」

 

「5万ポイント。部活動にする場合は20万ポイントと言われましたが、流石に持ち合わせはありませんでしたので」

 

「活動内容は分かった。確かに生徒会の活動と一部は重複するようだ。どうだ?生徒会役員としておこなわないか?お前には十分その資格はあると考える」

 

「え〜〜。今日入学した新入生ですよ?」

 

「雪ノ下雪乃。受験時の筆記テストでは紛れもなく最上位だ。それに人物面でも他人の影響を受ける可能性は極めて低い。お前が掲げる活動は生徒会でも叶える事ができる。今なら副会長の席を用意させてもらうが」

 

「しかも、副会長ですか…」

 

「非常に光栄ですがお断りさせて頂きます」

 

「しかも断った!この学校で生徒会役員になる事は非常に名誉な事ですよ!」

 

「理由を聞こう」

 

「私は本日入学したばかりで生徒会の役割や重要性を理解してません。その状況で軽はずみにお答えはできません」

 

「そうか。では、気が変わったらいつでも言ってこい。奉仕部の活動だったな。特に問題はないと考える。念の為、相談内容が生徒会で対処するほうが相応しいと考えるものであれば、こちらへ誘導する事。1ヶ月毎に活動記録を生徒会に提出してもらうといった所だ」

 

「異存はありません」

 

「携帯を貸せ」

 

そう言われて、携帯のロックを解除し、堀北会長に渡すとなにやら操作を始めた。一通りの操作が終わると私の手元に戻ってくる。

 

「報告用に俺とここにいる橘の連絡先を登録した。内容によっては男性に報告するのが難しい場合もあるだろう。俺か橘いづれかに連絡をもらえれば構わない。個人が特定できる情報も不要だ。次に部活設立の為に出資させてもらった。20万振り込まれているだろう。これは『奉仕部』の活動を通して得たポイントでの返却を義務づける。返却が終了した段階で活動報告の提出は不要と判断させてもらおう」

 

「分かりました。

 本日はお時間を頂き、ありがとうございます。」

 

……

オレは一度寮に戻り、学生鞄を部屋においた後、強い興味を抱いていたコンビニに赴いた。もちろん1人だ。付き添う友人など1人もいない。コンビニの中に入ると、すぐさま雪ノ下に鉢合わせてしまった。

 

「……ひょっとしてストーカー?」

 

「ちっ…ちがうぞ。俺もたまたまコンビニに来ただけだ」

 

「違うの?」

 

「なぜ疑問系なんだ。

 と言うか雪ノ下もコンビニに用事だったのか」

 

「普段はコンビニは使わないのだけれども今日は下校時間が遅くなったから必要最低限のものを買いにきたの」

 

これから始まる寮生活、必要なものは少なくない。女子ともなればなおさらだ。手に取ったシャンプーなどの日用品。適当に選んでいるのかと思いきや、安価なものばかりをピックアップしている様子。

 

「女の子って、シャンプーとかにはこだわると思ってた」

 

「女性の日用品をチェックするなんて…

 あまり褒められた行動ではないわよ」

 

雪ノ下の視線は冷ややかだ。

 

「いや…興味があってな…つい…」

 

「私はその気はないわ。ごめんなさい」

 

あれっ?オレ、今告白もしてないのに振られたのか?

 

「ち…違うぞ。そういう意味では決してない」

 

「そう。てっきり私の事好きなのかと思ったわ」

 

その後、一言二言雪ノ下と会話を交わしつつ会計を済ませると外から怒声が聞こえてきた。

 

「逃げんのかオラ!」

 

「吠えてろ吠えてろ。どうせすぐ、お前ら地獄を見るんだからよ」

 

「あークソが、うぜぇ連中ばかりだぜ」

 

赤髪の男子生徒は散乱した具材の後片付けもせず、ポケットに手を突っ込み帰ろうとした。

 

「須藤くん。ちょっといいかしら?」

 

雪ノ下は赤髪の男に話しかける。

 

「あぁ?何の用だ?」

 

「あなたが今散乱させたこの具材。片付けていく必要があるのではないかしら?」

 

「知るかっ。上から命令してるんじゃねぇ」

 

そう言って須藤と呼ばれた生徒は去っていった。

 

「私はこれを片付けてから寮に戻るから先にいっていいわよ」

 

「オレも手伝おう」

 

「そう…」

 

そう言ってオレ達は片付けを始めた。

 

「あの赤髪…須藤といったか?よく名前知ってたな」

 

「あら?彼はクラスメイトよ。全員の顔と名前を一致させるなんて当然じゃない」

 

「それにしても無視してもよかったんじゃないか?」

 

「散らかしたら片付ける。幼稚園生でも分かることじゃないかしら?」

 

「バスでもそうだ。『嘆かわしい』。あれはどういう意味だ」

 

「そう言えば隣に座っていたわね。読書に集中して気づかなかった私にも否があるけどご年配のひとに席を譲る。当たり前の事ではないかしら?」

 

「そんな生き方しんどくないか?」

 

「不思議な事に当たり前の事をすれば偽善者だと非難される。優秀な人ほどまわりに脚を引っ張られ、仲間外れにされる。世の中はそんなくだらない人間ばかりよ。でも、そんなのおかしいじゃない」

 

『だから変えるのよ。人ごとこの世界を』

 

その言葉にオレは息を飲んだ。そう言った雪ノ下をオレは本当の意味で初めて美しいと思った。ホワイトルームから逃げ出して3年間ただ何事もなく過ごす事を目標にしていたオレにとって、雪ノ下の考えはまさに目から鱗だった。彼女となら新しい世界が開ける。そう感じたオレは自然と口が動いた。

 

「なあ、雪ノ下…オレと友…」

 

「ごめんなさい。それは無理」

 

オレの高校生活は前途多難なようだ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。